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今週のヘッドライン: 2021年07月 2週号

けがからの再起にかける 量より質のミニトマト(S級ファーム/三重県いなべ市)(1面)【2021年7月2週号】

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 「トマト作りでもS級を目指したい。けがをしている4カ月の間に、よりおいしいトマトを作りたいという思いがより深まった」と話すのは、三重県いなべ市員弁町でミニトマト25アールを栽培する「S級ファーム」の日紫喜修司代表(57)。「量より糖度」を掲げ、夫婦2人で10度程度の高糖度ミニトマトの生産を実現する。しかし、年明けに日紫喜代表と妻が相次いでけがをし、3月には収穫を断念。現在は、9月に定植する次期作に向けた太陽熱消毒など栽培の再開に向け可能な作業をする。

(1面)

〈写真:日紫喜代表。受粉にはハチを利用し、省力化する。〉

農地バンク プラン法定化など関連施策見直し(2面・総合)【2021年7月2週号】

 農林水産省は6月25日、2020年度に農地中間管理機構(農地バンク)を通じて新たに担い手に集積された農地は、前年度実績比で3092ヘクタール増の1万8572ヘクタールと発表した。その結果、全耕地面積に占める担い手の利用面積のシェアは0.9ポイント増の58.0%となった。同省は23年度にシェア8割とする目標達成に向け、人・農地プランをルールとして法定化を含めて位置付け、農地バンクを軸に持続的な農地利用を実現する関連施策パッケージを年内をめどにまとめる方針だ。高齢化や人口減少が進む中、生産基盤である農地を最大限維持し、持続的に利用されるよう、地域の多様な人材による合意形成を進めることが大切だ。

(2面・総合)

IPM推進を提起 植物防疫で中間論点整理(2面・総合)【2021年7月2週号】

 農林水産省は6月30日、気候変動や国際化などへの対応を協議する植物防疫の在り方検討会を開き、中間論点整理をまとめた。国内防除では、病害虫が発生しにくい生産条件の整備をベースとした総合的病害虫・雑草管理(IPM)の推進を提起した。

(2面・総合)

酪農の「働き方改革」推進 日本生産性本部がガイドブック(3面・ビジネス)【2021年7月2週号】

 公益財団法人日本生産性本部は、酪農家の労働時間短縮など生産性向上に向けたガイドブックとチェックリストを開発した。工程や作業の無駄や危険な要素を見つけ、費用をかけずに解決する「カイゼン」活動を応用した。実証農場では労働時間が約10%短縮する見込みだという。ガイドブックとチェックリストは、希望者に無償で提供しており、酪農の「働き方改革」実践を呼びかけている。

(3面・ビジネス)

ミントの有効活用 手作りドリンクで夏を涼しく(5面・すまいる)【2021年7月2週号】

 生育旺盛なミントは、雑草化すると減らすのが難しいことでも知られる。それならば、涼しげな香りやハーブとしての効能を生かし、大量消費できる工夫はないものか? ハーブインストラクターとして活動する宮城県登米市の農家・早坂幸さ野や華かさんに、夏の水分補給にぴったりの手作りドリンクの作り方を教えてもらった。

(5面・すまいる)

映像通信で農作業を遠隔支援(7面・営農技術・資材)【2021年7月2週号】

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 東京都農林水産振興財団は企業と共同で、高画質な映像通信によって、遠くの専門家から栽培の助言を受けられる遠隔農作業支援の実証を開始した。施設栽培の大玉トマトで、作業者がゴーグル型の通信端末「スマートグラス」を装着して視線に映る光景を共有し、摘果など管理の判断を助ける。指導関係者側からカメラ付きロボットなどを使って生育状況を即時に把握することも可能だ。同財団東京農林総合研究センターが開発した環境制御技術と組み合わせ、栽培未経験者でも高糖度トマトを10アール当たり40トン収穫できる体系構築を目指す。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:スマートグラスを装着した作業者〉

素牛選び・飼料を重視、飼養管理を確立 阿波牛の経営拡充【7月2週号 徳島県】

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 【徳島支局】阿南市那賀川町の「のべ牧場」は、清く澄んだ空気と水、自然に恵まれた環境下で、無添加・無薬を心がけ飼育する黒毛和種肥育牛「阿波牛」を出荷。市場で高い評価を得るとともに、精肉の直営店「阿波牛の匠のべ」は開店と同時に整理券待ちの列ができるほどだ。代表を務めるのは延隆久さん(56)で、約350頭の阿波牛を飼育し、全国100店舗以上の直売店に卸している。自身で買い付け、飼育、販売した結果が実を結び、同時期に出荷した牛のほぼ100%がA4ランク以上を獲得。阿波牛と名乗る基準を満たしたことで、店舗の屋号を現在の「阿波牛の匠のべ」に変え、経営を拡充した。「自分の牧場と肥育スタイルに合った素牛を見極めて買うのが、一番重要で大きい責任。父から教わったノウハウを基に、飼料メーカーとともに飼料の種類や給餌のタイミングなどを試行錯誤の末に確立し、育て方を均一化できたことで、現在は300頭を超える牛を従業員に安心して任せられるようになりました。今は従業員が牛を育てやすい環境を整えることに気を配っています」

