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今週のヘッドライン: 2023年01月 4週号

中山間地域に就農希望者を呼び込む 手厚い支援で安心感 野菜を一元集荷 ―― (有)草志舎 くらぶち草の会(群馬県高崎市)(1面)【2023年1月4週号】

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 群馬県高崎市倉渕町の有限会社草志舎(佐藤茂代表取締役、71歳)は、町内で農薬・化学肥料不使用での栽培を実践する生産者44人を会員とし、野菜の出荷グループ「くらぶち草の会」を運営する。野菜を一元的に集荷し、年間契約を結ぶ複数の取引先へ出荷する。就農希望者を積極的に受け入れ、先輩農家の下で1~2年間の実地研修を実施。農地や住居などの独立準備のほか、独立後は会員に迎え、販路の心配なく営農できるようサポートする。標高400~900メートルの中山間地に若い人材が定着し、地域振興にもつなげている。

(1面)

〈写真:標高約600メートルにある佐藤茂代表取締役(右)の圃場で秋山雄輔さんとハクサイの生育について情報交換する〉

飼料高騰 岸田文雄首相が第4四半期も対策実施を指示 農家負担の増加を回避(2面・総合)【2023年1月4週号】

 岸田文雄首相は24日、高止まりする配合飼料価格が畜産経営を圧迫しているとして、2022年度第4四半期(1~3月)についても第3四半期(10~12月)で講じた緊急対策を継続し、コスト抑制を図るよう野村哲郎農相に指示した。補てん単価や財源などの詳細は今後、検討する。ウクライナ情勢や円安などの影響で、トウモロコシなど穀物の国際価格が上昇。トン当たり10万円を超える高値が続いている。価格高騰の影響を緩和する配合飼料価格安定制度の財源不足も懸念される中、危機的な状況を打開し、生産基盤の弱体化を防ぐ対策の実施が必要だ。

(2面・総合)

備えの大切さ伝え農業保険の加入促す 対話を重視し情報共有 ―― NOSAI長崎の共済部長(NOSAI部長)(長崎県)(3面・NOSAI部長)【2023年1月4週号】

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 NOSAI長崎(長崎県農業共済組合)では、地域の農地を守りながら、農業保険による備えの重要性を訴える共済部長(NOSAI部長)が活躍している。普段からの対話を重視し、関係者間の情報共有に努める。組合員とNOSAIをつなぎ、円滑な事業運営に貢献する共済部長2人を訪ねた。

(3面・NOSAI部長)

〈写真上:NOSAI職員と情報交換する諫早市川内町の中村誠二さん(左)〉
〈写真下:共済部長歴36年の佐世保市有福町の廣田博幸さん(右)〉

多様なJASの制定 品質・特性アピール 注目される標語付きマーク(7面・流通)【2023年1月4週号】

 日本農林規格(JAS)は、食品・農林水産品の品質や生産方法などの特性を表示で判断できる規格制度だ。近年は、農福連携で生産された食品を規格化した「ノウフクJAS」など特色のある規格が増え、産品の認知度向上や販路拡大など活用の幅が広がっている。農林水産省では、農林水産業・食品産業の競争力強化のため、多様なJAS制定に向けたテーマを募集中で、戦略的な活用を促して輸出拡大などにつなげたい考えだ。

(7面・流通)

レタス・エダマメ連続栽培 畝とマルチを再利用 作業が楽で資材節約 ―― 木原利男さん(奈良県宇陀市)(9面・営農技術・資材)【2023年1月4週号】

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 奈良県宇陀市榛原の木原利男さん(75)は、レタスの栽培終了後に、畝とマルチをそのまま使って早生エダマメを栽培する連続栽培を実践している。作目切り替え時の耕うんや畝立て、施肥などが省略できる。「作業が楽で、資材の節約にもなる。じいちゃん・ばあちゃんの農業に良く合う技術」と話す。奈良県農業研究開発センター大和野菜研究センターが技術開発し、中山間地域の小区画圃場を効率的に利用でき、省力・低コストに野菜の輪作に取り組める技術として普及している。

(9面・営農技術・資材)

〈写真:レタスを育苗する木原さん〉

農水省 下水汚泥資源の検討会が論点整理 肥料の公定規格設定を(2面・総合)【2023年1月4週号】

 農林水産省は20日、下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けて官民検討会がまとめた論点整理を公表した。下水汚泥資源を活用した肥料の需要・供給の拡大に向け、下水道業者と肥料製造業者のマッチング推進やPR手法の工夫などを求めるとともに、安全性と品質を担保するため、肥料成分の保証を可能とする公定規格の設定を提起した。
 政府は、昨年12月に決定した食料安全保障強化政策大綱で2030年までに肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を21年の25%から40%に引き上げる目標を設定。堆肥・下水汚泥資源の使用量を倍増するとしている。

