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防風林「復興を成し遂げる日まで【2015年3月2週号】」

 ▼現状は依然として厳しい。東日本大震災から4年目を迎え、復興の進展状況など省庁の公表資料に目を通した実感だ。津波に被災した農地の復旧割合は70%となったものの、前年同月比で7増にとどまる。被害甚大な農地の工事が残されている。
 ▼被災地域は、全国比はもとより県全体の中でも人口減少や高齢化、産業空洞化などが顕著だという。「食べて応援しよう!」や観光誘致のキャンペーンが展開されているが、被災3県の観光客中心の宿泊者数は震災前の1割減だ。まだ回復に至ったとは言えない。
 ▼また、農地や住宅などの復旧以上に地域コミュニティーの再生や新生が課題となっている。仮設住宅では、高齢者の独居と1人で食事する孤食が増えているそうだ。車を持たない高齢者は買い物弱者となり、家に引きこもりがちになる。そんな生活が糖尿病や高血圧などの病気や認知症を増やしているとの指摘もある。
 ▼課題克服に向け、多様な取り組みが始まっている。日本栄養士会が進めるのは「ほっこり弁当プロジェクト」だ。管理栄養士が作った弁当を保育所まで受け取りに来てもらう仕掛けで、高齢者が外出する機会を作る。弁当を渡して帰すだけでは寂しいと、園児と一緒に食事をしたり、園の行事に参加してもらうなど取り組みの幅が広がっている。
 ▼早くも大震災の記憶の風化を指摘する意識調査もある。本当の復興実現は、一つ一つの困難を乗り越えた先にある。その日まで「忘れない」ことを肝に銘じよう。