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今週のヘッドライン: 2022年10月 1週号

搾乳ロボットを活用 効率化で難局に臨む ―― コージーファーム(栃木県市貝町)(1面)【2022年10月1週号】

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 「乳量の増加と省力化、搾乳ロボットの利点を最大限に生かしながら、この難局を乗り切りたい」と話すのは、栃木県市貝町の大瀧信夫さん(61)。経産牛180頭、育成牛140頭を飼養するコージーファームの代表として、新たな技術を活用した効率的な酪農経営に力を注ぐ。活動量などのデータを基にした発情や病気の早期発見、労働時間短縮による働き方改革にも手応えをつかむ。生乳需給が緩和する中、飼料価格の高騰など大幅な生産コスト増に直面するも「牧場を最善の状態に維持することが酪農家としての責任」と、良質乳生産、経営継続へ前を向く。

(1面)

〈写真:パソコンに蓄積されたデータで牛の状態を確認する代表の大瀧信夫さん〉

農水省 2021年の「地球温暖化影響調査レポート」公表 平年より0.6度高く水稲など多品目で影響(2面・総合)【2022年10月1週号】

 農林水産省は9月16日、2021年の「地球温暖化影響調査レポート」を公表した。水稲では例年と同様に出穂期以降の高温による白未熟粒や胴割れ粒の発生が報告されたほか、登熟不良などの報告が増加した。一方で、高温耐性品種の作付け拡大など適応策の取り組みも広がっている。温室効果ガスの排出を削減する緩和策と合わせ、農作物の安定生産、安定供給を可能とし、生産現場で取り組みやすい適応策の普及が求められる。

(2面・総合)

農水省 基本法見直しを諮問 部会立ち上げ本格議論へ(2面・総合)【2022年10月1週号】

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 農林水産省は9月29日、食料・農業・農村政策審議会(会長=大橋弘東京大学副学長)を開き、野村哲郎農相が食料・農業・農村基本法の検証・見直しなどを諮問した=写真。
 審議会では生産者や農業団体をはじめ、食品関連企業の代表者や学識者などを委員とする基本法検証部会(部会長=中嶋康博東京大学大学院教授)の設置を決定。同省は10月中旬にも初会合を開き、その後は月2回程度会合を重ね、約1年かけて方向性を取りまとめる方針だ。

(2面・総合)

収入保険 保険料標準率を引き下げ 2023年1月以降の契約から より加入しやすく(3面・収入保険)【2022年10月1週号】

 2023年1月以降に保険期間が開始する収入保険の契約から、保険料算定に用いる保険料標準率が引き下げられる。最大補償を選択した場合、国庫補助後の保険料標準率は1.179%(現行は1.23%)となる。基準収入1千万円の農業者が負担する保険料は、8万8500円から8万4800円に減額される計算だ。さらに、インターネット申請や自動継続特約を付けると、付加保険料(事務費)が割引される仕組みもある。価格変動や甚大な被害をもたらす自然災害が発生する中、経営安定には収入保険への加入が欠かせない。

(3面・収入保険)

大豆 播種遅れ時に狭畦栽培 稲刈りと作業かぶらず ―― 宇野充浩さん(三重県伊勢市)(9面・営農技術・資材)【2022年10月1週号】

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 水稲23ヘクタール、小麦30ヘクタール、大豆27ヘクタールで経営する三重県伊勢市の宇野充浩さん(44)は、大豆「フクユタカ」などの収量で10アール当たり135キロ前後と、県平均(70キロ)の約2倍を確保する。長雨での播種遅れ時に、栽植密度を高めた「狭畦栽培」へ切り替えて生育を確保する。中耕が必要なく、稲作との作業競合が回避できる。播種時期に降雨が続いた今年は、大豆の全面積で実施した。「天候が安定せずに雨との兼ね合いで作業時期が限られる中、重要な選択肢」と話す。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:狭畦栽培の圃場(8月下旬)で宇野さん。「遅播きでも稲刈りと作業が重ならない」と説明する〉

秋も要注意! 住まいのカビ対策 ―― お片づけパーソナルアドバイザーの西田実世さんに聞く(5面・すまいる)【2022年10月1週号】

 「カビ」はジメジメした梅雨時の困りものの代名詞だが、実は秋のカビも手ごわい存在だ。カビが発生しやすい理由や特に注意したい住居内の場所とその対策について、掃除と片付けの両方から暮らしをサポートする、お片づけパーソナルアドバイザーの西田実世さんに教えてもらう。

(5面・すまいる)

