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今週のヘッドライン: 2021年10月 4週号

多発する自然災害、病害虫、価格低下......備え万全に複合経営(1面)【2021年10月4週号】

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 「農業は自然災害などには弱い。被害があると生活に大きな影響がでるので深刻な問題だ」と話すのは、埼玉県久喜市菖蒲町の野川信幸さん(68)。水稲とイチゴの複合経営で自然災害や病害虫、価格低下のリスクに備え、収入保険や園芸施設共済に加入する。2014年2月の大雪ではハウスの屋根が陥没する被害を受けたが、園芸施設共済の共済金も活用して同年9月に再建し、10月からの次期作は平年通り栽培できた。

(1面)

〈写真:再建したハウスで大雪被害について説明する埼玉県久喜市菖蒲町の野川信幸さん〉

日本農業法人協会が2020年版農業法人白書を公表 平均売上高2.5%増で過去最高に コロナ禍でも堅実経営(2面・総合)【2021年10月4週号】

 日本農業法人協会はこのほど、「2020年版農業法人白書」を公表した。新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、20年の平均売上高は前年比2.5%増の3億5436万円と、2000年の調査開始以来、過去最高を更新した。前年実績比では増収が23.5%、横ばいは36.4%、減収は40.1%だった。同協会会員の経営規模は、20年農林業センサスの全国平均と比べ、稲作は36.2倍、露地野菜は34.3倍、肉用牛(肥育牛)は22.9倍など全業種で全国平均を大きく上回る。一方で、70代以上の経営者が17.7%を占めるなど承継問題や労働力確保など経営課題にも直面する。

(2面・総合)

収入保険 野菜価格安定制度との同時利用 農水省が2年間に延長で意見募集(2面・総合)【2021年10月4週号】

 農林水産省は20日、新たに収入保険に加入する者が野菜価格安定制度と同時利用できる期間を、現行の1年間から2年間に延長する農業保険法施行規則の一部改正案をまとめ、「パブリック・コメント」の募集を始めた。改正案は、意見・情報を考慮して決定する。施行および公布は11月下旬の予定だ。

(2面・総合)

天候不順、病虫害......被災経験伝える 農業保険を全ての人に ―― NOSAI福岡のNOSAI部長(3面・NOSAI部長)【2021年10月4週号】

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 NOSAI福岡(福岡県農業共済組合)では、自身の被災経験を伝え、農業保険への加入を呼び掛けるNOSAI部長がいる。中山間地と市街地の地区で活動する2人のNOSAI部長を訪ね、その思いを聞いた。

(3面・NOSAI部長)

〈写真:「10月に薄着で作業するようになるとは」と宗像市池田の釣山地区を担当する樋口芳明さん(右)。取材当日は10月中旬で、最高気温30度を記録した〉
〈写真:新たに導入した農機の前で朝倉市一木の一木8地区でNOSAI部長を務める窪山利光さん(左)〉

サツマイモ基腐病が拡大 残さが感染源 除去・すき込み徹底 次作へ予防を(7面・営農技術・資材)【2021年10月4週号】

 サツマイモ基腐(もとぐされ)病が九州・沖縄3県の産地に大きな被害を与えている。今年は関東などでも発生確認があり、次作に向けて注意が必要だ。現状では根絶できる技術がなく、土壌汚染が進むほど防除が困難になる。早期発見とともに、収穫後の圃場の残さ除去、健全種苗の確保などリスクを最小限まで抑える管理が求められる。

(7面・営農技術・資材)

国産果実 伸びる輸出 中華圏の需要大(4面・流通)【2021年10月4週号】

 国産果実の輸出が好調だ。農林水産省が発表した2021年の輸出額(1~8月)を品目別にみると、リンゴは前年同期比68.5%増の68億6500万円、モモは32.2%増の20億300万円、ブドウは23.3%増の17億4300万円、かんきつは72.6%増の5億8700万円となっている。優れた品質がアジアをはじめ、諸外国で高く評価されていることが挙げられる。同省では、コロナ禍に伴う出入国制限で「せめて日本産の果物を食べよう」との家庭内需要の増加も影響したとみる。

(4面・流通)

ススキや廃材を使って手作り掃除グッズ ―― フリーライターの和田義弥さんに聞く(5面・すまいる)【2021年10月4週号】

 身近な材料を使って、あると便利な掃除グッズを手作りしてみませんか。ススキが材料のほうき、廃材の銅板などを使ったちりとりを、フリーライターの和田義弥さんに紹介してもらいます。

