ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

今週のヘッドライン: 2023年02月 2週号

雑穀を未来へつなぐ 地域ぐるみで生産振興(岩手県)(1面)【2023年2月2週号】

230216_1.jpg

 2023年は、国連が定めた「国際雑穀年」。健康で持続可能な食生活に向け、雑穀の栄養価や機能性など発信し、生産や消費を促す。国内でもコロナ禍を契機に健康志向が高まり、特に家庭向け需要が伸びている。「生産や販売の体系ができてくれば未来がある品目」と、岩手県二戸市浄法寺で雑穀8ヘクタールなどを栽培する田口拓実さん(26)。県北農業研究所などに協力を得ながら、規模拡大に対応した移植体系や機械除草などに挑戦している。県北部では、省力技術の普及や市町村をまたいだ生産・販売支援など、地域ぐるみで、歴史ある雑穀生産を将来へつなげようと連携している。

(1面)

〈写真上:除草に使う農機を説明する二戸市浄法寺の田口拓実さん。「春のうちに防ぎきれば、夏はほとんど除草が必要ない」と話す〉
〈写真下:軽米町の尾田川農園の尾田川勝雄代表。同農園では朝食や間食で食べやすい雑穀入りシリアルなども開発している〉

農水省 果樹の担い手確保へ トレーニングファーム推進(2面・総合)【2023年2月2週号】

 近年、果樹農業は人気品種の登場などで価格が好調となり、産出額は増加傾向にある。一方、高齢化の進展などにより販売農家数は5年で2割減少。さらに7割弱の産地が担い手確保の見込みがない状況にあり、対策実施は待ったなしの状況となっている。農林水産省は3日、「全国果樹産地の担い手・労働力に関するシンポジウム」を開き、新規参入者の確保・定着に向け「果樹型トレーニングファーム」の設置・活用を進めていく方針を示した。地域が園地を確保し実地研修を受け入れて就農を後押しする仕組みで、既に一部産地では人材の確保・育成などにつなげている。先進事例の横展開などを図りながら、次代を担う果樹農家の育成・定着へ、官民挙げた取り組みの強化が求められる。

(2面・総合)

2022年の農林水産物・食品輸出 過去最高の1兆4148億円(2面・総合)【2023年2月2週号】

 農林水産省は3日、2022年の農林水産物・食品の年間輸出額が前年比14.3%増の1兆4148億円となったと発表した=グラフ。10年連続で前年を上回り、過去最高を更新した。コロナ禍で落ち込んでいた外食向け需要の回復や円安などが追い風となった。
 農産物のうち、野菜・果実などは20.6%増の687億円となった。リンゴが15.4%増の187億円、ブドウは16.4%増の54億円、イチゴは29.1%増の52億円となるなど軒並み過去最高額となった。特にリンゴやイチゴは香港や台湾向けの贈答用などが好調だった。

(2面・総合)

青色申告で経営を見える化 改善進める基盤に ―― 杉原常司さん(群馬県高崎市)(3面・ビジネス)【2023年2月2週号】

230216_4.jpg

 今年も確定申告の時期を迎えた。2022年分の受け付けは、2月16日から3月15日まで。群馬県高崎市の杉原常司さん(42歳、露地野菜)は、青色申告に取り組む。税制上の特典があるほか、経営を数字で"見える化"し、合理化の検討に役立てられるのが利点だ。杉原さんは、青色申告の実施が要件となっている収入保険にも加入。自然災害などのリスクにも備えながら経営改善を進めている。

(3面・ビジネス)

〈写真:パソコンで簿記システムに記帳する杉原さん〉

イアコーン 露地野菜と輪作 茎葉を緑肥に(9面・営農技術・資材)【2023年2月2週号】

 都府県で国産濃厚飼料のイアコーン(トウモロコシの雌穂〈しすい〉)を露地野菜と輪作する実証試験が進んでいる。トウモロコシの茎葉を緑肥としてすき込み、野菜の土づくりに活用する。先ごろ農研機構が開いた農業技術革新・連携フォーラム分科会では、輪作しない場合と比べて、排水性の向上など土壌物理性の改善を確認。後作のキャベツで根域拡大が見られ、野菜単作と同等以上の収量が得られるなどの成果が報告された。

(9面・営農技術・資材)

作ってみよう 米粉のお菓子 ―― 一般社団法人日本米粉クッキング協会の大塚せつ子代表理事に聞く(5面・すまいる)【2023年2月2週号】

 毎月15日は「お菓子の日」。米粉のおいしさを味わえるお菓子作りにチャレンジしてみては。一般社団法人日本米粉クッキング協会の大塚せつ子代表理事に米粉を使ったレシピを紹介してもらった。

