今週のヘッドライン: 2020年08月 1週号
7月27日から東北地方に梅雨前線が停滞し、山形県を中心に記録的な大雨となり、河川の氾濫などによる被害が発生した。
被災地域のNOSAIは、被害状況の確認を急ぐとともに、共済金の早期支払いに向けて迅速、適正な損害評価に組織をあげて取り組んでいる。収入保険加入者には早期のつなぎ融資の貸し付けに向け、被害申告を呼び掛けている。
山沿いの水田20ヘクタールで経営する滋賀県大津市の農事組合法人新免営農組合では、JAレーク大津の実証に協力し、小型無人機(ドローン)による畦畔〈けいはん〉・法面〈のりめん〉管理として抑草剤散布を実施する。草刈り回数が半分ほどに省略でき、省力化や農作業安全の確保に期待がかかる。ドローンの利用場面を増やし、中山間地域など小規模経営でも、導入コストに見合う効果を発揮させるのが狙い。同JAでは水稲直播や畦畔の雑草管理、土壌改良、追肥など用途を広げて周年利用を目指す。
農林水産省は7月30日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会を開き、2019年7月~20年6月の需要実績(速報値)を前年同期比22万トン減の713万トンと報告した。人口減少や高齢化などによる毎年10万トン程度の需要減少に加え、新型コロナウイルス感染症や消費税率引き上げなどの影響で、予測を超える減少となった。21年6月末の民間在庫量は196万~204万トンを見込むが、作柄による生産量の上振れや新型コロナに伴う需要量の下振れなどで需給が緩和する懸念が強まっている。米の需要と価格の安定には、過剰とならないよう、水田フル活用の支援など政策も活用した産地の対応が求められる。
温暖化による水稲病害虫の被害増を踏まえ、農林水産省は7月30日、都道府県や関係団体が一体となって対策を検討する「水稲病害虫防除対策全国協議会」の初会合を開いた。被害が拡大するスクミリンゴガイ(通称:ジャンボタニシ)については、防除体系を再構築し、各県の指針となるマニュアルを9月にまとめる方針だ。また、夏季の高温で多発が懸念されるトビイロウンカ、斑点米カメムシ類についても適期防除に向け、情報共有を進める。
NOSAI静岡県中部(静岡県中部農業共済組合)は7月17日、静岡市と同市を管内とするJA静岡市、JAしみずと「農業経営収入保険の普及及び加入の促進に係る連携に関する協定」を締結した。静岡市内の認定農業者や近い将来認定農業者を目指す農業者の経営安定を図るため、市とJAが収入保険加入者の保険料の一部を補助する。行政とJAによる保険料の補助、政令指定都市による補助は全国で初。新型コロナウイルスの影響による減収をはじめ、予想できない自然災害や価格低下などが起きる中、NOSAI、市、JAが連携し農業者が安心して営農できるよう、収入保険を推進する。
中山間水田農業の省力・低コスト化を目的に、長野県農業試験場では「密播疎植栽培」「流し込み施肥」「無コーティング種子湛水〈たんすい〉直播」を組み合わせた水稲技術体系の普及を目指している。収量は慣行の移植、施肥、またカルパーコーティングによる直播と同等であることを確認。5ヘクタール規模(移植4ヘクタール、直播1ヘクタール、播種作業は委託)の経営体を想定した試算では、省力化で約4ヘクタールの規模拡大が可能となり、10アール当たりの米生産費は8%削減、所得は6%増加の経営改善効果があるとしている。
「ご自身の生活環境の中で最大限花に触れてもらいたい」と話す埼玉県吉見町谷口の間室みどりさん(46)は、家族で経営し、野菜苗約130品種や花苗を生産する有限会社サニベルグリーンハウス(間室照雄代表、71歳)の一員として消費者向けの寄せ植え教室を開く。扱う品目や作品の種類を充実させ、経験や庭の有無にかかわらず誰もが園芸を楽しめる内容を心がける。自身が店長を務める直営の園芸店「ガーデンセンターさにべる」の品ぞろえや店内の装飾にも工夫を凝らし、花のある暮らしを提案している。