あきたこまちに乳酸菌散布 玄米の魅力をハパライスで【10月1週号 秋田県】

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 【秋田支局】湯沢市大町にある株式会社鈴木又五郎商店(鈴木達夫代表取締役)では、乳酸菌成分が含まれた「あきたこまち」の玄米と白米を配合した「HAPA RICE(ハパライス)」を発売。栄養価の高い玄米をおいしく食べられると評判だ。同社は肥料や農薬、米を扱う創業132年の老舗卸会社。開発した鈴木アヒナ麻由専務取締役(34)は、米国ハワイでセラピストとして働いていた経歴を持つ。ハワイでは「ハパ」は混ぜるという意味で、ハパライスが一般的に親しまれていた。鈴木専務は「健康や美容を意識して玄米を食べる人が多かった。日本では敬遠されがちだが、体に良い効果がある、おいしいものだと広めたかった」と話す。帰郷後にあきたこまちでハパライスを試作。「もちもちとした食感で食べやすかった」と振り返る。商品化に向け、関連会社の合同会社カネマタファームが4ヘクタールで作付け。乳酸菌は催芽と育苗期、田植え後の入水時、収穫間際の4回散布する。「ぬかを柔らかくし、玄米特有のにおいを軽減する効果がある」と鈴木専務。根張りを良くし、倒伏しにくくする効果もあるという。2020年に発売したレトルトパックには、コレステロールを下げる効果があるといわれる乳酸菌パウダーを添加。「1パックにヨーグルト1個分の乳酸菌が含まれている。酸味やにおいを感じることはなく、手軽に食べてもらえる」と説明する。レトルトパックの開発では、玄米と白米の配合量のほか、乳酸菌含有量や水分量、蒸し時間を変え、55種類ほど試作。玄米と白米の割合2対3に行き着いた。「生米は、水を増やし数時間浸水してから炊飯する手間があった。レトルトにすることで、ベストな状態で食べてもらえると考えた」と開発のきっかけを話す。商品はインターネットのほか、横手市のスーパーモールラッキーや道の駅十文字で販売する。スーパーモールラッキーの小原まどかさんは「玄米と白米の配合量が考えられていて食べやすい。鈴木専務は若い女性のお手本的存在で期待している」と話す。現在、ハパライスの玄米を使ったパンケーキミックスを販売するほか、みその販売も予定している。鈴木専務は「もうかる農業のビジネスモデルをつくり、秋田の米を盛り上げていきたい」と意欲的だ。

〈写真:ハパライスを手に「玄米や健康食に興味がある人の入り口になれたら、うれしい」と鈴木専務〉

経営安定と規模拡大 収入保険加入は必須【10月1週号 石川県】

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 【石川支局】白山市の農事組合法人キタジマ(水稲23ヘクタール、大豆15ヘクタール、麦6ヘクタール)の代表理事・中村一彦さん(67)は、収入保険に加入し経営の安定を図っている。加入の必要性や経営の課題などを聞いた。


 2017年に集落営農組織を法人化しました。構成員は10人で、水稲、麦、大豆を作付けています。青色申告は19年に始め、収入保険には21年に加入しました。農業共済は品目ごとの加入で手続きもそれぞれ分かれていました。収入保険は一度の加入手続きで、作付品目すべてがカバーできます。保険料等の支払合計額が共済掛金の合計より抑えられることが魅力でした。青色申告2年分の提出では、補てん金額の限度が最大ではありません。それでも加入を決めたのは、自然災害を含めたさまざまな要因で収入が減少したときに補償されるからです。補償があることで、滞りない構成員への賃金の支払いや設備投資などができるので、いざというときに役立つ保険だと思います。21年産は米価の下落に加え、長雨で大豆は不出来で、米の早生品種は生育不良になったため収量が減りました。収入の減少が見込まれたため、保険期間中につなぎ融資を受け取りました。おかげで無事に1年を締めることができ、ひと安心でした。近年頻発する異常気象は予測ができず、一度に多大な被害が出ています。被害に遭い、自らの努力では立て直せないとき、経営を安定させるためにも保険は必須です。高齢化に伴い水田の作業受託が増え、規模拡大する予定です。収入保険を後ろ盾に、地域の農地を守る役割を果たし続けたいと考えています。

