今週のヘッドライン: 2020年01月 4週号
世界三大ナッツに数えられるヘーゼルナッツの特産化を目指す、長野市の岡田浩史さん(59)は、20アールで160本の木を育てている。地元農家ら苗木の希望者には、自身の栽培経験などをまとめた小冊子を添えて、これまでに約500本を有償で提供してきた。「農業者自身が加工まで手がけることで、収益性が飛躍的に高まる」と自家産のナッツ140キロは全量、経営する「つくりたて生アイスの店 ふるフル」で使用。生アイスクリームなど独自性のある商品を展開し、6次化を実践している。
和牛遺伝資源の不正な海外流出などを防ぐため、農林水産省は今通常国会に新法案を提出する。一昨年発覚した中国への和牛の受精卵流出未遂事件を踏まえた対応で、和牛遺伝資源を「知的財産」と位置付けるとともに、不正な取得・利用に対して生産・取引の差し止め請求や損害賠償請求を可能にし、詐欺など悪質な取引は刑事罰の対象とする方針だ。和牛遺伝資源は、国内畜産振興の"要"であり、和牛の輸出拡大を図っていく上でも流出防止は欠かせない。同省は今後、法案策定作業を加速させる。生産現場の実情を踏まえた実効性ある仕組みの整備・構築が求められる。
農林水産省は22日、2020年産政府備蓄米の第1回入札結果(21日実施)を公表した。買い入れ予定数量20万7千トンに対し、落札数量は計1万5659トンと低調だった。19年産主食用米の需給が安定推移する中、慎重な対応をとる産地が多かったとみられる。ただ、備蓄米の確保は不測時の備えに加え、主食用米の消費が減少する中、米の需給安定にも重要だ。今後の産地の対応が注目される。
昨年も自然災害により、全国で農業分野に大きな被害が発生した。特に水稲はウンカや潮風害などが発生した九州地方の作況が86、中でも佐賀県で58となった。台風などにより大規模な被害も発生しており、いつどこで、どのような災害が起こるか分からない状況だ。被害に備え、農業保険に加入することは欠かせない。自然災害による被害状況や収入保険と水稲共済について共子さんが済太郎くんに聞いた。
地球温暖化の進行に伴う高温や豪雨の増加が、わが国の農業にさまざまな影響を及ぼしており、それらの影響に適応した生産技術の確立・普及が急務となっている。農研機構は21日、茨城県つくば市で"高温や豪雨に負けない農業"を目指した研究成果発表会を開催した。研究機関や大学、民間企業と連携して実施した研究成果の中から、水稲の不稔やリンゴの着色不良の対策、洪水被害軽減に貢献する水田活用について紹介する。
日本植物防疫協会は20日、地球温暖化などの気候変動による病害虫発生への影響と対応策をテーマにしたシンポジウム「病害虫被害の近未来を考える」を東京都内で開いた。ツマジロクサヨトウなど2016年以降に発生を確認した病害虫の特徴や対策を紹介。地球温暖化の進行や貿易自由化によって、国内への侵入リスクが高まっている病害虫を挙げて、早期発見・被害回避に向けた国や行政、関係団体などの協力・連携が不可欠だと強調した。
水稲「夢つくし」など5ヘクタールやハウスイチゴ30アールを栽培する、福岡県福津市のくわの農園は、同県大野城市に本拠を置くプロハンドボールチーム「ゴールデンウルヴス福岡」とスポンサー契約を結んでいる。その一環で現役選手を農業研修生として受け入れ、本年度からデュアルキャリアの実践に協力。同園の共同代表・桒野〈くわの〉由美さん(53)は「農業を選んでくれたことへの感謝を込めて、親方である私たちが一番のサポーターでありたい」と、チームの練習にもほぼ毎週顔を出すなど、営農指導者と研修生という枠を超えた関係を築いている。
【京都支局】京丹後市弥栄町でブドウ栽培と直売に取り組む山本剛さん(45)・亜美さん(36)夫妻は、「私たちのブドウへの思いを伝えたい」と対話を重視しながら販売するため、オリジナルのロゴやチラシを作ってアピールする。剛さんは以前、外国でシェフとして務めていた。ワイン好きが高じてブドウに夢中になり、一念発起して就農。6年目の現在、国営農地80アールで「シャインマスカット」「ピオーネ」を中心に10品種を栽培する。昨年8月には自宅横に販売所をオープン。「食べごろをお客さまに食べてもらいたい」と直売の魅力を話す。
〈写真:オリジナルロゴを入れた箱を手に亜美さん〉
