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今週のヘッドライン: 2022年07月 2週号

豪雨、台風 ...... 不作続く大豆産地 再起へ始動(佐賀県)(1面)【2022年7月2週号】

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 豪雨や台風などに伴う不作が続いた九州の大豆産地が、再起に動き始めた。佐賀市嘉瀬地区で、水稲13ヘクタール、大豆7ヘクタール、麦20ヘクタールを栽培する杉町嘉彦さん(39)は、独自の播種技術を考案して増収を目指す。「大規模化する中で、畑作できちんと稼ぐ必要がある。将来に向けた技術を確立し、300キロの収量を目指していきたい」と話す。佐賀県では、出芽安定を図る播種方式の改善や、水田や水路を活用した治水など、激甚化する自然災害への対応が模索されている。

(1面)

〈写真上:大型ロータリーを利用する佐賀市嘉瀬地区の杉町嘉彦さん〉
〈写真下:麦後圃場で佐賀市巨勢地区の原田和浩さん。排水口まで長さ4~5メートルの溝を掘り、表面排水を促す〉

「みどりの食料システム法」が1日に施行 環境負荷低減を後押し 農業者らの活動認定 10月以降に受け付け開始(2面・総合)【2022年7月2週号】

 2050年までに農林水産業からの温室効果ガス排出量の実質ゼロ化を目指す「みどりの食料システム戦略」を推し進める「みどりの食料システム法」が1日、施行された。環境負荷低減に取り組む農業者らを都道府県・市町村が認定し、税制や金融の特例措置で支援する計画認定制度などを実施する予定だ。ウクライナ情勢などを受けた生産資材などの高騰を機に、輸入に依存する化学肥料の使用量低減は喫緊の課題となっている。生産コスト高騰などで疲弊する生産現場の負担を招かないよう、環境に配慮した農業生産への転換を促す制度設計と普及が求められる。

(2面・総合)

台風4号上陸 各地で大雨 農地冠水、農業施設で被害(2面・総合)【2022年7月2週号】

 台風4号は5日午前、長崎県佐世保市付近に上陸し、九州で温帯低気圧に変わった。西日本から北日本の広い範囲で大気が不安定となり、線状降水帯が発生した高知県をはじめ各地で大雨に見舞われ、住宅の浸水被害などが発生。農地の冠水や農業用施設の被害なども報告されている。被災地域のNOSAIでは、被害状況の確認や迅速・適切な損害評価に努めるとともに、収入保険加入者にはつなぎ融資の周知徹底を進めている。

(2面・総合)

職場の"実際"伝える工夫を 「雇用就農」の定着率向上へ(3面・ビジネス)【2022年7月2週号】

 農業人材の確保が急務の中、農業法人などに就農する「雇用就農」は、非農家出身者も農業技術や経営ノウハウなどを働きながら学べ、新規就農者に占める割合は増加傾向にある。一方、就農前に抱く農業のイメージと現実との間に差があるなどの理由で、定着率の向上が課題とされる。農林水産省は、農業法人などに対し、短期の就業体験者の受け入れや雇用就農者への研修実施を支援。農業法人などの人材確保を後押ししている。

(3面・ビジネス)

野菜水耕システムを開発 水稲育苗ハウスを周年で活用 ―― 新潟県農業総合研究所園芸研究センター(9面・営農技術・資材)【2022年7月2週号】

 新潟県農業総合研究所園芸研究センターは、水稲の育苗ハウスに設置できる野菜の無培地水耕栽培システムを開発した。水稲の育苗箱や野菜育苗用の128穴セルトレーなどの資材を活用して簡易に設置でき、培土の充てんや栽培コンテナの搬入・搬出は不要だ。3~5月の水稲の育苗と合わせ、6月から翌年3月まで複数品目を栽培すると、ハウスの周年利用による収益向上が期待できる。

(9面・営農技術・資材)

夏に衛生的でおいしいお弁当レシピ ―― (一社)日本キャラベニスト協会代表理事の沼端恵美子さんに聞く(5面・すまいる)【2022年7月2週号】

 全国各地で最高気温が35度を超える猛暑日が続き、お弁当作りが日課の読者の中には、衛生面が気になる方も多いはず。ちょっとした工夫により、衛生的でおいしく食べることができる夏のお弁当のお勧めレシピを、一般社団法人日本キャラベニスト協会代表理事の沼端恵美子さんに紹介してもらう。

(5面・すまいる)

