今週のヘッドライン: 2020年04月 4週号
「研修を通じて技術や経営を学び、トマト農家としてスタートできた」と話すのは、岐阜県高山市丹生川町の野村嘉則さん(45)・美珠季さん(39)夫妻だ。ハウス18棟(30アール)でトマト「桃太郎」「麗月」を栽培する。岐阜県や高山市、農業委員会、農地バンク、JA、指導農業士会などで構成する「高山市就農支援協議会」の就農支援を受けて、昨年4月に独立就農した。トマトを中心に経験豊富な指導農業士が技術を指導し、農業簿記など将来の経営に必要な知識を学ぶ場もある。独立後も、経営改善に向けた支援体制が充実。2012年の協議会設立から、188人が就農した。
中山間地域等直接支払制度の第5期対策(2020~24年度)が始まった。今期は10割単価の対象となる体制整備の要件を、協定参加者の話し合いで農地を含む集落の将来像などを示す「集落戦略の作成」に一本化した。また活動継続ができなくなったときの交付金返還措置では、遡及〈そきゅう〉返還の対象を協定農地全体から当該協定農地に緩和した。中山間地域の農業は、耕地面積の4割、総農家数の4割を占め、食料の安定供給だけではなく、国土保全や景観など多面的機能を発揮する場として大きな役割を担う。農家らが描く将来像の実現に向けて、現場が活動しやすいよう後押しが必要だ。
和牛遺伝子の不正流通防止に向けた関連2法案、「家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律案」と「家畜改良増殖法の一部改正案」が17日、参院本会議で可決、成立した。
不正競争防止法案は、和牛遺伝子を知的財産として保護の対象に位置付け、第三者の不正な利用・取得に対して、生産・取引の差し止め請求や損害賠償請求を可能にし、詐欺など悪質な取引は刑事罰の対象とする仕組みを創設する。家畜改良増殖法改正案は、家畜人工授精所などでの在庫・帳簿管理や業務状況の定期報告の義務化などを規定する。
「家畜共済は酪農に欠かせない。払った掛金以上に診察してもらっていると思う」と話すのは、神奈川県藤沢市石川でNOSAI部長を務める須田裕〈ゆたか〉さん(66)。43頭の乳牛を飼養し、NOSAI獣医師の重要性を強調する。秦野市北矢名の平井修二さん(77)は、地域でトラクターの盗難が多発した経験から、「転ばぬ先のつえとして加入していれば安心。普段は意識しないが、万が一のときに助かる」と農機具共済を推進する。
農林水産省は1日、在来作物など地域資源の活用によるSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みを促す「環境のための農山漁村×SDGs ビジネスモデルヒント集」を公開した。環境問題への対応は、農林水産業・食品産業の持続的な成長と発展に不可欠な要素と捉え、五つのビジネスモデルを示し、それぞれ実践事例や事業性を高めるヒントを整理した。
滋賀県野洲市で有機JAS認証などを含め水稲38ヘクタールを栽培する「中道農園」代表の中道唯幸さん(61)は、本田の雑草防除で、土づくりや育苗などの栽培技術に加え、乗用型除草機の利用を組み合わせて安定した効果を得ている。「最近の除草機は性能が優れている。一方で、効果を発揮させるには条件を整えるのが大事」と中道さん。抑草資材を兼ねた油かすを施肥するほか、ぼかし肥施用などで雑草が発芽しにくい土壌環境につなげる。茎が太く頑丈な中苗を育て、機械除草での収量への影響を抑える。
【岡山支局】瀬戸内市邑久町の武久農園(ハウス6棟)・有限会社グリーンサム代表取締役の武久修さん(47)は、ハウストマトの環境を遠隔地から監視、灌水・施肥・換気・加湿などを自動制御できる管理機「テレグローリー」を製作した。製作に当たっては、新たに開発した「遠隔操作・AI(人工知能)システムAWC(AI Wether water Control)」を使用し、同市牛窓町のハウスに導入。収量は前年同期対比186%、高糖度トマトが安定生産できるようになった。
