ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

今週のヘッドライン: 2022年12月 2週号

計画的な生産体制 ブランド化へ工夫 "俺のコマツナ"で勝負 ―― 神明おのがわ農園(富山市)(1面)【2022年12月2週号】

221208_1.jpg

 富山市久郷の神明おのがわ農園(代表・各川豊章さん=40歳)は、ハウス8棟(15アール)でのコマツナの周年生産を経営の柱に掲げる。1日単位から播種量を調整し、あらかじめ設定した季節ごとの収穫量を確保。安定供給を強みに、北信越・東海地方でチェーン展開する大手総合スーパーマーケットと単独で取引し、生産量の7割を出荷する。包装袋には各川さん自身の顔のイラストを印刷するなどブランド化を進め、経営の安定を図っている。

(1面)

〈写真:「12月中旬には、来年3月収穫分の播種が始まる」と各川豊章代表〉

収入保険 被害年の収入金額を補正 新たな補償タイプも 2024年加入者から実施へ(1面)【2022年12月2週号】

 農林水産省は11月25日、農業者の収入減少を幅広く補償する収入保険について、被害年の収入金額を補正する特例や保険による新たな補償タイプの導入などの取り組み方向を自民党農林関係合同会議に示し、了承された。2024年の加入者からの実施を目指す。また、収入保険と野菜価格安定制度との同時利用期間は、産地の要望を踏まえて1年延長し、21年から同時利用する加入者は23年も同時利用を可能とする。申込期限を12月末まで延長し、対象となる加入者の意向確認など対処する。

(1面)

自民党 「食料安全保障強化政策大綱」の策定など提言 基本法見直し加速を(2面・総合)【2022年12月2週号】

 自民党は11月30日、農林関係合同会議を開き、政府に「食料安全保障強化政策大綱」の年内策定と予算・施策の抜本的拡充を求める提言をまとめた。党の手続きを経て正式に決定し、首相官邸に提出する。食料・農業・農村基本法の見直しでは、2023年度中の改正案などの国会提出も視野に、検証・検討を加速化するよう求めた。食料安全保障の強化では、農産物や生産資材の過度な輸入依存からの脱却と食料安定供給の確保が重要課題となっている。担い手不足や生産基盤の弱体化が進む中、持続的な農業の確立に向け、実効性のある施策の具体化が求められる。

(2面・総合)

知っておきたい!商標権 高まるブランド価値 ―― レゾネイト法律事務所の川野智弘弁護士が解説(3面・ビジネス)【2022年12月2週号】

 農産物や加工品の販売で、他者の商品と差別化するために作成した名称やマークを保護する商標権の取得は、ブランド展開には欠かせない。一方、知らず知らずのうちに他者の商標権を侵害している恐れもあり、注意が必要だ。レゾネイト法律事務所の川野智弘弁護士に商標権取得の利点などを解説してもらう。

(3面・ビジネス)

2022年度全国優良畜産経営管理技術発表会 国産飼料確保に重点(9面・営農技術・資材)【2022年12月2週号】

 中央畜産会は11月25日、2022年度全国優良畜産経営管理技術発表会を開催した。全国の推薦事例から選出された8事例を審査し、最優秀賞の農林水産大臣賞4点、優秀賞4点を決定した。農林水産大臣賞の受賞者から、肉用牛肥育と肉用牛一貫・酪農の2経営体を紹介する。

(9面・営農技術・資材)

手軽においしく"思い"ものせて おにぎりの魅力 ―― 一般社団法人おにぎり協会代表理事の中村祐介さんに聞く(5面・すまいる)【2022年12月2週号】

 パンや麺など食料品の値上げが相次ぐ中、朝食や昼食はもちろん、小腹がすいたときにもピッタリな"おにぎり"が、おいしく手軽で家計にもやさしいと注目を集めている。国内外で普及に取り組む一般社団法人おにぎり協会代表理事の中村祐介さんに、魅力などを寄せていただいた。

(5面・すまいる)