(2面・総合)

女性農業者今年の誓い 新たな一歩に(5面・すまいる)【2023年1月4週号】

 年が明けて心機一転、新しいことを始めてみませんか。全国の女性農業者3人に今年チャレンジしたいことを寄稿してもらった。

(5面・すまいる)

かんきつ「フィンガーライム」 取引先に好評【1月4週号 奈良県】

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 【奈良支局】かんきつ類の「フィンガーライム」を栽培する田原本町の藤森克真〈ふじもり・かつまさ〉さん(51)、橿原市の柿本芳是〈かきもと・よしゆき〉さん(63)、天理市の西田将治〈にしだ・しょうじ〉さん(41)。3人が協力して取り組むチーム「フィンガー3」は、それぞれの圃場で管理方法などの情報を共有している。試行錯誤を重ね、収量を増やすとともに、取引先から好評を得ているという。フィンガーライムは、果肉の見た目から「キャビアライム」「森のキャビア」などと呼ばれている。果実は長さ4~8センチの円筒形。ライムのような酸味がある粒状の果肉がぎっしり詰まっている。果肉から果汁が出ないため、ほかの素材と混じり合うことなく料理に酸味を加えることができ、どんなジャンルにも合うと注目が集まる食材だ。3人はそれぞれ、同じ時期にテレビなどでフィンガーライムの存在を知ったという。「自分も手がけてみたい」と思い、長野県に出向くなどして苗木を手に入れ、2019年12月に栽培を始めた。3人は「当初、県内での栽培は『自分だけ』と思っていた」という。JAならけんの農産物直売所「まほろばキッチン橿原店」で販売したところ、自分以外にも栽培している人がいることを知った。「開花して1センチぐらいまでは実るが、その後は成長せずに落ちてしまう」と藤森さん。柿本さんと西田さんは「落果の原因が分からず、栽培が難しかった」と振り返る。21年から情報を共有するようになり、3人合わせて約20種類、190本を栽培。開花から約6カ月後に収穫する。いろいろな方法を試みた結果、今期は収量が増えた。出荷先の卸売会社「奈良うま直販フレッシュ」の森ゆかりさんは「確かな品質で、安心してお届けできます。取引先にも好評です」と話す。今後についてフィンガー3は「日本料理、イタリアンなどいろいろなジャンルの料理人にフィンガーライムを使ってもらえるようになりたい」と意欲的だ。

〈写真説明:割ると粒状の果肉があふれ出すフィンガーライム〉

収入保険・私の選択 若手を雇用、地域貢献も【1月4週号 島根県】

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 農事組合法人みんわ営農組合 島根県出雲市 細木範幸〈ほそぎ・のりゆき〉さん(73)
 〈農事組合法人みんわ営農組合〉細木さんは代表理事。水稲31ヘクタール、野菜11ヘクタール(ブロッコリー、スイートコーン、キャベツなど)


 収入保険には制度ができた当初から加入しています。農業共済制度や経営安定対策などと比べ、幅広いリスクに対応できるため、加入を決めました。近年の耕作面積の拡大に伴って売り上げが伸びていたことから、加入する必要性を感じない時期がありました。しかし、2021年7月の豪雨で、農地や施設が冠水して大きな収入低下となりました。そのとき保険金を受け取ったことで赤字決算を回避することができ、収入保険の必要性を改めて感じました。みんわ営農組合では、将来の働き手を確保するため若手の雇用に力を入れています。現在は従業員3人、一般出役45人で、作物の栽培管理やヒマワリ祭りなどの地域貢献活動をしています。12年1月に法人を設立して以来、地元以外の地域で栽培を始めたことなどで経営面積を2倍以上に拡大してきましたが、谷間ということもあり新たな農地の確保は難しくなってきました。今後は、耕作条件の良い農地に進出して、10ヘクタール以上への拡大と売り上げ増加を目指していきたいと思っています。組合では、肥料代を抑えるため、ヒマワリなどの緑肥やドローン(小型無人機)を使った適期の肥料散布などでコストの削減に努めています。農業は自然条件に影響される産業で、野菜は病害虫の発生や価格変動が大きく、経営は不安定になりやすいです。面積拡大や働き手を確保するためにも、収入保険に加入して安定した農業経営をしていきたいですね。
 (島根支局)