〈写真:テレグローリーでハウス内を管理する武久さん。AWCは今年1月に特許に認定された〉
【静岡支局】「農業分野で三島市箱根西麓地区を盛り上げたい」と話すのは、「箱根西麓のうみんず」の前島弘和代表(36)。30代の農家6人で構成し、各メンバーが作付ける主品目とは別に、共同でロメインレタス1.4ヘクタール、ミニハクサイ1.4ヘクタールを栽培する。結成は2015年で、「新しい作物を共同で作ることで、産地をPRしようと考えました。ロメインレタスとミニハクサイは、主品目に影響の少ない時期に共同で栽培できる作物として選びました」と前島代表。
〈写真:後列左から中村嶺志さん(33)、内藤和也さん(31)、川崎耕平さん(32)、小林宏敏さん(30)、前列左から宮澤竜司さん(35)、前島代表〉
【熊本支局】「耕作放棄地を少しでも減らせればと思い、センダンの植林を始めました」と話すのは、天草市倉岳町で水稲60アールを栽培する金子孝二さん(62)。県天草広域本部が耕作放棄地解消を目的に取り組む天草センダンプロジェクト事業を活用し、耕作放棄地となっていた中山間地に所有する50アールの田畑に、苗木250本を2018年3月に植林した。センダンは近年、家具材として使われる。「30センチほどの苗木だったが、2年で4メートル近くまで成長した」と金子さん。15~20年で直径30~40センチに成長し製材に利用できる。
〈写真:成長したセンダンと金子さん。今後も耕作放棄地での植林に取り組む〉
【長崎支局】自動車や農機具の修理、鈑金、塗装業を営む西海市西彼町の松富勝博さん(59)は、イチゴの高設栽培を行う農家の要望を受け、収穫後の根を除去する器具「スットルベリー」と、苗の植え付け時に穴を開ける器具「植え付けビット」を製作した。器具は電動ドリルに取り付け、スイッチを押しながら根に向けて押し込むだけ。利用する農家から「作業時間は以前の3分の1以下で済み、何より労力が減り助かっている」と好評だ。
〈写真:「取り付けも簡単にできますよ」と松富さん〉
【高知支局】ユズの産地で知られる北川村では、2018年から始まった基盤整備事業で、規模拡大を目指す農家や新規就農者が農地を確保し経営安定を目指している。その一人で地域から期待されている平岡大助さん(35)も、ユズの定植作業などに取り組む。ユズの産地を守り専業農家を育成・確保する村の振興ビジョン「北川モデル」が進んでいる。
〈写真:「今年の3月に130本を定植したが、水はけが悪かったので畝を高くした。鳥獣害の心配もあるので、樹木はしっかり育てたい」と平岡さん〉
▼事務所から皇居の半蔵門までは徒歩で5分ほど。お堀に面して桜などが茂る公園が整備され、よい散策コースだ。今年は新型コロナ禍のため、シートを敷いての花見は自粛となったが、歩く人やベンチで昼食をとる人は多い。
▼散策での楽しみがある。江戸東京・伝統野菜研究会会長の大竹道茂さんに教わったハマダイコンの観察だ。桜田門から半蔵門周辺にかけて、お堀の土手を覆う黄色い菜の花に混じり、菜の花に似た白い花の一帯がある。それがハマダイコンだ。
▼栽培種と同じアブラナ科ダイコン属で全国の海岸などに自生する。鎌倉では「鎌倉大根」と名付けてブランド化された。大竹さんは、徳川氏による江戸の都市づくりが始まるまで海岸が迫っていた歴史を踏まえ、「江戸城濠〈ほり〉大根」としてブランド化を構想する。
▼ダイコンと同様に根を食べることができ、実ざやもおいしいと聞き、様子を見てきた。お堀は立ち入り禁止だが、こぼれ種で広がっただろうハマダイコンが道路脇にも多い。
▼実ざやを軽く湯がいて試食する。ダイコンの香りとしゃきしゃきの歯触りが程よい。春を感じられる味だった。