耕作放棄地を活用 安全・安心の米増産【12月2週号 山口県】

221208_7.jpg

 【山口支局】「『土地は、先祖から受け継いでいるのではなく、未来から借りているもの』というネイティブアメリカンの言葉を胸に、農業に取り組んでいます。環境を守り、安全・安心な食を提供することで未来につなげていきたい」と話すのは、長門市日置の株式会社維里〈いさと〉代表・首藤元嘉〈すとう・もとよし〉さん(45)。妻の陽子〈ようこ〉さん(39)と、農薬・化学肥料を使用せず、自然に寄り添った栽培方法に取り組み、主に水稲「イセヒカリ」(3ヘクタール)を栽培する。愛媛県で代々続く農家の12代目として農業に取り組んできた元嘉さん。米の追加購入の要望に応えるため、耕作面積を増やしたいと考えていた。「地元での実現が難しく悩んでいたところ、長門市が耕作放棄地を活用したオーガニック農業の推進制度や就農者支援などに積極的に取り組んでいることを知り、移住することを決めました」。自身のやりたい農業の形をかなえるため、農地にとらわれない農業を選択し、2022年4月に同市へ家族で移住した。「移住先の地区は住民の支援が厚く、小さい地域ならではの連帯感があります。その地域の一員として温かく迎え入れられたことに感謝しています」。新たな土地での1年目、長年遊休農地となっていた田んぼ、愛媛とは違う気候下での栽培を経験した。今後に向け、土壌改良に力を注ぐほか、同市で新たに有機JAS認証を取得するための準備を進めている。。「将来は水稲の作付面積を11ヘクタールに増やし、大切につないできたイセヒカリの種子から育てた米を多くの方に届けたいです」。イセヒカリのブランド化を目標に、現在は飯米・加工品の米粉やシリアルを販売し、今後は酒や化粧品の商品化を考えている。元嘉さんは「農業の未来を明るくして、これから就農する人を後押しできる見本になりたいです。会社・行政・地域など組織の力で農業に取り組み、地域を守り、『オーガニックが当たり前の未来』をつくっていきたい」と力強く話す。

〈写真:「この土地とともに歩んでいきたい」と話す首藤さん夫妻〉

中山間直接支払制度を活用 果樹栽培に学生が協力【12月2週号 岩手県】

221208_8.jpg

 【岩手支局】盛岡市手代森の藤村文明〈ふみあき〉さん(71)は、岩手大学の学生と協力し、中山間耕作地の維持管理を目的とした果樹栽培に取り組む。地域の高齢化が進む中で、国の制度を活用し、中山間地農業の新しい形を目指す。手代森地区は、傾斜地が多く作物生産が難しいとされる「特定農山村法指定地域」に指定されている。藤村さんは現在、自身の農地のほか、地域の中山間農用地合わせて約3ヘクタールを管理。「中山間農用地は、地形的に維持管理が難しい。高齢化もあり、担い手の減少が悩みだった」と話す。農用地の管理作業は岩手大学の学生と協力して取り組む。参加者への労賃や食事の提供などにかかる費用は、指定地域で農地を維持管理する場合に支払われる中山間地域等直接支払制度の交付金を利用する。作業に参加する学生は20人程度。約2.2ヘクタールの圃場でリンゴや西洋ナシの花摘み、摘果、草刈りなどをする。「未経験者が多いが、栽培技術や知識をすぐに覚える。教える私も気が抜けない」と笑顔の藤村さん。学生の協力が始まったのは2002年。きっかけとなったのは同地区の郷土芸能「澤目獅子」だ。農業の傍ら「澤目獅子保存会」の会長を務める藤村さん。後継者不足に悩んでいたが、知人の紹介で岩手大学の民俗芸能サークル「ばっけ」と交流を開始した。学生と交流する中で「澤目獅子の歴史が伝承されてきた風土を知ってほしい」と、同地区で盛んな果樹栽培の体験を企画。「楽しそうに作業していて、何か恩返しがしたかった」と藤村さん。中山間地域等直接支払制度を利用し、学生に還元することを思いついた。藤村さんは「郷土芸能でできた縁が、農用地の維持活動と制度の活用につながった。若者の成長や地域の活性化になれば」と話す。

