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防風林「地域の財産である農業用水の維持管理に力を尽くそう【2022年5月3週号】」

 ▼国内には総延長で約40万キロと地球10周分の水路網があり、幹線水路だけでも約4万キロに及ぶという。日本は、古くから水田で米を作り食べてきた。新田開発は、用水確保が大前提となり、用水の開削に伴う先人の逸話や労苦をしのぶ記念碑が各地に伝わる。
 ▼今回、取水施設で大規模な漏水が発生した明治用水は、1880(明治13)年に完成した。当時の総延長は約52キロで、その後さらに開削し、現在は幹線が約88キロ、支線水路は約342キロ、農地の受益面積は約5300ヘクタールとなる国内有数の用水だ。最も水を必要とする田植え時期の事故だけに農家の落胆も大きいだろう。当面必要な用水だけでも確保する方法はないものだろうか。
 ▼農業をはじめ地域の産業と暮らしを支えてきた水利施設は全国的に老朽化が進む。基幹的な水利施設は、戦後から高度成長期に整備されたものが相当数を占め、うち3割近くは耐用年数を超え、いつ事故が起きても不思議ではないそうだ。実際、経年劣化や局部的劣化による事故は増加傾向にある。
 ▼農林水産省は、施設の現状を把握・評価し、中長期的な状態を予測しながら補修・補強など長寿命化を図る機能保全対策を推進する。防災や環境、生態系の保全など多様な価値がある地域の財産だ。大切にしたい。