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防風林「消費者にもっと届けたい 農の匠たちの声【2022年11月4週号】」

 ▼「『耕す人々』の世界の入り口が、ここにある。」と案内するドキュメンタリー映画『百姓の百の声』が公開されている。『千年の一滴 だし しょうゆ』などを手掛けた柴田昌平監督の最新作。毎日農作物を食べていても、すぐ隣にいる農家の姿や言葉が分からないと、あぜ道を進み"遠くて近く、近くて遠い百姓国"を訪ね、その声を聞いていく。
 ▼全国に弟子がいる稲作の巨匠や日本のトマト栽培の開拓者、1台の田植機でディズニーランド三つ分の田植えをこなす挑戦者、1房1万円のブドウを東南アジアに輸出する果樹農家など、名前の知られた人たちが語る言葉は経験の裏付けもあり興味深い。その一方、新規就農したばかりの夫妻が登場し「もうけて家族旅行をしたい」と希望に目を輝かせる場面も印象的だ。
 ▼関心を持ったのは、多くの農家が自然や作物を観察する重要性を強調したことと、身に付けた知識や技術を惜しみなく他の農家に伝える姿だ。監督は「百姓国の知」や「知の共有財産」と呼び、特許などで知的財産を囲い込む「グローバル企業の知」とは対極の考えと指摘。危機に直面しても知恵と工夫で克服する底力につながっているとする。
 ▼映画を見て、作り手の言葉を消費者が知る機会が少なく、"近くて遠い"食と農の距離を実感した。ネット社会が到来しているのだから、何か工夫できると思うのだが。