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今週のヘッドライン: 2019年11月 3週号

漢方で地域に活気を ―― ポニーの里ファーム(奈良県高取町)(1面)【2019年11月3週号】

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 漢方薬などの原料となる生薬(薬用作物)の国内需要が伸びている。しかし、その約8割を中国からの輸入に依存しているのが現状だ。奈良県では、「漢方のメッカ推進プロジェクト」を推進。ヤマトトウキ(大和当帰)やシャクヤク(芍薬)などの生産振興と普及拡大に力を入れている。高取町の農業生産法人有限会社ポニーの里ファーム(水稲「ヒノヒカリ」など2.5ヘクタール、青ネギ30アール)では、当初から同プロジェクトに参画しヤマトトウキを栽培してきた。統括マネージャーの保科政秀さん(30)は「薬用作物を通じて、人と町を活気づけたい」と話す。

(1面)

〈写真:ヤマトトウキを管理する保科さん。「食用だと約1年で収穫できるが、薬用だと2、3年かかる」〉

収入保険:今年作付け分 継続加入で 翌年の減収分もカバー(1面)【2019年11月3週号】

 台風や豪雨など全国各地で自然災害が多発する中、NOSAI全国連(全国農業共済組合連合会)では、被災した収入保険加入者に対し、地域のNOSAI組合等に事故発生を通知するよう呼び掛けている。保険金等の支払いに必要な上、特に収入保険制度では、今年作付けて来年収穫・販売を予定する農作物が被害を受けた場合、事故発生を通知すれば、継続加入した際に来年の収入減少分としてカウントされるため。NOSAI全国連では、被災した加入者への「つなぎ資金」の適正・円滑な貸し付けとともに、制度の機能発揮を通じて被災農業者の経営再建・安定を強力に後押しする。

(1面)

食料安保を語る契機に ―― 基本計画で企画部会 自給率目標を検証(2面・総合)【2019年11月3週号】

 農林水産省は12日、食料・農業・農村政策審議会企画部会を開き、次期食料・農業・農村基本計画の焦点の一つである食料自給率目標の設定に向け、課題などを議論した。食料自給率はカロリー(供給熱量)ベース、生産額ベースともに低迷しており、上向きに転じる見通しも立っていない。また、現行基本計画から示された食料自給力も農地の減少などで右肩下がりの状況が続く。委員からは、食料安全保障の重要性や国内農業を取り巻く厳しい現状などの指摘があり、自給率・自給力の向上へ国民的な議論の必要性を訴える発言が相次いだ。国民合意に基づく目標の設定と実効性ある対策の構築が求められる。

(2面・総合)

豚コレラを「CSF」に 風評被害防止へ呼称変更(2面・総合)【2019年11月3週号】

 農林水産省は12日、豚コレラの呼称を「CSF」に改めると発表した。豚コレラは人に感染しないが、人が感染するコレラを連想させ、国民の不安拡大を招く恐れがあるため。特に飼養豚への予防的ワクチンの使用開始を踏まえ、風評被害の防止につなげる。

(2面・総合)

第二の人生 ニンニクが"相棒" ―― 小笠原良さん(青森県十和田市)(3面・暮らし)【2019年11月3週号】

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 「糖度は50度を超え、果物よりも甘い。これが自慢の一品」と青森県十和田市洞内で小笠原農園を営む小笠原良さん(67)が「黒にんにく」を手に胸を張る。60歳で実家の農園を継ぎ水稲2ヘクタール、ニンニク1ヘクタールを栽培。水稲単作経営を見直し、ニンニクを新たな経営の軸に位置づける。約40日間熟成して製造する黒にんにくなどの加工品を開発・販売。3月からは6次産業化認定事業者となり、商談会に参加し販路を拡大するなど、ニンニクとともに第二の人生を歩む。

(3面・暮らし)

〈写真:法人化の夢もあり、「ニンニクパワーで頑張るよ」と話す小笠原さん〉

育苗ハウス活用 冬の収入源にコウサイタイ【岩手県 11月3週号】

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 【岩手支局】ナバナに似た外観とアントシアニンを含む赤紫色の茎が特徴の野菜「コウサイタイ」を、農閑期の育苗ハウスを活用して栽培する奥州市水沢の佐々木正幸さん(68)。なるべく農薬を使用しないで病害虫の被害を防ぎ、ハウスの開閉によるこまめな温度調節など、管理を徹底している。

