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今週のヘッドライン: 2022年05月 3週号

地場小麦をブランド化 生産、製粉、流通と連携し地域商社として活動 ―― (株)大山こむぎプロジェクト(鳥取県米子市)(1面)【2022年5月3週号】

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 鳥取県米子市の株式会社大山こむぎプロジェクト(笠谷信明代表、46歳)は、高品質なパン用として鳥取県産小麦のブランド「大山こむぎ」を展開し、生産、製粉、流通と連携する地域商社として活動する。契約農家が生産した小麦の強力粉を、パン店やレストラン、県内の学校給食用などに販売し、認知度を高めている。関西方面への販路も広げつつあり、耕作放棄地の解消にも取り組みながら、県産小麦の振興に力を注ぐ。

(1面)

〈写真:収量調査用に刈り取った小麦を手に笠谷信明代表(左)と(株)福成農園の野口龍馬代表〉

食料安保の強化へ自民党が提言 別枠予算で対策拡充(2面・総合)【2022年5月3週号】

 自民党は19日、農林水産関係の合同会議を開き、食料安全保障の強化に向けた提言を取りまとめた。コロナ・ウクライナ情勢による危機を踏まえ、食料安全保障の強化を「国家の喫緊かつ最重要課題」と位置付け、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の推進と併せて、新たな食料安全保障関連予算の確保による農林水産関係予算全体の拡充と再構築を図るとした。また、食料・農業・農村基本法の検証・見直しを含めた中長期的な食料・農林水産政策の確立なども提起した。政府の経済財政運営の指針となる「骨太の方針」や参議院選挙の公約へ反映させる方針だ。

(2面・総合)

山口県の野生イノシシが豚熱感染 人の移動が関係か 三重で検出のウイルスと近縁(2面・総合)【2022年5月3週号】

 今年3月に山口県内で見つかった豚熱に感染した野生イノシシについて、農研機構は16日、確認されたウイルスの遺伝子は昨年5月に三重県内(紀伊半島東部)の野生イノシシから検出されたウイルスと最も近縁だったと発表した。2地点は約500キロ離れており、イノシシの移動ではなく「人の活動を介して遠隔地に持ち込まれた可能性」を指摘。人や車両の移動など人為的な感染拡大の防止へ一層の対策強化を訴える。

(2面・総合)

大豆共済の一筆方式が廃止 他方式に移行を 経営安定に不可欠(3面・農業保険)【2022年5月3週号】

 2021年産大豆は、全国的にはおおむね天候に恵まれ、収穫量は直近10年で17年産に次いで多かったが、九州の一部地域では8月の大雨などの影響で大きな減収となった。大豆の作柄は、播種期の湿害など天候に左右されやすく、収入保険か大豆共済への加入が欠かせない。大豆共済では、22年産から一筆方式が廃止された。補償が手厚い全相殺方式に移行し、万全に備えたい。大豆共済の仕組みについて、稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・農業保険)

ポット苗を露地育苗 有機コシで単収400キロ 雑草に負けない生育 ―― (有)グリーンいずし(兵庫県豊岡市)(9面・営農技術・資材)【2022年5月3週号】

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 "コウノトリの郷(さと)"として知られる兵庫県豊岡市出石町で水稲68ヘクタールを栽培する有限会社グリーンいずしでは、有機JASや無農薬の「コシヒカリ」で10アール当たり収量400キロ前後の安定生産を実現している。ポット成苗で移植後の初期生育を確保し、雑草などの影響を抑える。苗代は露地に設け、灌かん水すいチューブなどで管理を効率化する。狩野誠一代表(71)は「露地育苗は徒長が抑えられ、雑草に負けないくらいたくましく成長する」と話す。除草や施肥の機械化などで大規模にも対応した生産体系が地域のモデルとなっている。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:「苗をしっかり育てることで、田植え後はすぐに生育する」と狩野誠一代表〉

養蜂家が直伝 はちみつレシピ ―― 「榎本はちみつベリーファーム」代表ではちみつマイスターのエノモトサワコさんに聞く(愛知県豊川市)(5面・すまいる)【2022年5月3週号】

 梅雨から夏へと、暑くムシムシとした季節がやってくる。はちみつを食べて、元気に農作業や仕事、家事に取り組もう。愛知県豊川市で養蜂とベリー類を栽培する「榎本はちみつベリーファーム」の代表で、はちみつマイスターのエノモトサワコさんに、おすすめのはちみつレシピを教えてもらう。

(5面・すまいる)

