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今週のヘッドライン: 2020年06月 3週号

嬬キャベ海外協力隊プロジェクト 支え合いで前進 ―― NPO法人自然塾寺子屋(群馬県甘楽町)(1面)【2020年6月3週号】

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 新型コロナウイルス感染症のまん延は、外国人技能実習生らが来日できない事態を招き、多くの農業経営体や産地が人手不足に陥っている。群馬県甘楽町に本拠を置くNPO法人自然塾寺子屋(矢島亮一理事長、55歳)は、夏秋キャベツの出荷量が50年連続日本一の同県嬬恋村のキャベツ生産の一助になろうと「嬬キャベ海外協力隊プロジェクト」を企画。政府の出入国制限措置を受けて、任期途中で緊急帰国したJICA(国際協力機構)海外協力隊員ら5人を1次隊として五つの経営体につないだ。7月中旬までに、合計20人程度の隊員の橋渡しを見込んでいる。

(1面)

〈写真:定植して1カ月のキャベツ畑を前に矢島亮一さん(右)と1次隊員の餅原嵩(しゅう)さん〉

19年度農業白書を閣議決定 女性農業者を初めて特集(2面・総合)【2020年6月3週号】

 政府は16日、2019年度食料・農業・農村白書を閣議決定した。特集では「輝きを増す女性農業者」と題して男女共同参画社会基本法施行から20年を機に女性農業者の動向や課題などを取り上げた。女性の認定農業者数は、1999年の2千人から2019年には1万1千人と5倍に増加し、割合も1.6%から4.8%と3倍に増えた。農村女性による起業数も1997年度と比べて2倍以上になっている。農業・農村の持続的な発展には、女性が働きやすく、暮らしやすい農業・農村の環境整備の推進が重要だと訴えた。

(2面・総合)

過去最大の2次補正予算成立 経営継続の支援が柱(2面・総合)【2020年6月3週号】

 補正予算としては過去最大となる、一般会計歳出総額31兆9114億円の2020年度第2次補正予算が12日、参議院で賛成多数により可決、成立した。うち農林水産関係の総額は、農畜産業振興機構(ALIC)事業108億円を含む総額658億円。
 新型コロナウイルスの感染拡大への追加対策として、経営継続に必要な新規補助金や資金繰り支援を柱に据える。

(2面・総合)

ため池特措法が成立 防災工事を計画的に推進(2面・総合)【2020年6月3週号】

 防災重点農業用ため池の防災工事などを促す議員立法「防災重点農業用ため池に係る防災工事等の推進に関する特別措置法」は12日、参院本会議で全会一致で可決し、成立した。
 ため池の決壊による水害などから国民の生命・財産を守るため、防災工事などの集中的、計画的な推進を図る。

(2面・総合)

関係団体とNOSAIが協定 幅広い農家に制度を普及(3面・農業保険)【2020年6月3週号】

 近年全国各地で自然災害による大きな被害が発生するなか、NOSAIは、リスクへの備えとして農家の経営を守る農業保険の普及の強化に努めている。地域のJAや農業会議所、資材販売店などの団体と協定を締結し、協力して普及にあたるNOSAIが増加中だ。協定締結団体の構成農家などに説明会を開催して農業保険の内容や機能を説明し、新規に加入した事例も多い。団体との連携協定締結について稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・農業保険)

長ネギ・昨年の台風19号 圃場水没から回復 春の出荷を実現 ―― 後藤貴一さん(千葉県柏市)(7面・営農技術)【2020年6月3週号】

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 ネギ1ヘクタールなどを栽培する千葉県柏市布施の後藤貴一さん(33)は、昨年10月の台風19号で作付け圃場が冠水したが、排水後に酸素供給剤の施用と殺菌剤による防除、液肥散布の三つの対策を組み合わせて生育を回復させた。周囲のネギ農家が収穫皆無となる中で、春収穫では想定していた収量の3分の2以上を確保。品質はA品率9割と高かった。今後の大雨に備え、作付け計画の改善や排水対策の徹底などに取り組んでいる。

(7面・営農技術)

〈写真:遊水地内の圃場で後藤さん。背後に見える土手の高さまで冠水した〉

父に学び農地を守りたい【島根県 6月3週号】

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 【島根支局】6月21日は「父の日」。大田市の坂本静雄さん(71)の長女・さやかさん(40)に、父への思いや目標などを話してもらった。


