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今週のヘッドライン: 2021年11月 1週号

地域資源 無駄なく 食品残さで土づくり ―― (株)近江園田ふぁーむ(滋賀県近江八幡市)(1面)【2021年11月1週号】

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 食品残さから製造する「食品リサイクル堆肥」が、脱炭素化や廃棄物の削減として注目を集める。滋賀県近江八幡市の水田120ヘクタールで経営する株式会社近江園田ふぁーむは、販売先の食品残さ45トン相当を利用し、土づくりで良食味米生産につなげる。飲食店側では回収前の品質劣化を防ぐ1次処理装置を導入し、良質堆肥の確保に協力する。一方、処理装置のコスト負担による食品残さの回収量減少が課題だ。同社会長の園田耕一さん(73)は「中小の飲食店も含め、取り組みを政策で後押ししてほしい」と訴える。

(1面)

〈写真:1次処理後の残さ。「骨も貴重なカルシウム源。機械で選別・破砕して有効活用できる」と園田耕一会長〉

Jミルク 年末年始に向け緊急対策 処理不可能乳回避へ(2面・総合)【2021年11月1週号】

 Jミルクは10月26日、年末年始の学乳休止期に生乳の需給が大幅に緩和し、処理不可能乳が発生する恐れがあるとして、一時的な生乳の出荷抑制などを支援する「緊急酪農生産基盤堅持対策事業」の概要を発表した。生産者段階で、早期乾乳や出荷予定牛の繰り上げ出荷、全乳哺育、飼料設計の見直しなど一定程度生乳出荷を抑制した酪農経営体(地域)に一定額を助成する。年度末対策も想定し、2億5千万円の事業費を計上。併せて酪農家・乳業者など関係者を挙げて緊急的な牛乳消費促進対策に取り組むとし、5千万円の事業予算を措置した。生産意欲の低下や強化を図ってきた生産基盤への影響を招かないよう、酪農・乳業に関わる全ての関係者が一丸となり、難局を乗り越える必要がある。

(2面・総合)

JA全農 春肥価格7品目上げ 原料の国際市況が大幅に上昇(2面・総合)【2021年11月1週号】

 JA全農は10月29日、11月から来年5月に適用する春肥の単肥価格を公表した。6~10月比(秋肥対比)で石灰窒素は据え置き、ほか7品目は3.9~17.7%値上げする。2期連続の引き上げ。
 肥料原料の国際市況は、穀物相場の上昇を受けた好調な需要を背景に大幅に上昇。尿素やリン安の最大の輸出国である中国が国内需要を優先する政策を示したことも影響した。

(2面・総合)

収入保険と野菜価格安定制度 同時利用が2年間に延長(3面・収入保険)【2021年11月1週号】

 2022年1月から初めて収入保険に加入する野菜生産者は、野菜価格安定制度と同時に利用できる期間が、現行の1年間から2年間に延長される。1年間の同時利用では期間中に収入保険の保険金等を受け取れず、同時利用後に収入保険か野菜価格安定制度を選択する際に、収入保険のメリットを感じづらいことに応えた格好だ。農林水産省は、11月3日まで実施するパブリックコメント(意見公募)を踏まえ、農業保険法施行規則の一部を改正する省令を決定し、11月下旬に公布する予定。

(3面・収入保険)

イチゴ 通い農業支援システムを導入 安価・簡便に環境監視 ―― (有)農園星ノ環(群馬県昭和村糸井)(7面・営農技術・資材)【2021年11月1週号】

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 「『通い農業支援システム』は、温度などの数値がスマートフォンで分かり、外国人技能実習生に具体的な指示を出せるようになった」と話すのは、群馬県昭和村糸井の有限会社農園星ノ環(わ)の星野高章(たかゆき)代表(46)。ハウス内の温度や湿度、二酸化炭素(CO2)濃度などをスマートフォンなどで確認できる通い農業支援システムをイチゴ栽培に導入し、作業を効率化するほか、高温などによる事故も防止。収量や品質の向上につなげている。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:通い農業支援システムを手に取り、説明する星野高章代表〉

健康診断を受けよう 病気の早期発見へ ―― 佐久総合病院名誉院長の夏川周介さんに聞く(5面・すまいる)【2021年11月1週号】

 健康診断は、体の状態を知り、病気の早期発見などにもつながる大切な機会だ。毎月4週号のすまいる欄で「診察室」を担当する佐久総合病院の夏川周介名誉院長に健康診断の役割や必要性を解説してもらう。

(5面・すまいる)