〈写真説明:みんわ営農組合の皆さん。右から細木さん、恩村尚樹農場長、田中美恵子さん、黒崎達也さん〉

サボイキャベツ 市場で高い評価【1月4週号 宮城県】

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 【宮城支局】「12月から2月はサボイキャベツの旬。寒い時期に煮込み料理で味わってほしい」と話すのは、加美町中新田地区の千葉正美〈ちば・まさみ〉さん(66)。水稲主食用米1.5ヘクタール、水稲飼料用米2.3ヘクタール、ハクサイ30アールとサボイキャベツ10アールを栽培する。30年ほど前、地元JAの生産組織「加美町中新田新園倶楽部」がフランスを視察した際にサボイキャベツと出合った。当時の日本では珍しい野菜だったが、生産すれば町を活気づけることになるのではないかと考え、輸入した種で栽培を始めた。手探りの状態で栽培を続け、今では市場で高い評価を得るまでになった。千葉さんは「生産仲間とともに苦労を重ねてきた分、サボイを絶やさず、継続していくことが大事」と話す。サボイキャベツは、ほかの品種より外葉が大きくなるため、株間を空けるとともに、湿害対策として高畝で栽培する。虫が付きやすいため、定期的な防除を5~6回実施し、11月から2月ごろまで収穫。今では年間約200ケース(箱)を出荷する。千葉さんは「中新田サボイキャベツを知ってもらうため、これからも品質の良いものを作り続けたい」と意気込む。

〈写真説明:「自慢のサボイキャベツをぜひ食べてほしい」と千葉さん〉

強風被害から再起 "幸せになるイチゴ"【1月4週号 北海道】

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 【北海道支局】「上田いちご園」(代表・上田秀樹さん=49歳)は、帯広市幸福町で四季成りイチゴを高設栽培する。品種は「すずあかね」が主体。道内の市場や関東方面、地元の洋菓子店などに出荷している。2010年に就農し、現在は収穫の繁忙期を除き、妻の友子さん(50)と二人三脚で栽培に取り組む。「自分たちの作ったイチゴを食べた人から『おいしかったよ!』などの声を聞くと本当にうれしいです。イチゴを通したつながりが農業を続けるモチベーションです」と秀樹さん。生産したイチゴがドラマの撮影に使用されたり、写真共有アプリ「インスタグラム」を見た人がイチゴを買い求めに来たりする。営農面では販売先の確保や天候が心配だという。昨年4月27日、就農後初めて強風の被害を受けた。農園の前を走る道路では、砂嵐の影響で多重衝突事故が発生した。「ビニールが破れたハウスを見て、頭が真っ白になり、かなりへこみました。園芸施設共済に加入していて良かった。苗代を支払い、収穫前で収入が少ないときなので、なおさら助かりました」と話す。縁起の良い駅名で知られる「幸福駅」の近くで営農する上田さん夫妻。「今後は、いちごジャムやいちご大福などを商品化していきたい」と友子さんは意気込む。「多くの人に助けてもらい、ここまでやってきました。現状の経営規模で、食べた人が『幸せ』になるようなイチゴを作っていきたい」と口をそろえる。

〈写真説明:就農して10年以上が経過し、営農に順調に取り組む上田さん夫妻〉

防風林「花粉症は自然界からの警告か【2023年1月4週号】」

 ▼5歳児に叱られるNHKのTV番組で、人間は鼻水がないと最終的に死に至ると解説していた。暑さや冷たさ、乾燥などの環境変化から体を守り、ウイルスなどの侵入異物を外へ出すなど、鼻水の多岐にわたる活躍ぶりを紹介し、スーパーヒーローとたたえていた。
 ▼ただ、春の数カ月間はヒーローの活動を抑えてほしいと切に思う。花粉症のためだ。異物を排除する免疫反応が過剰になり、薬を飲んでいてもシーズン中に何度か鼻水や鼻づまりなど症状がひどくなることがある。報道では、今年のスギ花粉飛散量は本州の大部分で過去10年間で最も多いという。いつ症状が始まるのかと恐々としている。
 ▼日本で花粉症の問題が顕在化したのは1970年代以降だが、スギは大昔から日本にあった。顕在化の要因は、戦後の大幅な植栽数や高度経済成長に伴う排ガスの増加、日本人の体質変化などが挙げられている。
 ▼公害など高度経済成長の負の面を考えると、自然環境や生物多様性に配慮せず、好き勝手をした人類への警告なのかも。

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