【岩手支局】一戸町の坂松農園では、2011年に葉タバコ栽培からトウモロコシ栽培へ経営転換した。葉タバコ栽培に使用した機械の活用で、初期投資を抑えることに成功。病虫害対策を徹底し、寒暖差を生かした高品質のトウモロコシを独自ブランド「いわて奥中山高原坂松農園奥いちきみ」として販売している。
〈写真:「初期投資を抑えてトウモロコシ栽培に転換することができた」と坂松さん〉
【秋田支局】横手市山内土渕の木材加工会社「ウッディさんない」は、県立大学木材高度加工研究所と作業を分担し、クマを寄せ付けない木製の杭〈くい〉を開発した。杭は杉の間伐材の丸太で、長さ1.5メートルから2メートル。トウガラシに含まれる成分「カプサイシン」などの混合液を染み込ませた木栓が埋め込まれている。クマは嗅覚に優れ、学習能力が高いため、嫌いなにおいがすることを覚えて近寄らなくなる。
〈写真:間伐材を利用した杭を持つ熊谷顧問(右)と高橋専務。液を染み込ませた木栓が埋め込まれている〉
【山形支局】サツマイモ「シルクスイート」を栽培する酒田市横代の三浦祐一さん(37)は、焼き芋の専門店を経営し、多彩な焼き芋商品を販売している。「おいしい焼き芋を通年で味わえるよう、さまざまな工夫をしている。特に暖かい季節は、焼き芋を冷凍することで品質を長期間保持できる上に、甘味の質が変化し、北国では今まで知られていなかったかたちで楽しめる」と三浦さん。夏には、冷やし焼き芋や焼き芋かき氷などの商品を提供する。
〈写真:シルクスイートを植える三浦さん〉
【香川支局】イノシシの捕獲・解体・調理のすべてを手がける東かがわ市五名の飯村大吾さん(29)。山間部の獣害対策を担当する猟師として、また高齢化する地域の活性化を担う拠点「五名ふるさとの家」(五名活性化協議会が運営・管理)の店主として活躍中だ。移住先を探して全国を回り、たどり着いた五名での生活は4年になる。
〈写真:普段は店の仕込みのほか、イノシシやシカを解体し、ひき肉やスライスに加工している飯村さん。店主としても手腕を振るう〉
【福島支局】須賀川市岩渕の常松義彰さん(51)は、所属している地元の組織が導入した「ポット成苗田植機」に、肥料散布機を取り付けた。田植えと同時に肥料の散布が可能となり、作業効率の向上に手応えを感じている。散布機は倉庫に置いたままになっていたもので、トラクターの前方に取り付けるタイプ。常松さんは田植機後方への設置や、取り付け部の強度、前後のバランスなどをメーカーに確認したという。
〈写真:散布機を取り付けた田植機に乗車する常松さん〉
▼地方では、都市部に先駆けて人口減少と少子高齢化が進む。そうした地域の活力維持と向上を図る新たな要素として、地域外に居住する人が、特定の地域と継続的に関わりを持ち、地域活動などを支える「関係人口」が注目されている。ざっくり整理すると「観光以上、定住未満」の人たちだ。
▼三大都市圏の居住者を調査した国土交通省の推計では、継続的に訪問する地域がある関係人口は全体の23.2%で、帰省など訪問先がある地縁・血縁的な関係者の16.5%よりも多い。訪問目的は、ボランティアや副業、農業体験、交流イベントへの参加など多様だ。
▼一方、都市圏居住者の6割は特定の地域との関わりを持たない人が占める。継続的に通う地域がある関係人口の多くは、親族や知人、友人との関係を訪問のきっかけと回答する。地域の関係者の存在が、関係人口を増やす布石として重要だ。
▼就職などで地元を離れる人も、祭や行事に合わせた帰省や農繁期などの手伝いで行き来する例は多い。ただ、子世代、孫世代となるに従い疎遠になる。地元出身者の子や孫に情報を発信する地域も出てきた。地域の応援団になってもらおう。