今週のヘッドライン: 2020年07月 3週号
3日から本州付近に梅雨前線が停滞し、九州地方を中心に西日本から東日本にかけて各地で記録的な豪雨に見舞われた。
NOSAI熊本(熊本県農業共済組合)では県内広域災害対策チームを編成し、早急に被害確認を行っているほか、NOSAIおおいた(大分県農業共済組合)では非常災害対策本部を設置するなど、被災地域のNOSAIは被害状況の把握を急ぐとともに、共済金の早期支払いに向けて、迅速、適正な損害評価に組織をあげて取り組んでいる。収入保険加入者には、早期のつなぎ融資の貸し付けに向け、被害申告を呼びかけている。
新型コロナウイルス感染症に伴う外出自粛などにより、農泊にも影響が現れている。学校の休校や海外からの入国制限などで受け入れ数が大幅に減少。都市部との交流活動の停滞などが懸念される。一方で、事前の体調確認や「3密」回避など独自に対策ガイドラインを作成し、再開に向けて動きだす地域も出てきた。国内の教育旅行などでは、農村での野外活動の需要が高まるなど追い風もある。感染症を想定した「新しい生活様式」が求められる中、実践地域に現状と今後の見通しを聞いた。
自民党の食育調査会は9日、2021年度から5年間の食育施策の指針となる新たな食育推進基本計画策定に向けた提言の論点を整理した。新型コロナウイルス感染症に伴う影響で、家庭で食を考える機会が増え、食育の重要性が高まっていると強調。朝食欠食の解消に共食や栄養指導など家庭の食育推進を重要視する。学校での食育推進では、近年横ばいで推移する地場産物の活用促進に向けて、食材費の公費負担を提起する方針を打ち出した。
3日以降の豪雨で九州をはじめ、全国各地で甚大な被害が発生している。収入保険制度は、つなぎ融資や保険金等で農業者の努力では避けられない収入減少を補てんする。農業共済制度の共済金は、自然災害による収穫量の減少を補償し、自然災害が多発する近年、多くの農業者の復旧を支えてきた。保険金等や共済金の支払実績などについて稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。
◆【関連記事】令和2年7月豪雨の被害広がる 農地冠水、土砂流入、建物も浸水(1面)
⇒http://www.nosai.or.jp/mt6/2020/07/post-5887.html
今年も九州をはじめ全国各地で豪雨被害が発生した。日頃からの準備が命を守る行動につながる。万が一の被災時の避難や自宅での対応などについて、合同会社ソナエルワークス代表で、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんに教えてもらう。
茨城県小美玉市で稲発酵粗飼料(WCS)コントラクターを展開している、柴高水田活用部会(井坂守代表、67歳)は、湿田地帯の田んぼ約500筆で「たちすずか」などWCS用稲38ヘクタールや「夢あおば」など飼料用米10ヘクタールを栽培。省力・効率化に努め、平時は5人で稲WCSを年間2000ロール製造し、地域の畜産農家7軒に全量直接販売している。
NOSAI全国連(全国農業共済組合連合会)は6日、「令和2年度第1回収入保険中央推進協議会」を開催し、JA全中や集出荷団体、全国農業会議所、日本農業法人協会などが参加した。
【広島支局】三原市大和町の「白龍湖観光農園」(松浦一正代表取締役=67歳、約19ヘクタール)では、1992年にナシ狩りを開園し、現在はナシ5ヘクタール、イチゴ33アール、ブドウ30アール、サクランボ20アールを栽培する。1991年の台風19号や西日本豪雨を経験し、保険の必要性を感じていたという松浦代表は、今年から収入保険に加入している。例年、イチゴだけで1シーズン1万人の来客があるところ、今年は新型コロナウイルスで打撃を受けた。松浦代表は「お客さんがどれくらい来てくれるかという不安はある。従業員が7人いるし、何かあったときには補償してもらえるという安心感がある。うちのような観光農園にとって、収入保険は必要」と話す。
