今週のヘッドライン: 2020年08月 4週号
新型コロナウイルス感染症に伴う「巣ごもり需要」増加を背景に、インターネットを介して注文や決済を行う電子商取引(EC)の利用が食品分野でも拡大している。農家には、個々の消費者と取引できる直売所のような専用サイトも人気だ。都市住民の利用が多く、栽培法や作り手の思いへの関心に加え、災害やコロナ禍からの復旧などへの「応援消費」が後押しとなっている。
農作業死亡事故の減少に向けた「秋の農作業安全確認運動」が始まる。重点テーマは「見直そう!農業機械作業の安全対策」。秋作業が本格化する9月1日から10月31日までを重点期間とし、死亡事故が多発する農業機械作業の安全対策強化に取り組む。2018年に発生した農作業死亡事故は274件に上り、農業者の高齢化に伴って65歳以上の割合が86.5%と過去最高を更新した。就業人口10万人当たりの死亡者数も15.6%と建設業など他産業に比べて高い水準にある。熱中症の危険も高まっている中で、誰もが安全・安心に作業ができるよう関係機関や団体なども連携した環境整備などの対応が急がれる。
農林水産省は18日、食育推進評価専門委員会の2020年度第1回会合を開催。21年度から5年間の食育施策の指針となる第4次食育推進基本計画の策定に向け、「食育によるSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献」をコンセプトに、心身の健康の増進と豊かな人間性の形成、持続可能な食・フードシステムの構築を目指す考えを示した。
農研機構はこのほど、水田を豪雨時の洪水対策に活用することを目的に、水稲の冠水被害を抑える水深と湛水〈たんすい〉期間の目安を明らかにした。調整板と落水枡〈ます〉を組み合わせ、目安の水深を実現する水位管理器具も開発した。
高知県四万十町では、NOSAI部長が災害や病虫害などへの備えを促し、若手から高齢者まで誰もが営農継続できる環境づくりに貢献する。台風被害が多い地域で、制度改正など農家からの疑問に対応し、自身の経験から収入保険や園芸施設共済の補償内容などを伝える。また、NOSAIやJAなどの関係組織とも、災害や病害虫発生、農作業事故などの情報を共有し、事前の対策や早期の被害把握につなげる。
30~100アールの中小規模園芸ハウスで、暖房費削減と増収を同時に実現できる複合エコ環境制御システムを高知大学などの研究グループが開発した。イチゴ栽培では、換気をしない半閉鎖環境をつくり、二酸化炭素(CO2)の施用効率を向上。ハウス内の余剰熱を用いて加温した水を夜間の局所加温に活用して、暖房費を6割削減し、収量は2割以上増加した。高知大学の宮内樹代史准教授が、農林水産省が先ごろ開いた農業・食品産業分野の研究成果発表会で発表した。
電子レンジなどで温めて簡単に食べられる、パックご飯などの販売が国内外で増加している。新型コロナウイルスによる外出の自粛要請なども影響し、今年1~6月の国内販売は、各月で対前年同月比が130%を超え、3月は179%(精米換算で420トン)となった。
【埼玉支局】入間市で「茶工房比留間園」を営む比留間嘉章さん(62)は、2019年度から収入保険に加入している。昨年度は4月に降霜の被害に遭い、28アールが全滅。市場価格の低下も相まって、約5割の収入減となった。「茶園管理機を積載するトラックの購入を予定していたので、収入保険に入っていなければ購入は諦めていました。つなぎ融資を利用して、新たな借り入れをすることなく計画通り進めることができ、助かりました」と話す。
〈写真:今年、パリのコンテストで最優秀賞を受賞した「まがたま」を手に比留間さん。「経営の安定にこれほど役立つ保険はありません」と話す〉
【福井支局】県では法人化や組織化を図り、安定的な経営規模の拡大を進めている。一方で作業者・後継者不足や高齢化という課題も山積している。これらの課題解決の一環として、NOSAI福井(福井県農業共済組合)は県内5カ所にGPS(衛星利用測位システム)の基地局を設置し、県全域でスマート農機が活用できる環境づくりを整備するとともに、農業者の経営安定と地域農業の発展を目指す。
〈写真:自動操舵システムは一度走った走行ラインを記憶するため、翌年以降の作業省力化につながる〉
【長野支局】水稲を中心に夏秋イチゴを栽培する安曇野市堀金烏川の株式会社あづみのうか浅川では、法人の施設内にキッチンカーを利用した直売コーナーを8月1日にオープンした。農産物や加工食品の直売コーナーを併設し、加工品のほか甘酒やイチゴ、米なども販売している。スムージーは「フレッシュいちごスムージー(数量限定)」と「甘酒いちごスムージー」を用意。7月末のプレオープン時には、近隣や遠方からの利用者でにぎわった。同法人では夏秋イチゴを13アールで栽培。新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食店に卸していた規格外のイチゴの販売量が減ったため、スムージーに加工することを思い立った。
〈写真:キッチンカーの前で「ほっと一息つける場所をつくりたくなった。今年はその思いがより一層強まった」と同社代表の浅川拓郎さん(左)〉
【愛媛支局】温州ミカン約300アール、「甘平」5アールを栽培する八幡浜市真穴地区の黒田伊智男さん(58)は、「マルチ点滴かん水同時施肥法(マルドリ方式)」を同市で初めて導入。高品質・安定生産を実現し、さらにスマート農業の導入で省力化にも力を入れている。マルドリ方式は水分コントロールが容易だ。また、同時に液肥を与えることで樹勢の管理が可能となり、気象に左右されにくく肥料を効率的に効かせられる。高頻度で少しずつ施肥できるため液肥の流亡がなく、高品質で安定した生産ができる。
〈写真:園地の状態を確認できる気象ロボット〉
▼気象庁の異常気象分析検討会は、「令和2年7月豪雨」など7月の記録的豪雨や日照不足の要因などを検証した。日本付近の偏西風の北上が遅れて梅雨前線が停滞し続け、太平洋高気圧が平年よりも南西に張り出した影響で、水蒸気が流入して日本付近に大量に集中。梅雨前線の活動が強化され、大雨の降りやすい状況が続いたとする。
▼東北地方と東日本太平洋側、西日本の7月の降水量は、平年比2~2.4倍となり、1946年の統計開始以降の記録を更新した。さらに東日本日本海側を加えた地域は、7月の日照時間が平年比4~5割程度で最少記録となっている。7月豪雨は、3日から31日までと長く、約1カ月にわたり広範な地域が多雨と寡照に見舞われた。
▼梅雨前線の活発な活動は、中国華中にも影響を及ぼし、7月の降水量は平年比で約5倍となった。報告は、今回の一連の大雨が長期的な大気中の水蒸気の増加という地球温暖化の進行に伴う影響である可能性も指摘した。理論上は、気温が1度上昇すると飽和水蒸気量は7%程度増加すると説明する。
▼地球温暖化の影響では、シーズンを迎える台風も、発生数は低下するものの最大風速が増す傾向との見通しがある。年々凶暴化する気象災害の危険を可能な限り回避するには、温暖化の流れを止めるしかない。