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今週のヘッドライン: 2021年09月 2週号

産地の次の一手へ GAP認証 国際基準対応など4種類取得 働きやすさ改善し安全の裏付けを科学的に ―― はねだ桃園(福島県桑折町)(1面)【2021年9月2週号】

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 「食の安全意識の高さを発信し、世界で一番有名なモモ産地として知ってもらいたい」と福島県桑折町でモモ4ヘクタールを栽培する「はねだ桃園」の羽根田幸将さん(31)。国際基準も含め4種類の農業生産工程管理(GAP)認証を取得。従業員の働きやすさや農薬の適正管理など経営改善を実践し、百貨店向け出荷やタイへの輸出に取り組む。他の生産者にも認証の手順や利点などを紹介し、産地振興を図る。

(1面)

〈写真:収穫目前のモモ「幸茜」を確認する羽根田幸将さん〉

農水省 米作柄概況(8月15日現在)発表 東日本の主産地中心に26道府県「平年並み」以上 需給安定へ動向注視(2面・総合)【2021年9月2週号】

 農林水産省は8月31日、2021年産水稲の作柄概況(8月15日現在)を発表した。作況指数106以上に相当する「良」は青森の1県、102~105に相当する「やや良」は北海道や岩手、山形など5道県、99~101に相当する「平年並み」は新潟や秋田、福島など20府県となった。一方で、大雨や日照不足の影響を受けた西日本を中心に20都府県は95~98に相当する「やや不良」を見込む。東日本の主産地を中心に26道府県が「平年並み」以上を占める中で、主食用米の需給と価格の安定に向け、今後の作柄や持ち越し在庫となる20年産米の販売が焦点となっている。

(2面・総合)

農水省 農業保険関連予算概算要求を決定 収入保険に206億3800万円 農業共済は828億4600万円計上(2面・総合)【2021年9月2週号】

 農林水産省は8月31日、2022年度の農林水産予算概算要求を決定し、財務省に提出した。総額は21年度当初予算比で16.4%増の2兆6842億円。
 農業保険関連では「収入保険制度の実施」に206億3800万円(前年度176億9500万円)を計上。農業共済関係事業に828億4600万円(838億8800万円)のほか、農林水産省の共通申請サービスを利用して加入申請などができるようにする農業保険事務処理システム整備として新規で7億9500万円を計上した。

(2面・総合)

多発する農作業事故 手厚い補償の労災保険に特別加入を(5面・すまいる)【2021年9月2週号】

 「秋の農作業安全確認運動」が1日に始まった。2019年の農作業事故による死亡者数は281人。乗用型農業機械ではシートベルト・ヘルメットの着用徹底などが死亡事故防止に重要だ。万が一の被害に備え、療養・休業給付や遺族給付などを受け取れる労災保険への加入を検討してほしい。加入義務のない農業者でも、一定の要件のもとに特別加入という形で任意加入が可能だ。

(5面・すまいる)

タバコカスミカメの天敵製剤 トマトのIPM防除の構築へ(7面・営農技術・資材)【2021年9月2週号】

 難防除害虫のアザミウマ類やコナジラミ類を捕食する天敵昆虫・タバコカスミカメが5月に農薬登録され、商品名「バコトップ」として市販化された。西日本では土着天敵を利用した防除がナスやピーマンなどで普及する一方、東日本では生息密度が低く野外での採集が難しいため、天敵製剤の活用が見込まれている。特にトマト黄化葉巻病を媒介するタバココナジラミの防除で、IPM(総合的病害虫・雑草管理)体系の構築に期待が高まっている。農研機構がこのほど開催したシンポジウムでは、タバコカスミカメの特性や導入事例などが報告された。

(7面・営農技術・資材)

主食用米 付加価値創出で需要開拓 生産者や卸・小売業者がサミット(3面・ビジネス)【2021年9月2週号】

 主食用米の販路拡大に向けた付加価値向上をテーマに、第2回水稲サミット(主催・アクセスインターナショナル)が8月27日、オンライン形式で開かれた。生産者や卸・小売業者、流通の有識者などが参加し、産地や品種以外の付加価値化の重要性をはじめ、栽培情報や食味のデータ化による需要開拓の可能性などが話し合われた。

