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今週のヘッドライン: 2022年10月 4週号

2023年産米 適正生産量669万トン 22年産と同水準の転作必要(1面)【2022年10月4週号】

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 農林水産省は20日、2023年産主食用米の適正生産量を669万トンとする需給見通しを示した。9月25日現在の22年産予想収穫量670万3千トン(作況指数100)に比べ1万3千トン少ない水準。22年産と同規模の作付け転換維持で主食用米の需給は安定する見通しとなった。22年産米の9月の相対取引価格(速報)は、全銘柄平均で60キロ当たり1万3961円となり、前年同月比706円(5%)高と上向いた。23年産でも適正生産量の達成に向けた産地の取り組みが求められる。同省は、引き続き水田農業の高収益化や麦・大豆の生産振興などを推進する方針だが、水田活用の直接支払交付金の見直しなど課題もある。

(1面)

〈表:2023/24年の主食用米等の需給見通し(単位:万トン)〉

農水省 中山間地域等直接支払制度の中間年評価へ 集落支える総合支援を 次世代担う人材不足が深刻化(2面・総合)【2022年10月4週号】

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 農林水産省は14日、中山間地域等直接支払制度に関する第三者委員会を開き、2020年にスタートした第5期対策の中間年評価に向けた検討を開始した。21年度は協定数・面積ともに前年度比で微増となったものの、委員からは「過疎化・高齢化の進展で集落機能は危機的な状況」「長期的な展望が見えない」などの指摘が相次いだ。特に全体の約3割を占める協定面積5ヘクタール未満の小規模集落協定を中心に人手不足などの深刻化が指摘され、制度の充実とともに農村型地域運営組織(農村RMO)の推進など総合的な対策の確立を求める発言が上がった。食料の安定供給や国土保全など中山間地域農業が果たす役割を、次世代に確実につなぐ環境整備は待ったなしだ。

(2面・総合)

〈表:第4期対策最終年度(2019年度)で「高齢化などで5年間続ける自信がない」「リーダーがいない」との理由で廃止した協定数(交付面積規模別)※農林水産省資料から作成〉

食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会 農水省が「食料の輸入リスク」で議論 国際市場での地位が低下(2面・総合)【2022年10月4週号】

 農林水産省は18日、食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会(部会長=中嶋康博東京大学大学院教授)の初会合を開いた。「食料の輸入リスク」をテーマに、人口の多い新興国の経済成長に伴う世界の農産物輸入の変化など、現行基本法制定以降20年間の情勢と課題を整理し、有識者の意見を聴取した。

(2面・総合)

農家とNOSAIをつなぐ共済連絡員(NOSAI部長) 地域農業と暮らし守る ―― NOSAI三重(3面・NOSAI部長)【2022年10月4週号】

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 NOSAI三重(三重県農業共済組合)管内では、地域の役職を担当しながら、共済連絡員(NOSAI部長)や損害評価員を兼務して、農家とNOSAIの橋渡し役として活躍する生産者がいる。多気町の小野健一さん(73)と、玉城町の西岡正雄さん(72)の2人を訪ねた。

(3面・NOSAI部長)

〈写真上:サル追い払い用の花火の使用方法をNOSAI職員に示す多気町の小野健一さん(左)〉
〈写真下:広報紙を開きNOSAI職員と話す玉城町の西岡正雄さん(右)〉

ソバ 有機質など多肥に 食味が向上 ―― 伊那そば振興会(長野県伊那市)(7面・営農技術・資材)【2022年10月4週号】

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 長野県伊那市の「信州そば発祥の地 伊那そば振興会」は、ソバの主要品種「信濃1号」の栽培で畜産堆肥など有機質を10アール当たり4トンと多量に施用し、高品質化を実現した。信州大学が技術指導し、ソバのうまみや風味に関わるたんぱく質や脂質の成分分析に基づき、緩効性を主体にチッ素などを慣行よりも多く施用。栽培技術を「プレミアム栽培指針」として体系化した。JAなどの協力のもと普及し、未利用資源を活用したソバの付加価値向上が期待されている。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:収穫直前の圃場を確認する、実証に参加する上戸ファーム代表の有賀正喜さん(右)とアグリ羽広代表の鈴木恭一郎さん〉

コロナ禍後の野菜消費動向 食の外部化がさらに進行(4面・流通)【2022年10月4週号】

 野菜流通カット協議会(事務局・日本施設園芸協会)は先ごろ、加工・業務用野菜の情報交換会セミナーを開催。野菜を中心とした加工・業務用需要への対応について、石川県立大学生物資源環境学部の小林茂典教授が講演し、「手軽に」「便利に」「時間をかけずに」食べられる簡便化志向により食の外部化がさらに進むと報告した。概要を紹介する。

(4面・流通)