〈写真:「農地を任されたからには、経営をしっかり守りたい。収入安定のためにも、今後は転作作物により力を入れていきたい」と中村さん〉

露地バナナの初収穫に期待【10月1週号 岩手県】

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 【岩手支局】一関市東山町の千葉一男さん(69)は、独自の方法でバナナを栽培し、収穫に期待を寄せている。千葉さんは10年前の定年退職を機に準備を進め、2015年に自宅の庭(20平方メートル)で寒さに強い品種「アイスクリーム」30本の栽培を始めた。寒さに強いものの、「気温を3度以上に保つことが必要」と千葉さん。10月末ごろに株ごと掘り上げ、根を切って土とともに肥料袋に入れる。それをビニールハウスに移して冬越しさせた後、5月上旬ごろに庭へ定植。肥料は花芽が出た後の7月と9月の2回、株を中心に1.5メートル離れたところへ円形状にまく。これらの方法は千葉さんが研究を重ねて編み出したという。栽培を始めて2年で実がつくようになるが、昨年までは葉があまりつかず、実が5~6センチまで育った後に枯れた。今年は5株に花芽がつき、「10月下旬には収穫できるのではないか」と期待する。千葉さんは「バナナを露地で実らせる栽培方法は、県内でもあまりない。今後も人が驚くような取り組みを続けたい」と話す。

〈写真:バナナの生育を確認する千葉さん。現在の栽培方法が成功すれば1株から50~60本収穫できる見込みだ〉

高精度の位置情報を取得へ【10月1週号 北海道】

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 【北海道支局】NOSAI北海道(北海道農業共済組合)石狩支所では、作付面積の測定の精度を上げるとともに作業効率を向上させるため、高精度GPS(衛星測位利用システム)端末の試験をこのほど実施。機器を取り扱う業者から操作方法などの説明を受け、性能などを確認した。同支所で利用するGPS端末は、単独の受信機で複数の衛星から信号を受信する。各衛星からの距離を測定し位置を算出するが、単独の受信機による測定では位置情報に誤差が生じる場合があった。今回試験実施したシステムは「RTK測位」と呼ばれる測定方法で、固定局と移動局の二つの受信機で複数の衛星から信号を受信する。二つの受信機の間で誤差を補正することで、従来より精度の高い位置情報を取得し、誤差は数センチ単位で抑えられるのが最大の特徴だ。高精度GPSはトラクターや建設機械、小型無人機(ドローン)の自動運転など、より正確な位置情報を求められる分野で活用が広がっている。同NOSAIでは、次期GPS端末の更新に向けて、さらに検討を進めたいとしている。

〈写真:右は試験実施で利用したUT32タブレット端末。左は現在利用しているGPS〉

マコモの不耕起栽培に挑戦【10月1週号 島根県】

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 【島根支局】奥出雲町でマコモ15アール、水稲10アールを栽培する河﨑敦子〈かわさき・あつこ〉さん(49)と古橋睦之〈ふるはし・よしゆき〉さん(36)。河﨑さんは2018年の帰省時、同町追谷地区を初めて訪れ、船通山を望む風景にひかれたという。20年にUターンし、同地区での就農体験を経て、一緒に体験していた古橋さんと、21年からマコモ栽培に取り組む。マコモの葉は、ござや枕、しめ縄として、根元にできる肥大化した茎「マコモダケ」は食用として活用される。ケイ素やカリウムが多く含まれるため、デトックス効果があるという。「マコモには水をきれいにする機能があり、田んぼや川の水質浄化が期待できます。斐伊川の源流の追谷地区から、環境保全の大切さを伝えていきたいです」と古橋さん。環境に配慮した不耕起栽培などにも挑戦している。河﨑さんは「奥出雲町は『たたら操業』で栄えてきた。追谷地区の棚田は国の重要文化的景観です。歴史ある奥出雲の魅力を、マコモを通して発信していきたい」と笑顔で話す。

〈写真:収穫したマコモを手に河﨑さん(右)と古橋さん〉

防風林「地方のデジタル環境整備を急げ【2022年10月1週号】」

 ▼読者から問い合わせがあり、記事掲載した有機農業関係の研究会への参加方法を尋ねられた。ネット上だけのオンライン開催であり、パソコンやスマートフォンから申し込むと説明するとがっかりした様子だ。70代の方で、パソコンなどは持っていないという。
 ▼コロナ禍が長引き、研究会やシンポジウム、イベントなどのオンライン開催が急増した。対面で直接話し合えないなどマイナス面はあるものの、移動距離や時間を気にせず参加でき、関心のある問題を勉強できるなど利点は多い。ただ、関心や意欲があっても参加できない人が出てしまうとしたら見過ごせない。
 ▼政府は、「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、デジタル技術の実装による地方活性化を推進する。ネットなどの環境整備と人材育成を基本に地方への人の流れを促し、「誰一人取り残されない」社会の実現を目指すとする。
 ▼スマート農業技術の普及にも圃場のネット環境などの整備は欠かせない。位置情報とデータの連携など生産性向上の可能性が広がるからだ。操作などが苦手な人にこそ、恩恵をもたらす技術としてほしい。


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