収入保険・私の選択 産地活性化に不可欠【11月1週号 茨城県】

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 【茨城支局】「子供たちが経営に携わるようになり、規模を年々拡大しています」と話すのは、行方市で米やレンコンを生産する髙須貴宗さん(43)。近年の異常気象や新型コロナウイルス感染症の影響を考えると、規模拡大や後継者確保に不安はあったが、収入保険に加入していることで、安心感を持って営農に取り組めるという。髙須さん方では、水稲30ヘクタール、レンコン3・5ヘクタール、セリ10アールを家族6人と子供の友人の計7人で栽培に取り組む。水稲は未耕作水田を借り受け、規模拡大を徐々に図る一方、価格低迷が続く米だけでは不安があるため、レンコン作りにも力を入れる。経営には長男の竜都さん(22)や長女の優奈さん(24)が加わり、担い手不足が叫ばれる中、後継者の確保に成功している。竜都さんは「農業は自分で考え、自由に経営できるところが魅力。父と共にさまざまなことにチャレンジしていきたい」と話す。今後は労働力の配分を見直し、作業の効率化を図って売り上げを増やしていきたいと考えている。さらに販路拡大や6次産業化を視野に入れていくという。茨城県農業協同組合青年連盟の委員長を務める髙須さんは、県農業の活性化を図るため尽力している。最近はコロナ禍のため活動は縮小傾向だが、視察研修や農業者同士の意見交換などの動画を制作し、動画共有サイト「ユーチューブ」で配信。11月10日にはJA東京アグリパークで開催予定のイベントで、県農産物のPRと野菜配布を計画するなどさまざまな取り組みを進める。そんな中で、コロナの影響で本年産の米価が低迷した。出荷先の「JAなめがたしおさい」の米価格表を見ると、買い取り金額が前年と比べ、多くの品種で1等米では2千円から3千円程度の値下げとなった。価格が下落した影響で、髙須さん方の年間収入は2割程度の減少が見込まれるが、「収入保険は万が一のため。甘えると作業が止まる。まだレンコンがある」と意気込む。それでも「安心感がある」と安堵の表情を見せ、「みんなに広めたい」と収入保険加入を推奨する。行方市は、収入保険の保険料を10万円を上限に半額を補助する。同市は全国有数の野菜産地で、若手農家が多く、さまざまなことに挑戦している。挑戦にはリスクを伴うが、品質向上や増収増益につながり、農業経営の安定や発展に収入保険は欠かせない。髙須さんは「さまざまなリスクに対応する収入保険への加入が進めば、挑戦する農家がもっと増え、産地が活性化していく」と期待する。

〈写真:「レンコンで頑張る」と髙須さん。雨の日も収穫に励む〉

インターネット産直を運営 「地域を盛り上げたい」【11月1週号 岩手県】

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 【岩手支局】紫波町佐比内でブドウを栽培する蒲生庄平〈がもう・しょうへい〉さん(44)は、インターネット産直「しわちょく」を運営し、地元産の野菜などを販売する。商品は郵送のほか、購入者の好きな時間に提携店舗で受け取れるようにした。「農村での販売手段を増やし、地域経済の活性化につなげたい」と力を込める。蒲生さんは2019年にブドウ栽培を始めた。90アールの圃場で「キャンベル・アーリー」など約10品種を栽培する。以前は出身地の福島県で会社員をしていた。妻の実家がブドウ農家で、帰省した際、ブドウ畑の広がる風景に感動したという。「自然豊かな環境で子育てがしたい」と、6年前に紫波町へ移住した。「紫波町のおいしい農産物をたくさんの人に届けたい」と、地元の若手農家などと協力し、インターネットを使用した農産物の販売方法を考案。20年9月にインターネット産直しわちょくの運営を始め、紫波町産の農産物などを販売する。しわちょくとの提携店は盛岡市と紫波町に合わせて2店あり、営業時間内であれば好きな時間に受け取りが可能だ。「提携店の宣伝にもなる。地産地消を進め、地域経済の活性化につなげたい」と蒲生さん。現在の利用者は100人程度となり、今後は提携店を増やす予定だ。取れたてのブドウの写真を掲載するなど、会員制交流サイト(SNS)を積極的に活用する。広告費をかけずにPRできるのが強みだという。蒲生さんは「ネットの活用は、農村の新しい流通方法を生み出す。確立できれば、若い人も農業に取り組みやすい。新しいアイデアで、地域を盛り上げたい」と話す。

