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今週のヘッドライン: 2021年03月 2週号

東日本大震災から10年 大きく変わる担い手・農地 水田営農を次世代へ(1面)【2021年3月2週号】

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 東日本大震災から、11日で10年を迎える。津波被害があった東北沿岸部では、農地復旧と同時に、各地で大規模法人の設立や担い手への農地集積などが進み、地域営農は大きく変化した。一方で、急速な高齢化・離農に伴う生産基盤の維持、経営の維持・継承などへの対応も求められている。農業再生の中核を担ってきた経営体では、若手の雇用やスマート農業技術の活用、企業連携による販路拡大など、次の10年へ向けた歩みが進む。

(1面)

〈写真上:「自社産小麦粉の販路開拓を進めていきたい」と有限会社アグリードなるせ(宮城県東松島市)の尾形和利代表〉
〈写真下:ロボットトラクターに乗車する株式会社紅梅夢ファーム(福島県南相馬市)の従業員の飯部尚哉さん。佐藤良一代表(奥)が見守る〉


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 東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から10年を迎える。農林水産省はこのほど、農林水産業の復旧・復興状況をまとめた。津波被災農地の復旧率は本年1月末時点で前年同期比1ポイント増の94%。県別に見ると、岩手県は100%を達成し、宮城県も99%となった。一方で、福島県は75%にとどまる。避難指示区域が解除されていない市町村が12あり、原発事故の影響が色濃く、担い手不足なども相まって、農業生産力の回復が遅れている。風評被害も根強く、払しょくに向けた支援の強化も不可欠だ。農林漁業者が震災からの復興を実感できるまで国全体で支え続けなければならない。

(2面・総合)



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【2021年3月2週号】

21年産小麦需給見通し 国内産は過剰懸念(2面・総合)【2021年3月2週号】

  農林水産省は2月26日、2021年産麦の需給見通しを発表した。国内産小麦の流通量は21年度内供給量28万トンに繰り越し在庫58万トンを足した86万トンとした。生産量は作付予定面積20万4千ヘクタールなどを踏まえて85万トンと見通す。ただ、生産者側の販売予定数量約86万4千トンに対し、需要者側の購入希望数量は約81万3千トンで5万トン以上の開きがある。2年連続の豊作傾向による余剰分解消に向けた需要拡大策が課題となっている。

(2面・総合)

令和2年度家畜診療等技術全国研究集会 畜産現場の最前線から獣医師が成果を発表(5面・特集)【2021年3月2週号】

 畜産現場で診療活動に従事する獣医師が、診療技術に関する研究成果を発表する「令和2年度家畜診療等技術全国研究集会」(主催・全国農業共済協会)が2月25~26日、オンラインで開かれた。19題の発表から、審査(審査委員長・佐藤繁岩手大学教授)の結果、農林水産大臣賞をNOSAI宮城(宮城県農業共済組合)家畜診療研修所の佐藤真由美獣医師らが発表した「黒毛和種出生子牛の血清蛋白〈たんぱく〉分画において成長に伴いβ〈ベータ〉2領域に新たに検出されるピークの分析と臨床的意義の検討」が受賞した。また農林水産省経営局長賞9点(うち吉田賞1点、奨励賞2点)、全国農業共済協会長賞9点が選ばれた。農林水産大臣賞および吉田賞・奨励賞の報告概要のほか、農研機構動物衛生研究部門牛ウイルスユニットの主任研究員・安藤清彦氏の講演概要を紹介する。

(5面・特集)

トビイロウンカ 西日本で20年産米に大被害 箱施用剤の利用を(9面・営農技術)【2021年3月2週号】

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 西日本を中心とした2020年産の水稲に、大きな被害をもたらしたトビイロウンカ。山口県では作況指数73と大不作になった。19年産でも佐賀県で作況が58となるなど、近年被害が続いていて、今年も警戒が必要だ。発生情報の確認と、効果のある薬剤を使用した適期防除に努め、被害を回避しよう。

(9面・営農技術)

〈写真:トビイロウンカの被害を受けた山口県内の水田(写真提供=NOSAI山口)〉

日本農業法人協会の「夢コンテスト2040」 株式会社アグリ・コーポレーション(長崎県五島市)が最優秀賞 "有機"を街の基盤に(3面・ビジネス)【2021年3月2週号】

 日本農業法人協会は1日、設立20周年記念事業として、若手農業者が「20年後の経営ビジョン」を語る「夢コンテスト2040」をオンラインで開催した。各地方から選出された同協会会員の7人が、それぞれの未来像を発表。最優秀賞に長崎県五島市の株式会社アグリ・コーポレーションの佐藤義貴代表(40)が選ばれた。サツマイモの有機栽培を軸に持続的な経営を目指すとする発表内容を紹介する。

(3面・ビジネス)

働く環境を高めよう 農園に広く快適なトイレを設置 ―― 「NPO法人あぐりの杜」で農福連携事業に取り組む井上早織さんに聞く(7面・すまいる)【2021年3月2週号】

 働きやすい職場環境の整備は、従業員の満足度向上につながり、人手不足の解消や生産性の向上なども期待される。農業現場における課題の一つにトイレ問題がある。三重県名張市でコマツナやミズナなど野菜多品目を栽培する株式会社アグリーの取締役で「NPO法人あぐりの杜〈もり〉」ゼネラルマネージャーの井上早織さん(52)は、農福連携事業を展開する中で、働く環境の整備に努めている。設備の概要や設置する際に心がけることなどを聞いた。

(7面・すまいる)

