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今週のヘッドライン: 2020年11月 2週号

イチゴ観光農園:営農支えた収入保険のつなぎ融資 ―― 荒川祐司さん(栃木県益子町)(1面)【2020年11月2週号】

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 「収入保険のつなぎ融資を早くもらえて助かった。コロナの被害も自然災害も補償してもらえ、とてもありがたい」と話すのは、栃木県益子町東田井でイチゴの観光農園を営む荒川祐司さん(47)。新型コロナウイルスの影響で観光農園の売り上げが平年の3分の1ほどに減少したうえ、出荷用のイチゴも1月の局地的豪雨でハウス内部が冠水し、灰色かび病が発生した。イチゴの収入が平年の半分ほどになったが、8月につなぎ融資を受け取って、作付けなど営農を継続できた。

(1面)

〈写真:NOSAIとちぎ(栃木県農業共済組合)職員(右)と相談する荒川祐司さん〉

家族経営協定締結農家数が過去最多も伸び悩み 20年度目標に赤信号(2面・総合)【2020年11月2週号】

 農林水産省は先ごろ、家族経営協定を締結した農家数は2020年3月31日現在で5万8799戸になったと発表した。前年比617戸(1.1%)増で過去最高を更新し、新規の締結農家数は1500戸だった。その一方で近年の伸び率は低調で、20年度までに7万戸とした第4次男女共同参画基本計画の目標達成は厳しい状況だ。家族経営は全国の農業経営体数の9割以上を占め、日本農業の根幹を支えている。協定の締結は、経営主だけではなく配偶者や後継者も主体的に経営に参画し、能力を存分に発揮できる環境整備につながる。農業経営の改善や発展に向け、協定締結の輪を広げたい。

(2面・総合)

次期作支援金運用見直しで追加措置 交付額の減少に対応(2面・総合)【2020年11月2週号】

 農林水産省は10月30日、2020年度第1次補正予算で措置した「高収益作物次期作支援交付金」の要件変更を伴う運用見直しで、交付予定額が減少、またはゼロになる農家を対象とした追加の支援措置を発表した。同日までに整備した機械・施設の取得費や資材の掛かり増し経費について、見直し前の交付予定額を上限に支援する。

(2面・総合)

柔軟に子育てと両立 時短勤務で働きやすく ―― 吉川農園(石川県能美市)(3面・ビジネス)【2020年11月2週号】

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 園芸施設30アール、露地1ヘクタール(年間)で野菜30品目を栽培する石川県能美市の吉川農園は、子育て中の女性など従業員が働きやすい職場環境の整備に注力する。1日4時間程度の時短勤務を原則に、就業の時間帯や曜日を従業員ごとに設定して契約し、毎日の状況に応じて出退勤の時間を変更できる体制とする。代表の吉川香里さん(51)は「個々の家庭の事情をくんで働ける職場にしたい」と話す。無料通話アプリ「LINE〈ライン〉」による一斉連絡を活用して作業計画を共有し、急な変更も互いに連絡を取り合って日程調整する。

(3面・ビジネス)

〈写真:従業員へ作業担当者などを連絡する吉川さん〉

東京で届ける農の現場 ―― 石坂ファームハウス(東京都日野市)(5面・すまいる)【2020年11月2週号】

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 東京都日野市百草の石坂ファームハウスで代表を務める石坂亜紀さん(46)は、1ヘクタールで水稲やブルーベリー、野菜50品目などを栽培する傍ら、母親の昌子さん(75)とともに農業体験農園40区画を運営し、消費者向けの収穫体験も年間を通じて企画する。参加者に圃場を開放する自由時間を設け、子どもたちが動植物に触れられる機会など、農業が身近に感じられる環境を提供している。

(5面・すまいる)

〈写真:「まだ土中に落花生の実があるんですよ」と助言する石坂亜紀さん(左から2人目)〉

稲WCS用新品種「つきはやか」「つきあやか」 栽培適地広げ増産へ(7面・営農技術)【2020年11月2週号】

 農研機構は10月29日、縞〈しま〉葉枯れ病に強い稲WCS(発酵粗飼料)専用の新品種「つきはやか」と「つきあやか」を育成したと発表した。いずれも、もみが少なく茎葉の収量が多い極短穂茎葉型〈ごくたんすいけいようがた〉品種で、早生の「つきはやか」は、これまでWCS専用品種の栽培が困難だった東北地域で、中生の「つきあやか」は、既存の中生品種「たちあやか」の栽培が難しかった縞葉枯れ病多発地帯での普及が可能になる。農研機構では、極短穂茎葉型品種と微細断収穫機、乳酸菌添加を組み合わせた高品質・低コストな技術体系の普及を図っており、2品種の育成で栽培適地の拡大と増産が期待できるとしている。

(7面・営農技術)

リンゴ80品種、8割が加工向き 料理人のニーズに対応【11月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】料理や飲み物など、加工に適したリンゴを栽培する盛岡市三本柳の有限会社サンファーム(吉田修司代表取締役)。「それぞれの品種の特長を生産者目線で消費者に伝え、リンゴの甘さ以外の魅力も知ってほしい」と吉田美香取締役(51)。リンゴ栽培は12年前に始めた。「酸味や渋味が強い品種は、国内では供給が少ない。しかし、欧米で修業を積んだ料理人や菓子職人からは、現地で使用した品種を求められることが多い」と話す。現在、1.1ヘクタールの園地でリンゴ80品種を栽培。そのうち約8割の品種が「ブラムリーズ・シードリング」や「紅の夢」などで、料理や飲み物への加工に適している。

