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今週のヘッドライン: 2021年11月 3週号

ミカンコミバエ 九州5県で飛来を確認 地域ぐるみで侵入防止(1面)【2021年11月3週号】

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 果樹や果菜類の重要害虫であるミカンコミバエが5月以降、沖縄県以外の九州5県でも飛来が確認され、園地への侵入防止対策が長期化している。現時点で園地での発生はなく、活動が停止する厳寒期まで抑え込みを徹底している状況だ。放任果樹や自然落下した果実なども発生源になり得るため、飛来が確認された地域では植物防疫所を中心に、自治体やNOSAI、生産者などの協力による初動防除や落下果実の除去など管理徹底を進めている。

(1面)

〈写真:ミカンコミバエ〉

2021年産水稲作況指数101 需要安定実現へ正念場(2面・総合)【2021年11月3週号】

 農林水産省は9日、2021年産水稲の作況指数(10月25日現在)は101と発表した。前回調査(9月25日現在)から1ポイント増で、主食用米の予想収穫量(子実用)は前回調査比5千トン(0.1%)増の700万7千トンに上方修正した。国が示した適正生産量693万トンを7万7千トン(0.1%)上回る。主食用米需給への影響について金子原二郎農相は10日の閣議後会見で、「いろいろな対策を打っており、具体的に実行に移されていく。(効果を)見極めながらやっていく」と述べた。補正予算で措置する20年産在庫15万トンの特別枠の設定などの動向を注視する必要がある。22年産では、21年産を上回る大幅な作付け転換が必要と想定され、需給動向に応じた持続的な水田農業の在り方が問われている。

(2面・総合)

農水省 収入保険の保険料等を8都県+198市町村で補助 NOSAI団体が全国の自治体に要請(2面・総合)【2021年11月3週号】

 農林水産省はこのほど、地方公共団体(都道府県・市町村)による収入保険の保険料等補助の状況を公表。2021年9月時点で東京、福島、富山、岐阜、滋賀、鳥取、福岡、熊本の8都県に加え、35府県の198市町村が保険料等の一部を助成していることが分かった。
 収入保険は、21年8月末時点で5万8387経営体が加入する。助成は、近年の災害頻発などを踏まえた自治体独自の措置で、収入保険への加入を促し、農業者の経営安定を後押しするのが狙いだ。

(2面・総合)

果樹などの凍霜害 被害甚大 収入保険で営農継続(3面・農業保険)【2021年11月3週号】

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 「これだけひどい凍霜害は、過去に経験したことがない」と話すのは、山形県天童市高木の関政孝さん(38)。4~5月に発生した凍霜害でオウトウや西洋ナシの収量が8~9割ほど減少し、収入も現時点で平年と比べ500万円ほど少ない。2020年から収入保険に移行していたため補償対象になり、つなぎ融資を受け取った。資材代など営農経費に充て、営農を継続している。

(3面・農業保険)

〈写真:リンゴに日が当たるよう玉回しをする山形県天童市高木の関政孝さん〉

ハウス 高騰する重油価格...... 今すぐ点検 省エネ実践(7面・営農技術・資材)【2021年11月3週号】

 重油の価格が高騰するなか、施設園芸では、加温に要する燃油使用量の削減が経営維持に欠かせない。被覆資材の点検や暖房器具の清掃などにより、無駄なエネルギー消費を避け、収益を増やすことが可能だ。今すぐ実践できる省エネ対策、技術をまとめた。

(7面・営農技術・資材)

ぽかぽか漢方鍋 ―― 漢方スタイリスト、中医薬膳師 きたかまくら日々響hibiki代表の吉田揚子さんに聞く(5面・すまいる)【2021年11月3週号】

 冬が近づき、冷えが身にしみる季節。冬を健やかに過ごすための「体の冬支度」をはじめよう。毎日の食生活を通して内側から心と体を整える「ライフスタイルとしての漢方」を伝える漢方スタイリストの吉田揚子さんに、体がぽかぽか温かくなる「漢方鍋」メニューを紹介してもらった。

(5面・すまいる)