(5面・すまいる)

雇用力向上、耕作放棄地解消へ 期待のジネンジョ【2月2週号 静岡県】

230216_7.jpg

 【静岡支局】「農閑期の雇用力向上や耕作放棄地解消のために『ほんやまじねんじょ』を栽培している」と話すのは、山翠園藤田製茶4代目の藤田匠さん(37)。静岡市葵区新間で13年前に家業を継ぎ、茶4.8ヘクタールとジネンジョ1.2ヘクタール、トウモロコシ30アールを栽培する。藤田製茶は安倍川と藁科川流域の水はけの良い山間地で、県内の茶産地で最も古い歴史を持つ「本山茶」を栽培・販売してきた。しかし、高齢化と後継者不足に伴い、安定した収入確保につながる新たな作物を検討。試行の結果、茶と同様、水はけの良い環境が適したジネンジョにたどり着いた。仲間の農家十数軒と共に立ち上げた研究会で栽培に取り組み、現在は従業員数人と作付面積を少しずつ広げている。ほんやまじねんじょは、凹凸が少なく、白く、風味豊かで粘りが強い。あくが強くならないよう、養分の少ない土を入れたビニール筒の中で真っすぐ育つよう栽培する。「2015年から3年間、毎年失敗の連続。水をやり過ぎたり、逆に減らし過ぎたりして、思い通りの大きさや形に育たず、秀品率が3割を切ったこともある」。工学部出身の藤田さんは、これまでの反省をもとに大学時代に培った論理的な思考を生かし、センサーで水分量を測定し給水をコントロールしたり、栽培と販売に関する将来的な目標を算出したりしている。20年から加入する収入保険については、現状と今後の営農計画を照らし合わせながら、加入初年は掛金の少ないプランを選択し、年を追うごとに補償対象の大きいタイプに移行した。22年9月には台風15号でジネンジョ約千本が流された。残ったジネンジョは大きくならないものが少なくなかったため、収入保険のつなぎ融資を活用。「何とか借入金を抑えることができた。収入保険に加入していたおかげで助かった」と振り返る。現在は年間約3万本を安定生産できるようになり、20年には、県が農林漁業の経営発展に先進的に取り組む団体を表彰する「ふじのくに未来をひらく農林漁業奨励賞」を受賞した。「昨年の台風のように、いつ何が起こるか分からない。見通しを立てて経営しているが、思い通りにいかないことも多い」と藤田さん。「収入保険も活用しながら、高品質で安定した生産を追求し、皆さんにおいしいほんやまじねんじょを味わってほしい」と笑顔を見せる。

〈写真:ほんやまじねんじょを手に藤田さん。ビニール筒を使うことで真っすぐに育つ〉

好評のサトイモ 品質さらに追求【2月2週号 広島県】

230216_8.jpg

 【広島支局】廿日市市浅原の兼本龍二さん(46)は、水稲3ヘクタール、サトイモ60アールを栽培。県内の道の駅や同市内のスーパーなどでサトイモを販売し、「お客さんから『粘り気が強く、昔ながらのサトイモでおいしい』と好評。これからもおいしいものを作り続けたい」と話す。兼本さんは「質の良いものを作りたい」と、土に堆肥を混ぜて軟らかくし、栄養を吸収させやすくするほか、連作障害を防ぐため、1年ごとに転作している。「4年に1度のサイクルで同じ圃場に戻ってくるようにしている。栽培する場所を変えることでサトイモの出来はいい」。サトイモ栽培は、地域の農家から種芋を分けてもらったことがきっかけで始めた。「受け継いだ種芋は実の太りがいい。浅原地区の風土に合い、地のものになっているこの種芋をこれからも守っていきたい」。年末ごろが最盛期というサトイモの収穫作業は11月中旬から始まる。新鮮な状態で届けるため、必要な量だけを出荷2日前に収穫していく。兼本さんのサトイモは同市内の学校給食に使われ、小学校から依頼される量を提供する。兼本さんと小学校とのやり取りに携わるJA佐伯中央の営農販売課・三村有延さんは「兼本さんのサトイモは県外の産地に負けないくらい大きくて質がいい。給食センターからは、大きくて調理しやすいと喜ばれている」と話す。兼本さんは「米作りをする父を手伝っていて、農業をやってみたかった」と、2008年に専業農家に転向。自身の経営のほか、高齢や人手不足などの理由で耕作できなくなった地域の水田約3ヘクタールの作業を受託する。農作業は兼本さん、妻、母と3人で取り組み、現状維持が目標だという。「ここの地域は人が少ない上に高齢者が多い。農作業を委託され、頼られることも多いが、できるうちは頑張りたい。サトイモも米もまだまだ品質を上げられる余地があるので、より良いものを作っていきたい」と話す。

