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今週のヘッドライン: 2019年10月 3週号

復旧をあきらめない 茨城県内の農家 ―― 台風15号から1カ月(1面)【2019年10月3週号】

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 関東地方を中心に深刻なダメージを与えた台風15号から約1カ月。強風で倒壊したビニールハウスなど、農業関係にも爪痕は深く残っている。千葉県と同様に台風が直撃した茨城県でも打撃は大きく、NOSAI茨城(茨城県農業共済組合連合会)によると、県内の園芸施設共済の引受棟数のうち、1万棟以上に被害が発生した。現在でも撤去が進まず、資材不足などの影響で再建のめどが立っていないケースも多い。茨城町とつくばみらい市の農家に、現在の状況や復旧への思いなどを聞いた。

(1面)

〈写真上:倒壊したハウスを見つめる荒川さん。「見た目に大きな被害はなくても、ゆがんでしまったハウスも多い」と話す〉
〈写真下:「倉庫のビニールが破けてしまった」と話す赤根さん〉

都府県酪農の振興を 脱粉輸入枠縮小も 弱体化進む生乳生産(2面・総合)【2019年10月3週号】

 農林水産省は4日、2019年度の脱脂粉乳の輸入枠数量を、当初計画していた2万トンから1万4千トンに削減すると発表した。ヨーグルト需要の伸び悩みで、在庫が積み上がっていることが主な要因。バターについては現行輸入枠の2万トンを維持する。国内の生乳生産は、北海道が前年度を上回る見通しだが、都府県は前年を下回り、生産基盤の弱体化に歯止めがかかっていない。さらに9月の台風15号に伴う大規模停電による影響で、千葉県酪農へのダメージも懸念されている。国内の牛乳・乳製品需給の安定には、特に都府県の生乳生産の回復が急務となっている。酪農家の意欲を喚起する施策や乳業社との連携・強化が課題だ。

(2面・総合)

基本計画 持続可能な農業議論 農業保険の「定着」掲げる(2面・総合)【2019年10月3週号】

 農林水産省は9日、食料・農業・農村政策審議会企画部会を開き、次期食料・農業・農村基本計画の策定へ「農業の持続的な発展」に向けた施策の方向案を示した。「担い手の育成・確保」では、農地の効率的利用の観点から、法人化の推進・広域化や認定農業者制度の運用見直しなどを明記。女性の参画・活躍を後押しするため、女性認定農業者数の増加支援や農業委員・農協役員への女性登用の促進なども盛り込んだ。
 「経営所得安定対策の推進と収入保険制度等の検討」では、農業保険(収入保険・農業共済)の加入推進や損害防止事業(予防)と保険事業の効率的な運営などを明記した。
 特に収入保険については、収入減少影響緩和対策(ナラシ)や野菜価格安定制度、収穫共済など同趣旨の関連施策との検証を行い、「経営安定制度の機能を集約した総合的かつ効果的なセーフティネット対策」のあり方を検討すると記述した。中長期的には、異常災害や経営規模拡大など農業経営リスクの増大・多様化を受け、「農業経営の必需品としての『保険』の定着」を掲げた。

(2面・総合)

肥料取締法改正案 化肥+堆肥が可能に(2面・総合)【2019年10月3週号】

 農林水産省は4日、自民党の農林関係合同会議に、今臨時国会への提出を予定する肥料取締法の改正案を示し、了承された。「化学肥料と堆肥」や「肥料と土壌改良材」の配合肥料を生産できる制度(届け出制)の新設などが柱で、農家の土づくりや施肥作業の省力化・効率化を後押しする。今国会での成立を目指す。

(2面・総合)

産地を守る熟練の技 藍:タデアイ栽培からすくも作りまで ―― 有限会社新居製藍所・新居修さん(徳島県上板町)(3面・暮らし)【2019年10月3週号】

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 かつては日常的な衣服に用いられるなど、日本の伝統として現在まで引き継がれている「藍」。徳島県上板町七條の有限会社新居製藍所では、6代目の新居修代表(71)が、娘の加容子さん(46)や、その夫の俊二〈ゆうじ〉さん(48)とともにタデアイ2ヘクタールを栽培する。修さんは、刈り取った葉藍から染料の「すくも」を作る藍師として活動し、全国の染め物店にすくもを出荷。長年にわたり後継者の育成にも携わるなど、産地振興に尽力する。

(3面・暮らし)

〈写真:藍の生育状況を見る修さん〉

自主施工で高軒高に 施設内環境の改善に効果 ―― 渋谷忠宏さん・康宏さん(神奈川県藤沢市)(9面・営農技術)【2019年10月3週号】

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 神奈川県藤沢市で施設トマト60アールを栽培する渋谷忠宏さん(63)・康宏さん(36)親子は、自主施工で鉄骨ハウスの軒高を約70センチ高めて240センチにしたことで、過湿の回避などハウス内環境の改善に効果を実感している。灰色かび病が抑制され、薬剤散布回数が減少。また、収穫などの作業もしやすくなった。支柱のかさ上げに使った資材費は10アール当たり100万円以下で、3人の施工で20アールを約1週間で終えた。

