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防風林「老いを受け入れ健やかに【2022年9月4週号】」

 ▼8日に96歳で逝去した英国のエリザベス女王は、その2日前に保守党党首のトラス氏を首相に任命するなど公務をこなした。この数年は健康不安を抱えていたそうだが、亡くなる直前まで元気に活動する"ピンピンコロリ"のモデルのようだ。
 ▼健康的に制限なく日常生活ができる「健康寿命」を伸ばし、平均寿命との差である不健康な期間をいかに短くするかは、高齢化社会の重要課題だ。少しずつ短縮しているものの、2019年で男性は8.73年、女性は12.06年の差がある。高齢夫妻の2人世帯や高齢の1人世帯が増える中、生活維持の支援も課題だ。
 ▼ドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』は、85歳で認知症を発症した母親と、90歳を超えて介護と家事に励む父親の生活を娘の信友直子さんが記録した。テレビ制作に携わり、普段は離れて暮らしている。進行する認知症と老老介護の日常を丁寧につづった。
 ▼同名の著書で信友さんが挙げた反省点は、地域包括支援センターへの相談が遅れたことだ。「自分たちでできるうちはいい」との言葉に甘え、全て抱え込む「引きこもり暮らし」に陥っていたとする。介護支援を受け、悩みを相談できる環境で精神的にも楽になり、家族で笑う機会が増えたという。例え病気を抱えても幸せは逃げないと勇気をもらった。