今週のヘッドライン: 2020年06月 1週号
個人経営のレストランなどに販路を絞り、西洋種を中心に年間100種類以上の野菜を生産・出荷する長野県安曇野市堀金三田の信州ゆめクジラ農園(三吉雅子代表、47歳)。地域の高齢農家などに生産への協力を呼び掛け、現在20戸以上が参画する。各農家の経営や体力などに合わせて栽培を委託することで、営農意欲を促し、地域農業の維持に貢献する。新型コロナウイルスの感染拡大による取引先の休業などが影響し、出荷数は一時的に大きく落ち込んだが、シェフの協力による個人への直販なども手掛け、困難の克服に懸命だ。
Jミルクは5月27日、2020年度の生乳と牛乳乳製品の需給見通しを発表した。全国の生乳生産量は、19年度比101.4%の746万3千トンとなり、2年連続で増産すると見込む。ただ、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、需給と流通は想定外の困難に直面している。緊急事態宣言の解除後は、学校給食や飲食店の再開による業務用需要の高まりが予想される一方、都府県では生乳生産量が落ち込む夏場を迎えるため、需給基調が緩和からひっ迫に転じる恐れもある。酪農乳業一体で需給調整に取り組むとともに、牛乳・乳製品の安定供給に直結する生産基盤の強化が急務だ。
政府は5月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、一般会計歳出総額を31兆9114億円とする2020年度第2次補正予算案を閣議決定した。雇用調整助成金の拡充や資金繰り対応の強化、地方創生臨時交付金の拡充などを措置する。
「収入保険の保険金を受け取り、経営が守られていると実感した」と話すのは、青森県つがる市牛潟町で水稲や野菜の複合経営を営む鳴海晋さん(57)。高温など天候不順による収穫量の減少のほか、価格も低下したことで、平年より3割ほど収入が減少した。2019年1月から保険期間が始まった収入保険制度導入1年目の保険金の支払いは、災害多発などを背景とし、加入者からの保険料全体を大きく上回る額が支払われる見通しだ。収入保険は、つなぎ資金や保険金等支払いによって全国の加入者の経営を力強く支えている。
まもなく梅雨本番。住まいのカビは、浴室などの水回り以外に、押し入れやげた箱なども注意が必要だ。室内のカビ対策について、生活哲学学会会員で収納カウンセラーの飯田久恵さんに解説してもらう。
施設園芸では、低コストに幅広い病虫害・雑草の防除ができる土壌の太陽熱消毒が普及している。しかし、天候の影響を受けやすく、安定した効果の確保が課題だ。宮崎県では、事前の施肥・耕起など作業手順の見直しによって効果を高める「陽熱プラス」を普及する。また、微生物の急激な増殖による酸欠状態を防除に利用する「土壌還元消毒」など、薬剤以上の効果を示す新技術も開発されている。
【山形支局】「全国の医療従事者の方々にうちのサクランボで少しでも笑顔になってもらえれば」と話すのは、株式会社中川果樹園(寒河江市六供町)の中川顕太朗〈けんたろう〉さん(39)・由貴〈ゆき〉さん(32)夫妻。新型コロナウイルスと闘っている全国各地の医療従事者に、自分たちが栽培するサクランボを届けるプロジェクトに現在取り組んでいる。現在は、医療従事者の知人などを通じて、東京や大阪、愛媛などの医療機関に状況を確認しながら計画を進めている。より多くの人にサクランボを食べてほしいという思いから、今年は例年以上に授粉作業に力を入れ、収量を増やそうと努めているという。
〈写真:サクランボの結実状況を確認する中川さん夫妻〉
