今週のヘッドライン: 2020年06月 2週号
農産物直売所や飲食店などを併設した静岡県三島市の「伊豆・村の駅」を運営する株式会社村の駅(瀬上恭寛代表取締役社長=45歳)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で経営に打撃を受けた農家を支援しようと、インターネットで資金を募るクラウドファンディングを実施。看板商品のトウモロコシを返礼品とし、200人以上から100万円を超える支援金が集まっている。支援金は生産者と協力して進める「とうもろこしプロジェクト」の継続と、野菜や米など通販用の詰め合わせ「農家さん応援ボックス」の費用に充てる。
死傷事故が多発している農林水産業・食品産業の作業安全確保へ、農林水産省は2日、業種横断的な規範作りに向けた議論を開始した。個別経営体・事業者団体が取り組むべき基本的な事項や共有すべき認識をまとめる「共通規範」に加え、農業や食品産業など各業種ごとの具体的な「個別規範」を策定する。現場での安全対策の推進を図ることが狙いだ。個別規範の考え方に基づいた安全対策を補助事業の要件にする方針も示した。農林水産業・食品産業は、事故が発生しやすいとされる建設業以上に事故率が高く、事故の減少とともに産業全体の経営発展につなげていくことが重要だ。
法務省出入国在留管理庁は5月29日、3月末現在の特定技能在留外国人数(速報値)を公表した。総数3987人のうち農業分野は686人で、全体の17.2%を占める。特定技能制度は国内の人手不足解消を主たる目的とし、2019年4月に導入された。農業分野は5年間で最大3万6500人の受け入れを想定したが、進んでいない結果となった。
東京都足立区舎人で年間で野菜約30品目を栽培する大熊農園(ハウス15棟、40アール)の大熊貴司代表(48)は、エダマメをハウス栽培して5月上旬から収穫。妻のめぐみさん(47)や両親と共に経営する直売所の目玉商品としている。営業は月~土曜日の午後3時半から6時ごろまでで、週に100~130人が訪れる。栽培や販売の状況はパソコンで管理して作付け計画に反映し、適切な管理ができるよう施設の改良にも余念がない。販路の多様化を進めて余剰品の発生を防ぐなど、経営の安定に努めている。
新型コロナウイルスの影響で牛乳や乳製品の需要が減少し、農林水産省では、牛乳やヨーグルトを普段より1本多く消費することを推進する「プラスワンプロジェクト」を実施している。暑くなるこの季節、牛乳を使ってアイスクリームを手作りし、酪農家を応援しよう。料理研究家の島本薫さんに作り方を聞いた。
動力噴霧器やブームスプレヤーによる防除では、作物以外へのドリフト(飛散)を抑える「ドリフト低減ノズル」が、薬液の無駄をなくし、防除効果の向上や資材費の低減にも効果的だ。従来の霧状の散布に比べ、薬液を作物に効率良く付着させるため、半分の施用量で同等以上の効果が確認された事例もある。効果の十分に生かすには、適切な散布圧の調整や時間帯など基本技術も重要となる。
【山梨支局】新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言が解除され、サクランボの収穫期を迎えた南アルプス市。観光園を営む農家や同市観光協会は手探りで「新しい生活様式」による観光園の運営を模索している。同市百々でサクランボとモモの観光園を経営する西村農園の園主・清水忠彦さん(45)は「観光園を中止すると経営にも影響が大きいし、その分をJAに出荷すれば、元々JAに出荷していた農家の価格を下げてしまうことになる。5月末の現段階では対策をして営業できるよう準備している」と話す。
〈写真:「観光園はお客さんの顔が直接見えるのがいいところ」と清水さん。5月末現在の予約は例年の3分の1程度という〉
【三重支局】松阪市西黒部町の有限会社喜多村アグリ(喜多村浩嗣取締役=42歳、水稲100ヘクタール、麦40ヘクタール、大豆50ヘクタール)では、水稲の収穫後に石灰窒素を散布し、苗の移植直後には落水して、スクミリンゴガイ(以下、ジャンボタニシ)による水稲苗の被害を軽減した。「ジャンボタニシは泥状の地表を滑るようにして動く。数が増えてくるのも土が軟らかいためだ。だから苗の移植直後にあえて水を落とし、一時的に土を乾燥させ固める。表層が固いとスムーズに動くことができず、地中の個体も出て来にくくなる」と喜多村取締役。「苗が枯れてしまっては元も子もない。だから天候も加味しながら、入れる水の管理を注意深く行っている」と説明する。
〈写真上:昨年の被害田〉
〈写真下:対策を施した今年の田〉
【山口支局】「県内ナンバーワンのトマト農家を目指しています」と話すのは、株式会社宮村農園の代表取締役を務める宮村真也さん(36)。サラリーマンとして9年間働いた後、5年前に就農した。現在は山口市に居住し、車で30分かけて同市阿東にあるハウス18棟でトマトを栽培する。今年1月には株式会社を立ち上げた。園芸施設共済には2017年から加入。「保険を使ったことはありませんが、何か起きたときのことを考えると心強いです」と宮村さん。近年、各地に台風が上陸し、被害をもたらしている。備えを万全にすることで、安心して農業に取り組めるという。会社の設立に併せて収入保険にも加入。「収量の減少や市場価格の低下など、補償の幅が広い点が魅力です。過去4年の実績が使えることも加入の決め手となりましたね」と、さらなる補償の拡充を図る。
〈写真:「上手に作ってこそプロの農家だと思う」と宮村さん〉
【長崎支局】キク80アールを栽培する佐世保市高花町の久田浩嗣さん(39)は、タマネギ移植機を活用してキクの移植を効率化した。2人体制で30メートル約700本を手植えするのに1時間弱かかっていたが、タマネギ移植機を使って5~6分まで短縮したという。キクは専用移植機でも移植できるが、1条または2条植えが主流のため、作業効率がキク移植機の2倍となるタマネギ移植機の4条植えを使用。タマネギ移植機は株間が11センチとキク移植機より間隔が狭いため、キクに合わせて15センチと株間を広げた機械を使った。「作業効率が上がって体の負担が少なくなり、とても楽になっています」と話す。
〈写真:キク移植用に改良されたタマネギ移植機を使用。作業効率が向上し体の負担も軽減したという〉
▼江戸東京野菜やなにわの伝統野菜など、地域に伝わってきた在来野菜を掘り起こし、新たな特産品に育てる取り組みが各地に広がっている。認証数は、全国28地域で約700品目との報告もある。
▼戦後の高度成長期は、大量生産・大量流通の波に飲まれ、野菜も統一規格に合う品種が重宝され、そろいが悪く、育てにくい在来品種は表舞台から姿を消した。現在まで伝わったのは、味の良さなどで自家用に残してきた農家がいたためだ。
▼地方に出向く際は、時間があれば直売所に立ち寄るようにしている。地域ならではの農作物や加工食品を求めるのだ。くせが強い漬物などもあるが、ほかの地域にはない食材との出合いが楽しい。
▼収穫物や加工品の販売だけではない。栽培や収穫を楽しむツアーや、料理人と組んで新たなレシピづくりなど多様な展開も生まれている。地域に伝わってきた伝統野菜は、地域の未来を開く新たな財産にもなる。関心を持って地域を探せば、さらに見つかる可能性はある。