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今週のヘッドライン: 2019年12月 2週号

スマート農業 実用性の向上に環境整備が急務(1面)【2019年12月2週号】

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 ロボット農機やドローン(小型無人機)など先端技術を組み合わせたスマート農業が期待され、現場への早期実装を目指した研究が進められている。実証先では人手不足解消などの効果が確認されている一方で、機械操作での難点や通信環境の不足など改善点も見つかっている。技術革新をどうやって農業へ取り入れるか。政府は導入効果への評価や改良の要望など「現場の本音」を反映した技術開発の推進や環境整備を急ぐ必要がある。

(1面)

〈写真:実証を行う有限会社アグリベースにいやまの古賀洋一郎取締役。画面には圃場位置が表示される〉

全国NOSAI大会開く 不測の事態への備えを 農業保険の加入促進(1面)【2019年12月2週号】

 NOSAI協会(全国農業共済協会、髙橋博会長)は3日、東京都内で「『安心の未来』拡充運動令和元年度全国NOSAI大会」を開催。台風など災害が頻発する中、全ての農業者にセーフティーネットを提供する同運動の展開に組織を挙げて取り組むとした大会決議を満場一致で採択した。出席した江藤拓農相は、近年の気象変動と災害が多発する状況を踏まえ、農家自身が不測の事態に備える重要性を強調。参集者には農業保険の加入促進に向けた取り組みの強化を呼びかけた。大会決議を踏まえ、NOSAI団体では収入保険・農業共済の一層の加入拡大に全力を挙げる。

(1面)

日米協定 来年1月発効へ 国内対策の強化不可欠(2面・総合)【2019年12月2週号】

 日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で承認された。来年1月に発効する見通し。米国産牛肉など農産物の関税は、一気に環太平洋連携協定(TPP)11と同水準まで下がり、国内農産物との競争激化は必至。さらに米国は、協定発効後にサービスやルール分野を含むより幅広い協定交渉入りに意欲を示しており、農産物市場のさらなる開放を求めてくる可能性も残されている。政府は「総合的なTPP等関連政策大綱」を改訂し、規模の大小を問わず、意欲ある農業者を支援する方針を打ち出した。国内農業の持続性が確保できる実効性ある対策の抜本的な強化が求められる。

(2面・総合)

一人で抱え込まないで 認知症の人との接し方 ―― 認知症専門ナースケアマネジャー:ブルーベル代表・市村幸美さんに聞く(3面・暮らし)【2019年12月2週号】

 家族や身近な人が認知症を発症したとき、どんなふうに接したらいいかわからない――と悩む人が後を絶たない。「認知症は、正しく理解することで不安が軽くなる」と話す、認知症専門ナースケアマネジャーの、ブルーベル代表・市村幸美さんに、基本的な心構えや接し方を教えてもらう。

(3面・暮らし)

家畜共済 2020年1月から病傷共済の補償内容を改定 診療費全体の9割を補償(5面・農業保険)【2019年12月2週号】

 畜産農家にとって貴重な資産である家畜に、病気や事故が発生した場合の損失を補うのが家畜共済。安心して畜産を経営していくうえで、加入は不可欠だ。2020年1月1日以後に共済掛金期間が始まる病傷事故の補償は、初診料を含めた診療費全体の9割を補償する形に改められる。共済掛金標準率や診療点数表なども同時に改定される。家畜共済の改正について共子さんが済太郎くんに聞いた。

(5面・農業保険)

全国優良畜産経営管理技術発表会 経営改善に成果(9面・営農技術)【2019年12月2週号】

 中央畜産会は11月25日、東京都港区で2019年度「全国優良畜産経営管理技術発表会」を開いた。各県の推薦事例から選考された8事例を審査し、最優秀賞4点、優秀賞4点を決定した。最優秀賞を受賞した酪農と肉用牛の経営概要を紹介する。

(9面・営農技術)

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 酪農◆長期計画で規模を拡大 雇用環境整備し定着化
    ヨシダファーム(北海道枝幸町)


〈写真:吉田明彦代表〉

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 肉用牛肥育◆個体観察で深夜も巡回 死廃事故が6割減
       宮崎陽輔さん(佐賀県唐津市)


〈写真:宮崎さん〉

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 肉用牛繁殖◆先進システム積極導入 平均分娩間隔377日に
       株式会社中野ファーム(鹿児島県鹿屋市)


〈写真:中野紘平取締役〉

経済政策は26兆円規模 災害対策など柱(2面・総合)【2019年12月2週号】

 政府は5日、臨時閣議を開き、経済対策を決定した。事業規模は26兆円で、台風19号など自然災害からの復旧・復興の加速や、防災・減災、国土強靱(きょうじん)化の推進など災害対策の強化を盛り込んだ。

(2面・総合)

国産果実の消費拡大へ 農研機構が「新品種マッチングセミナー」(8面・ビジネス)【2019年12月2週号】

 国産果実の消費拡大を目指し、「果樹新品種マッチングセミナー」(農研機構・果樹茶業研究部門主催)が2日、東京都内で開かれた。かんきつ、ナシ、リンゴ、クリなど農研機構が育成した新品種の試食や加工品の展示が行われた。講演では国産果実の生産・消費が減少傾向にある中で、加工・業務用需要の拡大や、簡便に食べられる品種や加工技術の開発などが必要になると報告された。

(8面・ビジネス)