肉用牛放牧で成果 耕作放棄地を持続可能な資源に【11月3週号 鹿児島県】

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 【鹿児島支局】志布志市志布志町で野菜や飼料作物の生産・販売を手掛ける株式会社さかうえ(坂上隆〈さかうえ・たかし〉代表=53歳)では、耕作放棄地などを活用した放牧による黒毛和牛の生産を2019年に始めた。坂上代表は「農地としての利用が困難な場所で牛を飼うことで、里山が元気になれば」と意気込む。同社では、受け手のいない農地を借り受け、ピーマンやキャベツ、飼料作物など(約200ヘクタール)を生産する。「中山間地域という不利な農地では、作業効率の悪さや鳥獣被害が課題となっていた」と坂上代表。新たな活用手段として、放牧による肉用牛の生産に取り組んだ。点在する12ヘクタールの農地に、簡易の牧柵や飼槽などを整備。現在は繁殖と肥育の計156頭を飼育し、生育ステージに応じて区画を順次移動していく。餌には自生する草や自社で栽培した飼料を使用し、地域資源の有効活用につなげた。排せつ物は有機肥料として還元させることで、農地としての機能が回復するとともに、農作物の栽培が見込める状態になるという。同社生産部の世良田圭祐〈せらだ・けいすけ〉部長(39)は「牛は自然に近い環境の中でストレスなく歩き回れ、疾病の発生が少ない。草を食べることで地域の景観が保たれ、野生動物が近寄りにくくなった」と話す。6カ月以上飼養した牛は「里山牛」として出荷。坂上代表は「草由来の香りや適度な脂身と赤身のうま味が特徴」とPRする。自社ホームページをはじめ、ふるさと納税返礼品など独自の販売ルートを展開。健康に関心の高い消費者から人気を集めている。今後について「採算が合う仕組みを構築していくことが、持続可能な資源として里山を守り、生かしていくことにつながる。農業を通して地域の課題解決に積極的に取り組んでいきたい」と先を見据える。

〈写真:「牛はのびのびと過ごし、自分たちの作業負担も軽減されている」と世良田部長〉

収入保険・私の選択 外的要因の価格低下に備える

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 広島県呉市  今井 満さん
 バラの苗や切り花、ランをハウスで栽培し、収入保険には今年から加入しています。加入の決め手は、2018年の西日本豪雨と、新型コロナによる収入減少です。豪雨災害では、土砂の流入や停電で、養液栽培装置や換気施設が稼働しないなどが重なり、花が十分に育たず、収入が大幅に減少しました。復旧作業が落ち着き、盛り返そうと思っていたころ、新型コロナの影響で婚礼やイベントが延期・中止になり、価格が大幅に低下しました。ランは鉢植え出荷では採算が取れないので、包装費用や作業時間を抑えるため、約半分を切り花に転換しました。花き類は外的要因で価格が大きく左右されます。現在は、コロナ禍で需要が増えつつあるガーデニング用苗の育成に力を入れていますが、今後どんなことが起こるか分かりません。保険料は少し負担になりますが、万一の備えとして収入保険は必要だと思います。経営の実態に合わせて加入できるのもいいですね。
 ▽48歳▽有限会社はなぞの野呂高原代表取締役▽バラの苗・切り花、ラン計50アール
 (広島支局)

多彩な加工品開発 周年収穫を目指すレモン研究会【11月3週号 栃木県】

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 【栃木支局】宇都宮市の「レモン研究会」(竹原俊夫会長=67歳、会員19人)は、栽培するレモンを「宮れもん」として商標登録。地元のレストランなどに卸すほか、宮れもんを使った商品の共同開発に取り組むなど知名度向上と販路拡大を目指している。栽培品種は「璃の香」と「リスボンレモン」。璃の香は実が大きく平均350グラム、大きいものは500~600グラムになる。柔らかい皮と豊富な果汁が特徴だ。種が無く、熟すとまろやかな酸味になるため生食にも向く。両品種の収穫時期は11~12月。貯蔵性が高く4月ごろまで保存が可能だ。栽培本数が少なく、販売は県内のレストランや和洋菓子店が中心。竹原会長は「去年は個人向けに出荷ができなかったので、今年は直売所にも出荷できるようにしたい」と意気込む。会では20年6月に地元の和菓子店「すずらん本舗」と共同開発した「宮レモンまん」を発売。同年10月には宮レモンまんを改良した「宮れもんまんじゅう」を売り出した。ほかにも宮れもんを使ったエールビールやギョーザなどがある。さらに市内の高校生がケーキやドーナツを考案するなど、同会は地域と連携して商品開発に取り組む。竹原会長は「栽培方法を確立し、寒さ対策を考えて周年で収穫できるようにしていきたい」と話す。