スマート農業 確かな手応え【7月2週号 福井県】

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 【福井支局】「小型無人機(ドローン)での防除やスマート農機を利用して、作業時間の短縮や省力化に成功した」と話すのは、勝山市荒土町境の岩岡千賀子〈いわおか・ちかこ〉さん(63)。今年5月には自動操舵システム搭載のトラクターを導入するなど、スマート農業を率先して取り入れている。千賀子さんは夫の久〈ひさし〉さん(64)と水稲9.4ヘクタール、大麦1.3ヘクタール、ソバ3.6ヘクタール、サトイモ74アールを栽培する。スマート農業を導入したきっかけは、2020年4月に千賀子さんが農作業中の事故で大けがを負ったことだった。1カ月の入院と自宅療養で仕事が約1年間できず、その年は収量・収入が大きく減少した。久さんと話し合い、互いに体の無理が利かなくなってきたこともあったため、体への負担を少しでも減らせるよう、ドローンによる防除の導入を決意。21年3月に千賀子さんが操縦免許を取得し、ドローンでの防除を始めた。これまでは、大量の水で希釈した防除剤を大型タンクに準備し、防除中に重いホースを引っ張るなど、かなりの労力が必要で、すべての防除を終えるのに1週間ほどかかっていたという。ドローンによる防除を導入した結果、必要最低限の量で、すべての圃場の防除を数日で終えられるようになり、節水と時短に成功した。今年5月には自動操舵システムを搭載したトラクターを導入し、NOSAI福井(福井県農業共済組合)が提供するRTK固定基地局(GPS補正情報配信システム)を活用して、田植え前の代かき作業から利用している。「まっすぐ正確に作業ができるため、何度も往復する手間がなくなって、とても楽になった。農業は体が資本だが、作業負担は少ないほうがいいのは当たりまえ。機械に頼れるところは頼ってもいいと思う」と千賀子さん。「スマート農業を利用することで、生産管理に手がかけられる時間と余裕ができた。これからは品質管理にも力を入れ、おいしい農産物を届けていきたい」と意気込む。

〈写真:「大型機械は私、細かい作業は夫と、作業を分担している」と話す千賀子さん(左)と久さん〉

備えて安心「園芸施設共済」【7月2週号 石川県】

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風雪害対策を徹底
石川県能登町  田原 義昭〈たはら・よしあき〉さん(72)
 能登町のモデル農場を定年退職した後に就農し、トマトをメインに野菜類を13年間栽培しています。2020年12月に能登地方を襲った大雪は、水分が多く重い雪が短時間で積もり、ハウス5棟が全壊したため、園芸施設共済の共済金を受け取りました。野菜栽培が滞ると、経営には大きな痛手です。野菜苗の育苗ハウスから順に建て直しました。台風などの強風対策としては、ワイヤでつり下げ誘引をして、収穫前のトマトの重みでハウスを安定させています。再建後は単管パイプを利用し、3メートルごとに中柱を設置して雪害に備えています。ハウス同士の間隔を通常より広くして、除雪機の通り道を造ったので、小まめに除雪できるようになりました。ゆとりがあるので、屋根から落ちた雪がハウスの側面を圧迫しにくくなります。消費者に「おいしい」と言われる野菜作りは、土が命です。手作りのボカシ肥料は温度管理や毎日の撹拌(かく はん)を欠かさず、45日かけて発酵させています。土壌の固相(土の粒子)、気相(空気)、液相(水分)のバランスを、作物・微生物にとって好ましい状態に整えることで、病害を防ぎ、食味が良くなります。そのため、土壌分析を専門家に毎年依頼し、足りないものを補う肥料設計を徹底しています。能登町柳田は、雪深く、風当たりが強いです。風雪害への対策はもちろん、万が一のときのことを考えて保険に加入することが大切だと思います。
 ▽トマト、キュウリ、野菜苗(5棟4.7アール)、ブルーベリー13アール
 (石川支局)

