今週のヘッドライン: 2020年04月 3週号
「収入保険は収入全体を補償してくれて安心だ。農業界では画期的な制度。つなぎ融資(資金)も6月中旬に申請し、7月には受け取れて助かった」と話すのは、山形県山辺町元宮でサクランボ3.8ヘクタールを栽培する株式会社多田農園の多田耕太郎代表取締役社長(65)。昨年4月下旬の低温で収穫量が平年に比べ4割ほど減ったが、収入保険のつなぎ融資を利用し、経営への影響を最小限にした。寒河江市平塩の鈴木俊一郎さん(66)も、サクランボが大きく減収したが、自然災害による被害を補償する果樹共済減収総合方式の共済金が経営を支えた。
農林水産関係の補正予算案は、(1)農林水産物等の販売促進、飲食業の需要喚起(2)農林漁業者・食品関連事業者の事業継続・雇用維持(3)農林水産物・食品の輸出の維持・促進とサプライチェーンの見直し――を柱にした。高収益作物の次期作支援交付金では、収入保険や農業共済の加入を要件に、種苗などの資材購入や機械レンタル、新品種導入などの取り組みを支援する。
総務省は先ごろ、2019年度の地域おこし協力隊の活動状況などをまとめた。隊員数は、農林水産省の交付金活用隊員数を含めて前年比で64人減の5466人となった。一方で、受け入れ自治体数は前年度比で10団体増加し、過去最高の1071団体となった。
10年先を見通した農政の指針とする「食料・農業・農村基本計画」が先月31日に閣議決定された。その中で農業の持続性を脅かすリスクへの対応強化の柱に「農業保険」が位置づけられた。全国各地で頻発する大規模災害を踏まえ、「リスクへの備えとして農業保険(収入保険及び農業共済)の普及促進・利用拡大が急務」と明記。自然災害や価格低下などに対応したセーフティーネットを拡充し、農業者の経営安定を図るとした。さらに、酪農・肉用牛、果樹、茶、花きなどの振興に向けた各基本方針にも農業保険の役割と加入促進の重要性が記述されている。
作業中の熱中症予防を呼びかける「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」(厚生労働省など)が5月からスタートする。7月を重点とし、9月末までの5カ月間実施する。農業分野でも、農作業中の熱中症による死亡者数は毎年20人前後で推移し、2008年からの10年間の死亡者数は198人となっている。7、8月に多く発生するが、5、6月もハウス内での事故があり、注意が必要だ。予防のポイントを紹介する。
農研機構・西日本農業研究センターと京都府、徳島県による研究グループは、露地や簡易施設での野菜栽培に適する低コストな環境計測システムを開発し、データに基づく栽培で増収や省力化につなげている。徳島県では、高さ1.5メートルのビニールハウス群での春夏ニンジン栽培に導入。施設内の温度変化をグラフなどで確認できるシステムを使って、管理方法の改善による保温効果を解説する栽培マニュアルも作成した。実証地では生育温度の安定につながり、地域平均よりも約1割増収した。
【鳥取支局】外食産業を中心に近年注目され、さらにSNS(会員制交流サイト)を使用する若い世代の人気を集めているエディブルフラワー(食用花)。株式会社エフ鳥取(鳥取市)は、その栽培から販売までを手がけ、食用花の普及と県内外への販路拡大を目指している。エフ鳥取の中山修代表取締役(45)はもともと市内で生花店を営んでおり、エディブルフラワーについての研究を始めたのは4年前。エディブルフラワーに関する教室が東京で開催されることを偶然知り、参加したのが始まりだったという。
〈写真:「普及のガイド役としてエディブルフラワーソムリエの資格創設の計画を進めている最中なんです」と中山代表〉
