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今週のヘッドライン: 2023年05月 3週号

営農の歩み着々と 昨年の台風14号で被災(1面)【2023年5月3週号】

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 「10年後、20年後もこの場所で営農を続けたい」と、収穫作業に励むのは、キュウリ産地として知られる宮崎県佐土原町東上那珂の図師純利さん(61)=キュウリ15アールなど。昨年9月17、18日に記録的な暴風と大雨をもたらした台風14号で、パイプハウスが倒壊する被害を受けた。それでも近隣の空きハウスを借りて改修し、早期の営農再開にこぎ着けた。2月に定植したキュウリが収穫時期を迎え、被災前と同水準の売り上げ確保に向けて営農継続への歩みを着実に進めている。

(1面)

〈写真上:キュウリの生育を確認する図師さん〉
〈写真下:新規導入した暖房機の説明をする長友さん(右)〉

強固な供給基盤確立を 自民党が基本法見直しで提言案(2面・総合)【2023年5月3週号】

 自民党の食料安全保障に関する検討委員会など農林関係合同会議は17日、食料・農業・農村基本法(以下、基本法)の見直しに関する提言案をまとめた。近く正式決定し、岸田文雄首相に提出する。持続可能で強固な食料供給基盤の確立を掲げ、海外依存度の高い小麦・大豆の生産拡大など農業の構造転換推進を強調。適正な価格形成に向け、生産から消費まで関係者が協議する場の創設などを求めた。農業の持続的な発展では中長期的に農地の維持を図ろうとする者を「地域の大切な農業人材」と位置付け、多様な農業人材の育成・確保を図るよう訴えた。政府は基本法などの改正を視野に「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」を6月に策定する方針。議論は大きな山場を迎える。

(2面・総合)

22年産ミカンの収穫量 初の70万トン割れ(2面・総合)【2023年5月3週号】

 農林水産省は17日、2022年産のミカンとリンゴの収穫量などを発表した。ミカンの収穫量(全国)は68万2200トンで、前の表年だった20年産比で11%(8万3600トン)減少した。21年の高温などで樹勢が低下し、着花数や結果数が減少した。収穫量が70万トンを下回るのは統計開始(1973年)以降初めて。  結果樹面積は2021年産比で2%(800ヘクタール)減の3万6200ヘクタールとなった。10アール当たり収量は、21年産比で7%(150キロ)減の1880キロ。

(2面・総合)

農業共済と収入保険 被災時はすぐに手続きを(3面・農業保険)【2023年5月3週号】

 近年は大雨や台風など梅雨時期以降の自然災害が全国各地で起きている。自然災害などで農業関係の被害が発生したときは、農業共済や収入保険の加入者は、すぐにNOSAIへ被害申告や事故発生通知をしてほしい。稲穂ちゃんがNOSAI職員のみのるさんに聞いた。

(3面・農業保険)

集落のルール 教科書を作成(5面・すまいる)【2023年5月3週号】

 近年、移住希望者向けガイドブック「集落の教科書」を作成する地域が増えてきている。歴史や環境だけでなく、自治会費や役員の決め方、葬儀の慣習、共同作業の草刈りなど、地域独自のルールを伝える。同教科書の制作支援などを担当するNPO法人テダス事務局長の田畑昇悟さんに、取り組みのポイントを紹介してもらう。

(5面・すまいる)

夜間給餌で昼間の分娩増加へ TMR自動給餌器を考案(7面・営農技術・資材)【2023年5月3週号】

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 長野県畜産試験場は、つなぎ飼い乳牛舎で夜間にTMR(完全混合飼料)を自動で給餌できる「簡易TMR自動給餌機」を考案した。昼間の分娩(ぶんべん)割合が増加することが知られている分娩を控えた牛への夜間給餌での利用を想定。単管パイプの枠組みと給餌容器、巻き上げモーター、制御盤などで構成し、市販品よりも安価で製作できる。タイマー式で任意の時間に動作するよう設定可能で、夜間の飼養管理の省力化や分娩時の事故防止につながると期待されている。

(7面・営農技術・資材)