【福井支局】県内でも特に雪深いことで知られる池田町では、収穫した野菜に稲わらをかぶせ、雪の中で冬を越す「つんぼり」という貯蔵法がある。つんぼりは、畑に半径2メートルくらいのこもを敷き、軽く土を払い葉を切り落としたダイコンなどの根菜類を、隙間なくピラミッド状に積み上げていく。その後は稲わらで周りを覆い、上から笠をかぶせ、風で飛ばされないよう縄できつく縛り完成する。わらの中で数カ月間越冬させたダイコンは、シャリッとしたみずみずしい食感で、甘味やうま味をより強く感じることができる。
〈写真:完成したつんぼりを見せる池田町農業公社の佐飛充浩次長〉
【石川支局】加賀市山中温泉大土町でエゴマを3アールで栽培するグループ「荏胡麻胡人衆」は、獣害対策と地域活性化を兼ねて、2013年に遊休地を活用してエゴマの栽培を始めた。エゴマはシソ科の一年草で、近年は健康食品として注目されている。また、エゴマの葉の独特の香りをイノシシが嫌い、野生獣の被害を受けにくく、山中温泉大土町の寒冷な気候で良質の実が取れるという。昨年11月には、同町の自然への感謝と地産地消、地域で育まれた調理法の研究を目的に、エゴマの実を使った料理を提供する「感謝祭」を開催し、大勢の人でにぎわった。
〈写真:「力を合わせてえごま料理の新メニューを考えます」と話すグループの代表・至當章さん(前列左端)とメンバー〉
【徳島支局】キクイモを栽培する美馬市脇町の三笠桂司さん(67)は、キクイモの販路拡大のため、栽培農家を集め「徳島県美馬つるぎ地区キクイモ栽培加工消費研究会」を2012年に立ち上げた。会員が栽培したキクイモは、生食用のほか、チップスやパウダーに加工し、地元の産直市やイベントで販売。全国各地からの個人注文も多いという。キクイモは雑草や病害虫に強く、植えた後は手がかからない。高齢化の進む中山間地の耕作放棄地対策としても一役買っている。収穫期は11月末~3月ごろの農閑期で、収量は1株当たり1~2キロになるという。
〈写真:チップスとパウダーの商品を手に三笠さん〉
【鳥取支局】鳥取県特産のナシ「二十世紀」の葉で作られた「なしば茶」が昨年9月、株式会社ジーピーシー研究所(米子市)の関連事業「NASHIBA PROJECT(なしばプロジェクト)」から発売された。同研究所の西田直史代表取締役は「鳥取県の特産品にして、ナシの葉もビジネスになることを定着させたい」と話す。鳥取県の二十世紀は近年、生産者の高齢化や担い手不足などで栽培面積が減少し、廃棄園が増加している。この現状を受けて、地元企業が二十世紀を守り盛り上げようと、鳥取大学が発見した二十世紀の葉に含まれるポリフェノールに着目した。なしば茶は道の駅や観光関係の店舗で販売しており、取扱店舗は増えつつある。ネットでも販売し、全国から注文が入るなど売れ行きは順調だ。
〈写真:なしば茶は「梨葉100%」「ルイボス風味」「紅茶風味」の3種類で販売〉
▼新型コロナウイルス感染による肺炎患者が急増し、中国政府は感染者が多い武漢市と近隣6市の公共交通機関を遮断し、駅・空港を閉鎖した。ただ、24日現在で日本など5カ国・地域で感染者が確認され、早期の事態収束は見通せない状況だ。
▼タイミングも悪く、中国は大型連休の春節を迎えている。1月中旬~2月中旬の約40日間で30億人が国内外を移動するとされる。海外旅行は、日本の人気が高く、訪日客も多いと見込まれている。日本政府は、水際対策の徹底に加え、感染者が出た場合の医療体制を含む対策強化を進めている。
▼訪日客の対応では、ASF(アフリカ豚コレラ)の侵入にも最大限の警戒が必要だ。特に中国は、2018年8月の初発以降、農場への感染が広がり、武漢市のある湖北省でも発生した。日本で発生が続くCSF(豚コレラ)は、アジア地域からの訪日客が持ち込んだ肉製品のウイルスが原因とみられている。ASFはCSFよりも感染力が強い。侵入を許してはならない。
▼前向きに考えれば、新型コロナウイルスの感染拡大は、水際検査などの対応に国民が関心を向ける機会になった。訪日客の入国では、発熱など本人の症状確認と合わせ、違法な肉製品の持ち込みなど検疫の徹底が望まれる。
▼国際化の進展で、病害虫の侵入リスクは高まる一方だ。被害回避には、迅速な対応と国際的な情報の開示・共有が不可欠だが、現状、中国の対応は後手としか見えない。