今週のヘッドライン: 2020年05月 1週号
熊本県阿蘇郡市7市町村には約2万2千ヘクタールの草原が広がり、カヤ類などの野草が、千年にわたって農畜産業に活用されてきた。同郡市の農業者19人で構成する、阿蘇草原再生シール生産者の会(市原啓吉会長=70歳、阿蘇市、あか牛繁殖8頭など)では、除草機が入れない傾斜地を中心に年間延べ50ヘクタールの野草を刈り、堆肥にしたり畜舎の敷料にしたりする。野草を活用して作った農産品には同会独自のブランドを示すシール=中段写真=を貼り、道の駅などで販売するほか、県内各地と福岡県でのイベントに出展。活動を通じて景観や植生維持に貢献している。
収入保険は、農業者の経営努力では避けられないリスクによる収入減少を補償する保険制度で、新型コロナウイルスの感染拡大や防止対策を原因とするほとんどの場合を補償する。
一斉休校で学校給食に納品できなくなった、イベントの自粛による出荷の停止、観光農園や直売所の客足の減少や休園のほか、外国人実習生の未着や帰国、感染拡大防止のため従業員を休ませた場合などが対象だ。
新型コロナウイルスによる収入減少に対し、無利子のつなぎ融資の貸し付けも始まり、加入者の経営を支えている。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止の対応に伴う影響で、生乳需給が緩和状況に陥っている。学校給食の休止に加え、緊急事態宣言の拡大を受けた飲食店などへの休業要請で、生乳生産の5割強を占める業務用需要が大幅に減少した。乳業メーカーでは、長期保存できるバターやチーズ、脱脂粉乳などへの仕向けに変更している。しかし、6月にかけて生乳生産が増加する時期を迎える中で、製造処理能力を超過すれば、行き場を失った生乳の発生が懸念される。緊急事態宣言が延長された場合は、さらに厳しい需給状況となり、生乳廃棄という最悪な事態を招きかねない。牛乳・乳製品の消費拡大へ向けた官民挙げての取り組み強化が急務だ。
総務省の過疎問題懇談会(座長=宮口侗廸〈としみち〉早稲田大学名誉教授)は4月17日、過疎地域自立促進特別措置法の期限(2021年3月末)を踏まえた新たな過疎対策の提言をまとめた。人口減少の加速など取り巻く環境が厳しさを増す中で、「過疎地域の持続的な発展」を理念に掲げた制度の構築を提起した。
提言では、新たな理念の実現に向けた目標として、(1)地域資源を生かした内発的発展(2)住民の安心な暮らしの確保(3)条件不利性の改善(4)豊かな個性の伸長――の四つを掲げた。
春の農作業が本格化するこの時期、手間がかからず、すぐに調理できるどんぶり料理で元気をつけよう。時短料理にも詳しい料理研究家・台湾料理研究家の小河知惠子さんに、おいしく楽しいどんぶり料理を提案してもらった。
もち性大麦(もち麦)の健康機能性への期待を背景に、需要拡大に対応して国内生産量が急増している。2019年産の検査数量は8580トンと前年産比3.5倍に伸びた。生産拡大を支えるのは、多収や耐病性、機能性の高さなど備えた新品種だ。農研機構や公設試などで次々と開発され、北海道から九州まで普及が進んでいる。
【秋田支局】収入保険の保険期間が令和元(2019)年の加入者に対し、保険金の支払いが始まった。病気やけが、市場の価格低下による収入減少が支払いの対象となり、既存の農業共済制度より一歩踏み込んだセーフティーネットとしての効果を発揮し、存在感を高めつつある。さまざまな事情で支払いを受けた加入者の中から、東成瀬村の佐々木省吾さん(71)に制度の評価などを聞いた。
〈写真:「後継ぎはいませんが、保険金をもらって栽培を続けていますし、施設を整えていますので、継承させたいと思っています」と佐々木さん〉
