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今週のヘッドライン: 2022年09月 3週号

農作業 安全確保を最優先に シートベルト着用呼びかけ ルールづくりと情報共有も重要(1面)【2022年9月3週号】

 秋作業が本格化する9~10月を重点期間として、農林水産省は「秋の農作業安全確認運動」を展開する。重点推進テーマを「しめよう!シートベルト」に設定し、特にトラクターの転落・転倒による死亡事故を減らそうと、運転時のシートベルト装着徹底を働きかけている。農業就業人口が減少する一方で、農作業死亡事故は毎年約300件発生。その85%を65歳以上が占め、若年層では離農につながる重傷事故なども起きている。シートベルトに加え、安全キャブ・フレームなど基本装備を確認し、共同作業でのルール決めや情報共有で事故を未然に防ぎたい。

(1面)

「第3次バイオマス活用推進基本計画」を閣議決定 利用率80%に引き上げ(2面・総合)【2022年9月3週号】

 政府は6日、家畜排せつ物や下水汚泥、食品廃棄物などバイオマスの利用率を2030年までに年間産出量の約80%に引き上げるとした「第3次バイオマス活用推進基本計画」を閣議決定した。家畜排せつ物は、堆肥利用など資源循環を推進するほか、メタン発酵など高度エネルギー利用を促進。下水汚泥では含まれる有機物の5割を農地やエネルギーに利用する目標を掲げた。バイオマスの活用は、地球温暖化の防止や循環型社会の形成に重要であり、農山漁村の活性化に向けては、地域ごとの資源量を把握し、経済的にも引き合う流通・加工体制の構築が課題となる。バイオマスの供給や利用に関わる農業者の所得向上などメリットが実感できる体制整備が必要だ。

(2面・総合)

2021年度「日本型直接支払」の実施状況 中山間直払交付金は面積4万2000ヘクタール減(2面・総合)【2022年9月3週号】

 農林水産省は8月31日、2021年度の「日本型直接支払」の実施状況を発表した。中山間地域等直接支払交付金の交付面積は、前年度比4万2397ヘクタール減の59万6514ヘクタールとなった。協定数(186増の2万4171)と協定面積(1万1493ヘクタール増の65万2562ヘクタール)はともに増加したが、交付対象要件の明確化などに伴い交付面積は減少したという。
 対象農用地面積に占める交付面積の割合は5.5ポイント減の79.4%。交付総額は棚田地域振興活動加算など加算措置の適用拡大により、1億8900万円増の523億6900万円だった。

(2面・総合)

福島市の果樹農家 想定外の降ひょうから3カ月 再起へひた向きに 収入保険でリスクに対応(3面・農業保険)【2022年9月3週号】

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 「今年は霜の被害がなかったし、病気も少ない。ひょうさえ降らなければ、最高の出来だっただけに残念」と話すのは、福島市飯坂町平野の紺野幸一さん(73)。5月下旬から6月上旬にかけて東北や関東などの広い範囲でひょうが降り、果樹や園芸施設などに大きな被害が発生してから3カ月が過ぎた。「収入保険への加入で、安心して営農を継続できている」と再起に動き出す福島市の果樹農家2人を訪ねた。

(3面・農業保険)

〈写真上:リンゴを手に「ほとんどの果実がへこんでいる」と話す同市飯坂町平野の紺野幸一さん〉
〈写真下:NOSAI職員にナシの被害を説明する同市大笹生の菅野賢蔵さん〉

地元食材がつまったシフォンケーキ いつでもおいしく味わってほしい ―― 稲葉きみ子さん(愛知県大府市)(5面・すまいる)【2022年9月3週号】

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 愛知県大府市吉田町の稲葉きみ子さん(62)は、温州ミカン15アール、柿10アールを夫の光成さん(69)と栽培する傍ら、自宅脇の加工場「工房いなばっち」でシフォンケーキを製造し、同市の「JAあぐりタウンげんきの郷(さと)」の農産物直売所「はなまる市」で販売する。自家生産したミカンをはじめ、小麦粉や米粉などの材料は地元のものを使い、6種類を製造。平日は直径20センチのホール30個分が売り切れる人気となっている。

(5面・すまいる)