(3面・ビジネス)

繁忙期の農場へ職員派遣 町内14事業者が組合員【9月2週号 島根県】

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 【島根支局】津和野町では、繁忙期に人材が必要な農業従事者などへ職員を派遣する「津和野町特定地域づくり事業協同組合」を設立した。さまざまな業種から人材不足の声を把握していた同町では、解消の一手として、酒類製造業や農業者の発起人を委員とした同組合の準備委員会を2020年に設立。協議を重ね、創立総会や県の認可を経て、今年5月に派遣事業を開始した。お互いを補う活動が、地域振興を広げる良い循環となることが期待される。初年度となる今年は、組合員としての利用希望が町内で14事業者(うち農業従事者は12)あった。一方、職員は20代のIターン者など4人を採用した。「職員にはいろいろな業種に出向いて経験を積んでほしい」と話すのは、古橋酒造代表取締役の古橋貴正さん(55)。同組合の代表理事を務める。派遣スケジュールは組合員の要望を元に、職員ごとに作成する。同じ事業所で働くこともあれば、毎日違う場合もある仕組みだ。職員の小林愛真美さん(26)は「今は2人の組合員の所へ出向いています。農業の楽しさや作業の違いが学べて、やりがいのある毎日です」と話す。

〈写真:「農作業は健康的で楽しい。これからも津和野町で頑張ります」と小林さん〉

収入保険・私の選択 コロナ禍で茶の売り上げ減、保険金を経費に【9月2週号 奈良県】

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 【奈良支局】「収入保険に加入していて本当に良かった」と話すのは、奈良市で茶3.3ヘクタール、水稲1ヘクタール、イチゴ(ハウス3棟10アール)を栽培する筒井哲彦さん(44)。昨年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で茶の需要が減り、売り上げが減少した。また、単価が例年より1キロ当たり500円も下がったため大きな損害となり、保険金を受け取った。「おかげで肥料代など必要経費の支払いができた」と筒井さん。遅霜の発生には毎年気を付けている。特に5月中旬の遅霜の影響を受けると、茶葉が黒く縮れてしまう。今年は4月10日から2日続けて霜が降りたが、茶芽が出てくるのが遅かったため、影響は少なかったという。以前は茶共済に加入していた筒井さん。「収入保険は補償の範囲が広く、収入が減少すれば補償してもらえる。9割補償にも魅力を感じた」と話すように、迷わず収入保険に切り替えた。筒井さんは収入保険未加入農家に加入の検討を勧める。「新型コロナウイルス感染症のように、予想していなかったことが起こったときも補償してもらえる。収入保険にぜひ加入して、安定した経営を築きましょう」。また、国の災害対策や各種補助事業で農業保険への加入が要件化されていることを注意点として挙げる。今後については「3年前に定植した新しい品種のお茶が良品質になるよう管理していきたい。そして、これからもおいしいお茶をたくさんの人に届けたい」と笑顔で話す。

〈写真:「たくさんの方においしいお茶を飲んでほしい」と寒冷紗をかぶせる筒井さん〉

ドローンを導入しやすく【9月2週号 三重県】

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 【三重支局】津市で水稲15ヘクタールを栽培している株式会社つじ農園(辻武史代表取締役=44歳)では、農家の高齢化と離農による担い手の作業負担増大などの解消に向け、小型無人機(ドローン)を複数の生産者と共有する「ドローンシェアリング」で導入した。個人で高額なドローンを購入しても、稼働面積が小さく、費用対効果が低いことが導入の妨げだった。ドローンシェアリングを採用したことで、1人当たりの負担が軽減され、導入しやすくなった。操縦するオペレーターは、機体と同様にほかの生産者とシェアして作業を依頼するため、労働時間の削減につながるという。ドローンは農作物を空撮し、写真から得られる数値を解析する「リモートセンシングドローン」と、農作物に対して空中から資材を散布する「散布ドローン」を導入した。同社では今後、積極的に実演会などを開き、ドローンシェアリングで多様な人々が農業に関わることができる基盤の形成を目標としている。

