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防風林「電気柵の使用は適正な使用方法で【2015年8月1週号】」

 ▼あってはならない痛ましい事故が先日、静岡県内で発生した。野生鳥獣の侵入防止に使用する電気柵の電線が川に触れ漏電し、河原で遊ぶ数家族のうち男性2人が感電で死亡、ほか数人が重軽傷を負ったのだ。
 ▼報道では、事故があった地区では野生シカが頻繁に出没し栽培中の農作物が食い荒らされ、電気柵を有効な手段として利用していた。だが、農地ではなく河川敷のアジサイの踏み荒らしを防ぐため柵線を張ったという。
 ▼家庭用電源から引かれ、漏電遮断器や危険表示の掲示がないなど、電気事業法で定めた感電防止措置がされていなかった。電気柵は、野生動物を人の生活圏に侵入させない防護境界線。生活圏内に不適切な形で敷設されていたのだから危険極まりない。今後このような事故が再発しないよう、あらためて法令や取扱説明書を確認すべきだろう。
 ▼農林水産省は、鳥獣害防止資材の導入を国が補助する対策事業を実施していて、機材の選定は事業主体である市町村等が独自の入札方式で決めている。電柵を扱うある業者によると、納品時に社員が直接、現地に赴き敷設指導を行う前提で価格提示してきたため、他業者より高額となり落札できない入札が多いという。業者の中には製品を宅配便で送付するだけという事例もあるそうだ。価格優先の入札ではなく、技術指導も含めた方式にするなどの工夫も必要だ。
 ▼学校は夏休みでもうじきお盆。孫を連れて帰省する家族も多くなる。電気柵は適切な使用で事故はない。農村が"危険な場所"でなく、昆虫採集や水辺遊びもできる"原風景"として印象づけたい。