【広島支局】トウガラシ栽培に励む庄原市東城町の吉岡紘さん(39)は、「吉岡香辛料研究所」の代表を務め、「激辛トウガラシ」で地域の活性化を目指している。現在、77.9アールの農地で「鷹の爪」や「ハバネロ」「ジョロキア」など8種類のトウガラシを栽培。収穫したトウガラシを乾燥し、一味唐辛子に加工。道の駅や地元の商店で販売するほか、全国各地の業者からも注文を受ける。加工しないで茎についたままのトウガラシを園芸用として販売したり、他業種の企業から声がかかりオリーブオイルや魚介とコラボレーションしたりと、新商品の開発を進めている。「食用だけではなく、防虫剤、獣害対策への活用も期待できる」と吉岡さん。
〈写真:乾燥したトウガラシを粉に加工する吉岡さん。粉末が肌に触れないようマスクと手袋をして作業する〉
【鹿児島支局】「休みなしで毎日働いて、大変だなと思う」と話す伊佐市菱刈の山口玲くん(9)。弟の瑞生くん(6)、皇莉くん(5)と共に、繁殖牛40頭、育成牛10頭、子牛26頭の飼養と水稲6ヘクタールを栽培する父の敏久さんと母の美紅さんの作業を手伝う。「子牛がかわいい」と両親の作業を見よう見まねで手伝い始めた玲くん。現在は、子牛のミルクやりや通路の清掃、ボロ出しなどを頑張っている。
〈写真:牛にミルクを与える皇莉くん(左)、玲くん(中央)、瑞生くん〉
【岩手支局】奥州市江刺伊手の株式会社菅野農園では、障がい者施設の利用者に農作業を依頼し、従業員の労力低減を図り、果樹の品質向上につなげている。同園では、従業員16人でリンゴ6ヘクタール、モモ1ヘクタールをはじめ、プルーンや西洋ナシなどを30アールで栽培。菅野千秋代表取締役(46)は「従業員だけでは農繁期に手が回らないこともあり、福祉施設に勤めている友人に勧めてもらった」と話す。2016年から、奥州市内の福祉施設2カ所を通して、障がい者施設の利用者に農作業を依頼している。
〈写真:剪定した枝を集める施設利用者〉
【山形支局】オウトウ26アールを栽培する長井市成田の石塚虎雄さん(76)は、「散水氷結法」の原理を利用した散水施設を2006年から導入し、春先の凍霜害に備えている。散水氷結法は、凍霜害を受けるような気象条件の下で散水し、枝幹に付着した水滴が氷結する際に放出する潜熱を利用して花芽を摂氏0度前後に保ち、凍霜害から守るというもの。石塚さんは、園地の出入り口近くに掘った井戸からポンプで地下水をくみ上げて水を確保し、オウトウの列ごと地上約4メートルの高さにパイプをつなぎ、5メートル間隔に取り付けたバルブから散水している。
〈写真:散水によるオウトウの凍霜害対策に取り組む石塚さん〉
▼沖縄県の南大東島からラム酒を取り寄せた。サトウキビの搾り汁から製造するアグリコールという種類だ。沖縄産ラム酒造りを志し、奮闘する女性を描いた原田マハさんの小説『風のマジム』を読み、味わいたくなった。現在は社長を務める実在の女性がモデルだ。外出自粛の大型連休に楽しみたい。
▼新型コロナウイルス感染症対策で、緊急事態宣言が全国に発令される状況となり、学校給食や外食産業向けの食材需要が大幅に減少し、生産者にも影響が及んでいる。牛乳・乳製品の需給バランス改善へ、農林水産省は「プラスワンプロジェクト」を始めた。もう1杯、もう1パックの消費を訴える。
▼一方で東京オリンピックパラリンピックに向けたインバウンド(訪日外国人)需要なども期待された和牛などのブランド食材は、かつてない窮地に立つ。宴会自粛や飲食店の休業増加で相場下落と在庫積み増しの二重苦に直面する。
▼ただ、レジャーなども軒並み自粛となり、通販でのブランド食材購入など非日常を楽しむ家庭も増えているそうだ。ポイント付与や基金への寄付など応援企画を始める通販サイトもある。連休中は、食べて飲んで互いに応援しよう。5月10日の母の日は、感謝の花も忘れずに。