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今週のヘッドライン: 2020年08月 2週号

日本茶を世界へ 茶畑オーナー制度、オンライン動画の発信 ―― 京都おぶぶ茶苑(京都府和束町)(1面)【2020年8月2週号】

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 茶産地として800年の歴史がある京都府和束町で、「やぶきた」2ヘクタールを中心に茶3ヘクタールを栽培する京都おぶぶ茶苑(喜多章浩代表、45歳)は、輸出やインバウンド(訪日外国人)の体験受け入れに力を入れてきた。新型コロナの影響で、3~5月の売り上げは、例年比50%減に。その対策として「茶畑オーナー制度の強化」と「オンライン化」を加速。国内外にいる茶畑オーナーやメールマガジン登録者約2万人に、お茶のおいしい入れ方などの動画を発信する。旅行会社と連携して、9月には観光・体験を疑似体験できるオンラインツアーを開始する。

(1面)

〈写真:雨粒が時折落ちる中、参加者らと共に茶摘みを楽しむ代表の喜多さん(中央)。一日の大半を畑作業に費やす 〉

食料自給率は微増38% 11年ぶり上昇も低迷続く(2面・総合)【2020年8月2週号】

 農林水産省は5日、2019年度のカロリーベース(供給熱量)の食料自給率が前年度より1ポイント上がり、38%になったと公表した。サンマやサバなど魚介類の不漁に加え、米消費が減少したものの、小麦の単収増加などが寄与した。前年度を上回ったのは08年度以来11年ぶりとなったが、依然として低水準が続く。生産額ベースの自給率は66%で、前年並みにとどまった。政府は、新たな食料・農業・農村基本計画で、カロリーベース自給率を30年度までに45%に高める目標を掲げており、生産基盤の強化による国産農産物の生産力増強に加え、消費拡大を着実に推進していくことが求められる。

(2面・総合)

1~6月の輸出額が4120億円で8年ぶり減少 欧州向けが苦戦(2面・総合)【2020年8月2週号】

 農林水産省は4日、2020年上半期(1~6月)の農林水産物・食品の輸出額が、前年同期比8.2%減の4120億円になったと発表した。上半期で前年同期を下回るのは8年ぶり。新型コロナウイルス感染症に伴う外食需要の低迷によって牛肉や日本酒などが落ち込んだ。政府は輸出額を30年に5兆円に拡大する目標を掲げている。

(2面・総合)

青パパイアを全国の食卓に 「サンパパイヤ」で商標登録 ―― 株式会社やぎぬま農園(茨城県那珂市)(3面・ビジネス)【2020年8月2週号】

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 茨城県那珂市の株式会社やぎぬま農園(栁沼正一〈やぎぬましょういち〉代表取締役、68歳)では、「サンパパイヤ」の名称で商標登録した青パパイアの普及に取り組んでいる。国内の産地は沖縄県や鹿児島県などが中心だが、寒冷地でも露地栽培できる独自の苗と栽培法で茨城県での生産を実現した。青パパイアは酵素が豊富に含まれ、健康志向の消費者から人気が高い。「パパイアの食文化を全国に広めたい」と協議会を組織し、生産者と販路の拡大に力を入れている。

(3面・ビジネス)

〈写真:苗を手に栽培法を説明する栁沼さん〉

絵ごころ不要 野菜スタンプを作ろう ―― ART NO WATAGE絵画教室代表・画家の原明あさのさんが紹介(5面・すまいる)【2020年8月2週号】

 料理で使わない野菜のヘタや落ち葉などを使って、作品をつくる「野菜スタンプ」。身近な野菜の新たな価値に気づくことができるはずだ。画用紙だけでなく、ハンカチやトートバッグなど身の回りのものを彩ることもできる。夏休みの自由研究にも最適で、この夏ぜひ試してみてはどうだろうか。大阪市の「ART NO WATAGE 絵画教室」の代表を務める画家の原明〈はらみょう〉あさのさんに、野菜スタンプの魅力や作り方を紹介してもらった。

(5面・すまいる)

水田転作でソバ "小畦立て"で収量倍増 ―― 播種技術を福井県農試が開発(7面・営農技術)【2020年8月2週号】

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 水田転作でのソバの増収技術として、福井県農業試験場が開発した「小畦〈こうね〉立て播種」が効果を発揮している。既存の播種機に専用の培土板を装着し、畦と排水溝を形成して、種子を地表より2~3センチ高い位置に埋め、苗立ちや長雨後の生育を向上させる。勝山市の中山間地の水田35ヘクタールで経営する農事組合法人エコ・ファームてらおでは、明渠〈めいきょ〉の設置などと組み合わせ、導入初年の2018年産で、従来の倍以上の10アール当たり収量90キロを実現した。簡単・低コストに導入可能な技術として、県農林水産部が、農機の設定や注意点などを示したマニュアルも作成して普及を図る。