〈写真:サトイモの乾燥作業に励む兼本さん〉

SNS活用で顧客獲得 経営力を上げ園地継承へ【2月2週号 岩手県】

230216_9.jpg

 【岩手支局】軽米町高家〈こうけ〉の苅谷恭子〈かりや・ちかこ〉さん(47)は、嫁ぎ先の「苅谷果樹園」でリンゴやブルーベリー、加工用モモを栽培し、SNS(交流サイト)を活用して顧客獲得につなげた。昨年9~12月にかけて、2ヘクタールでリンゴ20品種を収穫し、JAや産直へ出荷。作業の傍ら、SNSでリンゴの品種紹介や栽培の様子を発信した。苅谷さんは「SNSを見て果樹園を知った方が多く、購入した方から感謝のメッセージが届くのでうれしい」と話す。販路拡大のため、公式オンラインショップを開設。収穫したリンゴのほか「あかね」「はるか」など、味と風味に優れた6品種のリンゴを使用したジュースを販売する。「リンゴの風味を味わえるように酸化防止剤などの添加物は使わない」と苅谷さん。リンゴを皮ごと搾れる加工場を自ら探し、遠野市と青森県にある加工場へ持ち込み加工した。「品種ごと味を飲み比べできるように、180ミリリットルの飲みきりサイズを販売する」。農業経営力向上のため、2021年に「いわてアグリフロンティアスクール」を受講し、岩手大学が認定する「アグリ管理士」の資格を取得した。苅谷さんは「学んだ技術を活用して園地を継承したい」と話す。

〈写真:「昨年収穫したリンゴは大きくてずっしりしたものが多かった」と苅谷さん〉

茶の消費拡大へタバコ自販機を活用【2月2週号 滋賀県】

230216_10.jpg

 【滋賀支局】新名神高速道路「土山サービスエリア(甲賀市土山)」に、「土山茶」「朝宮茶」の消費拡大を狙った新しい土産品「Chabacco(チャバッコ)」が登場し注目されている。静岡県で茶関連商品を製造・販売する株式会社クラフト・ティーの登録商標だ。チャバッコの販売には、土山サービスエリアで使わなくなったタバコの自動販売機を活用。タバコサイズの箱にスティックタイプの甲賀市産粉末茶を入れ、ペットボトルの水に入れてよく振ることで地元の茶を手軽に楽しめるようにした。朝宮茶のパッケージには信楽高原鉄道の「SKR501」の写真と「土山たぬき」のイラスト、土山茶は近江鉄道「700系」と甲賀流忍者のイラストが描かれている。販売する土山ハイウェイサービス株式会社の担当者は「地域の活性化と茶業界の一助になればという思いがあった。地域の茶を新しい形で提供して消費拡大に貢献したい」と話す。粉末茶の開発・製造には、同市の「茶師十段」吉永健治さん(茶商「マルヨシ近江茶」)の協力を得た。チャバッコは近江鉄道の彦根駅、八日市駅、貴生川駅、近江八幡駅の改札付近でも販売している。

〈写真:土山サービスエリアのチャバッコ販売機〉

防風林「震災の経験を防災に生かす【2023年2月2週号】」

 ▼トルコ南部で6日に発生した地震による死者数は、9日時点で隣国シリアと合わせ1万5千人を超えたと報道されている。ニュースでは、集合住宅など大きなビルが崩れ、がれきの山になる映像が流れた。突然命を絶たれた人たちの冥福と早期の復旧・復興を祈りたい。
 ▼調べると、今回の地震発生地域では200年以上も大きな地震はなく耐震性のある建造物は少ないという。ただし、トルコを通る断層はいくつもあり、大きな地震がいつ起きても不思議ではなかったようだ。地球の地殻はいくつかのプレートに分かれ、プレートが動く際の摩擦が地震を引き起こす。残念ながら人類にはあらがう力はない。
 ▼今年は関東大震災から100年の節目だ。内閣府や気象庁はインターネット上に特設サイトを公開する。首都直下地震や南海トラフ地震など大規模災害の発生リスクに直面する状況から防災や災害時の適切な対応を考える機会にしたいとのねらいがある。
 ▼間もなく東日本大震災の発災から12年になる。太平洋沿岸地域では津波で多くの命を失った。何度も津波に被災した歴史があり、「津波てんでんこ」など"地震の際は何を置いても逃げろ"と伝えられていたのに逃げ遅れた人も多かったとの指摘がある。
 ▼年月が経過すると知識があっても実感が伴わなくなるのかも。忘れないこと、正しく行動することの伝承が課題だ。

» ヘッドラインバックナンバー 月別一覧へ戻る