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今週のヘッドライン: 2022年03月 2週号

東日本大震災から11年 先端技術、移住促進 ―― 福島県の旧避難指示区域で挑戦する農家 ふるさと 新たな道へ(1面)【2022年3月2週号】

 東日本大震災から11年。津波被災地域の農地復旧率は94%となった一方、原子力災害被災地域では、避難指示が解除された後も住民の帰還や営農再開が一部にとどまる。福島県内の旧避難指示区域で、スマート農業や地域外からの就農・移住促進などで新たなふるさとづくりを目指す農家もいる。南相馬市小高区の佐藤良一さん、飯舘村松塚の山田豊さん、同村佐須の菅野宗夫さんに、課題を乗り越えようと挑戦する現場の声を聞いた。

(1面)

人・農地プランを法定化 地域計画を市町村ごとに策定へ 受け手を定めた地図作成(2面・総合)【2022年3月2週号】

 農林水産省は1日、農業経営基盤強化促進法等の一部改正法案などを自民党農林関係合同会議に示し、了承された。市町村の地域ごとに農地利用と担い手を結び付けた「地域計画」(人・農地プラン)を策定して効率的で総合的な農地利用を促し、担い手の確保・育成措置を講じる。2023年4月1日の施行を目指し、施行後2年程度かけて地域計画の作成を進める考えだ。高齢化や人口減少が本格化し、荒廃農地の増加や農業者の減少加速が懸念されている。農地の適切な利用と担い手の確保・育成に向け、地域の関係者も連携して農業者などの協議や活動を後押しする必要がある。

(2面・総合)

農水省 2022年産主食用米の作付け意向を発表 減少は22県 25県が前年並み(2面・総合)【2022年3月2週号】

 農林水産省は1日、2022年産米などに関する都道府県別の作付け意向(第1回、1月末現在)を発表した。主食用米は22県が減少傾向となった。前年産並みは25県で、増加傾向はなかった。  同省は需給安定には、22年産米について全国ベースで前年産比3万9千ヘクタール(3%)の作付け転換が必要としており、引き続き麦・大豆や野菜、子実用トウモロコシなどの定着性の高い作物への転換を促していくとする。

(2面・総合)

中酪 2022年度の生乳需給安定化対策まとめる 脱脂粉乳在庫削減に重点(2面・総合)【2022年3月2週号】

 中央酪農会議(中酪)は2日、2022年度の生乳需給安定化対策をまとめた。前年実績以上を目標数量とする23年度まで3年間の中期対策を基本としつつも、生乳需給の緩和状況を踏まえ、国の支援を受けた脱脂粉乳の在庫削減対策などを実施し、需給均衡と経営改善を図る。今年春に見込まれる処理不可能乳の発生回避では、北海道は独自に設定した目標数量に向けた増産抑制、都府県は低能力牛の選別奨励対策などに、21年度末から前倒しで取り組む。

(2面・総合)

令和3年度家畜診療等技術全国研究集会 畜産経営支える技術 獣医師が成果を発表(6、7面・特集)【2022年3月2週号】

 畜産の生産現場で診療活動に携わる獣医師が、診療技術に関する研究成果を発表する「令和3年度家畜診療等技術全国研究集会」(主催・全国農業共済協会)が2月21~22日、オンラインで開かれた。20題の発表から、審査(審査委員長・佐藤繁岩手大学名誉教授)の結果、農林水産大臣賞をNOSAI岩手(岩手県農業共済組合)岩手県南基幹家畜診療所の加藤惇郎獣医師らが発表した「超音波画像診断装置を用いた離乳期の黒毛和種子牛の第一胃発達の評価」が受賞した。また農林水産省経営局長賞9点(うち吉田賞1点、奨励賞2点)、全国農業共済協会長賞10点が選ばれた。農林水産大臣賞および吉田賞・奨励賞の報告概要を掲載。また「牛伝染性リンパ腫の防除戦略」をテーマにした北海道大学大学院獣医学研究院病原制御学分野感染症学教室の今内覚氏の講演概要を紹介する。

(6、7面・特集)

国産タマネギ 期待高まる東北地方の産地化 狙え端境期(3面・ビジネス)【2022年3月2週号】

 国産タマネギは、生産量の過半数を占める北海道をはじめ、兵庫県や佐賀県など産地が限定され、本州産から北海道に出荷産地が切り替わる前の7~8月に供給量が減少する。また、国内消費の約6割を占める加工・業務用向けでは、中国産など輸入品の使用が約30万トンで推移。端境期の解消や国産シェアの奪還に向け、東北地方での春まき型栽培が注目されている。農研機構東北農業研究センターがさきごろオンライン方式で開いた「東北地域タマネギ栽培セミナー」から、研究者や実需者から期待の声が上がった。