〈写真:「1本の苗は細いですが、太陽の日差しを浴びて、ぐんぐん育ちます」と佐々木さん〉

園芸施設共済 集団加入の協定締結【島根県 11月3週号】

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 【島根支局】「2013年7月の豪雨で近くの河川が氾濫し、ハウス内が浸水する被害を受けました」と話すのは、津和野町でメロンを栽培する株式会社津和野メロンパーク(渡邉重利代表取締役、従業員8人)の渡邉利生専務取締役(38)。地元の津和野メロン生産部会で部会長を務める渡邉専務は、自身が大雨や雪でハウスに被害を受けた経験から園芸施設共済への加入を会員に勧めた。「この地域は従来から雪害などの被害が多く補償は必要」と説明し、同部会とNOSAI島根(島根県農業共済組合)が協定を結び、掛金の割引を行う集団加入を選択した。

〈写真:アーチパイプに設置したタイバーで積雪によるハウスのたわみを軽減する〉

年間3万人来店 沢渡茶で地域に活力【高知県 11月3週号】

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 【高知支局】「仁淀川町に足を運ぶ拠点となるカフェを作りたかったんです」と話すのは、株式会社ビバ沢渡で代表取締役を務める岸本憲明さん(37)。昨年3月、「沢渡茶」を楽しめるカフェ「茶農家の店あすなろ」を同町沢渡に開店した。岸本さんは「本当にここまで足を運んでくれるのか不安がありました。でも、県や町の補助金を受けたので、責任感も強く感じていました」と振り返る。カフェには、町民5400人に対して昨年1年間の来客数が3万人を突破。多くの観光客を呼び込み、町の人は「お店はいつもお客さんでにぎわっていますね」とにこやかに話す。

〈写真:「テーブルに茶葉を乗せた香炉を置くなど、香りを楽しんでもらう工夫をしています」と岸本さん〉

黒ラッキョウをブランドにしよう【青森県 11月3週号】

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 【青森支局】おいらせ町中下田の楢山忠さん(75)は、ラッキョウを熟成させた黒ラッキョウを、新たなブランド商品にしようと試みている。楢山さんは、2016年から野菜や果物の熟成に取り組んできた。17年の春にラッキョウで試したところ、柔らかい食感で甘く、ラッキョウ独特のくせがない黒ラッキョウができたという。

〈写真:楢山さん(右)と栽培仲間の柏崎照さん。「生産者を増やし、農家の新たな収入源になれば」と期待する〉

肉牛農家がブドウ栽培、醸造も【北海道 11月3週号】

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 【北海道支局】肉牛を約1500頭飼養する北見市端野町の株式会社未来ファームが、ワイン醸造所「INFEELD WINERY」(インフィールドワイナリー)を完成させ、今年9月、ワイン醸造免許を取得した。中野克巳代表取締役(62)の次女で醸造責任者の森裕子さん(36)は、オホーツク管内唯一のワイン醸造所として、初のワインの完成を楽しみにしている。

〈写真:ワイン用ブドウを手に醸造責任者の森さん〉

防風林「職人が存在しなければ【2019年11月3週号】」

 ▼子どもの頃、一度だけ、かやぶき屋根のふき替えを経験した。職人のほか、近所の人も手伝いに出て、にぎやかに作業する。黒ずみ傷んでいた屋根が、ふき替えが終わると散髪したてのようにきりっと締まり、白く光って見えた。
 ▼大嘗祭(だいじょうさい)のため皇居の東御苑(ひがしぎょえん)に造営された大嘗宮(だいじょうきゅう)は、かやぶき屋根にするのが正しいそうだが、今回は板ぶきとなった。経費削減に加え、職人不足がその理由という。地方でも職人不足が顕著で、費用がかさむことから、かやぶき屋根の古民家は次々に姿を消している。
 ▼火事で正殿などを消失した首里城(那覇市)の再建には、政府も全面的に支援する方針だ。しかし、特徴的な屋根の赤瓦は、民家に使われる瓦と土の配合や焼き方が違い、製法を知る職人がいないという。瓦の製法再現とともに、技術を身につけた職人育成が課題だ。
 ▼パリのノートルダム寺院大聖堂も今年4月、火災に見舞われた。再建をめぐり、被災前と同じ構造での復元か、新規建築にするか議論になっているという。正確な復元を目指す場合には、屋根をふく職人確保が課題と報道されている。12~13世紀の建造で、屋根を支える構造は当時の技術の結晶だ。熟練の職人でないと復元は難しい。
 ▼日本の田園風景は、棚田とかやぶき屋根のイメージが強い。職人の育成・確保を急がないと、その風景の多くを失う事態も懸念される。

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