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今週のヘッドライン: 2022年11月 2週号

消費者に一番近い農家へ 京都の商店街に直売所 利用者招いて農業体験 ―― (株)晴れやかファーム(滋賀県東近江市)(1面)【2022年11月2週号】

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 「消費者とじかに交流し、農産物やファームの思いを直接届けたい」と、滋賀県東近江市五個荘の株式会社晴れやかファーム(毛利有宏代表、53歳)では、京都市三条会商店街で直売所「うまれたてやさい」を運営し、有機JAS認証を取得して生産する野菜や米を販売する。通信販売の購入者などを圃場に招いた農業体験も実施。自ら消費者のもとに打って出る交流と、消費者を呼び込む交流の2本柱で、自慢の農産物を届けている。

(1面)

〈写真:サツマイモ「シルクスイート」の圃場で毛利有宏代表。10月下旬の農業体験で収穫した〉

みどり戦略の認定制度始動 滋賀県の計画 全国初の同意 環境負荷低減へ(2面・総合)【2022年11月2週号】

 農林水産省は10月28日、「みどりの食料システム法」に基づいて滋賀県と県内全19市町が作成した「滋賀県みどりの食料システム基本計画」に同意したと発表した。9月の運用開始から地方自治体による基本計画の同意は全国初。計画に基づいて農林漁業者が作成する環境負荷低減の実施計画を県知事が認定し、施設・設備の導入などを税制・融資で支援する。同法は農業による環境負荷低減に向け、化学肥料の使用削減などを推進する。輸入依存度が高く、価格が高騰する化学肥料の使用量低減などにもつながると期待される。農業者の負担を招くことなく環境負荷を低減する農業生産への転換を後押しできるよう、選択肢を増やすなどの支援拡充が求められる。

(2面・総合)

JA全農 11月~来年5月の肥料価格 7品目で値上げ(2面・総合)【2022年11月2週号】

 JA全農は10月31日、11月から来年5月に適用する2022肥料年度春肥の価格を決定、公表した。尿素(輸入・大粒)は単肥で唯一、前期(秋肥)比で9%値を下げたものの、複合肥料を含む7品目は8~31%値上げした。急激な円安などの影響で調達費が上昇し、値上げが続いている。

(2面・総合)

脱プラ・減プラの包装資材 環境配慮を全面に ―― 第12回農業Weekから(3面・ビジネス)【2022年11月2週号】

 プラスチックは、農産物の包装袋や容器などに広く使われる一方、ごみの海洋汚染や地球温暖化などの要因ともされる。千葉市美浜区の幕張メッセで先ごろ開かれた第12回農業Week(ウィーク)では、各包装資材メーカーが、プラスチック使用量を削減した包装袋やプラスチックから紙への代替など、環境負荷低減を前面に押し出した製品を出展していた。概要を紹介する。

(3面・ビジネス)

大豆新品種 "はじけにくい"特性で普及進む 実質的な増収に(9面・営農技術・資材)【2022年11月2週号】

 農研機構では、主要な大豆品種に莢〈さや〉がはじけにくい「難裂莢性〈なんれっきょうせい〉」の特性を入れた新品種を育成し、東海や北陸、近畿、中国などの産地へ普及している。収穫遅れやコンバイン収穫でのロスを抑えて実質的な増収につながる。目的の遺伝子の目印となる「DNAマーカー」などを活用し、元の品種とほぼ同じ加工品質や成熟期を実現できた。産地奨励品種に採用し、既存品種との置き換えを進める産地もあり、国産大豆のシェア拡大につながると期待されている。

(9面・営農技術・資材)

盛況 国産ナチュラルチーズ 生産量・工房数とも右肩上がり ―― 日本チーズ協会理事の西山厚志さんに聞く(5面・すまいる)【2022年11月2週号】

 国産ナチュラルチーズが盛り上がりを見せている。牛乳・乳製品の消費拡大が課題となる中、2021年度の生産量は過去10年間で最高の45万3000トンとなった。各地のチーズ工房も増え、地域性を生かしたさまざまな製品が登場している。日本チーズ協会の理事を務め、茨城県稲敷市で新利根チーズ工房を営む西山厚志さんに、国産ナチュラルチーズの現状と期待を伝えてもらった。