〈写真:生地を混ぜる稲葉さん〉

温州ミカン 生産から出荷まで8技術を導入 スマート農業一貫体系 ―― 長崎県農林技術開発センターが実証(7面・営農技術・資材)【2022年9月3週号】

 農研機構果樹茶業研究部門はこのほど、「かんきつにおけるスマート農業の展望」をテーマに常緑果樹研究会を開いた。長崎県農林技術開発センターは、温州ミカンの生産から出荷までをデータ駆動でつなぐスマート農業技術一貫体系を実証し、労働時間19%削減など成果を報告した。概要を紹介する。

(7面・営農技術・資材)

飼料米「べこあおば」反収973キロ 安定多収を実現【9月3週号 秋田県】

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 【秋田支局】飼料用米の安定多収を追求する横手市大雄の小松田光二さん(74)は、妻の敦子さん(70)と共に約1.3ヘクタールで栽培。水田活用の直接支払交付金で収量に応じて交付される戦略作物助成金は、作付け1年目から上限額を確保し続けている。小松田さんは2017年から主食用米に加え、飼料用米の栽培を開始。「主食用米より収益が高いと聞いて興味がわき、国や県の助成があるので安定した収入が見込めると思った」と取り組んだきっかけを話す。21年は多収米品種「べこあおば」を初めて作付け。20年は「秋田63号」を作付けたが、肥料を与え過ぎて収穫前に倒伏したため、短稈で耐倒伏性が強いべこあおばを選択した。土作りでは、春の耕起前にケイ酸を含んだ土作り肥料「シリカリン28号」を10アール当たり20キロ施用。田植えの際は一発肥料「基肥まくモン」を10アール当たり45キロまく。慣行では1坪当たり60株移植するところを、50株の疎植栽培に取り組む。10アール当たり必要育苗箱数は23枚から18枚になったという。育苗資材費は、集落の農業者6人で育苗センターを運営することで抑えた。田植機やコンバインなどの農業機械を共同利用して、導入や整備の費用を削減した。播種から収穫まで、主食用米・飼料用米の順に作業することで、混入防止に努める。「作業では特に水管理に気を使っている」と小松田さん。土壌表面が露出しないよう注意し、小まめな水管理を心掛けているという。工夫を凝らした栽培で、21年産は10アール当たり収量973キロを達成。「飼料用米多収日本一コンテスト」単位収量の部で農林水産大臣賞に輝いた。「一番上の賞を目指して栽培してきた。目標を達成できて良かった」と笑顔を見せる。市農林部の藤山篤志次長兼農業振興課長は「小松田さんは日頃から地域との連携を大事にして、農業者同士で情報交換をするなど研究熱心。このような姿勢が結果につながり、うれしく思う」と話す。「本年産は順調にいけば10アール当たり800キロ以上は見込める」と小松田さん。「今後は10アール当たり収量1トンを目指して栽培を続けていきたい」と意気込む。

〈写真:「施肥や水の管理を徹底し、多収を実現している」と小松田さん〉

6次産業化進めるナシ農家の3代目【9月3週号 福井県】

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 【福井支局】「美容と健康に良い食材で作ったゼリーを皆さんに味わってほしい」と話すのは、坂井市三国町でナシ(40アール)の生産と商品販売に取り組む「近〈こん〉ちゃんふぁーむ」の近藤美香さん。自家栽培のアロエの葉肉とナシのピューレを使った「飲むゼリー」を開発し、9月からインターネットなどで販売している。美香さんは、2015年に妹の孝美さんとナシ農家の3代目として就農。美容関係の仕事に就いていた経験から、ビタミンやミネラル、抗酸化作用などの栄養成分を多く持つ食用アロエに関心を持ち、島根県のアロエ農家から株を仕入れ、自宅横のハウスで栽培を始めた。「アロエは栄養豊富で肌に良く、腸内環境を整える効果もあるなど、美容と健康に優れた食材」と美香さん。地元の洋菓子店の協力を得てピューレにしたナシをアロエに加え、飲むゼリーが完成した。「飲むゼリーを摂取することで、美容と健康の両方を体の内側からサポートできたらうれしい」と目を輝かせる。ナシを生かした商品は、若狭牛のレトルトカレー「美梨〈びなし〉カレー」や、焼き肉のたれ「ものがたれ」などがあり、6次産業化を積極的に進める。「農業を始めてから地元の方々との関わりが増え、アイデアをいただいたり、一緒にコラボ商品を開発できたりと、すてきな経験をさせていただいている」と美香さん。「いろいろな人に支えられているからこそ、農業は楽しいと思えるし、農業をして良かったと感じる」という。今後については「商品開発をしたり、コラボレーションをしたりして、活動を広げていきたい。そして、福井県や近ちゃんふぁーむのナシや農業の楽しさを、SNS(交流サイト)などを通して発信していきたい」と話している。

