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今週のヘッドライン: 2023年03月 1週号

農水省 基本法の「理念」見直しの方向 平時からの食料安保達成図る 持続可能な農業への転換 国民一人一人に十分な食料を供給(1面)【2023年3月1週号】

 農林水産省は2月24日、食料・農業・農村政策審議会基本法検証部会に食料・農業・農村基本法の「基本理念」の見直し方向を示した。焦点の食料安全保障は「国民一人一人が活動的かつ健康的な活動を行うために十分な食料を、将来にわたり入手可能な状態」と定義し、平時から達成を図ると明記。食料の安定供給は、国内農業生産の増大を基本としつつ、輸入の安定確保や備蓄の有効活用なども一層重視するとした。政府は6月までに基本法改正に向けた政策の展開方向をまとめる方針だ。国内外の情勢が大きく変わる中、食料安全保障の確立と食料・農業・農村施策の見直しは国の最重要課題であり、政府には国民的な議論・合意形成を前提に今後の道筋を描くことが求められる。

(1面)

2023年度小麦需給見通し 外食回復基調も 国産流通量は94万トンに 産地と実需の連携が課題(2面・総合)【2023年3月1週号】

 農林水産省は1日、2023年度の麦(食糧用)の需給見通しを示した。小麦の総需要量は前年度比4万トン増の562万トンと見通した。このうち国産小麦の流通量は前年度見込み比で3万トン減の94万トン、国産の米粉用米流通量は3千トン増の4万8千トンとした。外食需要の回復基調などを踏まえた。ウクライナ情勢の長期化で価格高騰や供給不安定のリスクが高まっており、政府は麦の国産化を支援する方針だ。一方で、需要に応じた品質の確保や収量の向上などが課題となっている。産地と実需の連携を強化し、国産麦を安定的に生産・供給できる体制の確立が求められる。

(2面・総合)

2023年1月の酪農家は1万1163戸 前年比6.8%減 離農拡大が浮き彫り(2面・総合)【2023年3月1週号】

 中央酪農会議(中酪)は2月28日、今年1月時点の全国の酪農家戸数が前年同月比6.8%減の1万1163戸となったと発表した。都府県は同8.5%減の6356戸、北海道は同4.4%減の4707戸となった。地域別では東海は11.1%減の529戸、近畿は10.4%減の311戸と減少幅が2桁を超えている。
 野村哲朗農相は2月24日の記者会見で、同調査の昨年12月時点の数値が全国では6.5%減少、都道府県では8.2%の減少だったと報告。「都府県では例年はおおむね5%の減少で推移していた。戸数の減少率が拡大し、離農が進んでいる」と述べ、首相から指示された飼料価格高騰などの激変緩和対策を3月上旬をめどにまとめる考えを示した。

(2面・総合)

収入保険 基準収入 過去5年間の平均収入が基本 補償算出の基礎に(3面・収入保険)【2023年3月1週号】

 収入保険では、青色申告の実績に基づく基準収入をベースとし、収入減少時の補てん額を算定する。そのため、加入する個人農業者には毎年4月15日までに、前年分の青色申告決算書などを最寄りのNOSAIへ提出するよう求めている。基準収入は、過去5年間の平均収入を基本とするが、経営実態に即した特例措置を用意。さらに農林水産省は、現状では2年以上とする青色申告の実績を短縮し、2024年からは加入申請年の実績1年で加入できるよう見直しを検討している。今年3月15日までに税務署に申請すれば、23年から青色申告を始める場合も加入が可能となる。

(3面・収入保険)

東京うど 地下の室から全国にお届け ―― 嶋﨑敏明さん(東京都国分寺市)(5面・すまいる)【2023年3月1週号】

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 東京都国分寺市並木町の嶋﨑敏明さん(59)は、江戸東京野菜の一種で、色白で柔らかい軟白ウド「東京うど」を生産する。室(むろ)と呼ばれる深さ3メートルの地下の穴蔵2カ所で、光を当てずに生育させる穴蔵軟化栽培を実践。出荷量の半数は全国の消費者に直接届け、東京の特産野菜を伝えている。

(5面・すまいる)

〈写真:室に入り収穫する嶋﨑さん〉

全国果樹技術・経営コンクール 先進経営で産地けん引 ―― 中央果実協会など主催(9面・営農技術・資材)【2023年3月1週号】

 先進的な経営を実践する果樹生産者などを表彰する第24回全国果樹技術・経営コンクール(中央果実協会など主催)の表彰式がこのほど、東京都内で開かれた。農林水産大臣賞受賞者の概要を紹介する。

