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今週のヘッドライン: 2020年10月 2週号

収入保険:つなぎ融資が経営続ける力に ―― 雨谷克己さん(茨城県水戸市)(1面)【2020年10月2週号】

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 「収入が減っても既に来日している実習生の給料は払わなければならず、つなぎ融資はとてもありがたい」と話すのは、茨城県水戸市飯島町で、キャベツやレタス、水稲を栽培する雨谷〈あまがい〉克己さん(70)。新型コロナウイルスの影響で、3月から5月にかけて出荷先の外食、中食の需要が激減した。さらに、3月に来日予定だった外国人実習生2人が来日できなくなり、作業に遅れが発生。同期間は収入が平年に比べ3割ほど減少したが、収入保険のつなぎ融資で、作付けを減らしつつも経営を持続できた。

(1面)

〈写真:コロナ禍前に来日していた実習生(右)と作業する雨谷さん〉

収入保険に新型コロナ特例 基準収入の算定に収入減少の影響を排除(1面)【2020年10月2週号】

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 農林水産省は6日、収入保険に「新型コロナウイルス特例」を設けると発表した。2021年の収入保険の基準収入(過去5年の平均収入が基本)算定に、新型コロナウイルスによる20年の収入減少の影響が反映されないようにする。基準収入の低下に伴う、今後5年間の保険金等の減少を避けられる。
 具体的には、19年までの収入を用いて、20年の単位面積当たり収入を調整し、過去5年間の平均収入を補正する。16年~19年の収入がそれぞれ1千万円、20年が新型コロナの影響により500万円になった場合、本来900万円となる21年加入の基準収入を特例により1千万円とする。

(1面)


2021年産米の適正生産量を例年より1カ月前倒しで提示(2面・総合)【2020年10月2週号】

 農林水産省は7日、2021年産主食用米の適正生産量を例年より1カ月ほど前倒しして10月中にも示す方針を明らかにした。平年作と見込まれる20年産主食用米の予想収穫量を基にした試算では、大幅な需給緩和が懸念される。産地に対して飼料用米など戦略作物への転換準備を早期に促すのが狙いだ。需給と価格の安定には、21年産の適正生産量を20年産に比べて大幅に削減する必要がある。停滞する飼料用米への転換を促すなど主食用米の過剰作付けを防ぐ対応が急務となる。

(2面・総合)

収入保険加入者にアンケート 対応や仕組みに高評価(2面・総合)【2020年10月2週号】

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 収入保険の実施主体であるNOSAI全国連(全国農業共済組合連合会)は6日、「『農業経営収入保険』お客様満足度アンケート調査結果」を発表した。加入申請時のNOSAI担当者の対応が「分かりやすかった」との回答した割合が87.1%に上ったほか、「収入保険にカバーできないリスクがなかった」の割合が88.1%に上るなど、おおむね高い評価を得た。一方で、説明の不足や補てんの仕組みが分かりづらいなどの指摘もあり、NOSAI全国連は「今後も加入者の意見などの把握に努め、収入保険事業の運営改善を進める」としている。

(2面・総合)


法人化を機に役割明確化 加工品の販売増 ―― 株式会社香月農園(佐賀県神埼市)(3面・ビジネス)【2020年10月2週号】

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 「継承希望の子どもたちに安定した経営を残したかった」と話すのは、佐賀県神埼市千代田町でハウス20アールでイチゴを生産・販売する株式会社香月〈かつき〉農園の香月涼子代表(50)。イチゴ部門を株式会社化した際に代表となり、夫の元さん(51)から経営を継承した。涼子さんが経営や営業、元さんが農作業全般を担当する。水稲、麦、大豆は、農事組合法人に委託していて、元さんはオペレーターも務める。加工品の開発や営業活動に集中できるようになり、昨年は単価の高い加工品の売り上げが株式会社化前の1.5倍になった。

(3面・ビジネス)

〈写真:加工用機器を説明する涼子さん〉

スマート農業:現場実装の加速へ農水省が政策パッケージを公表(7面・営農技術)【2020年10月2週号】

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 農林水産省は1日、スマート農業の現場実装を加速する「スマート農業推進総合パッケージ」を発表した。成果を多様な地域へ普及するために、初期コスト低減や圃場環境の整備、学習機会の提供などの課題解決に取り組む。特に、農機の共同利用や作業受託など利用コストの軽減に期待される農業支援サービスについては、事業者の育成プログラムも策定した。2025年までに「担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践」する政策目標の実現に向け、今後5年間で施策を集中展開する。

(7面・営農技術)



コロナ禍を工夫で乗り切る ―― 「晴れ間」OG筆者2人に聞く(5面・すまいる)【2020年10月2週号】

 新型コロナウイルス感染拡大による影響を受けながら、農業現場ではさまざま工夫で難局を乗り越えようと、懸命な活動が続いている。2019年の本紙「晴れ間」の筆者2人に、それぞれが経営する観光農園や直売所の活動状況などを聞いた。

(5面・すまいる)