 普段は言えませんが、父から農業を通じて物を作る楽しさと大切さを学ばせてもらい、感謝しています。
 以前は金融機関に勤めていましたが、地域で農業をする人が減り、通勤中の景色に荒廃地が増えていくのを見るうちに、次第に農地を守りたいと思うようになりました。そして、今なら身近にいる父から技術を学べると考え、就農を決意しました。
 分からないことだらけのスタートだったので、1年間の農業体験の後、2018年4月に就農しました。就農した後にできた仲間から多くのことを学び、つながりの大切さを実感しています。
 現在は、繁殖和牛の飼育とトマト栽培を担当しています。父は主に水稲栽培を担当していて、忙しいときには助け合っています。
 今後の目標は、認定農業者の仲間入りをすることと、繁殖和牛を11頭に増やすことです。
 父は厳しい面もあり、ぶつかることもありますが、正しいのはいつも父ですね。これからも元気に頑張って見守ってほしいです。

〈写真:さやかさんは繁殖和牛の管理を任されている。静雄さんは「一度は教えるが、その後は本人次第。体に気を付けて元気に頑張れ」と励ます〉


社会貢献と連動する野菜生産 幅広い農を実践【奈良県 6月3週号】

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 【奈良支局】「農から始まる新たなつながりを大切にしたい」と話す奈良市の農業法人株式会社ゲミューゼ代表を務める島田優(しまだ まさる)さん(25)。共同経営者である藤井宏次(ふじい ひろつぐ)さん(25)、従業員らとともに、農作物生産を柱に、遊休農地解消活動、食品加工、直売、農福連携、食農教育、農業体験提供と意欲的に取り組んでいる。島田さんと藤井さんは、近畿大学農学部在学中に学生農業団体を立ち上げた。「大学のときにトマト農家と知り合い、その人が作ったトマトのおいしさにほれ込んだ」と島田さん。農作物生産のほか社会貢献を含めた幅広い農を実践したいと考え、卒業を控えた2017年2月に法人化し、トマト栽培を始めた。

〈写真:藤井さん(手前)と島田さん。「これからも夢を追い続けていきたい」と話す〉

田植機を乗用散布機に改造 直播・防除・追肥に活躍【秋田県 6月3週号】

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 【秋田支局】大仙市の於園共同農場(佐藤秋弘会長=67歳、構成員13人、水稲52ヘクタール)では、使わなくなった田植機を乗用散布機に改造し、湛水(たんすい)直播で水稲「ゆみあずさ」を作付けする。散布機は、田植機の植え付け部を取り外し、動力散布機と作業者用の座席を取り付けた。運転者と作業者が背中合わせで乗って使用する。作業部が昇降するので、作業者の乗り降りが楽だという。同農場の茂木久志副会長(54)は「この乗用散布機は農場では二十数年もの間、防除や追肥に活躍している名物農機具。2代目の現機はディーゼルで、作業速度は大幅に向上している」と話す。

〈写真:乗用散布機を利用して作業を効率化する〉

薬剤散布にドローン活用 GNSS登録で自動作業【鹿児島県 6月3週号】

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 【鹿児島支局】日置市吹上町入来でサツマイモ6.5ヘクタールなどを栽培する松元裕介さん(39)は、サツマイモの薬剤散布に小型無人機(ドローン)を導入し、作業の効率化を実現した。昨年、「かんしょ農業機械等リース緊急支援事業」を活用し、ドローンの購入と免許を取得。長いホースを手で引きながら歩いて散布する作業がなくなり、大がかりな準備も必要なくなった。「準備に時間がかからなくなったので、適期に薬をかけることができるようになりました」と話す。圃場はGNSS(全球測位衛星システム)に登録し、薬剤をセットしておくことで、プログラムに従って自動で散布できる。「天候によって薬をかける高さや、スピード、薬剤の量を簡単に設定できるところも便利です」。手作業だと同じ箇所に何度も薬剤散布してしまうことがあったが、その問題も解決されたという。

〈写真:サツマイモの圃場で薬剤散布の準備をする松元さん〉

防風林「篤農技術や民間育成品種を記録に残す【2020年6月3週号】」

 ▼1994年から2010年まで、農業共済新聞では『農を拓(ひら)いた先人たち』という連載を掲載した。明治から昭和にかけて日本農業の発展を支えた作物品種や農業機械、防除技術などを取り上げ、開発や普及に携わった農家や研究者の熱意や労苦を紹介する。
 ▼著者は、元農林水産技術会議事務局長の西尾敏彦氏で、長年、農業技術に関する歴史の発掘と記録に取り組んでいる。連載の記事はすべて農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)のサイトに掲載し、検索で見つかるためか、今も時々問い合わせがある。
 ▼担当者として何度か取材に同行し、有名品種の育成者からじかに経緯を聞くなど貴重な経験をした。同時に、農家の功績は試験場などと比べて記録が少なく、時間の経過とともに失われる心配があることも知った。
 ▼その西尾氏が、共著で『日本水稲在来品種小事典』(農文協)を出版した。「旭」「亀の尾」など「コシヒカリ」につながる品種だけでなく、地方の稲作を支えた295品種を網羅する。多くは農家の観察から生まれた。育成経過や名称の由来など読み物としても楽しめた。

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