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今週のヘッドライン: 2021年05月 1週号

ソーラーシェアリングでサツマイモなど栽培 耕作放棄地ゼロへ――(株)ララキノコ(千葉県睦沢町)(1面)【2021年5月1週号】

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 「目標は、ソーラーシェアリングで耕作放棄地ゼロ」と話すのは、千葉県睦沢町の株式会社ララキノコの伊藤傑代表(42)。同社は、太陽光を営農と発電で共有するソーラーシェアリングに取り組み、サツマイモや菌床シイタケ、ミョウガ、コマツナ、ブロッコリーなどを栽培。直売所などに出荷し、「ソラベジ」の名で独自ブランドを展開する。地域の耕作放棄地を再生し、規模を拡大。ソーラーシェアリングの普及を通じて耕作放棄地の復活を目指す。

(1面)

〈写真:パネルの下の畑でブロッコリーの出来を見る伊藤代表〉

水稲共済の「全相殺方式」 2022年産から白色申告者も加入可能に(1面)【2021年5月1週号】

 水稲共済の「全相殺方式」は、2022年産から収穫量を帳簿などで確認できる白色申告者も加入できるよう、仕組みが改正される。加入者が選択すれば収穫量が1割を超えて減少したときから共済金が支払われ、半相殺などの方式と比べて補償が手厚い。1筆単位の大きな被害も補償対象で、半相殺方式のように被害圃場の収穫量を自己申告する手間もない。最寄りのNOSAIに相談し、経営に合った方式を検討することが大切だ。
 全相殺方式は、乾燥調製施設の計量結果など客観的な数値で収穫量を確認し、農家単位で補償する方式だ。

(1面)

農水省とJA全中、日本農福連携協会が協定締結 農福連携の推進へ(2面・総合)【2021年5月1週号】

 農林水産省とJA全中、日本農福連携協会は4月19日、農福連携の推進に向けた包括連携協定を締結した。3者は協定に基づいて農福連携のメリットの発信や認知度の向上に取り組むほか、農業者と障害者のニーズを把握し、マッチングする仕組みを構築する。農福連携は、障害者の就労や生きがいの場を創出でき、新たな働き手の確保など農業経営の発展につながると期待されている。その一方で、知名度が低く支援体制が整備されていないなどの課題がある。障害者が農業を通して活躍できる農福連携の意義を政府や地方自治体、関係団体が一体となって共有・発信し、全国的な展開につなげたい。

(2面・総合)

収入保険のつなぎ融資 無利子で利用可能 経営継続の支えに(3面・収入保険)【2021年5月1週号】

 収入保険に加入するメリットの一つが無利子のつなぎ融資だ。保険金等の受け取りが見込まれる場合に利用可能で、申請から1カ月程度で貸し付けを受けられる。新型コロナウイルスの影響や自然災害、価格低下など、さまざまな要因による収入減少があっても資金繰りに充当できる。つなぎ融資について稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・収入保険)

飼料用米多収日本一表彰事業 大臣賞の経営 確かな技術で高収量確保(7面・営農技術・資材)【2021年5月1週号】

 農林水産省と日本飼料用米振興協会はさきごろ、飼料用米の多収と省力化の技術水準向上を目指して実施する2020年度飼料用米多収日本一表彰事業の受賞者を発表した。「単位収量の部」と「地域の平均単収からの増収の部」で農林水産大臣賞を受賞した生産者の経営概要を紹介する。

(7面・営農技術・資材)

暑熱順化で熱中症を予防 ―― 一般財団法人日本気象協会メディア・コンシューマ事業部「熱中症ゼロへ」プロジェクトリーダーの曽根美幸さんが解説(5面・すまいる)【2021年5月1週号】

 熱中症による死亡者は、直近3年では毎年千人を超え、65歳以上が約8割を占める。体が暑さに慣れていないこの時期からの熱中症対策が大切だ。今のうちから運動や入浴で体を暑さに慣らす「暑熱順化〈しょねつじゅんか〉」をして重症化を防ぎたい。一般財団法人日本気象協会の曽根美幸さんに、暑熱順化のポイントを解説してもらった。

(5面・すまいる)

ホウレンソウ栽培70年【5月1週号 山口県】

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 【山口支局】「誰にも負けないおいしいホウレンソウを農薬を使わずに作りたい」と話す山口市吉敷の寺西昇一さん(95)。ビニールの張り替えもほとんど自分で作業するほど元気だ。寺西さんがホウレンソウ栽培を始めたのは24歳の時。露地栽培から取り組み、3年目にはビニールハウス4棟を建てた。以来約70年、ホウレンソウを含め多くの野菜を作り続けている。寺西さんは昨年、広島県でホウレンソウの育苗ポットを目にした。その場で農家に話を聞き、今年は栽培に挑戦する。ポット育苗のメリットは防虫や除草管理がしやすく、移植時に根を切ることで苗が丈夫になること。しかし発芽させるのが難しく、試行錯誤を重ねているという。

〈写真:ハウスのビニールを張り替える寺西さん〉

品評会で1位取りたい【5月1週号 鹿児島県】

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 【鹿児島支局】「楽しそうに働く姿はかっこいい」と話すのは、志布志市有明町の草尾隆太朗くん(9)。繁殖牛60頭を飼養する父・隆秀さん(42)の姿を追いかけ、牛飼いになることを夢見ている。サッカーの練習が無い日は、宿題を終えると餌やりや牛舎の見回りが日課だ。お産や手術、セリ市などにも率先して立ち合い、大好きな牛と向き合う日々を送っている。いつの日か父を超える牛飼いになることが目標で、「100頭くらい飼いたいし、品評会で1位を取りたい。大きなトラクターに乗ってたくさんロールを作りたい」。