収入保険を支えに コロナ禍でも需要開拓へ【10月2週号 岡山県】

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 【岡山支局】美作市赤田のハウスで花を栽培する中野宏行さん(49)は、「平成30年7月豪雨」で多くの資材が流された経験から、収入保険には制度開始当初から加入する。昨年の猛暑でシクラメンの生育不良による減収が発生し、補てん金の支払いを受けた。積立部分だけの対象だったが、支払いの一部を国が補てんすると知り驚いたという。「自分の積立金が戻ってくるだけと思っていた。ばく大な収入減少ではなかったが、国に補償してもらえると思うと安心できる」。今年は新型コロナウイルスの影響で、母の日のカーネーション需要の減少などに多大なダメージを負ったが、中野さんは、市場での花壇苗の需要増加を実感している。新型コロナによる巣ごもり需要で、ガーデニングが見直されていることが要因とみている。逆境を糧に新たな需要を経営につなげることが今の目標だ。

〈写真:コリウスを摘心する中野さん。多くの品種をそろえる〉


直売・6次化農業者に推奨 調理加工用米「越南300号」【10月2週号 福井県】

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 【福井支局】県農業試験場は、調理加工用米「越南300号」を育成した。リゾットやパエリアに適し、アルデンテという歯応えが残る食感が特徴だ。越南300号は、インド型のでんぷんを持つ米麺用の「越のかおり」と、あっさりとした食味で日本型のでんぷんを持つ「あきさかり」(県農業試験場開発)を交配。10年の歳月をかけ、インドと日本両方のでんぷんの性質を持つものが選び出された。県内のシェフからは「煮崩れしにくく、アルデンテの状態を長く保つ」と評価を受けている。また、リゾットの代表的な品種であるイタリアの「カルナローリ」、パエリアはスペインの「バレンシア米」と比較すると、越南300号は日本人が親しみやすい味に仕上がるという。越南300号は、あきさかりの性質を受け継ぎ、稈長が短く倒れにくい。10アール当たりの収量は約620キロと多収。葉いもち病に対してはやや弱く、適期防除が必要だ。直売ルートのある農業者や6次産業化に取り組む農業者が生産に向いている。

〈写真:「越南300号はもみの先端に茶色の点があります」と開発者の福井米研究部育種研究グループ主任研究員・農学博士の小林麻子さん〉


ソバの溝切り・播種・覆土を同時に【10月2週号 長崎県】

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 【長崎支局】「喜寿を迎え、趣味で始めたソバ作りで、溝切りに苦労しないようにと思い作りました」と話すのは、長与町でソバを10アール栽培する山田勝俊さん(80)。廃棄物を利用してソバ栽培の溝切り・播種・覆土を同時に行える農具を製作した。農具の本体は、6段変速の自転車を活用し、播種量を調整できるようにした。溝切り部分は一輪車のサドルの骨組みを使い、種受けの部分は、水稲の手動播種機と2リットルのペットボトル、床下収納庫などを利用。播種機とペットボトルでも播種量を調整できるという。覆土をする部分には、ステンレス板を加工して使っている。「播種は1メートルで3~3.5グラム、10アールで6~7キロを、計算したように播きます」と山田さん。農具を使う前の作業は、10アールを2人で約2日かかったが、現在は1人で40分で済むという。

〈写真:「以前製作した畝立て器をもとに、播種や覆土もできるように改良した」と山田さん(写真提供=山田さん)〉


トマト「Uターン栽培」 誘引作業の時短に成果【10月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】「学んだ技術を実践するのは難しいが、成果につながるのは面白い」と話すのは、ハウス11棟(31アール)でトマトを栽培する奥州市江刺岩谷堂の菊池孝さん(48)。パイプの上に伸ばしたつるを通し、果実の重さで自然につるを下ろす「Uターン栽培」に取り組んでいる。陸前高田市出身の菊池さんは、2005年に奥州市へ移住した。市内のトマト農家のもとで栽培について学び、14年に就農。現在は従業員2人を雇用し、「桃太郎」と「桃太郎はるか」の2品種のトマトを栽培している。トマト栽培は、支柱とつるをひもでくくり、生育を促す誘引作業が必要だが、以前は誘引の作業に時間がかかっていたという。「Uターン栽培を取り入れてから、今まで作業にかかっていた時間が削減した。その分、ほかの作業に時間を使うことができる」と菊池さん。

〈写真:トマトのUターン栽培。つるを自然に誘引させる〉


防風林「性急さが目立つ菅政権【2020年10月2週号】」

 ▼菅首相は7日、規制改革推進会議を開き、「行政の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打ち破って、規制改革を全力で進める」と決意を述べた。その言葉通り、行政手続きの「脱はんこ」、新会員の任命拒否を発端に日本学術会議の在り方検討などに矛先を向けている。
 ▼就任直後にもデジタル庁の設置や不妊治療の保険適用などを打ち出した。安倍前首相の退陣を受け、その継承を強調したが、官房長官を長く務める中で温めていた考えがあるのではないか。先頭に立つ河野行革担当相も「やるべきことをやる」「聖域なく、例外なく見る」と強気だ。
 ▼首相は、野上農相に農林水産物・食品の輸出拡大と農林水産業の生産基盤強化を指示するなど、農林水産分野の改革も促す。特に輸出額は、昨年実績の約1兆円を2030年に5兆円とする目標達成に向け、年末までの具体的戦略策定を求めている。
 ▼農林漁業者に利益となる改革なら、大いに進めてもらいたい。ただ、輸出額目標達成ありきの戦略策定は、どこかに無理を強いないか。強気一辺倒の姿勢に不安も感じている。

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