(5面・すまいる)

日本農業遺産・落ち葉堆肥農法でおいしい「川越いも」【10月4週号 埼玉県】

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 【埼玉支局】「『富の川越いも』をたくさんの人に知っていただき、おいしいサツマイモをお届けしたいです」と話すのは、三芳町上富で「いも早川」を営む早川忠男さん(62)。伝統的な落ち葉堆肥農法に取り組み、85アールでサツマイモ「紅赤」「シルクスイート」「ベニアズマ」「べにはるか」を生産する。落ち葉堆肥農法は、平地林を育て、集めた落ち葉を熟成させ堆肥にし、それを畑に投入して土壌を改良する。江戸時代から300年以上続く農法で、2017年には「武蔵野落ち葉堆肥農法」として日本農業遺産に認定された。早川さんはコナラやクヌギなどの広葉樹の落ち葉を年明けごろに収集。その後は堆肥場に運び、ぬかなどと混ぜ微生物の働きで発酵させる。堆肥になるまでは2年ほどかかるという。落ち葉堆肥を施用した畑の土は、足を踏み入れると押し戻されるような弾力があり、サツマイモ栽培に適している。スコップなどを使わなくても手で掘り返せるほど軟らかいため、収穫作業がしやすい。水はけが良く軟らかい土で育ったサツマイモは、根をしっかりと張り養分を吸い上げ、広々とした畑で夏場に成長し、秋に向かって芋を太らせる。収穫後は少し寝かせ、追熟させることで甘味を引き出す。早川さんは「三芳町川越いも振興会」の会長を務める。振興会では、サツマイモの女王と称される紅赤を後世に残すことを目的として、1992年に29軒の生産農家で組織された。紅赤は、品種改良されたサツマイモが無い時代から甘くておいしいと評価され、親しまれてきたが、栽培が難しく収量が少ないため希少品種となっていた。落ち葉堆肥をふんだんに使用した畑で紅赤を栽培すると、色や形、味のそろった良いものを作るこができるという。歴史が育んだ土で作る川越いもは、滋味が深く、色や形に優れたサツマイモとして認知されている。地元だけではなく県外から買いに来る客も多い。早川さんは「コロナ禍が収束したら、イベントの開催や産業祭への出店を積極的に行っていきたいですね」と話す。

〈写真:「サツマイモを購入されたお客さんが『甘味があってとてもおいしかったよ』と再び買いに来てくれたときが何よりもうれしいです」と早川さん〉

収入保険・私の選択 コロナ禍、けが......つなぎ融資で不安解消【10月4週号 徳島県】

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 【徳島支局】ハウススダチを親の代から栽培して40年になります。3月から6月まで収穫して、徳島北農協から主に京阪神、東京に出荷されます。昨年のコロナ禍では、飲食店の営業自粛などの影響でスダチの需要が低下し、例年の4割ほど単価が下がりました。同じ年の5月には母親がけがをして、作業人数が減ったため収穫量が減少しました。経費の支払いの時期で資金繰りの不安があったため、つなぎ融資を申請しました。申請は、NOSAI職員に価格低下幅や収穫量を伝えるくらいで、難しい手続きはありませんでした。資金が必要な時期までにつなぎ融資を受けられたので、ハウスを加温するためのガス代やビニール代の支払いに充てることができました。無利子で受けられるところが農家としてとても助かるポイントですね。農業大学校の同級生だったNOSAI職員の勧めがあり、お付き合い程度の気持ちで加入をしたところ、予想に反して初年度から保険金を受け取ることになりました。今年3月には私が作業中にけがをしてしまい、2週間ほど入院しました。3月はハウススダチの単価が一番高い時期なので、今年の収入でも減少を見込んでいます。自然災害や施設の故障、けがなど、予測できない事態はたくさんあると実感しています。幅広いリスクに備えられるので、収入保険に加入していて本当に良かったと思っています。
 ▽56歳▽ハウススダチ36アール