農用馬150頭生産 馬事文化を先導【5月3週号 岩手県】

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 【岩手支局】1974年に農用馬の生産を始めた滝沢市鵜飼の大坪昇さん(84)は、2020年に累計生産頭数が150頭に到達した。獣医学系大学の臨床実習に協力するなど、県内の馬事文化の発展に尽力し、21年には「馬事文化賞」に選出。今後は累計200頭の生産を目指す。建築関係の仕事をしていた大坪さんは、趣味として馬の飼育を始めた。「子どものころ、家で馬を飼っていて、自分でも飼ってみたいと思った」。現在はポニーを含めて約15頭を飼育する。馬にストレスを与えないように、十分に日光浴をさせ、厩舎を清潔に保つことを心掛けるという。「けがや病気が減る。馬が元気だと、自分も元気になる」と笑顔を見せる。農用馬の勤労に感謝し神社に参拝する「チャグチャグ馬コ」に多くの馬を参加させ、今年で40回目。大坪さんは「馬も人も健康だからできたこと」と話す。30年ほど前から、岩手大学の臨床実習に協力している。農用馬は、温和な性格で、去勢や発情検査がしやすいという。「実習に参加した学生が、獣医師として活躍している姿を見るとうれしい」。長年にわたる県内の馬事文化発展への貢献が評価され、21年に「IWATE KEIBA AWARDS」の「馬事文化賞」に選出された。「飼育に苦労することもあったが、楽しみながらできた結果だ」と話す。近年、農用馬は生産者の高齢化や後継者不足で生産頭数が減少している。「牛は生乳や食肉で多く利用されるが、農用馬は農業機械の普及などで利用機会が少ない」と大坪さん。「目標は200頭。100歳になるまで頑張りたい」と力強く話す。

〈写真:「馬の成長を楽しみながら飼育している」と大坪さん〉

経営を続けるなら園芸施設共済加入を【5月3週号 京都府】

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 【京都支局】「園芸施設共済に加入していれば、被害に遭っても経営を続けられる」と話すのは、南丹市の川勝広行〈かわかつ・ひろゆき〉さん(48)。ハウス7棟24アールで花壇苗を生産し、主に花き市場へ出荷する。「近年は厳しい暑さになることが多く、ハウス内の温度調整が難しい」と川勝さん。害虫対策にも細心の注意を払う。2018年9月の台風21号でハウスが全損となった。「園芸施設共済に加入していたから、すぐに次の行動に移すことができて良かった」と振り返る。半年ほどで再建したという。共済金と補助金で費用の大部分を賄うことができた。現在のハウスはタイバーやスノーレジストで風や積雪への対策を強化している。未加入者へのアドバイスとして「経営を続けたいと思うなら共済に入っておいたほうが良い」と必要性を説く。今年1月に収入保険に加入し、予期せぬ収入減少にも備える。

〈写真:春はベゴニアやぺチュニア、秋冬はパンジーやビオラなどを栽培するハウス。風や積雪に備え、左右2カ所からスノーレジストを設置する川勝さん〉

良質ブドウ生産に先進技術活用【5月3週号 富山県】

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 【富山支局】「畑の病害地点をドローン(小型無人機)で見つけ、パソコン上へ情報を送信することで作業効率を上げています」と話すのは、南砺市立野原のトレボー株式会社代表取締役・中山安治〈なかやま・やすはる〉さん(71)。同社は2017年に設立、6次産業化を推進する農林水産省認定の企業だ。設立の翌年、立野原地区に12ヘクタールの土地を確保し、19年にワイン醸造用のブドウの苗木1万本を定植。現在は17ヘクタールで4万1千本を栽培する。中山さんは酒店を45年間営んできたが、「残りの人生を、過疎化が進む立野原丘陵地帯にワインで貢献したい」と、ワイナリー設立を決意した。ワイナリーでは、欧州系で赤ワイン用の黒ブドウ7品種、白ワイン用の白ブドウ6品種を栽培する。「美しくバランスの良いワイン造りのため、ブドウの木1本からの醸造を750ミリリットルのワイン3本までに抑えています」と中山さん。ワイナリー「Domaine Beau(ドメーヌ・ボー)」を開業した20年度の醸造本数は1万6千本だったが、21年度は2万7500本を達成、24年度には5万本を目標としている。無補糖・無補酸のワインを目指して、白ワインの相対的な糖度を上げるため、ブドウ果汁の水分を一部凍らせて取り除くなど、品質向上を図るための冷凍技術を導入した。通信システム「ぶどうファーモ」は、五つの地点の土壌水分、地中のpH、炭酸ガス濃度などの情報を、遠隔から瞬時に収集でき、良質なブドウ作りに生かされている。中山さんは「繊細で奥行きがあり、バランスが良く、余韻が長く残るようなワインは、ブドウに夢を語りかけ、愛情を持って育ててやれば必ず造れると信じている」と話す。