(7面・営農技術)

〈写真:専用の培土板を説明する農事組合法人エコ・ファームてらお代表の森永新市さん。「湿田でも、収量が底上げできる」 〉

コロナ禍で滞る農産物さばく 農家支える地域商社【8月2週号 島根県】

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 【島根支局】津和野町は地域振興の一環として、町の地域おこし協力隊などをまとめる株式会社FoundingBase(ファウンディングベース)と連携し、2019年4月に「地域商社まるごと津和野」を設立。都市部で町のPRイベントやマルシェを開催するほか、オンラインショップ「まるごと津和野ストア」を開設している。同ストアで農家から野菜などを仕入れ、購入者へ発送する上田裕貴さん(27)は「もっと津和野に興味を持ってもらいたい」と話す。コロナ禍で滞っていた農産物がオンラインショップでさばけたことで出品者が増加。今では約30戸が地元特産品を提供し、注文は多い月で約100件あるという。販路を広げる一助となり、今後の効果的な地域活性につながるか期待されている。

〈写真:「おいしいものを作る津和野町の農家を応援したい」と上田さん〉

コロナ禍で飼料の供給停止 メニュー変更、繁殖成績悪化防ぐ【8月2週号 岡山県】

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 【岡山支局】新型コロナウイルスは、子牛や生乳の価格の下落など農家にさまざまな影響を与えている。奈義町で酪農を経営する定森陽介さん(44)の牧場は、牛の病気は少なく、繁殖成績は良好だ。ところが、使用する飼料の一部が供給停止となり、飼料メニューを変更せざるを得なくなった。飼料の急な変更は、ルーメン(第一胃)内の微生物に大きな影響を与え、食べた飼料が発酵されず、牛の健康を阻害する可能性がある。定森さんは綿密な飼料設計の下で変更したが、普段とは違う発情兆候や、体調不良を起こす牛が散見された。このためすぐに飼料を調整し、ルーメンへのダメージを最小限に抑え、繁殖成績の悪化を防ぐことができたという。

〈写真:フリーバーンで乳牛約100頭を飼養する定森さん〉

巨木トマト 樹冠80平方メートル、9671個収穫【8月2週号 福井県】

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 【福井支局】美浜町久々子の福井県園芸体験施設「園芸LABO(ラボ)の丘」では、施設の目玉として巨木トマトを栽培している。2019年7月から1年間栽培されているのは大玉品種の「パルト」で、最終的に樹冠面積が約80平方メートルとなった。収穫できた赤い実は9671個、目標としていた1万個は目前という結果だった。福井県農業試験場園芸研究センター園芸交流課の古田秀雄課長は「ここから倍の2万個を目指していきたい」と話す。

〈写真:解体前の巨木トマト。生育の様子は同施設のツイッターで随時配信した〉


高い生産性、加工品の開発も 四季成りイチゴに手応え【8月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】西和賀町越中畑の菊池伸也さん(39)は、狭い面積でも収量を確保し、通年で出荷できる四季成りイチゴをハウス3棟(9アール)で栽培している。栽培する品種は「赤い妖精」。花芽と葉が少ないため、葉かきや摘果が少なく、労働時間を短縮できるという。「3年前から、株間を短くして定植する密植栽培法を実施し、同じ面積でも1.5倍定植ができ収量を上げることができた」と話す。今年は遠野市の酪農家と共同でイチゴのジェラートを開発した。「赤い妖精は、甘味より酸味が強い品種で加工品にも向いている。お客さまにおいしいといわれることがうれしい」と話す。

〈写真:「今年はイチゴ栽培を始めてから、収量が一番多い年になりそう」と笑顔を見せる菊池さん〉

防風林「食料の安定供給はカロリーの充足ではない【2020年8月2週号】」

 ▼2019年度の食料自給率は、カロリー(供給熱量)ベースで前年度比1ポイント増の38%となった。このまま上向くことを期待したいが、小麦の10アール当たり収量増など天候に恵まれた要素もある。自給率向上へ、担い手と農地の確保を基本に持続的な生産が可能となる施策の拡充を求めたい。
 ▼国内で生産可能な食料の潜在生産能力を表す食料自給力指標も示された。イモ類中心の作付けでは、推定エネルギー必要量とされる1人当たり1日2168キロカロリーを充足できるとした。ただ、農林水産省の資料には「おなかはいっぱいになるけど」と一言添えられている。
 ▼父親は、好き嫌いの少ない人だったが、カボチャには箸を出さなかった。稲作地域の農家ではなかったため、戦中戦後に一生分のカボチャを食べたからと話していた。
 ▼新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、食料貿易は輸出国の制限措置などで一時混乱した。自国第一主義を掲げるリーダーの増加は、先行きの懸念材料だ。終戦から75回目の夏。日本のリーダーには、二度と国民を飢えさせないと誓ってほしい。

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