【岩手支局】サクランボ栽培に力を入れる盛岡市手代森の合同会社田屋果樹園(田屋富士男代表=65歳)では、サクランボ狩りを毎年開催している。今年は新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じて開く予定だ。地元産果樹のおいしさを多くの人に知ってもらおうと、栽培に励んでいる。現在は息子の祐樹さん(35)とともに、約3・5ヘクタールの園地でサクランボやリンゴ、ナシ、モモなどの果樹を中心に栽培。サクランボは「佐藤錦」や「紅秀峰」など、10種類ほどを手掛ける。田屋代表は「新型コロナウイルス感染症の影響で、サクランボ狩りは開催見合わせも考えたが、緊急事態宣言の解除や県内の動向を踏まえて、開催を決めた。少人数の予約制にして混雑を避け、感染予防対策を万全にして、お客さまを迎えたい」と話す。
〈写真:「お客さまが安心してフルーツ狩りを楽しめるよう、感染症予防対策を万全にしたい」と話す田屋代表(右)と祐樹さん〉
【栃木支局】宇都宮市川田町で水稲「コシヒカリ」「あさひの夢」など7ヘクタールと二条大麦9ヘクタールを栽培する戸崎勇丞さん(35)は、今年4月に「南部地区ドローン組合(フライワークス)」を立ち上げ、代表に就任した。農業用小型無人機(ドローン)で市南部の農薬散布を請け負い、地域農家の軽労化を目指す。組合員は横川地区、瑞穂野地区、雀宮地区の15人。「半数近くは私が散布を請け負っていた方。私のドローン防除を見て興味を持ってくれました」と戸崎代表は話す。対象は水稲と麦。組合では農薬散布を10アール1500円で、除草剤散布を10アール当たり1キロ剤1500円、同3キロ剤2500円で請け負う。農薬代は依頼者が実費負担。ドローン購入時に助成を受けられるよう、宇都宮市と協議中だという。
〈写真:農薬を散布する戸崎代表。「騒音が少なく時短にもなります」〉
【広島支局】定年退職後に、ハウス2棟(9・7アール)でアスパラガスの栽培を始めた久保勤さん(77歳、世羅町)は、ハウスを設置した当初から園芸施設共済に加入している。「特に台風が怖い。風や雪でハウスが倒れたときのことを心配して加入した。『守り神』のようなもの」と話す。久保さんは、風でビニールが破れる被害で、共済金の支払いをこれまで2回受けている。「ビニールはだんだん弱くなっていって、ちょうどその時に風で破れた。共済金をもらって助かった」。被害が小さく支払いの対象にならない事故もあったというが、毎年欠かさず加入し、災害へ備えている。久保さんのハウスの奥行きは86メートル、94メートルと長いため、3~4メートルほどの間隔で木の支柱を立てて補強した。「長いハウスは風や雪で壊れやすいと言われたが、作業効率を考え、譲り受けたままのサイズで建て直した。自分たちで作業したので経費も削減できた」。さらに、風通しを良くするために入り口を大きくしている。
〈写真:「被害があるのは良くないが、補償してもらえるのは安心」と久保さん〉
▼新型コロナウイルス対策による外出自粛が続き、いわゆる"巣ごごもり消費"で食品の需給にも影響が及んでいる。今は落ち着いてきたが、一時はスーパーから米や乾麺などが消え、冷凍食品なども品薄になった。最近はバターの家庭消費が急増し、欠品が生じている。
▼農林水産省によると、4月下旬~5月上旬の家庭用バターの販売個数は、前年比で6割ほど増加した。家庭でバターを使った菓子や料理をつくる機会が増えたことが要因という。外出自粛によるストレス解消の意味も含め、家族で作業でき、楽しめる菓子や料理づくりが歓迎されたのだろう。
▼健康維持の基本は食にあるはずだが、実際には朝食の欠食や孤食など家庭の食にも課題が多い。サザエさん一家のように、家族で食卓を囲み、話し合う団らんの時間を過ごす家庭はかなり減っているそうだ。
▼新型コロナの感染防止では、「3密」回避を基本とした新しい生活様式の実践は必須で、テレワークなど在宅勤務も増える見通しだ。ちゃぶ台がなくても実践できる"新しい団らん"を模索し、家族で語らい食生活を豊かにする機会としたい。