【青森支局】弘前市五代の福士章逸さん(68歳、水稲420アール)は、釣りざおを利用して製作した器具を散布機に取り付け、2人一組で行っていた水稲の薬剤散布が1人でできるようになった。福士さんが考案した散布機のアタッチメントは、釣りざおに針金で作った輪を取り付け、散布用のビニールホースを通すというもの。ビニールは散布機の噴射口につなぎ、釣りざおは噴射口のパイプにくくり付ける。最長10メートルほどまで伸び、10アール当たり5分かからないで作業を終えられるという。
〈写真:釣りざおを利用して自作したアタッチメントを取り付けた薬剤散布機と福士さん〉
【山形支局】離農した農家のパイプハウスを借りてヒョウタンを栽培し、ひょうたんランプ作りを楽しむ川西町尾長島の小形光男さん(68)。福祉施設などで制作指導をする友人の誘いでひょうたん工芸を始め、今年2月に仲間と立ち上げた「米沢ひょうたん愛好会」の代表を務めている。ランプ作りは、ヒョウタンの底を取り除き、表面に鉛筆で描いた下絵をたどりながら千枚通しなどで大小の穴を開けたり、削って型抜きしたりする。底から電球を入れて明かりをともすと、ランプの絵柄が光り、周囲の壁や天井にも絵柄が浮かび上がる仕組みだ。
〈写真:小形さんが作ったひょうたんランプ〉
【愛媛支局】トマトの産地・久万高原町で、規格外品として廃棄される「桃太郎」は、町内だけでも年間30トン以上に及ぶ。そこで立ち上がったのが県立上浮穴高校のトマト研究班。「規格外のトマトがもったいない、何かに使えないか」と考え、トマトを使った料理を課題に研究を続け、商品開発まで取り組んでいる。今年1月に「上浮穴高校桃太郎とまとハヤシソース」を商品化。地元産のトマトをたっぷり使った力強いコクとうま味、濃厚でまろやかな味が特徴だ。県内の道の駅や空港の売店などで販売している。
〈写真:先輩から引き継ぎ商品化した「上浮穴高校桃太郎とまとハヤシソース」〉
【北海道支局】広尾町中野塚地区で酪農(乳牛、肉牛合わせて112頭)を営む株式会社マドリンで、代表を務める砂子田円佳〈すなこだ・まどか)さんは、FM-JAGAのラジオ番組「十勝ウーマンフロンティア」でパーソナリティーを務めている。番組では、農業の魅力や楽しさを伝え、農業者を招き情報を幅広く発信するほか、農業に関わる女性の悩みについてアドバイスを送る。砂子田さんは「農業の魅力や楽しさを伝え、盛り上げていく一つのコンテンツになればと思っている。また、自身が成長できるような学ぶ場になればいい」と話す。
〈写真:「ぜひ聴いてください」と番組をPRする砂子田さん(写真提供=FM-JAGA)〉
▼安倍晋三首相が「緊急事態宣言」を発出し、新型コロナウイルス感染症対策は、新たな段階に入った。まずは密集・密閉・密接を避ける行動などを徹底して感染者数の増加に歯止めをかけ、早期収束が見込める状況とすることが肝要だ。
▼感染者数の増加に伴い、感染経路の特定も難しくなっている。仕事や生活のためには、全く外出しないことも困難だ。感染に備えた対応を早めに検討しておきたい。研究者などで構成する新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会は、一般向けのインターネットサイトを開設。三つの心得として「#うちで過ごそう」「#感染時に備えよう」「#戦う相手は人ではなくウイルス」を挙げ、対策の実践を呼びかけている。
▼感染への備えでは、風邪の症状や高熱が出た場合、自宅で安静にして人との接触を避け、体の回復を図るよう助言する。高齢者や持病のある人、熱が続き、だるさなど特徴的な症状がある場合には、相談窓口に連絡するよう勧めている。
▼三番目の心得も重要だ。感染の広がりとともに、感染者やその近親者、陰性が確認された人や対策に従事する医療関係者にまで差別的な言動や嫌がらせが増えているという。ウイルスを恐れる気持ちからだろうが、あまりに無節操で倫理にもとる。恐れず、慌てず、騒がず、冷静な対応がコロナ禍の克服に続く道だ。