(3面・ビジネス)

手軽にできる箱庭風アレンジメント 春の花を楽しもう ―― 「フラワースクールヘクセンハウス」主宰者の真宗優子さんが伝授(5面・すまいる)【2022年3月2週号】

 地域によっては少しずつ春の気配も感じられるようになってきた。春の花でフラワーアレンジメントを作り、元気をもらおう。フラワーアレンジメント教室「フラワースクールヘクセンハウス」主宰者の真宗優子さんに、箱庭風アレンジメントの作り方を教えてもらった。

(5面・すまいる)

カメラで分娩検知 AIが画像を分析 牛舎の見回り時間を大幅短縮 ―― 田代牧野畜産農業協同組合(青森県十和田市)(11面・営農技術・資材)【2022年3月2週号】

 青森県十和田市の肉用牛繁殖農家142人で構成する田代牧野畜産農業協同組合は、牛舎内で撮影した牛の行動から人工知能(AI)が分娩(ぶんべん)兆候を検出する監視システム「牛わか」を3戸に導入し、牛舎の見回り時間を大幅に短縮した。牛にセンサーなどを取り付ける必要がなく、メールの自動通知や動画などで自宅や圃場から牛の行動を確認できる。組合員は粗飼料自給に取り組む家族経営が多く、中野渡龍哉組合長は「明らかに労働負担が低減できるので、管内農家に普及していきたい」と期待する。

(11面・営農技術・資材)

震災を乗り越え原木シイタケ栽培【3月2週号 岩手県】

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 【岩手支局】奥州市江刺藤里の小澤敏彦さん(69)は、東日本大震災の福島第一原発事故の放射能の影響で、栽培していた原木シイタケをすべて処分した。「簡単に諦めたくない」と栽培の継続を決意し、現在は約1万本の原木を露地とハウス1棟で栽培している。小澤さんは2008年から原木シイタケを栽培していたが、原発事故で約4千本の原木を処分した。「栽培に慣れ、収穫量が増えてくるところで処分したので、とても残念だった。せっかく始めたシイタケ栽培を簡単に諦めたくなかった」。現在、自宅敷地内のコナラやミズナラの木を自ら伐採し、ホダ木にする。「シイタケを発生させるため、11月以降はホダ木に毎日散水し、湿度が高い状態を保つように気を付けている」。日当たりにも注意が必要だという。「日当たりが良くなると、ホダ木に雑菌が繁殖して別種のキノコが生えてきてしまう」と小澤さん。「ハウス内は遮光シートを掛け、露地では周りの木を伐採しすぎないようにしている」。おが菌を駒形に加工した「形成菌」と、木駒に菌糸を培養させた「駒菌」の2種類の菌を使用する。形成菌は植菌をした年から収穫が見込めるが、駒菌は植菌後にシイタケが発生するまで2年かかるという。駒菌は安価だが、金づちで打ち込まなければならず、形成菌は指で押し込むだけで、扱いやすいという違いがある。収穫したシイタケはJAに出荷。「稲作を行わない冬に作業するので、余裕を持って取り組むことができる。原木シイタケ栽培をしている農家は少ないので、今後広まってほしい」と期待を込める。

〈写真:「形の良いシイタケができるとうれしい」と小澤さん〉

収入保険・私の選択  果樹農家に収入保険を推奨【3月2週号 富山県】

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 富山県高岡市  前田 富雄さん
 高岡市国吉地区でリンゴ栽培に取り組んでいます。直売所や量販店で販売するほか、小中学校の給食向けに提供しています。地元では「国吉りんご」の愛称で親しまれています。栽培のリスクについて、病虫害は防除である程度は対策できますが、自然災害に関してはどうしようもない部分が多いです。特に台風による被害は顕著で、ひどい年は半分近く落果してしまう場合があり不安です。そのような背景から、以前は果樹共済に加入していましたが、より多くのリスクに備えるために2020年に収入保険制度に加入しました。加入した年は、新型コロナウイルス感染症拡大による需要減少や、それに伴う市場価格の低下などが原因で、過去の平均収入金額を下回り、保険金の支払対象になりました。いま国吉農林振興会が存続しているのは収入保険があったからです。果樹を栽培している農家は収入保険に加入した方が良いと思います。今後は老朽化しつつある樹木の改植を進めながら、農地の拡大を目指していきたいです。昨年、直売所で数量限定で販売したモモの売れ行きが好調だったので、将来的にはモモの栽培面積を増やしていくことも検討しています。
 ▽76歳▽農事組合法人国吉農林振興会組合長▽リンゴ4.6ヘクタール
 (富山支局)