〈写真:粒剤を散布するドローン〉

受診促す八重のアサガオ【9月2週号 高知県】

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 【高知支局】ハウスミョウガ33アールを栽培しながら、自宅で八重咲きのアサガオ「スプリットペタル」を育てている須崎市浦ノ内の矢野悦子さん(60)。「今年もピンク色の花がきれいに咲きました」と話す。スプリットペタルを育て始めたのは、民泊を通じて2002年から家族ぐるみの付き合いがある秋田県の家庭から種を譲り受けたことがきっかけだった。種を譲ってくれた秋田県の家庭では、娘を乳がんで亡くしている。実母を乳がんで亡くした矢野さんは、スプリットペタルのピンク色を見て、乳がん検診の早期受診を推進するピンクリボン運動が頭に浮かんだという。アサガオは、秋田県の家庭で亡くなった娘の名前から「由布子〈ゆうこ〉」と愛称を付け、JA土佐くろしおを通じて希望者に種を配布することにした。現在は同JAの本所・支所すべてで花を咲かせている。矢野さんは「母親というのは、家の中の太陽。自身のためだけではなく家族のためにも、アサガオが咲く頃に検診のことを思い出し、ぜひ受診してほしいです」と話す。

〈写真:「由布子」と名付けたスプリットペタル〉

未来に残したい早田ウリ【9月2週号 山形県】

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 【山形支局】鶴岡市早田〈わさだ〉の「早田ウリ保存会」(会員18人、会長・本間新さん=72歳)は、12年ほど前から4㌃で在来作物「早田ウリ」の栽培に取り組む。早田ウリは、大正時代に北海道から持ち込まれたウリと地元のウリが交雑してできた品種。当時は貴重な甘味として重宝されたが、より糖度の高いメロンの人気に押され、栽培者が減少した。「早田ウリは糖度が10度前後と決して高くないが、素朴で懐かしい味」と本間さん。地域の人と協力して種をつなぎ、未来に残したいという思いで栽培を始めた。電気柵の設置や果実を肥大させるための芯止めなど苦労が多いというものの、「会員との共同作業は楽しく、収穫体験などを通してできた人脈が宝物となっている」と笑顔で話す。早田ウリは毎年8月上旬の約10日間しか収穫できず、日持ちも良くない。そのため、本間さんらは通年味わえる「早田ウリジェラート」を考案し、約6年前に販売を始めた。「生で食べる以外にジュースやゼリーにするのもお勧め。多くの方に早田ウリの魅力を感じてほしい」と話す。

〈写真:早田ウリを手に「さっぱりとした甘味で、食べるとほっとする」と本間さん〉

防風林「パラリンピックにみた"あるものを最大限に生かす"強さ【2021年9月2週号】」

 ▼帰宅するとパラリンピックのテレビ放送を視聴する毎日だ。競技のルールも知らず、出場する選手も初めて知る人ばかり。しかし、画面越しでも、選手の表情や真剣に競い合う姿に迫力や感動を覚える。単純に面白く、もっと早く知りたかったと思う。
 ▼パラリンピックの起源は、医師のルードウィヒ・グットマン博士が提唱し、1948年にロンドン郊外の病院で開かれたアーチェリーの競技会だという。第2次世界大戦で脊髄を損傷した兵士のリハビリが目的だった。
 ▼博士には「失われたものを数えるな、残されたものを最大限に生かせ」との言葉があるそうだ。水泳の解説者が「障がいの内容は一人一人違う。個々が自分に最適な泳ぎ方を工夫している」と話していた。
 ▼新しい農村施策の方向として農林水産省は、地域資源をフル活用する「農山漁村発イノベーション」推進を掲げる。地域資源のフル活用は、パラアスリートの創意工夫に近いものと考えた。多様な集落の個別事情に応じた最適解を探さなければならない。

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