自らイチゴ品種改良 ワイン販売も【北海道 12月2週号】

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 【北海道支局】自ら育種したイチゴを原料に、札幌市のワイナリーで仕込んで開発したスパークリングワイン「苺泡〈いちごあわ〉」を今年2月に発売したのは、旭川市東鷹栖の野中剛さん(40)。「辛口の味わいと濃厚なイチゴの香りに驚かれることが多いです」と話す。スパークリングワインの原料には、野中さんが育種したイチゴ「瑞の香〈みずのか〉」を使用し、糖類や着色料を使わず無添加で製造する。「デザートワインと違い、さまざまな食べ物と相性の良い味わいになっていると思います。苺泡と一緒に瑞の香を食べてもおいしいです」

〈写真:「これから広く普及して、新しい文化を築けたらいいなと考えています」と野中さん〉

町が全面協力 イチゴ2品種の特産化目指す【鳥取県 12月2週号】

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 【鳥取支局】北栄町の株式会社北栄ドリーム農場で、今期のイチゴの出荷が始まった。同社では「紅ほっぺ」と「とっておき」の2品種を生産。紅ほっぺは甘味とともにすっきりした酸味があり、ケーキなどの甘味食品と合わせるためのイチゴとして人気がある。とっておきは鳥取県が開発した新品種で、鳥取の気候の下でも育ちやすいイチゴだ。酸味が少なく実が柔らかくなりにくいので、食べ応えを感じることができる。2016年に設立した同社は、ビニールハウスの棟数を年々増やし、今期の出荷量は30トン超を目指す。出荷先は洋菓子メーカーや県内の市場などで、県外出荷も見据えている。

〈写真:「大粒で食べ応えのあるイチゴです」とパック詰めをする地域おこし協力隊の金坂真治さん〉

難局乗り越え イチゴ農家がカフェと直売【静岡県 12月2週号】

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 【静岡支局】裾野市にある「いちごの里 Berry Good!」の勝又純也さん(47)は、30アールほどで「きらぴ香」と「紅ほっぺ」を栽培する。きらぴ香は5年前に静岡で誕生した新品種。名前の通り、きらきらした宝石のような輝きで品の良い甘味と香りの良さが特徴だ。2017年にイチゴ栽培をスタート。初年度は苗に原因不明の病気が発生し生育不良に陥り、生産量は当初計画の20%ほどになってしまったという。「次年度以降がとても不安で、資金確保にも苦労しました」と勝又さん。クラウドファンディングを実施し、地域の人たちの支援もあり、目標金額を達成し、次年度以降の栽培につなげることができた。本年度から妻の晴美さんと従業員が中心となり、裾野市深良の古民家をカフェ兼直売所としてオープンした。

〈写真:イチゴの生育を確認する勝又さん夫妻〉

黒米専業農家が多彩な商品開発【新潟県 12月2週号】

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 【新潟支局】黒米や黒小豆、ブラックベリーなどのブラックフーズ(黒い食べ物)を使った商品を開発する阿賀町の奥阿賀創生事業株式会社。代表取締役の山口庫幸さん(68)は、水田40アールで黒米を栽培する黒米専業農家だ。山口さんが栽培する黒米「朝紫」は、早生の晩の品種。「コシヒカリ」などと比べると収量は少ないものの、抗酸化作用のあるアントシアニンを豊富に含む栄養価の高い米だ。商品は「黒米お赤飯」「黒米健幸茶」「黒米酢」などで、サルナシを使った酢も開発した。黒米お赤飯は、もち米と山口さんが栽培した黒米に黒小豆を混ぜてあり、炊飯器で手軽に作れる人気商品だ。

〈写真:「栄養価の高い黒米だけを栽培しています」と山口さん〉

香酸かんきつ サルの食害回避、収穫量増やす【島根県 12月2週号】

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 【島根支局】雲南市三刀屋町の原敏輝さん(65)は、果樹園約20アールでカボスやスダチなどの香酸かんきつ類を9年前から栽培する。柿やクリを栽培していた原さんの父は、サルの食害に毎年悩まされていた。原さんは仕事で赴任した香川県でカボスとスダチの苗木がホームセンターに並んでいるのを見つけた。カボスとスダチの栽培に適した気温は年平均14度以上、酸味の強いかんきつ類は獣による食害が少ない。「雲南市の平均気温も同じくらいだから良いかもしれない」と考えた。苗木を2、3本購入し、家の裏手に植えた。その後は本数を増やし、レモンやシークヮーサー、ジャバラなどの栽培も始めた。

〈写真:「獣害の不安がないので安心して栽培できます」と原さん〉

防風林「農業によるアフガン復興は続く【2019年12月2週号】」

 ▼「私たちはくわで平和を実現する」「農業復活こそがアフガン復興の礎だ」と講演などでは話したそうだ。内乱が続くアフガニスタンで、復興支援に努めてきた医師の中村哲さんが銃撃を受けて亡くなった。
 ▼面識はないが、用水路の建設や農業の普及を通じた復興への活動に注目していた。中村さんは、1986年からアフガニスタンと関わり、活動は30年以上になる。戦乱は武器では解決しないと、戦力や暴力とは無縁の人だったのに、標的にする必要はあったのか。
 ▼飲み水や農業用水を確保する事業は、大干ばつを機に2000年から始まった。難民の増加やテロ組織への参加をとめるには、食料確保が重要と考えたという。これまでに1600本の井戸を掘り、25キロにも及ぶ用水路は1万6500ヘクタールの農地を潤している。
 ▼医師の中村さんには、専門外の取り組みだが、出身地である福岡県の山田堰などを参考に、用水の安定供給を実現してきた。筑後川にある山田堰は、江戸時代初期の1663年に完成し、幾度も洪水に遭いながら再建され、今も使われている。アフガニスタンは、電力の確保や土木資機材の搬入が困難であり、建設や地元住民による維持を想定して、山田堰をモデルにしようと判断したそうだ。
 ▼今回の事件は残念でならないが、井戸や用水路は、中村さんの平和への思いとともに引き継がれていくだろう。


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