今週のヘッドライン: 2020年02月 1週号
今年も確定申告の受け付けがスタートする。2019年分の受け付けは、2月17日から3月16日までだ。個人経営をしている農家の場合、原則として1年間の所得を計算し、最寄りの税務署に提出する必要がある。確定申告には「白色申告」と「青色申告」があり、青色申告に取り組めば税制上の特典が受けられるほか、経営内容を数字で"見える化"し、合理化・効率化の検討にも役立てることができる。青色申告は収入保険制度の加入要件であり、青色申告の実績が1年分あれば加入できる。収入保険の加入を見据え、青色申告を始めた農家の声を紹介する。
農林水産省は1月29日、食料・農業・農村政策審議会企画部会を開き、新たな食料・農業・農村基本計画策定に向けた基本的な考え方を示した。農業・農村の持続可能性の確保には、担い手の育成・確保が喫緊の課題と位置づけ、人・農地プランを実質化し、農地の集積・集約化や経営規模・経営形態にかかわらず経営基盤の円滑な継承などを進める方針を明記した。スマート農業の導入や高収益作物の生産拡大、輸出なども推進する。中山間地域などを支える地域政策では、「関係人口」の増大など総合的な対策実施に同省が主導的な役割を果たすとした。基本計画は3月末に策定する。国民的な議論を尽くし、農業・農村の展望が見える計画の策定が求められる。
2019年度補正予算案は1月30日、参院本会議で可決、成立した。農林水産関係の総額は5849億円で、日米貿易協定の発効を踏まえた「総合的なTPP(環太平洋連携協定)等関連政策大綱」関係は3250億円を確保した。
全国指折りの米どころである新潟県は、自然災害が比較的少なく推移してきたが、昨年は猛暑の影響で米の品質が課題となった。過去に例のない災害が増加傾向となる中で、永続性のある営農のために農業保険に加入し、万が一の被害に備えることの大切さを近隣農家に伝え続けているNOSAI部長2人に話を聞いた。
ハクサイやダイコンなどを中心に冬野菜の価格が低迷している。暖冬の影響で生育が前進したことに加え、鍋物用などの需要が伸びないことが要因。2月も気温は高い見通しで、出荷量は平年を上回り、引き続き安値水準で推移する見込みだ。こうした状況から、農林水産省では「野菜を食べよう」プロジェクトをスタート。お手頃価格の野菜を使ったメニューなどを公式SNS(会員制交流サイト)で発信し、消費拡大を目指している。今後の野菜価格の見通しなど状況を整理した。
施設イチゴで、紫外線「UV―B」を活用した新たなハダニ類の防除技術が、農薬の削減や省力化に役立っている。静岡県藤枝市で高設イチゴ2.3ヘクタールを栽培する株式会社ジャパン・ベリーでは本圃の全面積で夜間照射し、薬剤散布回数を3分の1に減らせている。「薬剤で防ぎきれなかったハダニが、ほとんど問題なくなった」と代表の上山優さん(66)。葉裏にも紫外光を届かせるために部分的に反射シートを設置し、カブリダニ類などの天敵も併用する。UV―Bは、うどんこ病の抑制にも効果があり、同時防除も実現している。
「お客さまとの会話を大事にし、竹の魅力を伝えていきたい」と話す宇都宮市宝木本町の株式会社ワカヤマファーム代表の若山太郎さん(51)は、経営する約24ヘクタールの竹林に散策路などを整備し、観光農園を営業する。タケノコの収穫や竹をふんだんに使った野遊びなどの体験を提供するほか、本年度から土日と祝日の夜間に園内をライトアップする「竹あかり」を始め、年間の来園者は4万~5万人となる見込みだ。国産タケノコをメンマに加工するプロジェクトも推進し、竹の魅力発信と産業としての振興に努力している。
【愛媛支局】自家製イチゴスムージーを販売する「kaji strawberry farm」の白いキッチンカーが県内各地を走る。真っ赤な看板と大きなフォークが目印で、北は今治市、南は宇和島市まで、各種のイベントに引っ張りだこだ。西予市宇和町の梶原雅嗣さん(39)を中心に、地元の農業を守っていこうという志を持つ若手農家3人が生産・加工・販売に力を合わせている。