東日本大震災から10年 復興へ歩みを止めず【3月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】東日本大震災で被災しながらも、農地を復旧し営農を再開した宮古市摂待(せったい)の佐々木正平〈ささき・しょうへい〉さん(80歳、水稲150アール)。多くの苦労を乗り越え、収穫の喜び、収入保険加入の必要性など、復興への取り組みを聞いた。

〈写真:「宮古市の復興支援事業を活用してトラクターなどを導入しました。機械管理組合をつくり共同利用をしています」と佐々木さん〉

収入保険加入で苦境乗り越える【3月2週号 埼玉県】

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 【埼玉支局】熊谷市の小沼悟さん(54)は、収入保険に加入して3年になる。現在、家族と共に、水稲12ヘクタール、麦11.5ヘクタール、ネギ70アール、ブロッコリー30アールを栽培し、JAくまがやに出荷する。収入保険には2019年に加入した。NOSAI職員から話を聞いて興味を持ち、説明会に参加。加入した理由を「収入保険は実際の収入額で補償されるため、分かりやすく、合理的であると思いました」と説明する。普段は被害の多い地域ではないというが、20年は天候不順による収量減少や市場価格の低下があり、約4分の1の収入減となった。今後の税務申告後、補てん金が支払われる見込みだ。補てん金については「NOSAI職員が2月中旬に支払い見込み額を提示してくれました。本当に必要な資金なので助かります」と安堵の表情を見せる。

〈写真:ネギの圃場で悟さん。収入保険について「補てん金の適用基準が数字(確定申告)であるので絶対的であり、これも安心です」と評価する〉

便利な「どこでもホース」【3月2週号 宮崎県】

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 【宮崎支局】「新しいアイデアを毎日考えている」と話す都城市高崎町の村脇立雄さん(89)。繁殖和牛15頭を飼養する息子の克己さん(55)を手伝う傍ら、廃材を便利グッズに変身させている。70歳まで続けた大工の腕を生かし、今までに30点に上る作品を作り上げてきたという。新作は一輪車のタイヤとパイプを使った「どこでもホース」。一輪車のタイヤを土台にして、支柱とホースを通すためのパイプを溶接したホーススタンドだ。ホースが固定されるので、両手で水洗いができる。実際に使用した家畜人工授精師からは「手や長靴を洗うのに便利」と好評だ。

〈写真:「どこでもホース」の使いやすさをアピールする村脇さん〉

ハウスの水漏れ防止器具【3月2週号 山形県】

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 【山形支局】天童市荒谷で苗木販売を営む佐藤苗木園の佐藤隆さん(53)は、連棟ハウスの雨どい部からの水漏れを軽減する器具を開発した。この器具は大きさが25センチ×9センチほどで、プラスチック、シリコーンゴム、マグネットの3層構造。フックの取り付け部に亀裂が入るなどで雨漏りしている箇所に、下からシリコーンゴム部分を当てマグネットの磁力で貼り付ける。雨風で落下する可能性は少なく、シリコーンゴムは耐久性に優れ、3年間は継続して使用できるという。サクランボを栽培する佐藤さんは、以前から雨漏りが原因の実割れに悩んでいた。自動車の初心者マークからヒントを得て開発を始め、現在は特許を申請中。価格は未定で今年6月に販売を開始する予定だ。

〈写真:マグネットで取り付けも簡単〉

ヒツジを観光資源に活用【3月2週号 広島県】

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 【広島支局】三原市の佐木島で、観光資材開発と持続可能な活性化を図ることを目的に活動する任意団体「鷺島みかんじまプロジェクト(松岡さくら代表)」では、商品開発や耕作放棄地を活用する事業の一つとして、昨年4月、「羊プロジェクト」を始めた。ヒツジは25アールの農地で雌2頭を飼育する。プロジェクトメンバーの堀本隆文さん(69)は「ヒツジを迎えるために耕作放棄地を開墾した。作業は大変だったが、地域の役に立ってくれればうれしい」と話す。試験的にミカン畑に放牧すると、1日で約46リットルのコンテナ2個分以上の草を食べた。松岡代表は「しっかり食べてくれるので、生産者の負担を軽減できる」と手応えを感じている。佐木島では、60年前まで各家庭でヒツジを飼育し、羊毛を毛糸にしてセーターなどを作っていた。同メンバーの白須一公さん(69)は「ヒツジに触れるのは懐かしい」と話す。2月には、羊毛でミニヒツジの人形を作るイベントをオンラインで開催。新型コロナが収束すればヒツジと触れ合う体験イベントを行う予定だ。

〈写真:「近くにレモン畑があり、そこで放牧してレモンを作りたい」と白須さん(左)と堀本さん〉

防風林「被災地がふるさとになる日まで。東日本大震災から10年【2021年3月2週号】」

 ▼「この時期だけ騒がれても」との声もあると聞くが、3月11日を忘れることはできない。東日本大震災から10年を迎え、メディアの特集企画も増えてきた。人の力など何も及ばない災害に遭い、亡くなられた方々に改めて哀悼の意を、さらに復旧・復興に励む方々には敬意を表したい。
 ▼政府は、復興期間を2020年度までの10年間と定め、交通網などのインフラを整備し、高台移転なども含めた生活再建など環境整備を進めてきた。政府が公表する数値や事例では、課題がありながらも成果を挙げ、前に進んでいるようだ。本当かもしれないが、現地で生活する人たちには、他人に言えない葛藤もあるだろうと想像する。
 ▼例えば、沿岸に整備された高い防潮堤。海が見えない場所はふるさとではないと他県に転居した人の話が報道された。山育ちの身にも気持ちは分かる。幼いころから見慣れた風景があるから懐かしく、帰りたい気持ちも高まる。壁が風景では都市部のビルと変わらない。
 ▼新しい町並みなどが、生活する人のふるさとの風景になる日を望んでいる。

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