〈写真:「サクランボの時期は短いが、これからブドウ、ナシ狩りを楽しんでもらいたい」と松浦代表〉
【新潟支局】上越地域では昨年、高温少雨の影響で大豆の収穫量が思うように伸びなかった。そんな中、上越市板倉区の農事組合法人吉増生産組合は、徹底した栽培管理で10アール当たり270キロ(県平均174キロ、上越地域同168キロ)を記録した。同法人では水稲36ヘクタールのほか、水稲直播栽培後の雑草対策を兼ねて大豆を14ヘクタール栽培する。「地下水位が一目で分かるので、大豆作付け圃場でも効果的な灌水ができる」と同法人代表の深石克司さん(69)。深石さんが自信を見せるその方法は、圃場内に掘った深さ約1メートルの穴に直径約8センチの塩ビ管を差し込むというものだ。
〈写真:圃場に円筒状の穴を開ける器具と塩ビ管を手に深石さん。「効果的な灌水が実現できる」と話す〉
【福島支局】福島市吾妻で花き(リンドウ・ユーカリ・小ギク)80アール、サクランボ15アールを栽培する加藤勉さん(69)は、市場に出荷する商品とは別に、小学校で行われる「花育」で使う花も提供する。2年前からリンドウやユーカリを提供し、今年もリンドウ約1200本を市内の小学校に納品する予定だという。「花に興味を持ってもらえば、将来的な継承につながるきっかけにもなるので、生産者としてもありがたい」と加藤さん。
〈写真:リンドウの手入れをする加藤さん。「花育が花に興味や関心を持つ子どもたちが増える機会になったらいいですね」と話す〉
【北海道支局】NOSAI道東(北海道ひがし農業共済組合)の総代を務める岩松牧場代表の岩松邦英さん(52)は、浜中町姉別地区で乳牛150頭を飼養する傍ら、エゾシカの解体・食肉販売やエゾシカ猟ガイドを行う株式会社アウトドアアシスト岩松を経営する。保健所の認可を受けた解体場では、自ら猟で捕ったエゾシカを解体・処理し、ホームページで販売。昨年は年間約700頭のエゾシカを解体した。1頭分を各部位に分け、真空パックに詰めるまで1時間もかからない手際の良さだ。
〈写真:エゾシカの皮を使ったデニムの共同製作もするという邦英さん〉
【岡山支局】新見市西方の定岡隆典さん(40)が経営する「さーちゃんミニヤギ牧場」は、ヤギの育成・繁殖に取り組み、現在は30頭に増えた。搾乳・除草用の大型種以外にも、ペット向けの小型種、繁殖用の雄ヤギも飼育する。顧客の要望に合わせた個体販売にも対応し、県外からの問い合わせや購入も多い。牧場では、ヤギの乳を主原料に数種類のチーズを生産。牧場での直売のほか、JA晴れの国岡山あしん広場でも販売する。自宅の隣にある工房で試作を繰り返して改良を重ね、商品化できるまでになった。現在もチーズ工房の友人にアドバイスをもらいながら、さらに扱う種類を増やすために日々研究している。
〈写真:定岡さんと牧場のヤギ。「興味のある方はぜひ来てほしいですね」〉
▼気象庁は、九州や中部地方など広域に被害をもたらしている3日以降の豪雨を「令和2年7月豪雨」と名付けた。顕著な被害となった自然災害に経験や教訓を伝承する目的で名称を定めている。2011年以降の10年間で名称のある気象現象は九つ目となり、7~8月の豪雨災害は六つになった。
▼実家の周辺地域も45年ほど前に豪雨災害に遭った。自宅前の一段低い土地の水田が泥水の激流となり、家屋や人、家畜などが流された。流れる水の勢いに足がすくんだ記憶がある。今回も住宅が流され、泥水をかぶるなどの被害が目立つ。どれほど怖かったことだろう。
▼被災された方には、早期の生活再建が必要となる。しかし、何から始めるか考える気力も出ないのではないか。熊本県弁護士会では、「くま弁ニュース」を作成し、無料相談の案内をはじめ、被災時の対応について情報を発信している。
▼り災証明書の申請や保険金の請求などの手続きは、片付け前に撮影した写真があるとよいなど助言を掲載。自力での土砂撤去などは無理をせず健康に留意するよう呼びかけ、締めくくりに"必ず生活再建はできる"との励ましを添える。頼りにできる専門家の存在は心強い。