〈写真:自動給餌の仕組みを説明する水谷研究員〉

農業を続けるなら園芸施設共済加入を【5月3週号 京都府】

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 【京都支局】宇治市の片岡逸朗〈かたおか・いつろう〉さん(62)は、パイプハウスと露地でカンパニュラやフリージアなど年間20~25種類の花きを栽培し、9割以上を市場へ出荷する。園芸施設共済について「国が掛金を補助してくれている点も魅力の一つ」と話す。片岡さんは京都府立農業大学校で学び、卒業後は地元にある現在のJA京都やましろに就職。花きの営農指導員になり、勉強のために自らも栽培を始めた。「一つの品種で、栽培方法を工夫すると収穫時期が変えられる。そこが面白い」と話し、定年後からは専業農家として取り組んでいる。片岡さん自身は園芸施設共済に30年以上加入し、営農指導員のころから、ハウスを新しく建てた人に加入を勧めてきた。府内で千棟以上のハウスに被害が発生した2018年の台風のときには、片岡さんのパイプハウスも大きな損害を受けた。「被害に遭っても再建して農業を続けていくつもりなら、園芸施設共済に加入しておくべき。自然災害が多い地域なら、なおのこと」と必要性を説く。現在は補償内容をさらに手厚くして加入している。22年には収入保険に加入した。病気などで収入が減った場合でも補償対象になる点がメリットと考え、経営安定を目指す。片岡さんは「宇治市でも後継者不足の問題がある。若い人たちに農業を普及していきたい」と前を向く。
 ▽花きのほかに野菜(ハウス6棟15アール、露地65アール)

〈写真:ハウスの強風対策としてX型で補強した片岡さん〉

収入保険・私の選択 社会的信用、労働環境が重要【5月3週号 福井県】

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福井県あわら市  加藤 秀信さん
▽加藤農産株式会社代表取締役▽64歳▽水稲65ヘクタール、麦13ヘクタール、ソバ15ヘクタール、大豆10ヘクタール、タマネギ2.5ヘクタール

 35歳のときに地元のJAを退職し、父から経営を引き継ぎました。あれから30年がたち、私も次の世代へ引き継いでいこうと考えています。2019年に法人化し、組織のブランド力強化に取り組んでいます。食の分野で優先されるのは、味はもちろんですが、安全性も重視される時代となりました。買い手からの信頼を得るため、20年にJGAP(農業生産工程管理)の認証を受けました。厳しい審査基準をクリアしたものという付加価値が付き、オリンピックや2年後に控えている大阪万博で食材を提供できるようになります。SDGs(持続可能な開発目標)にも取り組み、社会貢献につながる認証制度や資格を取得することで、組織の社会的な信用を高めています。今の農業にとって、大きな課題は担い手不足です。ハウスでの野菜栽培や水田園芸に取り組んでいきたいと考えていますが、人手がないとできないことが多いです。経営面でも、従業員の雇用や労働環境などは第一に考えています。雇用を守る上で大切なことは、安定した収入を確保することです。加入している収入保険は、実際の販売金額を基に補償され、実情に合わせた収入が安定して確保できるため、経営者としては新しいことに安心してチャレンジできます。若い人が興味を持ち、働きやすい環境となるよう、これからも組織の社会的な信用を高め、今の時代に合った環境整備に取り組んでいきます。
 (福井支局)

〈写真:「地元で愛され、末永く続く組織になっていきたい」と加藤さん(右)〉

作業は土日、スマート農業推進 地域を守る効率化【5月3週号 富山県】

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 【富山支局】「地域の財産や環境を守っていきたいです」と話すのは、砺波市荒高屋の農事組合法人ファーム五鹿屋八の組合長・花島和彦〈はなじま・かずひこ〉さん(68)。水稲23.2ヘクタール、大豆11ヘクタール、タマネギ5ヘクタール、ハウスでホウレンソウやトルコギキョウなど1アールを栽培し、スマート農業を取り入れながら営農に取り組む。省力化するため、農業用ドローン(小型無人機)は2016年に導入した。現在は、除草剤散布用のボートも活用するなど、作業の効率化を図る。20代の構成員2人がドローン操縦免許を今年取得した。「農業者の高齢化や離農が進む中で、スマート農業の導入は若い人に興味を持ってもらうきっかけになると思っています」。構成員のほとんどが兼業農家で、作業日が平日の場合、農業以外の仕事を休んでもらう必要がある。しかし悪天候で作業ができないと、休みが無駄になる上に、作業日を再設定しなければならない。対策として、今年から作業日が土日メインの出席表を作成。予備日も作りながら予定を細かく組んだ。その結果、参加率が上がり、作業の進みが早くなった。「出席表の提出はなるべく早めにするようにしているので、急に都合が悪くなって作業に出られなくなる人は減りました」。今後については「引き続きスマート農業を取り入れながら、若い人にどんどん出てきてもらい、うまくバトンタッチしていきたい」と話してくれた。