〈写真:「佐比内で一緒にブドウ栽培をやってみませんか」と蒲生さん〉

動画共有サイトにシイタケ料理を配信【11月1週号 秋田県】

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 【秋田支局】菌床シイタケをビニールハウス9棟で栽培し、年間75トンを生産する八峰町峰浜石川のレンチナス奥羽ISE(従業員10人)。伊勢隼人代表(35)は栽培管理に取り組む傍ら、動画共有サイト「ユーチューブ」でシイタケの魅力と調理方法を発信している。ユーチューブには「レンチナス奥羽のしいたけCOOKING」というチャンネル名で投稿する。伊勢代表、従業員の高木龍治〈たかき・りょうじ〉さん(35)と米森智明さん(38)の3人が、週1回、3本撮りして編集後に週2~3回アップロード。現在までの投稿は40本を数える。「レシピは全部オリジナルで、毎日研究している」と伊勢代表。当初の目的は、自分たちの栽培方法を発信することだった。しかし、シイタケが優れた健康食材ということを広く知ってもらいたいと思い、料理好きだったこともあってクッキングチャンネルとして開設。「幅広い年齢層に見てほしい」と話す。シイタケの種菌は「北研902号」。肉厚で実がしっかりして、食感が良いのが特徴だ。年間15万菌床を製造。ビニールハウスの内部に断熱材や内張りを施し、温湿度を管理して栽培する。「きれいな商品を作り、安定出荷と品質管理に細心の注意を払うのが重要」と伊勢代表は話す。出荷先はJAのほか、県内でスーパーを店舗展開する「いとく」で、能代市内の4店舗に納品。伊勢代表は「レンチナス奥羽シイタケのブランド化を目指し、生産数を増やしたい。ユーチューブで知名度を上げ、峰浜の仲間と協力しながら栽培に尽力していく」と意気込む。

〈写真:手際よく調理する伊勢代表〉

祖父の果樹園を復活 魅力ある経営目指す【11月1週号 群馬県】

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 【群馬支局】高崎市在住の樋口智保〈ともやす〉さん(24)は、祖父の果樹園を継ぎ、観光農園として充実した経営を目指している。榛東村にある果樹園は、祖父の樋口侑吾〈ゆうご〉さん(81)が祖母と経営し、多くの客が観光バスで来園していたが、2016年11月の大雪でリンゴの樹(き)700本が全滅した。孫の智保さんが、果樹園を手伝いながら自分の進む道を模索していた矢先のことだった。さらに侑吾さんが体調を崩し、閉園に追い込まれた。接客もできる果樹園経営に魅力を感じていた智保さんは、「ゼロからのスタートならば、逆にどこまでできるかやってみよう」と就農を決意。「不安はありませんでした」と当時を振り返る。県中部農業事務所や渋川市果樹園芸組合の指導、県立農林大学校の講義で技術を学び、苗から植えた樹は500本になった。現在、リンゴ「つがる」「秋映」「陽光」「ぐんま名月」「ふじ」など約1ヘクタール、ウメ「白加賀」「南高」「梅郷」を約2ヘクタールで栽培する。今年10月、樋口農園をリニューアルオープン。併設店舗ではリンゴのほかに、妹の明音〈あかね〉さん(21)が新鮮なリンゴをたっぷりと使用したシュークリームや焼き菓子を販売する。智保さんは「今年はまだ量が少なくリンゴ狩りはできませんが、リンゴ園を再開でき、祖父母も喜んでいます。今後はお客さまに楽しんでもらえるような観光農園を目標にしています」と話す。

〈写真:併設店舗内で智保さんと明音さん。リンゴのシュークリームは地元の人が買い占めてしまうほどの人気〉

防風林「"ジビ活"を始めよう【2021年11月1週号】」

 ▼家族で集まる機会があり、かなり久しぶりに外食をした。契約農家の野菜を使ったコース料理がお勧めの店と聞いたが、肉料理はシカなども選ぶことができ、思いがけずジビエ(野生鳥獣肉)を味わえた。少しずつ分け合い、味の違いを比べて楽しんだ。
 ▼農作物を荒らす野生鳥獣の捕獲頭数は、対策の強化を背景に増加。捕獲キャンペーンを展開するシカ、イノシシは、2020年度に135万頭と過去最高の実績をあげた。しかし、ほとんどは焼却・埋却処理されるのが実情だ。人間の勝手な理屈かもしれないが、命を奪うならジビエなど有効利用を促したい。
 ▼農林水産省は、ジビエの認知度向上と普及を目的に11月1日から来年2月末日まで全国ジビエフェアを開催。特設サイトでジビエを提供する飲食店やジビエ商品を扱う店を募集し、情報提供と消費拡大を図る。昨年度のフェアには1100店が参加した。
 ▼特設サイトでは「はじめようジビ活」として、日常生活に少し特別な時間を上乗せする「日常+(プラス)ジビエ」を呼びかける。地域資源の有効利用に、もう1軒、店を探して行ってみるか。

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