〈写真:リンゴを手に「収入保険のおかげで助かった」と前田さん〉

初収穫、販売は順調 国産アボカド広めたい【3月2週号 広島県】

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 【広島支局】「みんなと同じものを作っても面白くない。違うものを作ってみたい」と話すのは、福山市で6種のアボカドを30本(露地4.5アール、ハウス1.5アール)栽培する香川和則さん(46)。今年1月、就農3年目で初めての収穫を迎え、販売は順調だ。国産アボカドは、出荷直前まで木に付けたまま熟成できるため、外国産に比べ栄養価は高く、油分が多く食感が良いという。乾燥や寒さに弱いアボカドは、梅雨明けから盆までは、1本の木に1日20~30リットルの水をまく。冬は気温が低くなる夜から朝方にかけてハウス内をストーブで加温し、3度以下にならないようにする。露地では、アボカドの木をビニールと不織布で覆い、束ねたわらを中に詰め寒さを防ぐ。香川さんは、アボカド栽培に興味を持ち、香川県の農家に話を聞きに行ったという。「国内で栽培している人が少ないし、収入がある程度見込めると思った」と就農を決意。農地を借り受け、整地してハウスを新設した。「知識が無い中で、見よう見まねで始めた。観察を毎日続けると、アボカドの成長過程が分かるようになり、花の変化に気づくようになった」。現在は、1キロ当たり5千円で主にインターネットで販売する。「高価なものを買ってもらうことになるので、栽培する木や計量時の写真、手と大きさを比較した写真を載せている」。インターネットに掲載するときには、商品などの写真を毎回撮影するという。「実物の大きさを見て驚いてもらいたい」。香川さんは「国産のアボカドは、知名度を上げるのが課題。自分がうまく作れるようになると、やってみようと思う人が増えてくると思うので、根気強くやっていきたい」と意気込む。

〈写真:ソフトボールくらいの大きさになることもあるという品種「リード」を手に香川さん〉

重油代を大幅に節減 保温効果上げるトイレファン【3月2週号 高知県】

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 【高知支局】高知市でミニトマト40アールを栽培しながら、省エネハウスの研究や開発に取り組む雨森農園の雨森克弘さん(62)。トイレファンを活用して、ダクトを通じてビニールハウスの外張りと内張りの空間に外気を取り入れることで空気を循環させ、ハウス内の保温効果を向上させる装置を製作した。設置費用は、材料費込みで10アール当たり1万円。ファンは24時間稼働させ、ハウス内の温度センサーで確認する。所有する3棟のハウスのうち、2棟のハウスに設置した結果、未設置ハウスに比べ3~4度の保温効果があり、重油代を40%近く安く抑えられたという。原油の高騰やSDGs(持続可能な開発目標)の実践が求められる中、雨森さんは20年ほど前から、コスト低減や環境にやさしい農業を目指し、地元の大学の協力を得ながら、さまざまな装置の研究・開発に取り組んできた。「個人では経費面で限界があるので、スポンサーを募るなど、実用化に向けた取り組みを進めたい」と意気込む。

〈写真:ハウス内の保温効果を向上させるためトイレファンを利用した装置〉

防風林「もっと女性の経営参画を【2022年3月2週号】」

 ▼3月10日は農山漁村女性の日だ。農林水産省が1988年に制定した。農閑期のこの時期に「女人講」など女性の休息日を設ける地域が多いからと、この日付が選ばれたそうだ。農業に加え、家事や育児も主体的にこなす女性は多い。男性は日頃の感謝の気持ちを行動で示してはどうか。
 ▼実家の様子を思い起こすと、農作業を終えて帰ると父や祖父は早々に晩酌を始め、母や祖母の晩ご飯を待っていた。洗濯や風呂の用意も女性の仕事だ。男女平等参画社会を目指す昨今でも、農業の負担は半々で、家事の負担はほぼ女性という家庭が多いのではないか。
 ▼農林水産省によると、農業経営で女性が経営主または役員・管理職を務める方が経常利益の増加率が高い。また、売り上げが高いほど経営に女性が参画している割合が高いそうだ。
 ▼仕事や家事の分担などは家族で話し合い、文書で残しておくと文句を腹にためずにすむ。売り上げが伸びれば晩酌のおかずが1品増えることも期待できそう。


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