〈写真:ドローンを操縦しながら「作業が楽に進みます」と花島さん〉

加工品に好適の水稲栽培 うどん風米粉麺を開発【5月3週号 島根県】

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 【島根支局】安来市東比田地区で米粉を製造・販売する中村一人さん(53)は、1998年に名古屋からIターンで同地区に移住。食品営業の経験から食の安全に興味を持ち、米粉を使った加工品の製造を始めるようになった。米粉を使った麺を作ることを考え、製麺機を使って試行錯誤を重ね、うどん風の米粉麺を開発した。その後はパスタ風の米粉麺などを開発し、今では15種類の商品を製造。中村さんが一番推している商品は3色ショートパスタ風米粉麺だ。「野菜の粉を使った色つきのショートパスタ風米粉麺を従業員から提案され作ってみました。野菜のきれいな色合いと出来上がりで、特におすすめです」。食の安全を考え、米粉だけを使用することに力を入れている。「小麦アレルギーがある方が購入し、リピーターになっている。そういう方が喜んで購入してくれるので、とてもありがたい」と中村さん。現在、水がきれいな同地区で、加工品の原料となる「きぬむすめ」、餅の原料となる「ココノエモチ」を含め水稲を128アール栽培する。標高の高さを生かし、米のおいしさを引き出す。今後はグルテンフリーなど今まで以上に食の安全に重きを置いた加工品の製造・販売を考えているという。

〈写真:「まるでパスタな米粉麺」を手に中村さん〉

みそは1週間で予約完売 黒千石大豆に注力【5月3週号 岡山県】

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 【岡山支局】笠岡市カブト東町の農業法人有限会社ブリガーデンでは、健康食品として注目を集める「黒千石大豆」の栽培に力を注いでいる。黒千石大豆は北海道原産。岡山県で多く生産する「丹波黒」の百粒重が約80から90グラムあるのに対し、黒千石大豆は約10グラムと極めて小粒。抗酸化作用があるアントシアニンやポリフェノールを豊富に含む。ブリガーデン代表の原田恭雄〈はらだ・やすお〉さん(55)は、黒千石大豆の魅力を広めるため、2023年から「黒千石みそ」の販売を開始した。発売前から注目を集め、写真共有サイト(インスタグラム)で3月末に予約受付を始めたところ、80個の予約枠が約1週間で埋まったという。ほかにも道の駅笠岡ベイファームや笠岡ふれあい青空市では数量限定で販売している。原田さんは、加工前の黒千石大豆のオンライン受注販売も視野に入れており、「消費者が買いやすい工夫をしていきたい」と話す。

〈写真:かわいらしいイラストが目印の黒千石みそと黒千石大豆〉

防風林「健康長寿で成した天下とり【2023年5月3週号】

 ▼大河ドラマの主人公である徳川家康は、数え年75歳で亡くなっている。天下分け目の関ヶ原に勝利した1600年は59歳で、当時は高齢とされた年齢だ。その3年後に江戸幕府を開き、さらに12年後の74歳の時に豊臣家を滅ぼし、天下取りを完遂した。
 ▼長生きをした理由に、家康が心がけたという麦飯と豆みそを基本とした質素な食事が挙げられる。当時、身分の高い武士は白米を食べ、麦飯は庶民の食事だった。薬を自ら調合するほど医学・薬学に傾倒していた家康は、一貫して麦飯を食べ、家臣にも勧めたそうだ。ビタミンなどの知識がない時代に麦飯の効用に着眼していたことに驚く。
 ▼また、死の原因とされた「天ぷらで食あたり」も近年は否定されている。倒れてから3カ月ほど床に伏せており、胃がんなど別の疾患の悪化が原因との説が有力と聞く。歴史に"もしも"は禁物だが、もう少し若年で亡くなっていれば、その後250年続く太平の世は訪れなかったかもしれない。
 ▼一方、織田信長は味の濃い食事を好んだ。怒りっぽい行動が目立つ要因を塩分の大量摂取による高血圧体質とする指摘もあるという。本能寺の変で没したのは49歳だが、長生きしても健康でいられたかは分からない。

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