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防風林「災害の記憶を伝え続ける【2022年3月1週号】」

 ▼東日本大震災から11年となる3月を迎えた。復興庁のまとめでは、産業や生活のインフラ整備はおおむね完了。津波で被災した農地1万9690ヘクタールの94%が営農再開可能となり、復興の「総仕上げ」の段階にあるとする。一方で原子力災害被災地域は、事故収束や環境再生、帰還・移住や農林漁業の再生など課題が多く、引き続き「国が前面に立ち、中長期的な対応が必要」と総括する。
 ▼福島県では20年3月、帰還困難区域を除く全ての地域で避難指示が解除され、避難指示解除区域全体の居住者数は約1万5千人に増えたという。しかし、同県全体の避難者数はいまも3万4千人いるとされ、とても復興を展望できる状況にはない。
 ▼原子力災害被災12市町村の営農再開面積は、震災前の4割ほどとされる。避難が長引くほど帰還者による営農再開が難しくなるのは明らかで、今後は移住による新規就農者の確保にも取り組む必要があるだろう。
 ▼災害発生から10年を過ぎ、被災地では記憶の風化や防災意識の低下を懸念する声が出始めている。阪神淡路大震災の被災地では、特に震災後に生まれた世代への記憶伝承に苦労していると聞く。命を守るために「忘れない」ことの大切さを伝え続けていこう。