〈写真:ブドウ畑の前で中山さん。「今後は農作業の省力化に向け、AI(人工知能)を使った鳥獣害対策などを取り入れたい」と話す〉

青パパイアの可能性広げる【5月3週号 鳥取県】

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 【鳥取支局】倉吉農業高校(倉吉市大谷)で農場長を務める秋山勝正〈あきやま・かつまさ〉さん(55)は、授業の一環で生徒と共に青パパイアを栽培し、県内各地への普及と加工品開発につなげた。同校で生産に携わる生徒・岡田直也〈おかだ・なおや〉さん(17)は「農家の方だけではなく、身近な人にも青パパイアを知ってほしい」と話す。青パパイアはパパイアを未熟な状態で収穫したもので、果物ではなく野菜に分類される。栄養価が非常に高く、食べ過ぎ防止や美肌効果、生活習慣病の改善や予防になるという。栽培の手間はあまりかからない。鳥獣害が少なく、病虫害はほとんど無い。1年で2~3メートルに成長する。青パパイアを授業に取り入れたきっかけは、県内で耕作放棄地が増加する中、労力がかからず、ある程度の収益のある野菜はないだろうかと考え、着目したことだという。鳥取県で青パパイアが栽培できるか実験するため、2018年に苗を購入、5月に定植した。10月上旬に収穫し、栽培できることを実証。苗が高騰したため、3年目以降は苗の生産を研究し、これにも成功した。青パパイアを多くの農家に知ってもらうため、栽培希望者を同校に招き、播種と育苗の研修会を開催。さまざまな取り組みで県内各地に情報発信ができ、栽培者は県内全域に広がった。青パパイアの加工品開発にも取り組み、健康茶メーカーに依頼して葉を乾燥させたリーフティーを考案。4年目には鳥取商工会議所と協力し、清涼飲料水「青春パパイヤ」、リキュールの「青鬼パパイヤのお酒」を開発した。ラベルとネーミングは同校園芸コースの生徒たちが考えた。青パパイアは同校が主催する学園祭やイベントで販売。清涼飲料水とリキュールは北岡本店鳥取工場で販売している。

〈写真:定植作業に取り組む倉吉農業高校の生徒〉

マスタードにブドウを活用【5月3週号 山梨県】

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 【山梨支局】笛吹市地域おこし協力隊出身の風間早希さん(30)と八木優彰さん(35)が経営する「ぴりまるけ合同会社」では、自社産カラシナと同市産ブドウの果汁を使った「ふえふきマスタード」を開発した。代表の風間さんは「山梨県の新しい名物になれば」と、新商品開発や販売拡大に取り組む。ふえふきマスタードは酢と合わせて未熟ブドウ果汁を使って製造。柔らかな酸味で、優しい味わいが特徴だ。八木さん自身と風間さんの家族が栽培する軟化期直前のブドウを摘房し、果汁を年間100リットルほど使用。摘房を控え、多めに付けていた房を使うため、果実生産には支障がない。「生産過程で間引きされる未熟ブドウを活用できる」と八木さんは話す。主原料のカラシナは9~10月ごろに播種し、5~6月ごろに収穫。収量は10アール当たり約100キロだ。風間さんは「種と果汁は保存がきくので、売れ行きを見てマスタードを随時製造している」と話す。21年3月に同市石和町に直営店をオープン。マスタードのほか、マスタードを使ったサンドイッチやピクルスなどを販売する。「マスタードの使い方を提案しながら販売できれば」と八木さん。昨年度は直営店で1900個を売り上げた。農産物直売所や百貨店、ショッピングアプリ「Pay ID」でも販売する。「今後はもっと気軽に買えるよう、北海道産イエローマスタードシードも使用して製造数を増やし、客層を広げて小売りを拡大したい」と八木さん。風間さんは「来月は『石和源泉足湯ひろば』内の店舗に移転する予定だ。山梨県内のワインビネガーを取り入れた新商品や観光客向け商品の開発にも取り組みたい」と話している。

〈写真:直営店でのふえふきマスタードの価格は「プレーン」が税込み450円〉

防風林「地域の財産である農業用水の維持管理に力を尽くそう【2022年5月3週号】」

 ▼国内には総延長で約40万キロと地球10周分の水路網があり、幹線水路だけでも約4万キロに及ぶという。日本は、古くから水田で米を作り食べてきた。新田開発は、用水確保が大前提となり、用水の開削に伴う先人の逸話や労苦をしのぶ記念碑が各地に伝わる。
 ▼今回、取水施設で大規模な漏水が発生した明治用水は、1880(明治13)年に完成した。当時の総延長は約52キロで、その後さらに開削し、現在は幹線が約88キロ、支線水路は約342キロ、農地の受益面積は約5300ヘクタールとなる国内有数の用水だ。最も水を必要とする田植え時期の事故だけに農家の落胆も大きいだろう。当面必要な用水だけでも確保する方法はないものだろうか。
 ▼農業をはじめ地域の産業と暮らしを支えてきた水利施設は全国的に老朽化が進む。基幹的な水利施設は、戦後から高度成長期に整備されたものが相当数を占め、うち3割近くは耐用年数を超え、いつ事故が起きても不思議ではないそうだ。実際、経年劣化や局部的劣化による事故は増加傾向にある。
 ▼農林水産省は、施設の現状を把握・評価し、中長期的な状態を予測しながら補修・補強など長寿命化を図る機能保全対策を推進する。防災や環境、生態系の保全など多様な価値がある地域の財産だ。大切にしたい。

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