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防風林「研究の遅れた作物は淘汰(とうた)し、技術のみが復活させる【2015年7月1週号】」

 ▼「技術開発や機械化が遅れた作物は、次第に栽培されなくなるものだよ」。30年も前の記憶だが、今でも鮮明に思い出す。記者になりたての2年目、上司の鞄(カメラ)持ちとして旧・農業機械化研究所(現・生研センター)の理事長取材に同行した時の言葉だ。
 ▼「作付面積が急激に減少していった作物、君は何か知っているかね?」と突然、若造に質問の矛先が向けられ、首を左右に振ると「それはナタネだよ」。油糧作物のナタネ作付面積は昭和30年代には26万ヘクタールあり自給率は100%を誇ったが、1980年には2400ヘクタール、96年には590ヘクタールまで減少し、風前の灯だった。
 ▼当時は、栽培面積の減少に歯止めがかからない下り坂の真っ最中。輸入自由化で搾油用の低価格ナタネが流入し、国内農家が生産維持するには、極小粒の種子を効率的にロスなく、軟弱不整な圃場を動き回れる国産収穫機の開発が求められていた。だが当時、実用化には至っていない。
 ▼冒頭の言葉は、開発しなければ国内からナタネ栽培がゼロに転落するとの危惧から出た言葉だった。その後、汎用コンバインが開発され、今や稲・麦・大豆・ソバ・雑穀などに対応した収穫の中核を担い、もちろんナタネも可能だ。
 ▼北海道や青森などでこれまでも、細々と栽培が継続されてきた。近年では、景観維持や放射性物質の吸着、バイオディーゼル燃料として期待されている。無エルシン酸品種の育成、農機開発が相まって14年産では1470ヘクタールまで盛り返した。途切れない技術開発は作物を復活させるのだ。