(5面・すまいる)

平成30年7月豪雨 多くの支援で農業復興【11月2週号 岡山県】

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 【岡山支局】「こうして農業ができるのはみんなのおかげだ」と話すのは、倉敷市真備町の水川實夫〈みずかわ・じつお〉さん(78)。水川さんが代表を務める農事組合法人服部営農組合は、「平成30年7月豪雨」で甚大な被害に遭ったが、多くの支援を受け、その年の秋には麦の播種ができるまでに復旧した。同組合は、少子高齢化が進み、担い手が減った地元の農業を支えるため、基盤整備事業の一環として2013年2月に結成され、14年に法人化。地域の農地を集約し、米や小豆などを20ヘクタール作付けしていた。平成30年7月豪雨で、組合員の田畑は冠水し、作物は全滅。水川さんの自宅は高台にあったため難を逃れたが、中には家を失った組合員がいた。冠水した農地には車や土砂、崩壊した家の建材などさまざまなごみが大量に流入。大きなごみは、重機でトラックに積み込む作業をひたすら続けた。復旧作業で特に手を焼いたのがガラスの破片だ。手作業で一つ一つ取り除くため、1日かけても農地1枚すら終わらないことがあったという。ごみの撤去作業には延べ400人のボランティアと共に励んだ。土壌汚染調査があるため平年より遅れたものの、麦の播種に間に合わせることができた。冬には県内外から駆け付けた40人ほどの高校生と、延べ2500メートルに及ぶ用水路から数十トンもの泥を搬出した。「ボランティアの協力無しではここまでの復興は不可能だった」と水川さん。被災後、避難計画やハザードマップなどの話し合いで、地域の結びつきが強くなり、人とのつながりを強く実感したという。一方、不測の事態に備えるため収入保険に加入し、補償を確保した。現在は米、麦、小豆、大豆を23ヘクタールで栽培。地域の農地の多くを引き受けるとともに、他地域の農地の草刈りなど活動の幅を広げた。今後は若手の育成や新規作物に取り組むという。23年にはドローン(小型無人機)を導入するなど、作業効率を高め、安定した運営を目指している。水川さんは「みんな仲が良く、作業した後の憩いの時間が何よりも楽しい」と笑顔で話す。

〈写真:被災を乗り越えた田で水稲の生育を確認する水川さん〉

憧れのリンゴ農家に 廃園の窮地を救う【11月2週号 栃木県】

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 【栃木支局】那須烏山市興野の中村麻衣〈なかむら・まい〉さん(39)は、廃園予定だったリンゴ園を継承し、2022年4月に就農した。ナシ50アールとリンゴ70アールを栽培。果実の販売だけではなく、リンゴ狩りなど消費者との交流を大切にしている。北海道出身の中村さんは、就職を機に宇都宮市に移住した。フィットネス講師として17年間働いていたが、中学生の頃からの夢だった果樹園に挑戦しようと就農を決意。果樹産地の那須烏山市を管内とするJAなす南に相談したところ、廃園予定だった「阿相〈あそう〉りんご園」を紹介された。園主だった阿相善一〈ぜんいち〉さん(87)は「リンゴ園を56年間続けてきましたが、高齢となり廃園を決めたので本当につらかったです。中村さんが継いでくれて感謝しています」とほほ笑む。中村さんは「果樹は初期投資が多く、成園化して収量が安定するまで時間がかかるため、新規就農は難しいと感じていました。タイミング良く阿相さんの園地を引き継げたので、とてもうれしいです」と話す。中村さんは農業の経験がなかったため、ナシ農家での研修や阿相さんの指導で栽培技術を1年間学んだ。22年4月に「体験型農園フルーツファーム烏山」をオープン。5月に北海道から移住してきた母の由美子〈ゆみこ〉さん(66)と、ナシは「幸水」「豊水」「あきづき」を、リンゴは「秋映」「シナノスイート」「ふじ」など8品種を販売する。ナシは全量をJAなす南に出荷し、リンゴは直売所や果物狩りで販売。リンゴ狩りには個人客のほか、幼稚園や小学校の子どもたちも訪れるという。「リンゴ狩りには阿相りんご園のお客さまたちが変わらず来てくれて、本当にありがたいです」と笑顔の中村さん。「お客さまと交流することを大切にしています。モモや柿、ブルーベリーにも取り組み、収穫体験を通じて、子どもから年配の方まで楽しめる農園を目指していきたいですね」と意気込む。

