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資材・燃料高騰に屈せず 品質重視のイチゴ栽培【9月4週号 香川県】

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 【香川支局】生産資材や燃油が高騰する中、多度津町の廣瀬有児さん(51)は、自己資金と行政の助成金などを活用し、10アールのイチゴハウスを新設。2021年8月、同町で唯一のイチゴ農家としてスタートした。2年目の今作は、年間出荷量6トン(県平均は約3.5トン)を目標に作業に励む。施設本体と高設栽培システムを合わせた費用は、価格高騰前の18年と比較し約1.25倍かかった。「それでも少し安い時期に導入できて良かったです。今もどんどん値上がりしていますから」と廣瀬さん。人件費を節約するため、整地は土木建設業を営む友人に依頼し、親類の力を借りながらコンクリートを搬入した。新規就農者を資金面で支援する事業は、年齢などの制約があって受けられないものが多かったが、香川県の「さぬき讃フルーツ拡大支援事業」の助成金は受けることができた。農地法に基づく農地の権利取得の下限面積は、多度津町の場合は露地で30アール。施設栽培用地は前例がなかった。廣瀬さんは町と相談し、小規模でも収益性の高い作物で所得が見込めることを証明する就農計画を農業委員会に提出した。町の担当者は「今までにない事例でしたが、農業振興につながるため、就農できるようにサポートしました」と話す。農業委員会へ就農計画を申請し、ハウス建設地として承認され、無事に農地を購入できた。周辺より少し高い位置にあるため、日差しが遮られないというメリットがある一方、風が吹き抜け突風被害を受けやすいリスクがある。園芸施設共済があることは香川県立農業大学校の就農準備研修で知っていたので、復旧費用と小損害不てん補1万円の特約を付帯して加入した。「農業共済という備えがあると、安心して農作業に専念できます」。冬季は燃料代が高騰したが、品質重視で管理したという。内張りを外し、日光をハウス内にくまなく取り入れ、室温は10度を下回らないように暖房機で加温した。廣瀬さんは「時間がかかる収穫とパック詰め作業の効率を上げて出荷数を増やし、喜ばれる新鮮なイチゴを少しでも多く届けたいです」と意気込む。

〈写真:「さぬきひめ」の葉かぎをしながら「9月下旬に花を咲かせるように管理したいです」と廣瀬さん〉