今週のヘッドライン: 2020年07月 2週号
「収入保険のつなぎ融資を肥料や農薬代に充て、営農継続できた。加入していなかったら本当に厳しく、入っていて良かった。今年はいつも通りの収穫を見込んでいる」と話すのは、長野県小布施町山王島の岩井賢一さん(60)。昨年10月の台風19号に伴う大雨で、近くを流れる千曲川の堤防が決壊し、リンゴ園地150アールの8割ほどが2メートル以上冠水する被害を受けた。長野市穂保の塚田史郎さん(40)もリンゴ園地160アールのほか、農業用機械や倉庫が水没したが、果樹共済や農機具共済の共済金を活用して、農機具や肥料など営農環境を整備。150アールの収穫を目指している。
政府の規制改革推進会議は2日、答申を安倍晋三首相に提出した。農林水産分野では、農産物検査について、多様化する米の流通形態に対応し、流通ルートや消費者ニーズに即した合理的で低コストな規格への見直しを提起。農産物検査規格と商習慣の総点検に基づく検討を進め、2021年度上期に結論を出すとした。品質確認などの手法を条件に未検査米の産地・品種・産地の「3点表示」は、任意表示を可能にする。収入減少影響緩和交付金(ナラシ交付金)など補助金は、対象数量の確認手法を条件に未検査米でも支援対象とする方針だ。政府は答申を基に規制改革実施計画を策定し、近く閣議決定する。
農林水産省は6月26日、農地中間管理機構(農地バンク)が手掛けた2019年度の担い手への農地集積面積は、前年度比2万3千ヘクタール増の251万ヘクタールと発表した。集積率は同0.9ポイント増の57.1%となった。政府目標は、23年に80%を目指すが、伸び率は鈍化傾向にある。
浜松市東区大島町で水稲25ヘクタールやコマツナなどの複合経営をする株式会社森島農園(森島健輔代表、40歳)では、自社の「コシヒカリ」無洗米と水をセットにした「らくらくごはん」を販売する。火を使わずに1食分ずつ炊飯でき、備蓄やキャンプなどで利用できる。「米の価格や消費量が低下する中で、いかに付加価値をつけられるかが重要」と考え開発した。4食と10食の防災セットを商品化し、防災訓練では作り方を実演するなど、販路の開拓に取り組む。
元気で健康な体づくりには欠かせないタンパク質。暑い日が続くと食欲がわかず、あっさりとした食事が増えて不足がちになることも。そこでおすすめしたいのが、夏にこそ食べたい栄養たっぷりの豆腐料理だ。「野菜と豆腐の料理家」として活動する江戸野陽子さんに紹介してもらう。
突然の降ひょうや雷雨など首都圏の局地的な気象状況を、地図に重ねてインターネット上でリアルタイムにチェックできる気象リスク情報統合システム「ソラチェク」が6月22日から公開されている。国立研究開発法人防災科学技術研究所(茨城県つくば市)が開発した。降ひょうの範囲を推定するシステムは日本初で、農業分野では被害確認や薬剤防除など迅速な事後対策につながると期待されている。
【岩手支局】一関市大東町中川の小山和夫さん(65)は、草刈機のエンジンなどを使って「チェーン除草機」を製作し、田植え後の雑草防除に利用している。圃場に入らず無線で操縦するため、作業負担は軽減。また、作業時間は10アール当たり20分ほどまで短縮した。
〈写真:チェーン除草機を無線操縦する小山さん〉
【大分支局】「これまでたくさんの人に助けてもらって、やっと苗を定植することができました」と話すのは、佐伯市米水津で4月からハウスミカン20アールの栽培に取り組む永田華香さん(27)。夫の祐介さん(32)と2歳の息子の3人で福岡県から移住し、市が運営する佐伯市ファーマーズスクールで研修を2年受け就農した。佐伯市のかんきつ生産者では15年ぶりの新規就農者だ。
〈写真:「近所の人たちは優しい人ばかり。いろいろと教えてくれるので助かっています」と永田さん〉
【石川支局】珠洲市大谷町の丸山輝也さん(34)は今年5月、耕作放棄地に太陽光パネルを設置し、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を始めた。丸山さんは、889平方メートルの田んぼに高さ4メートルの支柱を立て、縦992ミリ、横1675ミリの太陽光パネルを248枚設置した。パネルの下では、地元の農業法人の協力を得てケールを栽培している。「日陰で農作業ができ、生育に必要な光はパネルの下でも十分に降り注ぐ」と話す。
〈写真:パネルは、作物に太陽光が当たるように間隔を空け、強風の影響を受けないように角度を調整。「食料と電気を自給自足できる地域をつくることが目標」と丸山さん〉
【山口支局】収入保険の保険金を受け取った下関市の松田直規さん(79)に、収入が減少した要因や制度の評価などについて聞いた。
〈写真:「令和元年産は過去10年さかのぼって最も収量が低く驚きました。収入保険に加入していて本当に良かったです」〉
【福井支局】若狭町岩屋の「岩屋農地環境を守る会」では、サル捕獲用囲いわなを導入し、特産のナシの被害を減少させた。囲いわなは天井のない6メートル四方で高さは4メートル。足元は網になっており、餌が見える。外側からは扉とパイプを伝い中に入ることができるが、内側には足がかりがないため脱出できない。扉を開けたまま、餌づけをしばらく続け、サルの警戒心が緩んできたころに扉を閉め、サルが入るのを待ち捕獲。効果はてきめんで、多いときは一度に20頭を捕獲できる。
〈写真:サル捕獲用囲いわなの外観〉
▼牛乳・乳製品の需給が、緩和からひっ迫基調に転じている。新型コロナウイルスの感染拡大で休止していた学校給食や飲食店の営業が再開し、需要の回復が進むとともに、これから夏の需要期を迎えるためだ。今年は学校の夏休み期間短縮も見込まれ、予報通りの暑い夏になれば、例年以上の需給ひっ迫が懸念される状況にある。
▼生乳生産のピークとなる4~6月は、学校給食の休止や飲食店の営業自粛で需要が大きく減少した。酪農乳業が結束して加工処理に努め、国は緊急的な支援を措置し、消費者に牛乳・乳製品の消費を訴えるキャンペーンを展開した。それぞれができることを実践し、生乳廃棄の回避につなげている。
▼Jミルクは、海外の酪農乳業の動向を紹介するリポートを創刊し、新型コロナ禍の影響を特集した。それによると急に需給ギャップが生じたため、英国や米国、カナダなどで生乳廃棄が発生。欧州主要国の乳価は、感染拡大前と比べ1割以上下落したと報告する。
▼夏に向けた牛乳・乳製品の安定供給には、上向いた家庭消費を途切れさせず、業務需要にも対応する必要がある。さらに結束を強固にし、コロナ禍による需給変動を乗り越えたい。