〈写真:「新たな特産品になれば」と竹原会長〉

甘長とうがらしに転換 軽労・高単価が魅力【11月3週号 高知県】

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 【高知支局】佐川町で水稲110アール、ショウガ21アール、キャベツ8アールなどを栽培する田村幸生さん(63)は、町内で唯一、高知県特産の「甘長とうがらし」を17アールのビニールハウスで栽培している。田村さんが甘長とうがらしの栽培を始めたのは昨年。これまではピーマンを雨よけハウスで栽培していたが、収益の増加を図るため、より単価の高い甘長とうがらしに切り替えた。「実の曲がり具合を見るだけで仕分けをすることができ、収穫から出荷までの労力が少ないなど、経験の少ない農家でも余裕を持って栽培できます」。栽培方法は先に栽培を始めた隣町の農家から教わった。「どうすれば栽培しやすいか、どれだけの収量になるのかというデータを収集することで、問題点や改善点を見つけ出していきたいです」と田村さん。「新しい作物を取り入れていくことが、地域の将来性を考えるのに必要だと思います。そのために、甘長とうがらしを魅力ある作物にしたいです」と話してくれた。

〈写真:甘長とうがらしを収穫する田村さん。「収入につながる作物です」〉

果樹の枝折れを防ぐ除雪器具を開発【11月3週号 秋田県】

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 【秋田支局】県果樹試験場(上田仁悦場長)では、大雪で果樹の枝が折れる被害を防ぐため、省力的に樹体を守る除雪器具「スノーホール」を開発し、さらなる改良に取り組んでいる。枝折れの原因が、雪がしまって沈み込む力(積雪沈降力)で引っ張られ、折れる場合が多いことに着目。枝の周辺に積もった雪に溝を付け、積雪沈降力を破断すれば枝折れを防ぐことを実証した。公益財団法人あきた企業活性化センターの助言を受け、積雪沈降力を破断する器具の原案開発を由利本荘市の発明家・湯田秋夫さんに依頼。精密板金メーカーのMEP(大仙市)が製品化した。器具の重さは2キロ。雪にまっすぐ挿し、ハンドルを前後に動かすとバケットの先端が閉じて雪をつかみ、持ち上げて溝の外に雪を出すことができる。上田場長は「農家に昨年試してもらい、耐久性の向上と軽量化を図った。モニター販売などを通して改良を重ね、除雪の省力化が見込める器具として普及させたい」と話す。

〈写真:除雪器具の改良版スノーホール〉

防風林「米の消費拡大には買いやすさへの配慮も必要【2021年11月3週号】」

 ▼新米の季節を迎え、テレビでは著名なタレントを起用した良食味品種や新品種のCMがめじろ押しだ。食べた経験のない品種は一度食べてみたいと思う。しかし、普段の買い物をするスーパーには新品種が並ぶ隙間がない。いまや精米の購入先のトップは全体の5割を占めるスーパーだ。そこに並ばないと一般の消費者は購入できない。
 ▼近所のスーパーは昔ながらの団地に隣接する。昨今は、手押し車タイプのショッピングカートを引く高齢者の姿が目立つ。高齢の夫婦や1人暮らしでは消費量も少ない。重い5キロ包装は敬遠され、2キロ包装やパックご飯の方が売れ筋になっていると聞く。
 ▼最近の勢いはインターネットショップからの購入か。家族や知人からの無償入手に続く購入先の第3位であり、全体の1割程度を占める。しかも購入単価はデパートや米穀専門店を上回り、最も高いのだという。
 ▼ふるさと納税の返礼品としても米は人気があるそうだ。重量のある米袋を運ぶ手間がなく、好きな品種が選択できて玄関先に届く利便性も魅力だ。炊飯の手間を敬遠する若い世代には、炊きたてのご飯が届くデリバリー利用を促す方策を考えればよい。


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