〈写真:直営店「阿波牛の匠のべ」の開店前の行列〉

ICTで遠隔監視、時短+コスト削減【7月2週号 富山県】

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 【富山支局】「スマート農業のモデル地区を目指して、省力化と農機具の近代化に力を入れている」と話すのは、南砺市の小坂営農組合の常本孝悦さん(70)。米の生産を主体とする同組合は、情報通信技術(ICT)を活用した水稲栽培の実証実験に、「となみ衛星通信テレビ株式会社(TST)」と「株式会社farmo」と共同で取り組む。タブレット端末による育苗ハウスのモニタリングと水田の水管理省力化事業を2018年にスタート。育苗ハウスには温度と湿度、地中温度を測定できるセンサーを設置。タブレット端末でハウス内の状況がリアルタイムに確認できる。水田管理の省力化事業は、試験圃場内に水位センサーと水口に水門の役割となる給水ゲートを設置し、現地に行かずに水位の確認と給水ゲートの開閉の調整をできるようにした。スマート農業プロジェクトを支援するTSTの浅谷一寛さんは「いずれも省電力で広域の無線通信が可能な『LPWA』で通信をして、安価で見やすいアプリで提供することで実現できた。その結果、管理にかかる時間の大幅な短縮とコスト削減につながった。現在は、タブレットだけではなく、テレビでも育苗ハウスの温度や圃場の水位の確認ができるように取り組んでいる」と話す。

〈写真:試験圃場で。手前から常本さん、小坂営農組合サイバー担当の北村孝志さん、TSTの浅谷さん〉

ホップのつるが高強度の繊維に【7月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】一般社団法人遠野みらい創りカレッジ(樋口邦史代表理事)はこのほど、横浜国立大学の川村出准教授らとの共同研究で、廃棄されるホップのつるから「セルロースナノファイバー(CNF)」の分離に成功した。CNFは、自動車などの部材に使う植物由来の繊維素材。農業廃棄物を活用した農家の所得向上と、SDGs(持続可能な開発目標)達成が期待される。ホップのつるは5メートル以上に成長する。毬花の収穫を終えると、廃棄物として処分されることが多いという。元遠野みらい創りカレッジマネジャーで、現在は遠野市生涯学習スポーツ課の西村恒亮主任は「廃棄されるホップつるの利活用を模索していた。2020年8月に行った学生との討論で、CNFの原料に生かしてみようということになった」と振り返る。CNFは、植物の細胞壁にあるセルロースから作られる超極細繊維で、鉄と比べ軽量で強度が高い素材。植物から作る素材のため、成長する過程で二酸化炭素を吸収し酸素を放出することから、石油・石炭などの化石資源で作る素材に比べて、温室効果ガスの削減につながるという。

〈写真:「農家の所得が増えれば新規就農や定着へのハードルを下げることができる」と西村さん〉

トマト契約栽培で経営拡大に弾み【7月2週号 山形県】

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 【山形支局】水稲約64ヘクタール、大豆約29ヘクタール、啓翁桜5ヘクタールなど約100ヘクタールで土地利用型農業を展開する長井市成田の農事組合法人成田農産では、カゴメ株式会社と契約し、ジュース用トマトの露地栽培に取り組んでいる。代表を務める飯澤和郎さん(63)は「安定した収穫量が確保できれば収入を期待できる作物」と話す。2017年に成田地区で計画された大規模基盤整備事業を機に、県西置賜農業技術普及課から高収益の園芸作物の栽培を勧められ、飯澤さんは「栽培面積を増やせるのではないか」と、10アールだけトマトを試験栽培した。その結果、栽培適性や必要な作業管理の確認ができたため、翌18年は作付けを約1ヘクタールにまで拡大し、JA山形おきたまとJA全農山形本部を通してカゴメと栽培契約を結んだ。作付けを徐々に増やし、現在は約2.4ヘクタール栽培する。栽培契約は、作付面積を基準に必要量の苗をカゴメから購入し、出荷基準をクリアしたトマトは全量買い取られる仕組みだ。毎年配布される栽培マニュアルに沿って管理するとともに、カゴメの指導者が頻繁に栽培指導に訪れて生育状況を確認し、アドバイスするという。また、契約後2年間は、専用の収穫機をカゴメからレンタルした。

〈写真:4月下旬に専用の作業機で定植(写真提供=山形食品株式会社)〉

防風林「年々強まっている異常気象の脅威【2021年7月2週号】」

 ▼カナダ西部のリットンで6月29日、最高気温49.6度を記録。暑さが原因と思われる突然死が数百人に及んだと報道された。気象庁の異常気象速報(臨時)によると、北米のほか、欧州東部からロシア西部、東シベリアなど北半球の広い範囲で6月下旬から顕著な高温が続いているという。
 ▼リットンは緯度50度で、東京(35度)より北に位置する。6月の平均気温は25度ほどで東京と変わらない。28日に気温46.7度となった米国オレゴン州ポートランド(45度)、22日に36.5度となったロシア東部のビリュイスク(63度)なども高緯度にあり、本来なら過ごしやすい時節ではなかったか。
 ▼北半球の顕著な高温の要因について、気象庁は偏西風が大きく蛇行したためと説明する。民間の気象予報士の解説では、偏西風の北上に加え、高温になった地域は高気圧の異常な発達が起きたとしていた。
 ▼偏西風が蛇行する位置によっては、日本が異常高温に見舞われたかもしれない。地球温暖化が進む中、異常気象の振れ幅は年ごとに大きくなっていないか。

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