〈写真:「私たちが栽培したイチゴを使用しています」と梶原さん(中央)、宇都宮さん(右)、前田龍生さん(26)〉
【鳥取支局】「水稲の代替作物としてエゴマは適している」と話すのは、南部町賀野地区の「あいみ富有の里地域振興協議会」の中井義宏さん(70)。同協議会では、遊休農地の活用を目的に2016年からエゴマ栽培を推奨、現在は同地区を中心に町内約120アールの農地で作付けされている。「高齢や兼業の農業者でも取り組みやすい作物に着目した」と中井さん。エゴマは栽培にかかる労力や経費が少なく、鳥獣害や病虫害を受けにくいという。また、水稲では重要になる水源確保の必要がない。
〈写真:えごま油は町の交流施設や東京のアンテナショップなどで販売〉
【岩手支局】平泉町長島の農事組合法人アグリ平泉(佐々木正代表理事)では、2017年1月に平泉ワイナリーを設立。休耕田の土壌を改良してブドウ栽培を始め、昨年9月に初収穫を迎えた。今年2月から自家産ブドウで製造したワインを販売する。同ワイナリーの関根康之さん(47)は、ワインの出来に手応えを感じているという。
〈写真:ブドウの実と軸を分離する関根さん〉
【島根支局】冬場に供給不足になることがあるネギを、年間を通して安定供給するため、出雲市灘分町の稲田三津男さん(65)は、育苗してから畑に移植し、通常は年3~4回の収穫が、最高で6回できる移植栽培に挑戦している。ネギを栽培するハウス(19棟)以外に育苗用のハウス(1棟)を用意し、1カ月半から2カ月、苗が15センチ長になるまで育苗した後に移植機で圃場内に植え付ける。その後、30~50日で出荷が可能となり、直播栽培と比べ出荷までの期間を2カ月程度短縮できるという。
〈写真:「ネギの水耕栽培にもチャレンジしてみたい」と稲田さん〉
【福島支局】トマト「りんか」「麗月」をハウス6棟で栽培する会津若松市の眞野誠さん(47)は、加工工場と協力してトマトを使ったレトルトカレーを2018年に開発した。眞野さんは「自家産トマトをより多くの人に売り込みたい」と、自園のホームページでハウス作業の様子を動画で紹介しながら、カレーの注文も受け付けるなど、PR活動に取り組む。
〈写真:トマトカレーのパッケージ。食べ比べて味を追求し、トマトの風味を出しながら主張しすぎないカレーを目指した(写真提供=眞野さん)〉
▼包丁はなくても電子レンジはある世帯が増えているという。小腹の足しになる一品から本格的な料理まで、温めれば食べられる便利な冷凍食品があるからだ。調理の苦手な若者に加え、「包丁も火も使わず安全」と冷凍食品を利用する年配者も多いと聞く。
▼今年は、食品冷凍が始まって100周年になる。1920年に魚を凍結する工場が北海道に建てられたことが始まりだ。市販品の第1号は、イチゴとミルクを凍結した31年発売の「イチゴシャーベー」とされる。しかし、資料が残っておらず、詳細は不明だという。
▼十数年前か、居酒屋の冷凍えだまめがおいしいと思えたとき、冷凍技術の進歩を実感した。それまでは、水っぽく実離れも悪く甘さも足りない印象が強く、率先して食べたいものではなかった。えだまめに関する研究の勉強会を取材し、ゆで方や時間、冷凍方法など、企業努力の結果と納得した。
▼冷凍食品が普及するきっかけは、64年開催の東京オリンピックとされている。選手村に集まる各国代表の食材を生鮮品だけでまかなうのは困難と考え、冷凍食品の開発を進めて活用した。味の評価も上々で、ホテルやレストランに冷凍庫の導入が進み、家庭用の電子レンジの普及とともに一般家庭にも定着してきた。
▼最近は、メニューの大半が工場からの冷凍食品というファミリーレストランもあるようだ。本格フレンチの冷凍食品専門店もある。いずれ三つ星の冷凍食品が登場するかも。おふくろの味が袋入りでは味気ないが。