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防風林「時代は進んでも災害の前では無力【2022年9月1週号】」

 ▼「大木の道に倒るゝ野分哉(かな)」「大水や刈田は海の如(ごと)くなり」災害関係の資料をネット上で探していたら、正岡子規の俳句が表れた。東京で暮らしていた1896(明治29)年に台風と水害に遭った体験を詠んだ。同年は全国各地で水害が発生し、「今年は全国大雨にて洪水ならぬ處(ところ)もなき」との記述も残るという。
 ▼記録では、台風は8月30日と9月7日の2度襲来し、中部の木曽川、関東の荒川、江戸川、多摩川などが氾濫した。7月には中部地方から東北にかけての広い範囲で洪水被害が発生し、北海道も雨が続いた。さらに津波で2万人を超える死者・行方不明者が出た明治三陸地震もこの6月の災害だ。
 ▼9月1日は「防災の日」。広く国民が災害に対する認識を深めて備えを強化し、災害の未然防止と被害の軽減につなげようと1960年に制定された。23年に発生した関東大震災にちなんでおり、台風シーズンを前に注意を喚起する意味も込めている。
 ▼子規が句を詠んで120年以上が経過し、気象予報の精度は格段に向上した。ただ、一方では温暖化が進行し、大雨の発生数増加や台風などの被害激甚化を招いている。現状を子規ならどう詠むだろう。