今週のヘッドライン: 2020年02月 4週号
栽培が難しい品種の安定生産を、情報通信技術(ICT)で支援する新しいビジネスモデルが模索されている。宮城県南三陸町入谷地区の阿部博之さん(61)は、かつて東北を代表する品種だった「ササニシキ」で、企業から技術支援や販路拡大の協力を受けてブランド復活を図る。ササニシキは県内の作付面積が約6%まで減った一方、食味の評価は高く、すし用など堅調な需要がある。2011年の東日本大震災以降、過疎化が急速に進む中で、阿部さんは「品種の物語性で注目を集め、地域に誇りを取り戻したい」と話す。
農林水産省は21日、新たな食料・農業・農村基本計画の骨子案を示した。農業の成長産業化を進める「産業政策」と、多面的機能を発揮する「地域政策」を車の両輪に食料の安定供給を図ることを基本コンセプトに位置付けた。基本的な考え方では、経営規模や中山間地域などの条件にかかわらず、農業経営の底上げにつながる対策を講じる方針を明記。具体的施策のうち、農業経営の安定化では、収入保険の普及促進・利用拡大と併せて、災害などのリスクへの対応や関連施策全体について検証。総合的かつ効果的なセーフティーネット対策のあり方を検討して2022年をめどに必要な措置を実施するとした。同省は、3月上旬にも本文原案を示す。
NOSAI全国連(全国農業共済組合連合会)は21日、JA全中や集出荷団体、全国農業会議所、日本農業法人協会などの農業関係全国組織が参加する「収入保険中央推進協議会」を立ち上げた。各地域における収入保険の加入状況や推進上の課題などについて情報を共有し、NOSAI全国連の加入推進方策などの検討につなげるのが狙い。
農林水産省は18日、自民党の農林関係合同会議に今通常国会に提出する種苗法の一部改正案を示し、了承された。育成者権者が品種登録出願時に指定すれば輸出先国や栽培地域を制限できる仕組みの創設が柱。優良な登録品種の海外流出防止などが目的で、悪質な違反行為は刑事罰や損害賠償などの対象にする。登録品種に限った適用(在来種や登録期間切れの「一般品種」は適用外)など、生産現場の混乱を招かない丁寧な説明の徹底が求められる。
「水稲が平年より8割も減収になるなんて、思いもしなかった。共済金は経営面でとても助かる」と話すのは、大分県豊後大野市清川町で農事組合法人グリーン法人中野の和田梢代表(37)。ウンカや台風、獣害による被害で、共済金の支払いを受け、再建に踏み出した。また、国東市富来〈くにさきしとみく〉の農事組合法人富来生産組合は、台風により4割ほど減収になった。石丸政人代表(68)は「過去に大きな被害は少なかったが、『備えあれば憂いなし』で加入していて良かった」と話す。大分県では、水稲の作況が85となり、約2億3千万円の共済金を支払った。二つの法人に被害の様子や水稲共済加入の重要性を聞いた。
モモなど果樹若木の主幹部に巻き付ける保護資材が、凍害の回避に効果を発揮している。岡山県農林水産総合センターが開発した。一般的に行われている「わら巻き」と比較して保温性が高いほか、手早く巻き付けできるなど作業性にも優れる。モモを栽培する岡山市北区の板野誠さん(75)は「以前は若い樹が枯れていたが、しっかり保護できているようで被害がなくなった」と話す。
NOSAI協会(全国農業共済協会、髙橋博会長)は18日、東京都内で「2019年度農業共済新聞全国研修集会」を開き、NOSAI団体の役職員ら約100人が参加した。自然災害の頻発などを踏まえ、農業共済新聞をフルに活用して幅広い農業者に農業保険制度への理解を促すとともに、経営や暮らしに役立つ情報を発信・伝達し、より深い信頼関係の構築を目指すことなどを確認した。
研修集会では、農林水産省の末松広行農林水産事務次官が「農政の課題と政策展開について」と題して講演した=写真。国内の農産物市場は人口減少や高齢化に伴い減少が見込まれる一方、世界の市場は拡大が予想されると説明。農林水産業の国際競争力を強化し、輸出産業への成長を目指した強い農林水産業の構築を急ぐ方針を強調した。
ウオーキングは、取り組みやすく人気のある健康増進法だ。徐々に暖かくなるこの季節、ぜひ始めてみてはどうだろうか。簡単にできるとはいえ、効果を高めるために気を付ける点はある。ウオーキングの基本と注意点についてレイス治療院運営本部で健康講座の講師として活動している白井健一さんに話を聞いた。