〈写真:「予期せぬことを予測して備えることが大切だと感じています」と北野さん〉

防護柵設置に地域住民協力 野生獣の侵入阻止に成果【10月4週号 広島県】

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 【広島支局】広島市安佐北区白木町井原では、シカやイノシシによる農作物被害を防ぐため、地域住民が協力し防護柵を設置した。作業の中心となった井原地区町内会自治会連絡協議会では、「集落を柵で囲ったことで、シカなどの侵入が確実に減った」と効果を実感している。防護柵に使用したワイヤメッシュは高さ2メートル。2011年から7年かけ、同地区小学校区内を囲うように、山際約19キロにわたって設置した。同協議会の佐々木勝規会長(75)は「最初は何も分からない中、みんなで研修に参加するところから始めた。設置に必要な道具やマニュアルは試行錯誤しながら自分たちで作った」と苦労を話す。車の入れない山中に重い資材を人の力で運び込むなど、作業は大変だったという。柵は定期的に点検しているが、柵内に入り込んだシカなどの捕獲や追い出しが課題だ。活動を応援する安佐北区役所農林課の金羽木公宣課長補佐は「行政の支援制度も活用しながら、地域住民が主体となって熱心に取り組んでいる」と話している。

〈写真:「設置作業には1日15人から30人が参加した。みんなで協力して頑張った」と協議会のメンバー。右から佐々木会長、佐々木恒さん、橋本守男さん、渡辺純郎さん〉

自家産生乳を使って"食べる牛乳"牛乳豆腐【10月4週号 北海道】

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 【北海道支局】中標津町計根別の「みるふちゃん工房」では、「食べる牛乳」をコンセプトにした酪農家の家庭の味「牛乳豆腐」を製造・販売し、評判を呼んでいる。工房の代表・久保拡伸〈くぼ・ひろのぶ〉さん(43)は、牛乳豆腐が酪農家と消費者との距離を縮めるきっかけとなることを期待している。同町で乳牛100頭を飼養する久保さんは、「計根別の名前の付いた商品を作りたい」という思いから、同じ地域で酪農を営む安齋悟〈あんざい・さとる〉さん、信夫扶美子〈しのぶ・ふみこ〉さん、末廣卓実〈すえひろ・たくみ〉さん、長谷川希美〈はせがわ・きみ〉さんの4人に声を掛け、工房を立ち上げた。2019年に町内の建物を工房に改装し、牛乳豆腐の製造を始めた。当初は町内外のイベントに出店。空港や飲食店への卸売りで1カ月300個の受注があったが、コロナ禍の影響で今では50個ほどに減少した。完成した牛乳豆腐は、癖が無く、煮ても焼いてもいい調理しやすい商品で、メンバー全員が満足のいく味に仕上がった。生乳は久保さんの農場で生産したものを使用。成分によって味が変化するため、一年を通して安定した出荷ができるように独自の基準を設けた。久保さんは「牛乳豆腐は家庭の味として親しまれてきたため、レシピを作ることに時間がかかりました」と話す。牛乳豆腐は同工房のホームページでも販売。購入した消費者から「食べやすくておいしい」「嫌いだったけど、これなら食べられる」などの声が寄せられることが喜びとなっているという。久保さんは「食材の一つのカテゴリーとして牛乳豆腐の認知度を上げたいです。そうすることで酪農を身近に感じてもらい、私たち酪農家と一般の消費者の方々との距離を縮めるきっかけにしたいです」と話す。

〈写真:人気の牛乳豆腐〉

防風林「「津波防災の日」(11月5日)に準備の再点検を【2021年10月4週号】」

 ▼1854年11月5日に起きた安政南海地震の際、暗闇の中を津波から逃げる人たちの目印にと稲むらに火を付けた濱口梧稜(はまぐち・ごりょう)の逸話が「稲むらの火」だ。東日本大震災を教訓に制定された「津波対策の推進に関する法律」では、この逸話を踏まえ、11月5日を「津波防災の日」とした。津波防災について、国民が理解と関心を深める日と位置づけている。
 ▼前後の期間を含め、各地で防災訓練などが予定されている。新型コロナの渦中だからこそ、発災時の安全確保や救急用品の準備、避難場所など地震と津波に備える事項を再確認しておきたい。
 ▼史実では、紀伊水道・四国南方沖の海域を震源とする安政南海地震の前日、東海・熊野海岸沖を震源とする安政東海地あ震が起きている。連日の大地震はまさに想定外。東海、近畿を中心に石碑や古文書など多くの記録が残る。
 ▼日本などが提案し、国連も11月5日を「世界津波の日」と定めた。「稲むらの火」の教訓は海外にも広がっている。

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