〈写真:「リンゴの剪定〈せんてい〉などを阿相さんに手伝っていただいて助かっています」と中村さん〉

養蜂の休閑期は巣箱でイチゴ栽培【11月2週号 山口県】

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 【山口支局】「ミツバチの巣箱を使ってイチゴを栽培しています」と話すのは、周防大島町で養蜂業を営む株式会社KASAHARAHONEY代表取締役の笠原隆史〈かさはら・たかふみ〉さん(37)。笠原さんは「養蜂の休閑期に収入を確保できることや、経営するカフェのメニューに自家産イチゴの提供をしようと、2021年に栽培を始めました」と話す。取り組み始めた一番の決め手は、自らイチゴを栽培することで、ミツバチを貸し出している農家へ「良いアドバイスができれば」という思いからだった。「自分でイチゴを作ってみて、病害虫対策やミツバチへの負担を減らすための管理など、みなさんの大変さが分かります。農家の方に一層寄り添い、ミツバチを大切に育てていきたいと思うようになりました」。今年3月には、カフェの下にある圃場にミカンやレモンの木を約90本植えた。数年後にはミカン狩りを計画している。「離農や荒れ地が増える中で、少しでも地域の活性化につながればうれしいです。イチゴもミカン栽培も始めたばかりなので、試行錯誤しながら前に進んでいけたらいいですね」と笑顔で話す。
 ▽ミツバチ200群、イチゴ0.9アール、かんきつ50アール、鶏6羽

〈写真:「イチゴは垂直仕立てで栽培しています」と笠原さん〉

白ネギの青葉を商品化 評判は上々です【11月2週号 大分県】

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 【大分支局】「作業を手伝ってくれる親戚の『もったいない』という言葉がきっかけで、商品化につながりました」と話すのは、九重町でネギ60アール、水稲100アール、スイートコーン20アール、ジネンジョ2アールを栽培する平祥尚〈ひら・あきひさ〉さん(37)。通常は廃棄する白ネギの青葉を「ねぎ若葉」として商品化し、販売している。平さんは、育苗の過程で苗の成長を促進するため、若苗の穂先を3センチほど刈り取るという。商品化する前は年間で軽トラック数台分を廃棄していた。ねぎ若葉は冬の終わりから春にかけて、地元の道の駅などで販売。平さんは「食べてみると食感が良く、料理の彩りにも便利で、お客さんからの評判は上々です」と笑顔を見せる。

〈写真:「ねぎ若葉」を手に平さん〉

防風林「常に用心で火災を防ごう【2022年11月2週号】」

 ▼9日から15日の1週間は、秋の火災予防運動だ。火災が発生しやすい時季を迎え、イベントやポスター掲示などで注意を呼びかける。本年は「お出かけは マスク戸締まり 火の用心」を全国統一の防火標語としている。
 ▼消防庁のまとめでは、2021年の総出火件数は前年比531件増の3万5222件で、55%を建物火災が占める。総死者数も91人増の1417人となった。残念なのは住宅火災による死者数の74.1%が65歳以上の高齢者が占める現実だ。
 ▼出火原因の1位はたばこで全体の8.6%、2位はたき火で7.8%、3位はこんろで7.6%となる。ただ、住宅火災に絞ると、たばこ(13.6%)、ストーブ(11.3%)、こんろ(4.7%)の順で、ストーブにも注意が必要だ。
 ▼鍋のお湯が沸くまで一つ用事を片付けようと台所を離れ、空だきした経験がある。鍋はごみになり、しばらく焦げ臭さが鼻についた。以来、火を付けたらお湯が沸くまで絶対に動かないと決めた。数分の辛抱で火事を出さずにすめば安いものだ。

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