第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会 仲間と栄冠つかむ ―― <特別区>鹿児島県立曽於高校が優等賞1席(5面・すまいる)【2022年10月4週号】

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 「和牛新時代 地域かがやく和牛力」のテーマのもと、第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会(全国和牛登録協会主催)が6~10日、霧島市など鹿児島県内の2会場で開かれた。今大会から新設された特別区「高校および農業大学校の部」では、雌牛「しえな」を出品した鹿児島県代表の県立曽於高校が最上位となる優等賞1席に輝いた。

(5面・すまいる)

〈写真:前列左から同校の田實夢佳さん、矢野輝星さん、後列左から德重美南海さん、小倉香澄さん〉

IPM活用のシシトウ栽培 働きやすい環境づくりも【10月4週号 高知県】

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 【高知支局】南国市でシシトウ20アールを栽培する山本晋佑〈やまもと・しんすけ〉さん(40)は、環境への負荷を軽減する技術を導入し生産に取り組む。2人の子どもを育てながら、子育て世代が働きやすいように時短勤務などを取り入れ、雇用の創出で地元に貢献しようと意欲的だ。東京で会社員として働いていた晋佑さんは、35歳で就農・移住を決意し、高知県にIターン。両親の出身地が第1候補地だったという。東京で開催されていた「こうちアグリスクール」や県立農業担い手育成センターでの研修、南国市のシシトウ農家の下での長期研修を経て2020年に就農した。「研修で教わった『IPM(総合的病害虫・雑草管理)』を活用しているため、農薬の使用を減らすことができ、安心して食べていただけます」と晋佑さん。オンライン直売所「やままやさい」で、とれたてを当日発送し、新鮮さが喜ばれ評判は良いという。雇用面では、短時間勤務や不定期勤務を可能にするなど、子育て世代が働きやすい環境を提供する。妻の綾乃〈あやの〉さんは、手作りした募集のチラシを子育て支援センターに設置するなど積極的に協力した。現在10人を採用し、「チラシやママ友同士の口コミで集まってくれました。平均2、3時間勤務で働いてもらっています」と綾乃さん。晋佑さんの仕事の息抜きは、小学2年生の娘と年少の息子と遊ぶこと。子どもとの時間を何よりも大切にしているという。「まだ3年目で、今がスタートラインという感じ。今年から炭酸ガス発生装置を導入したので、今後はさらに基盤を整え、収量10トンを目標に安定して栽培できるようにしたい」と晋佑さんは話してくれた。

〈写真:「県の新規就農支援の取り組みを広められたら」と晋佑さん〉

獣害ゼロへ緩衝地を整備 遊休農地の除草をヤギで実証へ【10月4週号 福島県】

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 【福島支局】天栄村では、野生動物が身を隠せない緩衝地帯を造り、鳥獣害を軽減する緩衝地帯管理実証事業として、遊休農地の除草にヤギを導入。副次的効果として、法面〈のりめん〉や畦〈あぜ〉などの除草にも期待している。ヤギの放牧は、2022年6月に2頭から始まった。同村の白子志古山〈しろこしこやま〉地区の遊休農地17アールをフェンスネットで囲い、仮設畜舎を配置。雑草の増加量がヤギの採食量を上回ったことから、9月に2頭追加し、現在は4頭となった。ヤギは放牧地に常駐。日常的な飼育管理は同村のシルバー人材センターに委託する。同村産業課の桑名潤一副主査は「放牧初日にヤギが逃げてしまうなど予想外のことが多く、勉強の日々です」と話す。現在はリーダー格のヤギ1頭に首輪などを付けたところ、残り3頭は放し飼いでも逃げないという。緩衝地帯の整備は順調に進んだが、夏の雑草の成長は早く、全長3メートルを超えるほどになったため、人間による整備が必要となった。つるに細かいとげがある植物「カナムグラ」をヤギはほとんど食べないことも分かったという。資材面では、ヤギがフェンスネットを体や角をこすりつけ破いてしまうため対策を検討中だ。実証地の近所でネギ70アールを栽培する車田京子さん(46)は「イノシシを見かけることが少なくなったように感じる。土手の除草のために飼育してみたい」と事業への関心を示す。同地区では、21年8月にイノシシを5頭捕獲したが、事業開始以降は捕獲や被害報告はない。実証事業は22年10月まで続け、鳥獣被害の状況を確かめる。桑名さんは「効果が確認されれば、傾斜部や範囲を広げての実証を検討していきたい」と話す。

