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防風林「飢餓拡大の回避に主要国は連携を【2022年4月4週号】」

 ▼生まれ育った集落に「けかじ坂」と呼ばれる坂がある。城下を出て集落に入る位置にあり、谷を下りて上る急坂だ。天明の飢饉(ききん)の際、食べ物を求めて来た人の多くがこの坂で力尽きたとの伝承がある。坂の名は飢饉を指す方言の「けかじ」や「蹴返し」に由来すると聞く。
 ▼天明の飢饉では、冷害や悪天候に加え、藩の悪政が餓死者を増やしている。年貢減免など救荒策をせず借財返済を優先し、集めた米を大阪などで売ったのだ。餓死者を出すまいと他藩の米を買って供出した藩もある中で為政者の無責任が大惨事を招いた。
 ▼ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で穀物価格の高騰が続き、両国の小麦などを輸入する中東やアフリカなどの国に動揺が広がる。食品の価格高騰に加え、供給不安も募るためだ。国連食糧農業機関(FAO)は、栄養不足人口増加など飢餓の危機を警告し、各地から暴動のニュースも伝わる。
 ▼ロシアへの経済制裁も穀物価格高騰の一因であり、制裁に連携する主要国は飢餓の回避にも万全を期すべきだ。途上国や貧困層に犠牲を強いてはならない。