(9面・営農技術・資材)

地元のワイナリーと提携 ブドウ搾りかすを給餌【3月1週号 広島県】

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 【広島支局】三次市布野町の株式会社のば牧場は、地元のワイナリーでワインの製造過程で出るブドウの搾りかすを給餌した「三次ワインビーフ」を肥育する。昨年10月には「みーとのば・精肉店」(同市東酒屋町)を開店し、三次のブランド牛・ワインビーフの普及拡大を狙う。同社の野畑篤史代表取締役社長(39)は「自分が育てた牛がどこで売られているのか分からなかった。牛への思いをお客さんに直接伝えたい」と、直売店を開店した。店で1頭買いするため、サーロインやフィレのほか希少部位などさまざまな精肉を販売。写真共有サイト(インスタグラム)に「今日のおすすめの商品」を投稿し、PRしている。定期的に訪れるリピーターが多いという。「『おいしかったよ』と何度も買いに来てくれる人がいて、ありがたいなと思う。もっとおいしい肉を作ろうという気持ちになる」と野畑社長。祖父母が牛を飼い、父が獣医師だったこともあり、畜産は身近だったという野畑社長は、2010年に畜産経営を始めた。現在、肥育牛170頭、繁殖牛100頭を飼養。同市には、三次産のブドウでワインを造る「株式会社広島三次ワイナリー」があることから、地域の特長を生かそうと、父の提案で14年からワインビーフを肥育する。草やふすま、乳酸菌などとブドウの搾りかすを混ぜてアルコール発酵させた飼料を、出荷前15カ月、肥育牛に与えるという。「1日にあげる量は餌全体の5%だが、匂いが良いのか食いつきは良い」。同牧場は繁殖にも取り組み、9割が自家産だ。牛が病気にならないよう注意しながら、早めに対処することで事故はほとんどなく、肥育結果は良いという。「肥育する期間を32カ月まで延ばして、よりおいしさを求めていきたい」。広島三次ワイナリーの太田直幸取締役ワイナリー長兼醸造長は「野畑さんの熱意と、本来は破棄する搾りかすを再利用する取り組みに共感し、できる限り協力したいと感じた。三次の新たな特産品として定着してほしい」と期待する。

〈写真:「販売する中で感じた思いを生かせるのは生産者じゃないとできないこと。それを生かしてさらにおいしい肉を作りたい」と野畑社長〉

自力で除染 原木シイタケ 規模拡大、増産に意欲【3月1週号 岩手県】

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 【岩手支局】一関市大東町の青柳〈あおやぎ〉博昭さん(63)は、同市内の自動車整備会社で働く傍ら原木シイタケを栽培する。「50歳のとき、定年後に何を仕事にするかを考えた」と青柳さん。市内で原木シイタケを栽培する友人の助言を受け、栽培を決意したという。2010年に山林を含む396アールの土地を購入し、露地10アールでホダ木2千本の栽培を始めた。しかし、11年の福島第一原発事故で放射性物質が拡散し、ホダ木や山林、栽培のために設置したビニールハウスが汚染され、生産・出荷ができなくなった。青柳さんは「周囲の人に『もうシイタケの栽培は難しいのでは』と言われたが、乗り越えてやろうと思った」と話す。栽培再開を目指し、パワーショベルで山林やハウス周辺の表土を5センチ削り取る除染作業を開始。1年半かけて除染を完了し、13年に栽培を再開した。「栽培再開の前に山林、原木、シイタケのすべてを検査するのが大変だった」現在、ハウス5棟(18アール)でホダ木3万5千本を管理し、年間1トンを生産する。青柳さんは「規模を拡大し、より多くの原木シイタケを生産したい」と話す。

