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防風林「タネを守り育てる農家たちの熱意【2022年1月3週号】」

 ▼年末に見たNHK総合テレビの番組で、在来野菜が絶滅危機にあるとし、地域のカブ在来品種を1人で守る長崎県平戸市の農家を紹介した。種を譲り受けたときも生産者は1人だけだったそうで、農家が栽培をやめた時点でそのカブは世の中から姿を消すという。
 ▼一度失敗した経験から、採種に用いるカブ選びや交雑を避ける畑への植え替えなど細心の注意を払っている。一般に流通する種苗会社のF1品種とは違い、形や大きさがそろいにくく栽培にも手間がかかる。採算性を考えたら続けられない仕事だ。在来品種は地域の食文化との関わりも深いはずで、うまく継承する仕組みは作れないものか。
 ▼日本有機農業研究会は、野菜を中心に70品種の特徴や栽培、採種の方法を紹介する『種から育てよう―有機のタネの採り方・育て方』を12月に発行した。会誌『土と健康』に掲載した農家の寄稿などをB5判120ページにまとめた。在来品種だけでなく、自ら育種したり、海外から取り寄せたりと由来や物語がそれぞれにあり興味深く読んだ。
 ▼同じ地域の在来品種でも、採種する農家の選び方次第で年月とともに形質は多様に変化していくと聞く。同書では、自家採種などに関心のある農家に向け、研究会の種苗ネットワークへの登録や集会時などに開く種苗交換会への参加を呼びかけている。理想の追求に手間を惜しまない農家の熱気を感じてみたくなった。