〈写真:「牛の目はくりくりしていてかわいい」と隆太朗くん〉

自然災害、コロナに負けず 経営安定へ創意工夫【5月1週号 広島県】

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 【広島支局】1953年に創業し、尾道市向島町にイチジク園(40アール)、三原市深町に梅林(2ヘクタール)を所有する万汐農園(尾道市向島町、スタッフ12人)。2代目の濱浦志保香代表(63)は、昨今の自然災害やコロナ禍の中で、栽培・加工・観光事業を並行して行うため、さまざまな工夫を凝らしている。柱の一つの観光事業では、3月のウメの花見、6月のウメもぎ体験、9月からのイチジクもぎ取り体験に、年間約8千人が来訪。来園者に楽しんでもらう工夫として、園内から遠くの山々を望める展望台や自撮り用の撮影台などを設置した。散策しながら楽しめるクイズラリーには、「農園や地域のことを楽しく知っていただきたい」という濱浦代表の思いが込められている。近年の豪雨で園地が流失する甚大な被害を受け、創業時から続けてきたかんきつ栽培を断念。地元のかんきつを取り寄せ、農産加工に一層力を入れている。

〈写真:「農園に携わって40年近くになりますが、いまだに課題は尽きません」とウメの木を手入れする濱浦代表〉

簡単・安全にイノシシ駆除 檻に取り付ける感電装置を開発【5月1週号 石川県】

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 【石川支局】輪島市門前町和田の吉田政一さん(74歳、水稲196.8アール)は昨年、檻に取り付け、スイッチ一つでイノシシの駆除作業ができる装置「楽勝」を開発。離れた場所から見ているだけなので、簡単で安全だと地元の猟師から好評を得ている。楽勝はイノシシを捕獲する金属製の箱檻に設置。長さ2メートルの鉄パイプを檻の隙間から通し、檻に接触する部分は塩化ビニールで保護する。檻の大きさに合わせて鉄パイプを調節・固定できるという。電源を入れ、檻の中でイノシシが動き回り装置に触れると同時に感電し、約1分後には死亡する仕組みだ。従来の駆除作業は、イノシシを捕獲した後に竹や角材などで追い詰め、動きを封じてから電気を流す棒を突き刺すという危険な作業だ。楽勝を取り付けた檻の場合は、イノシシが檻に入った後に電源スイッチを入れるので、従来の方法より危険度は低い。昨年10月末に特許を出願、12月に登録された。

〈写真:動物駆除装置「楽勝」を手に吉田さん。楽勝は2万円で販売している〉

廃棄を回避、フードロス削減へ コマツナをパウダー加工【5月1週号 新潟県】

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 【新潟支局】「フードロス削減のため、コマツナをパウダーに加工しました」と話すのは、有限会社坂井ファームクリエイト(新潟市江南区)の代表取締役・坂井涼子さん(38)。同社は水稲約4.5ヘクタールを作付けるほか、ハウス23棟でコマツナを周年栽培し、年間100万袋を生産する。「昨年は全国的に野菜が豊作で供給量が多くなり、出荷先であるスーパーと生協へ出荷できないコマツナが出てしまいました」と坂井さん。廃棄せざるを得ない状況だったが、一部を加工業者に依頼し、パウダーに加工した。コマツナをしっかりと脱水して乾燥した後、パウダー状に加工。「小松菜パウダー」1袋に40袋分のコマツナが使われる。同社の小松菜パウダーは、葉の部分を中心に使用するため、栄養価が高く、鮮やかな緑色が特徴だ。紫外線で色が変わらないように、包装にはアルミ袋を使う。

〈写真:「栄養豊富なコマツナをパウダーにしました」と坂井さん〉

防風林「風評被害の現実を直視しているのか【2021年5月1週号】」

 ▼科学的に「安全」と証明されるとしても、財務相が「飲める」と発言したり、説明資料にゆるキャラ風のイラストを使ったりと軽率な対応が目立てば、福島県民の気持ちを逆なでするのも当然だ。東京電力福島第一原発で増え続ける処理水について、政府は海洋放出の方針を発表したが、漁協をはじめ関係者の大反発を招いている。
 ▼菅義偉首相は会見で「風評被害で復興への希望が失われてはならない。政府一体で全力を尽くす」と強調した。だが、原発事故から10年たった現在も風評被害は解消されていない。農林水産省による米や牛肉、ヒラメなど重点6品目の調査では、震災前の水準まで出荷量は回復せず、価格差は縮小してきたものの、牛肉やモモは全国平均を下回る。原発事故を理由に輸入制限を続ける国も残っている。
 ▼こうした風評被害の実態があるのに、一方的に処理水の放出が決められたのだ。政府関係者は、不安を抱える地元漁業者などの声に真剣に向き合ってきたと胸を張れるのか。科学的な安全性を強調する前に、風評被害の解消が実感できる状況を作るべきだろう。自助や共助では対応困難な問題だからこそ、政府の姿勢と対応が問われるのだ。

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