(9面・営農技術)

〈写真:支柱を切断してかさ上げした忠宏さん(右)と康宏さん。康宏さんが示す部分が長くなっている〉

独自配合の飼料 肥育期間が大幅に短縮【徳島県 10月3週号】

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 【徳島支局】肥育牛の出荷月齢は、黒毛和種29~30カ月、交雑種(F1)26~27カ月が平均だが、これを両種とも大幅に短縮する21カ月(枝肉重は黒毛和種約450キロ、F1約500キロ)という早期出荷を実現した勝浦町の原田茂さん(50)。飼料メーカーへ独自配合の飼料を発注するほか、日頃の管理に細かく配慮している。

〈写真:出荷目前となった和牛と原田さん〉


耕作放棄地再生 ブドウ19品種【広島県 10月3週号】

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 【広島支局】土木建築会社で専務を務める須澤勝己(すざわかつみ)さん(49)は、仕事の閑散期に雇用安定を図ろうと、耕作放棄地を再生し、ブドウ栽培で農業に参入した。2012年に「すざわ果樹園」(東広島市志和町)を開園。今年は1.4ヘクタールの園地で「ピオーネ」「シャインマスカット」、12月末まで収穫できる「紫苑(しえん)」など19品種を栽培し、3万5千房を見込んでいる。

〈写真:「さらに品質を上げ、ブランド化したい」と須澤さん〉

復興に花添える 避難解除の町村で販売目指す【福島県 10月3週号】

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 【福島支局】川内村の福塚〈ふくつか〉裕美子さん(33)は、双葉郡内で唯一の花店を営む。同村の農事組合法人が生産するリンドウも扱い、東日本大震災からの復興に花を添えている。大阪府出身の福塚さんは東京で花店に勤めていたときに震災が発生。復興支援のため川内村に移住し、水稲を栽培していた。そうした中、「花屋を開きたい」という思いを抱き、名古屋市や大阪、東京、ドイツで勉強して村に戻った。現在は店舗を持たず、郡内の商業施設3カ所で毎週2、3日の移動販売に取り組む。

〈写真:「将来は川内村にお店を開きたい」と福塚さん〉

台風被災者をパックご飯で支援【北海道 10月3週号】

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 【北海道支局】雨竜町のうりゅう米生産組合(遠藤清明組合長)はこのほど、台風15号の影響で大きな被害を受けた千葉県の被災者に「うりゅう米」のパックご飯を送った。うりゅう米の定期購入者は同県内で千戸ほど。そのうち被害地域に該当する10世帯に、見舞状を添えて20パックずつ発送した。送付したパックご飯は、今年1月にJAきたそらちが商品化。湯せんや電子レンジで加熱して食べることができる。

〈写真:送付した「うりゅう米」のパックご飯と高木営農課長〉

甘味・うま味が向上 温泉水で野菜栽培【富山県 10月3週号】

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 【富山支局】砺波市庄川町の有限会社泰栄農研は、庄川清流温泉の源泉を用いて「庄川おんせん野菜」を生産している。「地域の活性化につながればという思いで始めた」と同社社長の柴田泰利さん(35)。「ミネラル分が豊富な温泉水を使用しているため、甘味、うま味、鮮やかさが増している」という。

〈写真:庄川おんせん野菜のトマトを手に柴田さん〉

防風林「相次ぐ気象災害 悪徳商法による被害も防ごう【2019年10月3週号】」

 ▼前線に伴う集中豪雨のほか、台風の接近・上陸が相次ぐなど今年も気象災害が頻発している。加えて大型で非常に強い台風19号が、関東地方を中心に大きな被害をもたらした15号と似た進路をたどる。
 ▼この原稿の執筆時点で被害の状況は分からないが、災害に巻き込まれそうなときは命を守る行動を最優先にしてほしい。仮に被災した場合でも、体が無事であれば生活の再建や営農再開に動き出すことができる。
 ▼台風15号では、電気や水道などのライフラインが寸断され、被害が拡大した。送電網の復旧も大幅に遅れ、農業関連では酪農や園芸施設への影響が深刻化した。関係の事業者には、再び同様な事態を招かないよう万全の対応を求めたい。
 ▼最近の被災地域では、悪徳商法などの横行が問題になっている。住居の修理などを急ぎたい被災者の気持ちにつけ入り、自治体の職員やボランティアを名乗って近づき、ずさんな工事で法外な請求をしたり、保険請求を代行すると持ちかけ、手数料を払わせる詐欺行為も報告されているという。
 ▼集落の人口が多く、共同活動が盛んな時代なら、災害時の安否確認や住宅の修理、がれきの片付けなども地域で取り組めただろう。昨今は過疎化で高齢の独居世帯も増えており、近隣の被災まで手を回す余裕がなくなっている。だが、被災者をむち打つような行為は許されない。車での見回りを、できればドライブレコーダー付きで実行できないか。関係機関も含め、協力体制を組めば、抑止効果が期待できる。

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