〈写真:ハウス栽培のアロエと美香さん。今年の春には株分けできるほど成長し、生産拡大に成功した(写真提供=近藤美香さん)〉

収入保険を支えに イチゴ栽培の拡充目指す【9月3週号 奈良県】

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 【奈良支局】「収入保険に加入していたおかげで、経営を続けることができた」と話す桜井市の北嶋真大〈きたじま・まさひろ〉さん(30)。2020年にトビイロウンカが異常発生し、水稲に甚大な被害が発生した。「何が起こるか分からないので、不安を解消するため収入保険に加入することを決めた」と話す。21年はイチゴにうどんこ病が発生し、収量の減少に伴い収入も落ちた。新型コロナウイルス感染症の影響で観光客向けの販売店から注文が減ったことが重なり、売り上げは大きく減少した。つなぎ融資を申請したところ、「早く融資してもらえ、来シーズンの資材購入に充てることができて本当に助かった」と北嶋さん。過去にもイチゴにダニが発生したことで、株が小さく、花は咲かず、果実が実らなかったことがあり、売り上げが減少した。現在はイチゴ28アール(ハウス7棟)、水稲800アールを経営する。「今後、何かあっても収入保険に加入していれば安心して経営を続けられる」と北嶋さん。「収入保険は万が一のときの備え。収入が安定すれば、経営規模も拡大することができる」と未加入者へアドバイスする。今後について「イチゴの栽培面積を50アールまで拡大して、より良い品質を追求していきたい」と意気込む。

〈写真:イチゴのランナーを育てる北嶋さん。「農家にとって収入保険は良い保険」と話す〉

収入保険を支えに 「能登島のりんご」広めたい【9月3週号 石川県】

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 【石川支局】七尾市の野口りんご園(リンゴ80アール、水稲2.7ヘクタール)の代表・野口一文さん(63)は、収入保険への加入で自然災害に備える。加入した決め手や今後の経営について聞いた。


 野口りんご園は無袋栽培を採用し、太陽の光をいっぱいに浴びて育った糖度の高いリンゴが売りです。リンゴ狩りやオーナー制度といった体験もできます。収量を安定させるため、定期的な木の植え替えや枝を伸ばすことを意識しています。害虫を誘引する誘蛾灯〈ゆうがとう〉の設置など、防除も欠かせません。収入保険には2019年に加入しました。自身の過去5年間の収入を基準として補償が決まるため、分かりやすいと思ったことが加入の決め手です。自然災害はいつ起こるか分かりません。収穫前のリンゴが暴風で落果し、全滅した経験は忘れられないです。特に近年は異常気象による農作物の被害が頻発しています。万が一、収入が減少したときでも補償があると安心ですね。農業経営を守るため、自らの努力を怠らず、カバーできない部分を収入保険に頼ることで安心して災害に備えられると思います。今後も「能登島のりんご」が全国に名が通るように頑張っていきたいです。

〈写真:「猛暑の今年は日焼けが見られるのでしっかりチェックします」と野口さん〉

防風林「ありがたい話の裏で進む農業の衰退【2022年9月3週号】」

 ▼農業の労力不足が深刻化する中、公務員の副業として農作業のアルバイトを解禁する地方自治体が増えている。地方の主要産業である農業を支えるとともに、体験を職務に生かしてもらうねらいもあるという。地方公務員法では、営利目的の副業を禁止しているが、任命権者の許可で認められる仕組みを活用する。
 ▼実家が兼業農家などの場合、公務員でも農業への従事は認められている。しかし、報酬が伴い、営利性が高いと判断されれば処分される例もある。公共の利益のために働く公務員は「全体の奉仕者」であり、営利につながる行為は制限されていた。
 ▼ただ、昨今は営農継続が困難になるほど労力不足は深刻化し、流通など関連産業への影響が懸念される状況もある。地方公務員の職務は地域の創生や活性化であり、解禁を決めた自治体では地域の産業振興という点で公共性が高いとの判断に至ったようだ。
 ▼この秋から農政の基本指針である食料・農業・農村基本法の検証・見直しが予定されている。まずは農業が産業として自立できる政策の構築を求めたい。ありがたい話ではあるが、公務員のアルバイトを当てにする状況では農業・農村の衰退は止められない。全体の底上げに国の責任は重大だ。

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