今週のヘッドライン: 2020年01月 3週号
パプリカのブランド化に取り組む福岡県田川市では、減農薬・減化学肥料栽培による県のエコ農産物認証の取得や、加工品開発などを推進する。課題は担い手の減少で、パプリカの養液栽培施設を建設して担い手育成に力を注いでいる。現在、Iターン者と地元有志グループの2組が研修に参加。試行錯誤を重ねながら、多収・高品質の栽培技術確立を目指している。
農林水産省は15日、2019年1~11月の農林水産物・食品の輸出額が前年同期比0.5%増の8234億円となったと発表した。同期としては7年連続で過去最高を更新したが、伸び率は大幅に鈍化。農産物の増加幅が縮小し、林・水産物は前年を下回ったため、政府が掲げる19年に1兆円目標の達成は困難となった。人口減少に伴う国内の需要減退が見込まれる中、国内生産基盤の強化に海外の市場開拓は重要な課題だ。政府は輸出促進に向け、今年4月に司令塔組織を同省に設置する。輸出を巡る課題に政府一体で対処し、真に農業振興につながる農産物輸出を進めていく必要がある。
農林水産省は15日、2018年の農業総産出額は前年比2.4%減の9兆558億円だったと発表した。減少は4年ぶりで、米や肉用牛などの産出額は増加したが、野菜や豚などが低下した。
2月にはスギ花粉の飛散が始まり、花粉症がある人にはつらい季節になる。特に、屋外での作業が多い農家は、花粉が付着しにくい服装や事前の服薬なども重要となる。アレルギー専門医、医学博士の清益功浩さんに対策を教えてもらった。
埼玉県桶川市で両親とともに水稲と野菜を生産する大熊陽介さん(40)は、施設キュウリ15アールで安価なセンサーや基板を買いそろえて低コストな環境制御装置を自作し、管理の効率化を試みている。出荷などでの外出中も、スマートフォンで温度・湿度などが確認でき、設定値を超えるとスマートフォンや自宅に通知される仕組みを作った。センサーや暖房など機器をつないで一元管理できる規格の「ユビキタス環境制御システム(UECS〈ウエックス〉)」を活用した。必要な機能だけを選んで追加・改良できるなどが利点だという。
農研機構は、農業用水路をヒートポンプの熱源として有効利用する研究成果を発表した。シート状熱交換器を流水中に設置すると、土中設置と比べて約15倍効率良く熱を交換できると分かった。農業用ハウスの冷暖房でエネルギーやコストの削減に役立つ。
【島根支局】サルによる農作物などへの被害対策に取り組む益田市二条地区では、地域自治組織「二条里づくりの会」(品川勝典会長)が中心となり、被害の抑止に効果を上げている。情報通信技術(ICT)を活用し、サルの目撃情報を集約した地図の作成や遠隔操作ができる捕獲檻を設置。さらに、侵入情報をもとに先回りして駆除するなど、同会と住民が一体となった獣害対策を進めている。
〈写真:「対応が予防に変わり以前よりフィールドワークは増えたが、地区のため頑張りたい」と鳥獣マップで打ち合わせをする竹田さん(左)と捕獲班の佐藤伸廣班長(69)〉
【福島支局】川内村で羊肉生産を手掛けていた吉田和浩さん(56)は、東日本大震災で避難後、牧場を再開するため土地を探し、避難先に近い田村市船引町上移で営農を再開した。現在、妻の睦美さん(32)と農場「アニマルフォレストうつしの森」で、羊約30頭、採卵鶏約350羽を飼養。鶏卵の販路拡大と羊肉のブランド化に向けて力を合わせている。
〈写真:牧場再開の土地を移地区に決めたのは「豊かな森や水に囲まれ、動物たちにとって最適な自然の環境だと思ったからです」と睦美さん〉
【愛媛支局】パパイアを栽培して地域の活性化を図ろうと、西予市宇和町下川の赤松勉さん(70)は、耕作放棄地や休耕地を利用して露地とハウスで約150本のパパイアを栽培し、それぞれの温度管理などについてデータをとっている。「管理をきちんとすれば育つし、害虫被害がないため防除は不要なので、高齢の方でも簡単に栽培が可能です」と話す。現在、道の駅や産直市で「パパイヤ乾燥果実」とパパイアの葉を乾燥させた「パパイヤ茶」を販売している。
〈写真:「まだ青い状態のときに収穫します」と赤松さん〉
【群馬支局】「赤ネギは一般にはあまり知られていない珍しいネギだが、より多くの人に味わってもらいたい」と話す伊勢崎市境下武士の倉林勝さん(73)。倉林さんは「個性のあるものを作りたい」と考え、15年ほど前から赤ネギを栽培している。赤ネギは、その名の通り根元が鮮やかな赤色で、青ネギに比べ苦味が少なく、火を通すことで甘味が増すのが特徴だ。2017年1月には倉林さんの実績が認められ、伊勢崎市の農畜産物ブランド化推進団体「伊勢崎市『農&食』戦略会議(渡部利明代表)」の後押しで伊勢崎ネギ"茜丸"としてブランド化を果たした。
〈写真:茜丸を収穫する倉林さん。1袋(2本入り)324円程度で販売〉
【大阪支局】耕作放棄地の増加に歯止めをかけようと、岬町のNPO法人「リライブ」が、貸農園や体験農園の運営に取り組み、町の魅力の発信にもつなげている。耕作放棄地の草刈りや清掃など管理を引き受けるとともに、「他の地域の人に農地を使ってもらえたら」と考え、約10アールを貸農園や体験農園に利用する。貸農園利用者を増やす策として、松尾匡理事長が発案したのがウェブ農園アプリ「リモコン農園」だ。1畝5メートルを1カ月800円に設定し、野菜を80品目用意している。会員は、ネット上で畝や野菜を選び、水やりや草取りなどの管理作業も写真で生育状況を確認しながら選んでいく仕組みだ。
〈写真:リモコン農園の実際の作業は、同法人が運営する障害者就労継続支援A型・B型事業所「いにしき」の利用者がスタッフとして担当する〉
▼阪神・淡路大震災の発生から25年の節目を迎え、マスコミ各社が特集を組んでいる。その中で震災の事実や対策の重要性などを伝えていく難しさを訴えた記事が印象に残った。震災後に生まれた世代が大学を卒業する時期となり、若手教師たちが経験のない震災の教え方に悩み、試行錯誤しているとの内容だ。
▼発災から9年になる東日本大震災の被災地でも同様の課題は出てくるだろう。三陸地方沿岸部は、何度も津波に遭い、明治以降も2度被災した。一刻も早くめいめい高台に逃げろという意味の言葉「津波てんでんこ」も伝わる。しかし、大震災の津波では、避難せずに亡くなった人も多いとされ、知識と行動を結びつける難しさが指摘されている。
▼また、阪神・淡路大震災は、災害時のボランティア活動が定着する契機となり、ボランティアへの期待と課題に焦点を当てた企画もあった。災害が相次ぐ中で、自ら被災地に駆けつけて活動するボランティアの存在が欠かせなくなっている。背景には、高齢化と過疎化で地域コミュニティーの結束が弱まり、自治体も広域化が進み細やかな対応が困難になっている実態がある。
▼課題は、受け入れ体制や活動の支援など。特に災害発生直後は情報が交錯し、受け付けが滞るなど活躍できなかった事例もある。都市部から離れた被災地では、移動手段の確保も必要だ。
▼大きな災害が頻発する昨今、過去の経験を次世代に伝え、万が一の際に生かす努力は怠らないようにしたい。