〈写真:放牧地の仮設畜舎の前で「ヤギは自分の背丈より高い草も食べます」と桑名さん〉

〈収入保険・私の選択〉 暴落の痛手 補償で助かった【10月4週号 香川県】

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香川県東かがわ市  田中 康廣さん(82)
 農作物の市場価格は天候に大きく左右されるため、価格低下を補償してくれる収入保険は心強く、初年度から加入しています。以降、2年続けて保険金を受け取る事態になりました。2020年は、想定すらしていなかったコロナ禍での需要減少、21年は天候不順での価格暴落です。ブロッコリーは、20年10月に定植し、翌年4月に出荷する計画でした。ところが、秋の長雨で定植が大幅に遅れた上に、21年2月の低温で成長が遅れ、出荷は2月植えと一緒の5月になりました。この状況は全国的で、市場価格は一気に暴落。ブロッコリーは価格変動の少ない品目で、ここまで価格が下がるのは初めてです。経営は痛手を受けましたが、収入保険で補償してもらえ、とても助かりました。「生涯現役」を目標に掲げ、今は元気に取り組めていますが、健康は約束されたものではありません。また、ここ数年は過去に例のない気象災害が続いています。けがや病気、自然災害と、先が読めない時代ですから、補償内容の広さは気に入っています。青色申告は前職の手袋縫製業からで、60年の実績があります。収入保険の要件を満たし、スムーズに加入できたのは大きかったですね。白色に比べ「面倒」「難しい」といったイメージが強いかもしれませんが、各種控除の優遇や、収入保険に加入できるなど、多くのメリットがあります。自分の帳簿を時々見返すと、当時の記憶などが呼び起こされます。かつては、今より人手があり、面積も大きかった時代がありますが、おいしい作物を育てる農業の本質は変わってはいません。
 ▽水稲2.6ヘクタール、ブロッコリー90アール
 (香川支局)

〈写真:「地区の青色申告会では、指導部長として、白色から青色に変えて年数の少ない人に助言をしています」と田中さん〉

遊休地活用、加工品に注力 オリーブ産地化に貢献【10月4週号 広島県】

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 【広島支局】江田島市能美町の峰尾亮平さん(41)は、同市が設置したモデル園でオリーブの栽培・管理を担当するほか、栽培技術指導員としてオリーブの普及に努めている。2011年に始まった同市のオリーブ振興事業は約10年を経過し、現在では市全体で約1万6千本のオリーブを植栽。行政と市民、企業が連携し、地域活性化につなげるための取り組みを進めている。同市では、オリーブの産地化を目指し、耕作放棄地の解消や栽培の促進を目的に活動を進めている。モデル園では、ギリシャやイタリアなど海外の品種を含めた9品種を栽培。同市が地域の人を対象に開催する栽培講習会の会場としても利用されている。峰尾さんは「品種によって実の大きさや収穫時期が違う。いろいろな種類を植えているので、栽培の参考になれば」と話す。峰尾さんは19年、遊休地だった畑を自社の農園として借り、「瀬戸内いとなみ舎合同会社」を設立した。現在は約250本のオリーブを栽培する。「初めは1カ所で栽培していたが、活動していく中で、地域の人に声をかけたり、かけられたりして6カ所まで増やし、規模を広げてきた」。収穫した実のほかに、地域の人から買い取った実をオイルや塩漬けに加工し、同市内のパン店やオンラインで販売する。「加工品をできるだけ多く販売したい。加工品に必要な実をより多く買い取ることは、地域の活性化やオリーブ産業の発展につながる」。神奈川県出身の峰尾さんは「農業がしたい」と、栽培技術指導員を募集していた同市の地域おこし協力隊として16年に移住。「行政や企業、市民が一体となった活動は面白いし魅力的。江田島市を盛り上げるため、これからもオリーブ栽培に頑張りたい」と話している。

〈写真:「オリーブを育てている人の栽培を支援することにも力を入れていきたい」と峰尾さん〉

防風林「地域に根付くチーズ工房 全国338ヵ所に【2022年10月4週号】」

 ▼農林水産省によると、国内のチーズ工房などの数は2021年で338カ所(大手乳業者を除く)となり、10年の約150カ所から倍増した。21年度の国産ナチュラルチーズ生産量は45万3千トンであり、過去10年間で最高を記録。国際コンクールでの上位入賞事例も増え、品質も向上している。
 ▼酪農家が牧場に工房を併設するケースだけかと思うと、地域の牧場と提携する形態の独立した工房もあるという。製造するチーズは、モッツァレラやクリームチーズなどのフレッシュタイプが265カ所と多く、チェダーやゴーダなどハード、セミハードタイプが199カ所で続く。白カビや青カビ、ウオッシュタイプなど種類も豊富だ。
 ▼父親の晩酌の際、つまみのお裾分けを食べたのがチーズの初体験だ。10歳に満たず、チーズの味わい方も知らないから、その後は高校生ぐらいになるまで敬遠していた。最近は、日本でもイタリアンなどチーズを使った料理を日常的に楽しむようになった。個人では、晩酌で食べるつまみの定番となった。旅行にも出やすくなり、各地の個性ある工房の味を楽しむ機会も増えそうだ。

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