〈写真:「学生の力に元気づけられることが多い」と藤村さん〉

モウソウチクを竹炭で利用 米の収量維持に奏功【12月2週号 長崎県】

221208_9.jpg

 【長崎支局】JA壱岐市青年部那賀支部(支部員23人)の支部長・吉井文数さん(39)は、伐採したモウソウチクを竹炭に加工し土壌改良資材に活用する。同支部では、地元の小学生と学童農園を通じて交流する「壱岐ダッシュ村」の活動に取り組む。18年6月に壱岐市がSDGs(持続可能な開発目標)未来都市に選定されたことを機に、SDGs達成に向けた活動を始めた。吉井さんは「環境保全のため伐採するモウソウチクは、今まで焼却処分していましたが、竹炭にすることで土壌改良資材となり、製造時に取れる竹酢液は野菜の虫よけとして活用できると知り、取り組みをスタートしました」と話す。竹炭作りは、竹を50センチ程度に切りそろえ、3カ月ほど乾燥。その後、廃材のペール缶を窯にして複数回焼く。「少人数に分かれての作業で普段と勝手が違い、苦労する部分が多かったです。最初は未炭化の竹炭が多くありましたが、試行錯誤を重ね、うまくできるようになりました」。出来上がった竹炭およそ30キロは、壱岐ダッシュ村で作付けするもち米の圃場10アールに砕いて散布し、地区内の畜産農家から提供された牛ふん堆肥と一緒に混ぜ込む。「化学肥料の使用量をこれまでの約半分にしても収量が変わりませんでした」と吉井さん。副産物の竹酢液は、壱岐ダッシュ村で栽培するジネンジョに葉面散布すると、虫食い被害が減り、これまでより大きいサイズのものが収穫できたという。

〈写真:切った竹をペール缶いっぱいに詰め、竹炭になるまで複数回焼く〉

土作り重視の栽培 干し芋をプレス、甘み生かした菓子に【12月2週号 茨城県】

221208_10.jpg

 【茨城支局】サツマイモ「べにはるか」を2ヘクタールで栽培する東海村の圷正生〈あくつ・まさのり〉さん(79)は、収穫後は大部分を干し芋に加工し、新たな商品を開発した。栽培面では、農薬の使用を控え、土に残った根や小さな芋は線虫対策としてすべて掘り起こす。土壌くん蒸剤は不使用。有用微生物を利用した土作りに力を注ぎ、芋の甘みが増したという。甘みをさらに凝縮し、砂糖や添加物を一切使わず素材の味を生かすのが、特許を取得したオリジナル商品「ぷれすた」だ。干し芋をプレスした菓子で、正生さんの直売所のほか、道の駅やアンテナショップ、通販サイトで販売している。ぷれすたを開発するきっかけは、2016年の展示イベント「農業WEEK」で、カキをせんべいにした商品を見たことだ。「こんなに水分があるものが、せんべいになるのか」と、出展者に話を聞き、試しに干し芋を焼いてもらった。歯応えがあり、干し芋を新しい形で提供できるのではないかと製造を開始。最初は「芋薫〈いもくん〉」という名前で販売し、その後は試行を重ね、ぷれすたが出来上がった。商品名は、プレス(press)と干し芋を星(star)に見立て、掛け合わせた造語。「おせんべいタイプの干し芋の名前を定着させ、干し芋界のスターを目指そう」という意味を込めている。干し芋の賞味期限は通常は1カ月程度だが、ぷれすたは1年持つ。売りに出せる幅が広がり、県内だけではなく都内の自然食品に特化した店舗でも取り扱う。今後は海外に進出していくため準備中だという。正生さんは新しいことへチャレンジする際のリスクや、近年は基腐病が確認されているため、不安を少しでも軽減できたらと収入保険に加入している。「収入保険でいざというときに備え、質の良いものを提供し、消費者に喜んでもらいたい」と話す。

〈写真:「ぷれすた」は、ぱりぱりさくさくの食感〉

防風林「お金の話にはご用心を【2022年12月2週号】」

 ▼以前、母親を名乗る女性から職場に電話がかかってきたことがある。切迫した感じで話し始めたところで全くの別人と気づき、「誰?」などと問い詰めると切られてしまった。たぶんオレオレ詐欺の類いだったのではないか。所属部署と電話番号、出身地や家族構成など個人情報を把握していたのは驚いた。
 ▼気づいたポイントは声質の違いもあるが、なまりが故郷のものとは違っていたことだ。東京のテレビ番組では、故郷の高齢者のコメントには確実に字幕が流れる。地元出身者でなければ言葉や話し方をまねるのは難しいはずだ。故郷のなまりに感謝する。
 ▼警察庁によると、オレオレ詐欺や架空料金請求詐欺など特殊詐欺の総認知件数は、2021年で1万4498件、被害額は282億円だ。被害は大都市圏に多いものの、法人被害を除き9割近くを65歳以上層が占める。届け出ない泣き寝入りもありそうだ。
 ▼疑うのは嫌なものだが、お金の要求や還付金などの話は一度区切るのが賢明だ。遠方の家族とも定期的に近況報告を。オレオレと言われても別人と分かるはず。

» ヘッドラインバックナンバー 月別一覧へ戻る