〈写真:「見た目が和ナシにそっくりなものなどがあり、リンゴの品種は多種多様」と吉田取締役〉

天日干しにスキー場のリフト活用 うま味凝縮「天空米」【11月2週号 新潟県】

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 【新潟支局】スキー場のリフトに掛かった稲が空に昇っていく光景から「天空米」と名付けられた「コシヒカリ」が、南魚沼市石打の石打丸山スキー場で作られている。同市の「株式会社JLC」は、2004年から同市大沢の農家2軒と契約し、天空米を生産・販売する。同社はスキー場関連会社の子会社だったことから、オフシーズンのリフトを活用。リフトを動かしながら、5日から10日かけて稲を干すことで乾燥にムラが無くなる。以前はリフトの安全バーに稲を掛けていたが、リフトにパイプを付けて木材を渡し、2段で掛けられるように工夫。より多くの稲を乾燥できるようになった。

〈写真:リフトを動かしてムラ無く乾燥させる〉

獣害対策に天敵ウルフ 音と光でイノシシ威嚇【11月2週号 山形県】

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 【山形支局】長井市農林課では、同市伊佐沢地内のリンゴ園地にオオカミ型の害獣撃退装置「モンスターウルフ」を設置し、赤外線カメラで24時間動画を撮影して成果を検証している。野生動物が装置に近づき、赤外線センサーが感知すると、LED(発光ダイオード)ライトの目を点滅させながら首を左右に振り、オオカミの声などの威嚇音を出す。威嚇音は、野生動物の天敵のオオカミや人間、銃声などの音源を組み合わせた約60種類で、その音を次々と変え、動物が音に慣れないように工夫した。

〈写真:オオカミ型の害獣撃退装置と装置の設置に協力した園主の川井一弘さん(左から2人目)〉


稲作復興へ父子の挑戦【11月2週号 福島県】

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 【福島支局】東日本大震災で一度は絶たれた稲作経営を再開したのは、浪江町酒田の半谷好啓〈はんがい・よしひろ〉さん(67)と啓徳〈よしのり〉さん(34)親子。「コシヒカリ」「天のつぶ」「こがねもち」のほか、同地域では珍しい多収性品種「みつひかり」を作付ける。「震災の影響で何も耕作していない圃場を見ていられなかった」と啓徳さん。2018年に就農し、現在は水稲6.8ヘクタールの管理に取り組み、好啓さんは裏方で支える。「震災後、息子が会社を退職し就農してくれてうれしい」と好啓さん。15年に実証田として作付けを再開し、地域ではいち早く耕作に取り組んだ。「農業は天候との兼ね合いで、一筋縄ではいかないが、うまくつながってほしい」と希望を託す。

〈写真:生育状況を確認する啓徳さん(右)と好啓さん。「大切なのは、親子だからこそしっかりコミュニケーションを取ること」と啓徳さん〉


Jリーガーが牛飼いへ転身【11月2週号 鹿児島県】

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 【鹿児島支局】プロサッカー選手だった阿久根市脇本の平秀斗さん(26)は、約2年前に現役を引退し実家の畜産業を継いだ。「小さいころからサッカーを応援してくれていた祖父への恩返しになれば」と就農を決意。祖父の義之さん(85)をはじめ、家族と共に繁殖牛42頭、肥育牛3頭の飼育に励んでいる。「周りの方からの『帰ってきたおかげでおじいちゃんが元気になったね』という言葉に支えられている」と秀斗さん。「生き物が相手で、最初は大変だった。でもやった分だけ結果につながると分かり、面白くなってきた」と話す。義之さんは「仕事を安心して任せられるようになった。作業の負担が減りました」と笑顔を見せる。

〈写真:「サッカーで培った周りの状況を見て考えることが役立っている」と秀斗さん〉


防風林「コロナ禍に終始した1年【2020年11月2週号】」

 ▼今年の新語・流行語大賞候補の30語が発表され、過半が新型コロナウイルス感染症に関連すると報じられている。3密(三つの密)やクラスター、ソーシャルディスタンスなど、本来は知らなくてよかった言葉がずらりと並ぶ。
 ▼中国で感染が広がり始めたのは昨年末のこと。1月以降アジアや欧州に拡大し、3月には世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)との見解を示した。4月に入って日本でも緊急事態が宣言され、外出自粛によるステイホームやテレワークなどの対応に迫られた一方で、過剰反応の自粛警察などにも振り回されてきた。
 ▼政府は、感染防止対策や景気浮揚策を打ち出してきた。だが、アベノマスクには不要、無駄遣いとの批判が集中。性急に進めたGo Toキャンペーンは、中小事業者には負担が多いなどの問題が浮上、仕組みの甘さを突く悪用事例がネットで拡散する混乱も生じた。
 ▼明るい話題は映画が大ヒット中の「鬼滅〈きめつ〉の刃〈やいば〉」か。鬼を倒すために全力を尽くす主人公と仲間たちのまっすぐで折れない心が感動を呼んでいるようだ。ワクチンや治療法の確立が大前提となるが、早期のコロナ禍収束をアマビエに祈ろう。

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