〈写真:「今後は、シイタケの植菌を終えてハウスが空く時期に、キクラゲ栽培に挑戦したい」と青柳さん〉

牛乳由来プロテイン配合 ジェラート新商品開発【3月1週号 岡山県】

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 【岡山支局】岡山市東区の松﨑牧場は、牛乳由来のプロテインを配合したジェラート「ジェラテイン」を開発。健康志向の高まりで急拡大するプロテイン市場での販路拡大を狙う。商品名は、ジェラート、ラテ、プロテインを合わせた造語だ。商品はタンパク質の含有量が違うアスリートタイプや健康志向タイプがあり、基本のミルク味のほか、チョコ味やバナナ味など11種類。低温殺菌した自社産の生乳を使ったジェラートに、牛乳由来のホエイプロテインを配合することで、スイーツ感覚でプロテインを摂取できる。片手で手軽に食べられるように、パウチ加工の容器にした。ジェラテインは、牧場に併設するジェラート店「ジェヌイーノ」をはじめ、オンラインショップ(gelattein.base.shop)やイオンモール、スポーツジムなどで販売する。開発のきっかけは社長の松﨑範之〈まつざき・のりゆき〉さん(49)の幼なじみからの「ジェラートのプロテインはできないか」という一言。幼なじみが趣味で開くサッカー教室の練習後、子供たちが水で溶いた生ぬるいプロテインを飲みにくそうにしていることから提案された。試作品を提供したところ大好評だったため、製品化の手応えを感じたという。プロテイン配合のタイミングによって溶け切らなかったり、固まったりする点に苦労したが、試作を重ね製品化に成功した。新商品の開発や海外展開など構想は尽きない。松﨑さんは「酪農の経営環境は厳しく、個人の努力ではどうにもならないと感じているが、6次化に取り組むことで可能性が広がっていると思う」と話す。

〈写真:パウチ加工の容器に入ったジェラテインは半解凍すれば食べられる〉

放置果樹、電気柵など点検 被害額が9割以上減少【3月1週号 福井県】

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 【福井支局】「点検する必要性を農業者に意識づけることが大切」と話すのは、高浜町の合同会社エムアンドエヌ代表の松宮史和〈まつみや・ふみかず〉さん(39)。2015年に町の委託を受け「集落点検」の指揮をとり、農家主役の獣害対策体制構築し、取り組み前よりも被害額を9割以上減少させることに成功した。同社の集落点検は、田植え後から稲刈り後にかけて年3回実施。点検結果を町全体に公表することで、農業者の獣害対策意識を高めた。松宮さんらの点検方法は、地域の農業者や住民と一緒に集落内の電気柵や放置された果樹などを調べ、各地域の対策状況や不備を洗い出しながら農業者に改善を促す。動物を引き寄せる原因となる放置された果樹などの調査は、町内の全集落で実施。放置果樹や所有者不明の木に色分けしたテープを結び、点検結果を公表した。この取り組みで、当初は千本近くあった放置果樹は、22年度までに400本程度に減少。21年には農林水産省の獣害対策優良活動表彰を受賞している。「動物が賢くなり電気柵で防げないと話す人がいるが、点検すると不備があるために機能していない場合がほとんど」と松宮さん。「これからも農家をサポートしながら、若者を中心とした中間支援組織の育成指導に力を入れていきたい」と話してくれた。

〈写真:「獣害を減らすためには点検だけではなく、捕獲・防御・追い払いのバランスが重要」と松宮さん〉

防風林「原発事故から12年。帰還できる環境整備を早く。【2023年3月1週号】」

 ▼東京オリンピック・パラリンピックをめぐる談合事件で、電通をはじめ大手広告代理店6社が起訴されるに至った。コロナ禍で感染対策を徹底しながらメダルを競ったアスリートたちやボランティアも含め運営を支えた関係者らを裏切る行為であり、許しがたい。
 ▼東京への招致が先行する中で2011年に東日本大震災が発生。"復興のシンボルに"とアピールし、20年の東京開催を引き寄せた。ただ、新型コロナの世界的な感染拡大を受けて1年延期となり、開催にこぎ着けると、都知事や首相は"人類がコロナに打ち勝った証し"と発言した。競技の東北開催もごく一部にとどまり、震災からの復興という意味を薄めてしまった。
 ▼招致活動中に当時の安倍首相は、原発事故に関して「アンダーコントロール(制御下)である」と胸を張った。事故の詳細も分からず廃炉のめども立たない状況での言動に驚き、落胆した。
 ▼復興庁によると、福島県の避難者は昨年11月現在でも約2万8千人いる。空間線量の高い浪江町などは住民の過半数が「戻らない」意向で「判断がつかない」との回答も2割ほど。政府には、帰還可能な環境を早期に整え、住民に示す責務がある。

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