〈写真:妻の博子さん(70)は収穫を担当。「『今までの経験を生かしたら』と、就農を勧めてくれたのは妻です」と義昭さん〉

健康効果をアピール 甘酒の原料に機能性成分米【7月2週号 岐阜県】

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 【岐阜支局】「私たちの『機能性成分米』や『健康米』『奇跡の米』で、心も体も健康になってほしい」と話すのは、株式会社グリーンランドの安部道洋〈あんべ・みちひろ〉代表取締役(43)。養老町と海津市の水田約80ヘクタールで水稲を中心に作付ける。中でも、米麹甘酒で注目の「レジスタントプロテイン」を含む機能性成分米の栽培に力を入れている。レジスタントプロテインは、食物繊維のように体内で消化、吸収されにくいといわれるタンパク質で、健康効果が期待されている。グリーンランドでは、この機能性成分を含む米「LGCソフト」のほか、通常の3倍の大きさになる胚芽により脚気予防に効果があるとされる健康米を栽培。ほかにも奇跡の米「イセヒカリ」や「コシヒカリ」「ハツシモ」など10品種を、父の正博さん(72)や従業員と共に作付ける。健康米の生産を始めたきっかけは、腎臓病を患っていた親戚の食生活を見直すためだった。米農家として何かできることはないかと模索していたところ、地元では作付け実績のない品種を知り、真っ先に栽培を試みた。「米は糖質が高いが、気にせずおいしく食べてもらいたかった」と安部代表。当初は病院などの医療機関に売り込み、使用してもらったが、健康に良いと分かっていても、収穫量が不安定で量の確保が難しかったことや単価が高いことなどの理由から、リピートまでには結び付かなかった。そんな時、甘酒や米麹、ぬか床を製造する「こうじや里村」(大野町)から、甘酒の原料米として作付け依頼があった。以前から栽培していたグリーンランドは「健康のお手伝いができれば」と要請に応じ、6次産業化へと発展した。甘酒「すっきり飲める腸活甘酒RP(レジスタントプロテイン)」はノンアルコールで、食物繊維が豊富な17種類の国産雑穀をブレンドし、腸に優しいと評判だ。「昨年は米の買取価格が下落して売り上げが落ちたが、収入保険に加入していたので助かった」と安部代表。「より安心して購入していただけるよう有機肥料を使用し、食味値を上げて収量を増やしたい。スマート農業を進め、作業効率を上げて経営規模を拡大したい」と意気込む。

〈写真:苗箱に水稲種子を播種する安部代表〉

捕獲器改良、そば粉を餌に ジャンボタニシ減少【7月2週号 長崎県】

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 【長崎支局】ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)による水稲の食害に悩まされてきた諫早市高来町の松永孝典さん(72)は、そば粉を活用して捕獲に取り組んでいる。「簡単に作ることができて、一定の効果があると思う」と話す。インターネットなどで対策法を調べると、育苗箱やペットボトル、米ぬかを使用した捕獲器が掲載されていたため、製作を試みたという。水田の水口に設置したところ、餌が崩れて水に流され、捕獲器に入ったジャンボタニシが逃げてしまった。崩れやすい米ぬかの代わりに、そば粉と小麦粉を1対1で配合し、手でこねてピンポン玉ほどの大きさにして捕獲器に敷き詰めた。試作時は3カ所だった入り口を2カ所に変更し、返し部分はペットボトルからクリアファイルに代えるなど改良を重ねた。松永さんが代表を務める有限会社たかき(従業員4人、ソバ12ヘクタール、水稲1.2ヘクタール、麦1ヘクタール、アボカド40アール、ユズ15アール)では、自社運営の食事処で「幻の高来そば」を提供。そば粉を製造する際に出る製品にならない部分をジャンボタニシ対策に利用した。「約20アールの田んぼで、田植え後すぐ水口付近に2箱を設置し、水を切るまで管理します。設置当初は約2日に1回は餌を置き直し、その後様子を見て餌を追加していくと、ジャンボタニシが徐々に減りました」と松永さん。多いときで1箱に2キロほどのジャンボタニシが入っていたという。「栽培面積が広く人手が少ないため、ジャンボタニシの食害対策には苦労してきました。細かい管理も難しい状況だったので、捕獲器のおかげで手間が省けていると思います。食害が減り、より良い米作りができれば」と期待する。

〈写真:改良した捕獲器に入ったジャンボタニシ〉

防風林「通信ネットワークは命を守る重要なインフラ【2022年7月2週号】」

 ▼7月2日から4日にかけて発生した大規模な通信障害は、携帯電話にとどまらず、物流システムや気象観測データの収集など通信を利用する多くのシステムに影響を及ぼした。折しも台風4号が日本に接近中で、警察や消防への緊急電話も不通になり、事故や災害が発生しても通報さえできないと不安になった人も多いのではないか。
 ▼昨今のスマートフォンは、電話というよりも生活に欠かせない多機能の携帯端末となっている。天気予報やニュース、趣味などの情報収集やSNS(交流サイト)などを使った家族や友人・知人との連絡、交通機関の乗車券や買い物の決済など使いこなすのが大変なほどだ。
 ▼今回の通信障害は、古い設備の交換時に発生したという。これまでも数時間ほどの障害は時々発生している。素人考えと承知の上だが、昔の黒電話は停電でも利用できた。技術を結集すれば障害に強い通信システムの構築も不可能ではないはずだ。
 ▼通信インフラが整えば、スマートフォンは災害時に一層頼もしい携帯端末となるだろう。

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