【山口支局】岩国市周東町祖生で農業に取り組む神尾辰雄さん(43)は、約10ヘクタールの田を耕作しながら、神戸市で自らが生産した食材を取り扱う飲食店などを経営している。農業を始めたのは11年前。当時開店した飲食店の経営が軌道に乗り始めたところだったため、神戸での飲食店経営と岩国での農業を両立することにした。
〈写真:「自家栽培のお米だからこそ、自信を持って提供できます」と神尾さん〉
【福井支局】「学生時代にゲノム解析を用いる研究に関わっていました」と話すのは、勝山市平泉寺町の合同会社南牧場・代表社員の南一輝さん(33)。遺伝的能力評価にゲノム解析を活用し、乳用牛42頭を効率良く飼養している。ゲノム解析には1頭当たり2万~3万円の費用がかかるが、作業は簡単で専用の器具で採材した組織を検査機関へ郵送するだけ。遺伝的能力を知ることで、後継牛を選別しやすいほか、疾病リスクの高い牛は飼料を気にかけることで疾病予防にもつながるなど利点がある。
〈写真:ゲノム解析の検査に使う専用器具を説明する南さん〉
【熊本支局】天草市河浦町立原地区の消防団員9人で構成する「天草F・group466」では、水稲16アールのほか、遊休農地を活用した高収益作物(アスパラガス7アール、サツマイモ10アール)の栽培や、地域農業の振興に積極的に取り組んでいる。グループが発足したのは2018年で、「結成のきっかけは消防団の集まりでの話題づくりでした」と上野進会長(34)。地域の高齢化や消防詰め所から見える農地に休耕田が目立っていたため、みんなで農業を始めることを決めたという。事務局を務める山﨑剛さん(41)は「県の中山間農業モデル地区支援事業に選ばれたこともあったので」と振り返る。
〈写真:アスパラガスハウスの設営。作業はアスパラガス班と水稲・サツマイモ班に分かれて行う〉
【広島支局】6ヘクタールで白ネギを栽培する東広島市八本松町の「アグリ・アライアンス株式会社(脇伸男代表=73歳)」は、2018年から連作障害の対策として、落花生60アールを試験的に作付けている。2年目には落花生の可能性について東京大学と共同研究を開始し、3年目の今年は4ヘクタールまで面積を拡大する計画だ。
〈写真:ピーナツバターと焙煎落花生を手に「農薬を使わず栽培した落花生を食べてみてください」と同社の脇智美さん〉
【滋賀支局】日野町鎌掛原産の伝統野菜「日野菜」の振興に、農家や県、町、農業団体が一体となり、生産量・加工品の販売量が伸びている。取り組みは2007年から始まった。生産拡大を推し進め、08年から10年間で栽培面積が3.9倍増え、18年の面積は6.3ヘクタール、生産量は38トンとなっている。
〈写真:日野菜を加工施設に搬入する契約農家〉
▼「ちょっとした騒ぎになっているよ」と連絡を受け、調べるといくつかニュースがみつかった。昨年実施された保安基準の規制緩和で、直装タイプの作業機を付けたトラクターの公道走行が可能になった。しかし、作業機の幅が1.7メートルを超えると公道では大型特殊免許が必要なため、農家が困惑しているという。
▼現在は、自動車学校や農耕車限定の講習会に申し込みが集中し、順番待ちの人も多いそうだ。試験場で一発合格できればよいが、ぶっつけ本番の合格率は低く、数回は通う覚悟が要る。自動車学校の受講料など経費負担もばかにならない。春作業が本格化する時期を前に、焦りを感じている農家も多いのではないか。
▼今回の規制緩和は、圃場間を移動する際に作業機を装着したり外したりしなくて済むようにした。分散する圃場を行き来することが多い水田営農の担い手には、長く待ち望んでいた対応だ。ただ、農家への案内も不十分で大型特殊免許取得が必要との意識が薄かったため、春の農作業直前に慌てる事態を招いた。
▼道路交通法は、交通の安全と円滑化を図るための法律で、すぐに見直せるものではない。行政や関係機関には、大型特殊免許の取得が円滑に進むよう支援強化を望む。面倒だからと免許を取得しないまま、作業機を付けたトラクターで公道を走ることだけは、事故防止の点からも絶対に避けてもらいたい。